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少し長めです。
その後、二人は川で遊んでいると、僕の両親が来て、少し注意された。曰く、川で遊ぶのは危険だとこと。
まぁ、ごもっともな意見ですね。
仕方のないことなので、昼御飯までとりあえず、釣りをしている自分たちの父親の側で遊んでいる事にする。
川での釣り……どうやら、上手くいったらしいバケツの中で何匹か活きが良いのが跳ねている。
僕とえる君は、川辺で手を洗ってきなさいと母親に言われたので、軽く手を洗う。そして、少し川の水で冷えた手を不意にえる君の首筋に当てて「ひゃう!」というイタズラもとい可愛い事も堪能させてもらった。
今日の昼御飯は魚のアルミホイル焼きと、作ってきた色とりどりなサンドイッチです。
しっかり、僕もえる君も「頂きます」と、食材に感謝して食べます。
あっ、える君、ホッペに付いてるよってヤツやりたかったけど、親がいる手前それは保留にした。でも、いつかはやりたい。
ふぅ、満腹です。満足です。お腹ポンポンです。
どうやら、える君も同様のようです。思わず苦笑しちゃいます。
僕も作ったというと、える君は僕の作った不格好なサンドイッチも頑張って食べてくれた。無理しなくて良いのにって、あれほど言ったのにな。
変なところで男の子な、える君。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、川でまた、える君と一緒に僕は、小も懲りなく遊ぶ。見つかったら怒られちゃうね? っていうと、える君は大丈夫! って笑う。
える君は、笑顔を絶やさない。
日も少し暮れて、帰る時間帯となり、える君の両親が来た。
いつの間にか少し遠くで遊んでいたようだ。
える君の両親の姿が少し遠くて思わず目に力を入れてしまい
――僕は一人、絶句した。
幸せな気分は抜け落ち、歯がカチカチと鳴る。煩い、耳に響く、誰が? 僕? 今、僕の顔は大丈夫か?
緊張で目の力を緩める事が出来ずに白黒反転した景色が、見たくもないものを自分に、自分の力に魅せ付ける。
前にも記述したかもしれないが、自分のこの世界では三種類の色の焔がある。
赤と青と――そして、黒だ。
その黒が、あの死の予兆が、える君の両親の胸に、ありありと映る。
嫌……。嘘……。
言葉にすら出来ない僕は、ただただ首を横にふる。目の力を必死で緩めようとする。
でも、どうやって緩める? 分からない、分からない、消えない、魅せ付ける、黒が僕を嘲笑うかのようにさえ見えて。
僕は、生まれて始めて激しく、混乱した。
何故――、はっ! える君は!?
後ろを振り向くと同じく混乱した様子のえる君の表情が伺える。いや、そんなことはどうでもいい。
える君の腕にある焔は……赤だ……良かった。
え? 良かった? 僕はもう目の力は抜け落ちていた。もう目に力は入らない、入れたくない、脳が、僕自身が拒否する。
忘れちゃ、駄目!
……いや、思い出した。える君の両親だ。
黒い色の焔……それは死を現す。今までも散々見て知ってきたじゃないか? 何を混乱している。僕は何故こんなにも取り乱す。
『何で分かるの?』『何で助けてくれないの?』
『酷い!』『何で!』『何で!?』
冷静になろうとしてきた頭には幻聴が響く。
嫌……違うの……。
『『『どうして助けてくれないの!?』』』
あくまでもこれは被害妄想ではある。
でも、僕の精神は、耐えきれず涙が溢れる。溢れて、溢れて、止まらない。
無力な、僕が、僕は耐えきれない。
そんな滑稽でしかない僕を近くで見てた、える君はなにも聞かず、なにも言わず、抱きしめてくれる。
そして、僕の少し伸びた黒髪を優しく撫でる。
「大丈夫、大丈夫」とまるで伝えるように、
優しく、優しく撫でてくてる。
――暖かいな、全く変なところで男の子な、える君め、惚れてしまうぞ?
少し心も落ち着きを取り戻し、僕はゆっくりとえる君の体を押して離れる。もう……平気だから……。
見える景色は、いつもと変わらない世界。
――でも。
「安全運転?」
「そう!」
「分かったわ。まぁ、山道怖かったのかな? 大丈夫よ、オバサンこう見えても根っこからの小心者だから、細心の注意を払って運転するわ! ……だから、安心してね。見宙ちゃん」
「ありがとう!」
その後、僕は、える君マザーに安全運転を促した。
ちょっと泣いてたのがばれたかな? でも、もう平気だから、気にしないで。
これで、きっと。
僕は救われる。
――――
『今日の午後5時半に赤信号を無視して走行したトラックと乗用車が衝突するという事件が発生しました。場所は栃木県宇都宮市■■町。
また乗っていたトラックの運転手は重体で病院へと搬送され、そして、被害を受けた乗用車に乗っていた家族二人は重体で病院へと搬送されましたが、治療むなしく、
病院で息を引き取りました――』
ニュースは、淡々とその日に起こった事件を述べた。
『次のニュースです――』