*7
今は8月。
まだ朝日が昇る前の時間なのに、僕は呻きたくなる。未だに夏の暑さは変わらず猛暑日が続くという、キチガイな季節の中、僕の着ている服も汗でビッチョリだ。早くも着替えたくなってきた。
だから、たぶん朝やらかしたシーツのシミも汗だと良いな。
ふふっ、油断するとすぐこれだ。ロースペック過ぎる。
思わず汗と共に涙がこぼれそうにもなる。
まぁ、それは置いておいて、今日はお出掛けなのです。
近所に住むえる君ファミリーと川でキャンプするそうで、川と言えば魚! 魚と言えば食糧! もしくは釣り!
やる気満々ですよ?
ええ、僕はいつだって全力っス
「える君~!」
「ミソラん~!」
いつものように抱きつく二人。
今日もえる君成分はマックスです。後ろを見ると、両親が笑っているが、必要な事ですよ? 僕にとっては。
そして、僕とえる君は、僕の両親と同じ車に乗車します。互いに抱きつくのは止めたけど、手は繋ぎます。
前に走る先導はえる君ファミリーの両親が。
荷物はちょっと見るからに多そうだ。
える君は車に乗りながら少しすると眠そうにうとうとしていると、コテッとこちらの肩に頭を乗っける。
いつの間にか寝てしまったようだ。
両親もミソラも寝て良いよと言うので言葉に甘えて、
える君と肩を引っ付かせながら眠ることにした。
「ふぅ~、着いたの~」
ここは何処かの山の中、林に囲まれて川が緩やかに流れている。あっ、少し大きめの魚が跳ねて、こちらを見て踵を返すように川に潜っちゃった。
あれか、今日の昼御飯は。美味しそうだった……。
僕はまず深呼吸をする。新鮮な自然の作る空気。
排気ガスが先程まで近くで出されていたことは頭の隅に置きながらも深呼吸をしてリラックスします。
気分は大事です。
久しぶりの外出で、久しぶりの自然の環境だから舞い上がってるだけです。どうやら、える君も同様のようです。
える君は最近になって更にパワーアップしてます。
他の男子と違って、走り回って(主に僕に連れられて)転んでも泣かない。ちょっと涙目だけどしっかり堪えている。強い子だ。
現に走り回って……あっ、転んだ。でも泣かない。
思わず感心してしまう。
おっと、それより大丈夫かな?
「える君、大丈夫?」
「む、ちょっと擦りむいただけ、問題ないよ」
「える君、偉いね」
「……ありがとう、ミソラん」
よく見てみると、える君の目は赤く、今にも泣きそうに見えたが指摘はしない。える君は見た目と違って本当の意味で強い子だ。
後、最後のありがとうって言葉もう一度いって欲しい。
心に響きました。
「える君、える君」
「何? ミソラん、虫でもいたの?」
「居たら、捕みゃえている」
「じゃあ、どうしたの?」
「えへへ~、川にね……綺麗な石があったの」
そして一拍置き、「あげる」とえる君に手渡しで伝えると、える君は本日最高得点の笑みで「ありがとう」って言ってくれた。
ニャー! える君ー! プリプリですー!
とりあえず、何となく恥ずかしかった僕は誤魔化すように、える君に抱きつく。
える君は、もう僕が抱き付いても抵抗しない。
むしろ、髪を優しく撫でてくれる。
優しく丁寧に、ちょっと壊れ物を扱うような撫で方が
くすぐったいけど、気持ちが良いのは確かである。
紳士な、える君も好き~!
ミソラんと僕の友情劇Ⅱ~
「える君、撫でかた上手ですぅ」
「ん、なれてるから」
「ど、どこの泥棒猫ですか!?」
「猫? 違うよ、家で飼ってるミニチュア・ダックスフンドのムー君」
「い、犬と同じ撫でられ方……」