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死神は人の死を望まない  作者: ByBuyBy
死神は知る
36/40

*36


 「お母さん、お父さん……話があるんだ」



 夜になり、制服から今は白のブラウスに着替えた私は、夕食後に――まだ早いながらと考えてながらも今しかないと――決心と共に両親に話を切り出す。


 える君には悪いことに気を使わせてしまったか既に自室に戻ってる。



 「はぁい、貴方ミソラが好きな人が出来たみたい。これは赤飯事よ」


 「ん。ミソラ、お父さんは認めない、あっでも孫の顔はみたい……いやでも、認めない」


 「赤飯にしても、認めないにしても、まず聞いて」


 「はぁい、お父さんは正座ね」


 「ん。了解」



 私は両親とロングテーブルを挟んで向き合う。こちらは真剣なのだが両親は相変わらずの平常運転である。


 平常運転ではあるが、両親はちゃんと聞いてくれるみたいで、夫婦コントはすぐ終わる。


 一回、私は息を吐き、言いたいことを頭の中で纏める。そしてまた息を吸っては吐く。



 「我が儘……だけどね、行きたい所があるんだ。それは遠い場所、誰も知らないような遠い、遠い場所に」


 「あら、遠距離恋愛らしいわ」


 「ん。認めない、認めない、認めない」


 「うん、聞く気無いね」


 「冗談よ。半分ほど」



 天国と言いたかったけど、地獄かもしれない私としては遠い場所とぼかして話す。

 思わず遠目に成りながら遠くと繰り返す。

 父親の後ろに見える夜空は満ち欠けた月が見える。まるで、私は月に帰るような気分にもなる。


 そんな私の話を遠恋等とふざける両親を私は咎め立てもカラカラと笑われるのみで、この両親にシリアスを求めるのが間違いだと、今更ながら気付く事実に内心項垂れる。



 「ん。行くのは恵留かい?」


 「違う、私。……私一人行くよ」



 私一人と答えた。当たり前の事だ。誰も巻き込むつもりも、自身が止めるつもりもない。


 ピシッと、何かが壊れるのが聞こえる。


 私の先程の言葉。

 私一人という言葉。ただそれだけで空気が変わる。重い。ただただ重い空気が空間に満ちる。



 「穏やか……ではないね」


 「ん。ミソラ、行くのかい?」



 両親は真剣に見詰めながら聞いてくる。


 その目は今日の蒼のように、まっすぐで淀みの無い瞳。両親の目は正にそれだった。



 「一ヶ月もしないうちに行くよ。それが私の我が儘、言いたかったこと。……ごめんなさい」



 私は座りながらも、深々と頭を下げる。


 下げた頭で考えてしまうのは、懺悔の言葉ではなく、早くこの場から立ち去りたい。逃げの考えで甘い子供の考えだった。



 「ん。謝るのは誤り、なんちゃって」


 「だそうよ、そこは誤っちゃ駄目」


 「む、どうして?」


 「「家族だからかな」」


 「……」



 口を揃えて、家族という。


 行くのが良いのは家族でないから?


 私は疑問に思うも口には出さず次の言葉を待つ。



 「謝るのは最後で良いわよ。

 まだミソラは生きている。生きる資格がある。

 私は別の結末も信じてる。

 家族なのよ、える君も含めて、

 私のお腹を痛めて産んだ彼女・・も」


 「でも、行くんだから謝る」


 「そっかぁ、お父さん貴方からは何かある?」



 母親は横を仰ぎ見れば、正座をちゃっかり止めている父親の姿が映るようで、もう一度正座と言われてる。


 何故に正座なのかと母親に問えば、こうしないと真面目に話すらしないと小さく呆れた声が返ってくる。


 正面を見れば、涙目ながらも此方に意識を向ける父親の姿。……何とも言えない気分になるのは現実逃避だろうか。



 「ん。ミソラ、最後に一つ、恵留えるはどうするつもりだ。

 何もかも逃げるなよ」


 「える君は大丈夫。私は彼を信じてる。一応、これから話をしに行くよ」


 「ん。ならいい」


 「……おやすみ」


 「ん。おやすみなさい」



 私は次に会うべき、話すべき相手、える君を頭の中で描きながらリビングを出ようとする。


 すると本当に最後に一つ、母親から、こんな言葉が送られた。



 「ねぇ、ミソラ……悪夢が辛いなら、自分エゴを貫き通すのが難しいのなら。他の貴女の苦しめる要因全て背負おうとせずに時には親を頼りなさいよ?

 私も貴女の力に――」



 とても最後まで聞いていられない位暖かな言葉で、私は途中で逃げるように扉を閉めた。



 私は落ち着けと俯く。



 本当に優しい両親。



 私は未練のように、頭の中でその言葉が渦巻く。このままでは――。



 私すら死ねないじゃないか。



 私は精神的にもボロボロとなり、咽びそうになる声を堪えて、自分の部屋へと戻る。


 暗い部屋の中、俯いていた私は前を向けば人影を見て咄嗟とっさに電気のスイッチを付ける。

 パチッと音と共に、その姿は露になる。



 そこには、彼が居た。







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