*30
ちょっとだけ作者による拙い流血?残酷?描写が一部入ってます。
苦手な方は、ブラウザバック推奨。
「とまぁ、私はそんなにスゴくないかな」
あははと苦笑いでしめる女々ちゃん。空気は大分重い。私は知ってたけど改めて聞いてて引いた。
彼女は笑う。いつだって笑う。ある意味それは狂気の沙汰でありつつ、彼女自身の防衛措置である。
故に彼女は笑っている。周りがどんな目で見ても。
「グズッ……なる……ほど、グズッ」
重たい空気の中、真久津先輩は一人、号泣している。何かの琴線に触れたらしく両目から止めどなく涙が溢れている。
ただそれを見て私が思ってしまうのは、眼帯から溢れる涙ってちょっと異様というどうでもいいこと。
「ズズッ……さ、先程から語ってくれるのは嬉しいが、どういうつもりかの」
何とか取り直した真久津先輩は問う。
「情報開示による等価交換」
蒼は用意してたかのように即答する。
その目は真剣で、真久津先輩をガン見している。女々ちゃんは蒼の言葉にしきりに頷く。
私としては意味が分からない。例えるなら独りよがりな舞台を見てる気分にさえなる。
せめても小中学生でも分かるレベルに! という切実な願いは果たして……届くといいな。
「じゃのう……思ってた以上に皆が異常であることに驚愕かや。そこも踏まえて、やはり優遇の件かの……」
真久津先輩は、一人ブツブツと呟く。最初のじゃのうしか、私達の耳に入らない。先輩の妾的な口調は地なのか気になるそこのところ。
「知ってる範囲で良いなら開示しよう。何よりも後輩殿が優秀じゃからの。その前にそこの二人のはまだかの?」
真久津先輩は私とえる君を指差す。
何がまだか、それはきっと化け物の正体について話していないということに他ならないだろう。
「僕……」
える君は真久津先輩の言葉に従うように一人、席を立つ。
「見てて……」
える君の正体を明かすのに、充分分かりやすい方法を。
える君は一度深呼吸をして自身を落ち着ける。……そして自身の左腕の肘辺りを右腕で掴み、引っ張る。
力一杯引っ張るとブチブチッ! と嫌な音をたて、引き裂かれたえる君の左腕は床に落ちる。
私はまだ椅子に座ったまま見学している。える君の姿を目に焼き付けるように、自身の業が招いた結果を見る。
「はぁ、はぁ、おぇ、馴れないな。でも、これで分かりやすいかな?」
そういって彼は笑顔のまま次に残った右腕で左胸を貫く。
ズクッと腕を引き裂くよりも表現するに難しいほど不快な音だった。その光景に女々ちゃんだけは目をそらす。
胸を貫通した右腕を引き抜き、落ちた左腕を平然と拾うえる君。
ポッカリ穴空いた左胸からも、取れた右腕からも血は一滴も出ない。中身が無いわけではない。空いた部分から容易にあることが覗ける。
何が可笑しい? そう全てが可笑しい。
「僕は不完全な不死な存在」
私の能力【死を望まぬ庭園】が造り出す。私の能力の真骨頂ともなる存在。
それをえる君、自らの口で伝わる。
「――ゾンビです」
える君はそう言い切った。
今まで自身すら認めきれなかった存在の名前を。……どうやらいつの間にか言えるくらい鈍感になってしまった。
ゾンビにおいて、この鈍感こそに意味がある。
える君の空いた左胸は、やがて血が数滴落ちて、ゴポッと溢れ始めた。赤い血が、目的を持つように欠損部分を覆う。
またそれは左腕もしかりで、同じ現象を起こしている。
数分もせずに血は止まり、赤い何かが左腕をつなぎ止め、左胸も赤い何かが固まり塞いでいる。
「僕は一番脆い存在です」
彼は自嘲毛に言う。
ゾンビはアンデット。つまり死ねない身体をもつ。
それでも脆き存在。何とも不思議な話かもしれないが、ゾンビとはいつだって脆い存在である。
彼はこんな存在になってしまった。それは私のせいなのに彼は私を結して恨むことは無い。
「と言うわけで、……俺にはミソラが必要だ。蒼にも、誰にも渡すつもりは――無い。以上」
そこまで言い切ったえる君は踵を返すように私の所に戻り、包容を要求。緊張はしてたようで微かに汗の匂いがする。
(はうう~、ポカポカ~、える君の匂いや~。でも、最後の私が必要って誤解されるよ~。近親相○は駄目だよ~)
私はデレッとした顔をしながら、える君の包容を受け止める。える君の匂いは太陽の匂いもといダニの死骸の匂い。
このまま、える君の匂いやこの暖かさを堪能するのといいけど、最後に〆るべきかと思い直す。
える君という強烈な誘惑に勝ち、一人立ち上がる。
「私はまだ良く分からない」
「我からも主が分からないな」
私はまず否定から始まる。それに真久津先輩から被さるように言葉がくる。それもまた否定的である。
「たぶん私は死神」
自身のことなのに自信無さげに答える私。
でも、言いたいことはそれではない。だから、続けよう。存在の定義なんて私としてはどうだっていい。
「私は呪われるまでにしてきたことは懺悔しよう。私は人が大好きだから。大好き過ぎて耐えられない。だから――全て救う」
私の能力は強大で、伸ばせる範囲まで伸ばしひたすら救う。慈善活動しかりエゴを貫いた。
「エゴイストかや」
「ハハッ、正しくそれです」
苦笑気味に言う真久津先輩の言葉に私は笑った。
「私はエゴイスト。エゴを止めるつもりはありません」
そう私は言い切ると真久津先輩はいっそ清々しい位に笑う。それに合わせて私も笑う。
「クハハッ! エゴイスト! 呪われるまでにしてきたことは本当に懺悔したかや!?」
「ニハハッ! 先輩! 今でもですよ!」
「クハハッ! 愉快! 馬鹿がこんな少女で居たとは! 大層愉快!」
ひとしきりに真久津先輩は笑う。
私は既に笑うことは止めて、真久津先輩が落ち着くのを待つ。それが数分だろうと数十分だろうと。
「ああ、ごめん。いや、久しく笑った。で、隠してた事だかの、更に面白い事を言おうぞ」
目尻に涙を浮かべ、お腹を抑える真久津先輩は宣言するように言った。次の言葉に私だけはある反応をせざる負えないものを。
「終と言えば、見宙殿には分かるかの。その男をこちらで管理するために認可が必要なのじゃ」
5年前に私を呪った男の名。
そんな過去を知ってか知らずか彼の名を語る。そしてまた、大層愉快そうに顔を歪め真久津先輩は言った。
「では、知りたかった事を最後に言って〆よう!」
真久津先輩は宣言するように声を張る。
マント代わりかブレザーをバサッとやり、片手を突き出す。初手の部活動からネタバレとなる一言を最後に言う。
「秀逸部には化け物が隔離されるべき場所にしようと思うのじゃ!」
クハハハッ!! と笑う先輩の姿に、少しばかり私は魔王のような姿を写し見た。
魔王の娘とは存外嘘では無いのかもしれない。
更新はまたしばらく遅れます
就活大変です……(´・ω・`)




