*25
放課後となって辺りは少し赤く光る。
周りの生徒達の話し声などが騒がしい中、二人は向かうべき場所へと向かう。それは今通う校舎の裏手側に存在する校舎。
通称、旧校舎。
年代を感じさせる外見から中身が把握できてしまう。夜とか絶っっ対近寄りたくないくらいにボロい。
現に階段とか登るとミシッて音がしそうで不安に感じさせられた。
私とえる君はその旧校舎の二階廊下の奥の扉の前、ドアのプレートには黒くデカデカと【秀逸部】と書かれていた。
そこが待ち合わせ場所で、私達はメンバーが揃うのを少しばかり早く待つ事にした。現段階で分かってるメンバーは2年の先輩のみ。
残りも同じ2年生の先輩だったらどうしよう。
その時は幽霊部員となろう。早速不良の模範となる考えだが、える君にはそれが一番だと思う。
不安も不満もなるべく持たせてはいけないのだから。
そんな事を考えていると、二人見知ったら顔触れが近付いてくる。
一人はテンション高めに手を大きく振り、もう一人はこちらに気付いて面倒そうに手を額に当てている。
こっちだって、ほぼ強制だったのに。
でも私は内心ほっとした部分があり、笑顔で迎える。
同じ学年、同じクラスの女々ちゃんと蒼君だ。
「宙ちゃん。えー君。どっしたの?」
「これ」
「なるほど、理解できない」
「かくかくシカジカ」
「馬馬うんぬん?」
「何のやり取りだ……」
「楽しそう?」
私と女々ちゃんは互いにハテナマークをくっ付けた様に首を傾げる。他の二人も同様だ。
でも、私は直ぐに理解した。
この二人も生け贄だと。
その後、数分後くらいで先輩は来て扉を開ける。
ガラララッ。
引き戸を横にずらせば見える。
これから使う部室。
そして、その部室はちょうど夕日に照らされて全体的に赤く感じる。
間取りとしては8畳スペース。既に部の備品等は少なからず揃ってる。
キッチンだったり、冷蔵庫、手洗い場。中央にはロングテーブルに椅子が並んでいる。その先には4Kの超高画質テレビまで置いてあるし……。
一体何する部活なのだろう。
物凄く今更な疑問を感じる。
「さて、色々と疑問に感じることが多いと思う頃だから、そろそろ始めるかの」
先輩は窓辺のロングソファーの上に立ち、演説するかのように声をやや大きめに出す。女々ちゃんと蒼は既に何が始まるのか予想済みのようで思い思いの行動をしている。
「私の名は【真久津 矢見】。わかっての通り秀逸部の部長となるもの。名字からわかる通り、この真久津グループ会社の社長の娘である」
私とえる君は、向かいにある椅子に座り、話を聞く。
ただ空気が可笑しい。後ろで二人がまたアレやる気か? と言いたげな変な雰囲気が醸し出されている。
そんななか先輩は、今朝から右目側に着けていた眼帯を慎重に外す。ウインクとか出来ない質なのか片目を閉じ様として両目を瞑る。
カッ! って効果音が付きそうなくらいに思いっきり開くと、両目にはカラコンではない綺麗な、青い色の瞳が見える。
「そして、私が、魔王の娘じゃ!!!」
「「…………?」」
後ろではバーンと可愛く口で効果音を声に出す女々ちゃん。でも、魔王の娘? 私としてはハテナ。える君もハテナ。
先輩の発言に私とえる君はハテナマークを頭の上に浮かべ首を傾げる。後ろの二人が溜め息を吐いてる時点で、こっちにもやったことが伺える。
これが世間でいう電波? 中二病?
何も反応を起こせない私達を見ては先輩の表情に影が……。先程の勢いはどこにいったのか体育座りにまで低下してしまった。
先輩……。
色々とリアクションに困った私達は突っ込み蒼君に目を向ける。この空気を何とかしてほしい。
しかし、顔ごとそらされる。
無理と言いたげに、思いっきり顔を90度にまで曲げやがって、こちらを見ようともしない。
なら、女々……も早いな。いつの間にか居ない。
となると、える君は……私を見ている。
必然的に私ですか。酷いよ、皆して、後で覚えてろ。
私は気を取り直し、俯く先輩に近付き耳元で囁く。
「大丈夫ですよ、誰だって、そういう時期はあります」
「お主まで……中二病……扱い……」
「残念ながら」
「そうか……私は中二かぁ~中二だけに……」
2年の先輩にうっかり止めを刺してしまった。どうしようつまらない自ネタを言い出してるよ。私にはもう何も出来ないよ。
首を振る私に肩がポンッと乗る。
える君だ。
「…………」
「…………」
先輩と二人何か話している。何故にオフレコ? でも、頼もしい。これで先に進める。
やがて、元の明るい表情に戻る先輩とえる君。
一体、本当に何のやり取りだったのだろうか。
でもやはり本調子になるとロングソファーの上に立ちたいようで……気にしたら負けかな。蒼も何度もこんなのを見てはつっこんだんだろうな。
私は感慨深くなる。
「では、改めて部長から一言」
女々ちゃんがそう先輩に茶化すと、先輩は咳払いをし、締めの、いや部活活動を始める第一声となる言葉を口に出す。
この言葉が切っ掛けであり、いずればれる事を露にされる。
「秀逸部員共々……私は誓おう……。
つまらぬ学校生活を打開し、魅力的な活動を。
そして、私達は異常であるがゆえの天才となることを」
私とえる君はその言葉に絶句した。
そんな表情にしてやったりな顔をしてる先輩は続ける。
「ようこそ。異常であるがゆえの天才が集まる部!
【秀逸部】! 本日をもって始める!」
最後にのじゃと可愛く語尾を付け加える先輩に、私は部が悪そうに見えるくらいの苦笑いしか出来なかった。
部室間取り図イメージ▽
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