*22
まだ朝日は登ったばかりで周りが静かである中。
制服にエプロン姿の少女は朝早く、フライパン片手に一人分の朝食を作りに掛かっていた。とはいえ、これは自分のではないと多少手抜き感はあるが。
フライパンから良い音と良い匂いが少女を楽しませる要因となりながら、鼻歌を口ずさみそうになるのを堪える。出来ることならボカロ曲とかオタク曲を歌いたい、でも聞かれたら恥ずかしい。
そんな葛藤をしていると何処からか足音が聞こえる。
彼女はリビングに目を向ける。
来たのは既にスーツ姿の彼女の父親だ。
「おはよう」
「ん、早いね」
「ああ、ちょっとね」
私は曖昧に誤魔化す。夢見が悪いといって家族を心配させたくないし、他人からしてみればなんだそれ? って話だ。
どうせ、誰にも救えない。
そんな思いが込み上げては、消す。
私はあまり無表情というかポーカーフェイスが出来てる自信が無い。多分、今、鏡でも見ればヘドが出そうな暗い表情をしてるかもしれない。
そんな私を特に気にすることなく父親は満足? そうに頷いている。
「ん、今日は娘が朝食か」
「文句?」
「いや、喜びにうち震えている」
「止めてよ」
「ん、これが反抗期か……悲しいな」
はいはいと、私は父の戯れ言を流しフライパンに意識を戻す。
「あっ……」
どうやら、今日の朝食は父だけ少し? 焦げたベーコンエッグが決定された。
だからといって特に悲観することなく、残り三人分をいつでも作れるように準備をまた始めた。
どうも、朝食作りで女子力アップを計る私こと見宙。
え? そんなの女子なら出来て当たり前?
そんな差別だよ……女々ちゃんとか、出来そうで出来ない子だって居るんだからね? 勘違いしないでよ。
ちなみに私は出来る。忘れちゃいけないが私は前世の記憶持ち。まさかの前世の記憶がここで大活躍! だからな。浪人時代……凄いな自炊2年間って。
私は少し目尻に溜まる涙は拭き、唇を噛み締める。
まぁ、そんな無駄設定は置いといてっと。
朝の光景にしては父と娘だなんて私にしてみれば珍しい組み合わせである。会話も特に無い。
父はトーストと少し? 焦げたベーコンエッグを黙々と食べている。
さっきは嬉しいとか何とかふざけてたけど、こう黙られると距離感が掴めない。こんなに近く居るのに遠く離れて感じてしまう。
……いかんいかん、悲観的になるな私。
父親は娘を溺愛とまではいかないと思うが、好いていてくれている。それは分かりきっている。なら、心配することなんてない。
良し! ここまで前ふりしたからにはぶつかっていきます。
「お父さん、その……お願いがあるんだけど」
「ん、何だい? 一応、聞いてみるよ」
おっ、上目使いが多少は効いてくれたのかな。話を聞いてもらえるらしい。第一関門突発ですね。
「その……いい加減ね……」
「ほう」
ドキドキと心臓が鳴り響く。
私は果たして次の言葉が上手く言えるだろうか。いや、もう言おう、言ってしまえ、心の中で天使も悪魔も応援してくれている。
なら、いつ言うか!? 今でしょ!
「お父さん……」
「娘……」
ドキドキ……。
「いい加減、子離れしやがれ!」
「えーっ!?」
「えーっ!? じゃないよ、後、膝に乗せるの止めろよ。もう私は中 学 生! 膝のせは小学生まで」
「じゃあ、他は!? もしかして電話では『御父様~、もしくはパパりん~』と呼ぶことも禁止にするつもり!?」
「やるかー、馬鹿父ー!」
「うわ~、本当に娘がグレた~」
そのままメソメソと未だ拘束を緩めず、膝のせを続ける父に私は嘆息する。私の父はこんな父親だ。
じゃあ、母親は?
廊下に目を向けると、アラアラとお姉さま風に困ったわと言いたげにため息をつく姿。……私がため息をつきたいわ。
そんな残念な両親に私は脱力しながらも、力の限り父からの拘束を抜け出し、二階の私室で未だ眠るえる君を起こしに行く。
それがいつもの日課だ。
作者は料理出来立てを重視するタイプです。




