*21
「殺して……死なせて……」
暗い空間。浮かぶのは知らない人の顔。
目は閉じ、口も閉じ、青白くなった顔だけはコチラに向けられ、
知らない人の声が脳内に響く。
「生きるのはもう辛いよ……」
次に現れるのは、昔のえる君の顔。
目は閉じ、口も閉じ、幼き頃の顔はコチラに向けられ、
あの日のような声が脳内に響く。
「止めて……止めて……」
続々と同じように、目は閉じられ、口も閉じられ、青白い顔だけは私に向けられたのが現れる。
「止めて」「止めろ」「止めてよ」
「止めて」「止めろ」「止めてよ」
ドンドンと声が増え、私を囲む。
私はそれを見渡しながらも、冷静でいる。
冷静になろうとしている。
そして彼等に近付き手をかざす。
「「「止めてくれぇえええ!」」」
すると、全てが目を見開き、口を開け絶叫する。
その全ての拒絶は重なる。
そして何度も拒絶を。拒絶し。拒絶する。
その拒絶達は、私の身を引き裂き、私を苦しめる。景色は歪み、絶叫する彼等さえ苦しんでさえいるのに拒絶は止むことは無い。
私は彼等のように目を、口を閉じる。
そこで景色は色褪せ、この世界から私が居なくなる。ボロボロと私という存在が抜け落ちていく。
なのに、彼等は未だに闇の中へと囚われている。
最後に見たのは、える君ではない彼の笑顔だった。
――――――
「グゥッ! ッ!」
薄暗い部屋の中、目に映るのは真新しい天井でもあり、いつも見ている天井が見える。先程のは、すぐに夢だと気付く。
「ハァ……ハァ……」
またあの悪夢だ。そのせいか息も荒い。
まだ時間にしてみれば深夜。える君も、両親も寝ている時間帯に私は悪夢のせいで起きてしまったようだ。
あの日から何度目だろう。
かれこれ数十回、数百回、数え切れないくらいに見てる。……なのに、慣れない。私はあの日からずっと悪夢に囚われている。
たまに見ない日もあるが、悪夢の方が圧倒的に多く見てしまう。
今思えば、内容なんてものは許しを乞うもの、許しを願うもの、許しを……。そんなものばかりで、ハッキリとはもう思い出せない。
夢なんてそんなものだ。
そんな他愛のない内容なはずなのに、未だ慣れない。
何時になったら、痛みに鈍感になれるのだろう。
ふと目に力を入れる。
――【死を望まぬ庭園】
こうしてモヤモヤしている時は、いつも体を動かす。
動かして、動かして、ひたすら動かして……何かが変わっただろうか。この気持ちや、この呪いに。
いや、考えるのは止そう。
私の青の焔を腕へ、掌へ、そして形成する。
――大鎌。
刃先はゆらゆらと揺れ、歪ながらもあの日見た大鎌になる。身の丈には少し大きな大鎌。柄の部分は青黒く染まり、刃先のみが私の青。
そしてやがて目の前の何かを振り払うように薙ぐ。
踏み込み、薙ぐ。
更に力を込めて、薙ぐ。
体を使い、ひねり、踏み込み、薙ぐ。
「ッ! ァッ!」
怒声を叫びたくなる。
だが、それは出来ない。私の向かいの部屋にはえる君が、その下には両親が、家族を心配させたくない。
だからこそ、それだけは踏みとどまる。
「フゥ……フゥ……」
疲れたところで少しだけ冷静になろうと思考が移る。肩で息をしながらも目の力は緩めない。
アンデット・ガーデンは、私の身の置き場でもある。
だから、目の力は緩めない。
そして私の呪い。
これは自ら犯した“業”であり、受けなくてはいけない“罰”。だからこそ、この夢も、この能力も、この私でさえも、呪われている。
私の呪いは、私の能力。
その名の通り、その名の相応しい能力を持つ。
見える景色は白黒反転とした物。
見えるものは、燃える焔。
赤、青、黒、紫、紺――。
これらの焔の色には意味がある。
赤は正常。青は異常。黒は死。紫は改正。
この大鎌――紺は殺意。
そして真骨頂である○○○は、まだどうなるかは分からない。分かったところで、何が出来るだろう。
救われないし、救えない。
――――――
私が呪われ始めた頃。
あれは5年前――。
そう5年前、彼に出会い、彼にこう言われた。
「○○○は死を望む。だか、それをお前は生かす。
なんて残酷で、残忍で、不愉快かつ愉快なんだ。
君は良かれと思ってやったつもりかい?
でもね、自分からしたら君は――」
君は、に続く言葉を聞いた時、私は否定を叫んだ。叫んで、叫んで、何かが決壊して……。
次には懺悔を、ひたすら懺悔をした。
もう泣き、叫び、懺悔をし、顔はもうグチャグチャで、そんな顔で彼を見る。どんな感情を込めて見てるのかは私でも分からない。
そんな醜い私を彼は無感情に見てる。
そして平然と淡々と告げる。
「泣いても、叫んでも変わらないよ。
自分もそうだった……。
化け物は所詮化け物でしかない。
だって、君も化け物なのだろう」
――死 神 ちゃん。
――――――
今でも彼の言葉は耳に残り離れない。
私の呪いは離れない。
私は今でも夢を見る。
そんな異常な私は、寝れない夜にまた体を動かす。




