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死神は人の死を望まない  作者: ByBuyBy
死神は肯定
21/40

*21

 「殺して……死なせて……」



 暗い空間。浮かぶのは知らない人の顔。


 目は閉じ、口も閉じ、青白くなった顔だけはコチラに向けられ、

 知らない人の声が脳内に響く。



 「生きるのはもう辛いよ……」



 次に現れるのは、昔のえる君の顔。


 目は閉じ、口も閉じ、幼き頃の顔はコチラに向けられ、

 あの日のような声が脳内に響く。



 「止めて……止めて……」



 続々と同じように、目は閉じられ、口も閉じられ、青白い顔だけは私に向けられたのが現れる。



 「止めて」「止めろ」「止めてよ」


 「止めて」「止めろ」「止めてよ」



 ドンドンと声が増え、私を囲む。


 私はそれを見渡しながらも、冷静でいる。


 冷静になろうとしている。


 そして彼等に近付き手をかざす。



 「「「止めてくれぇえええ!」」」



 すると、全てが目を見開き、口を開け絶叫する。


 その全ての拒絶は重なる。


 そして何度も拒絶を。拒絶し。拒絶する。


 その拒絶達は、私の身を引き裂き、私を苦しめる。景色は歪み、絶叫する彼等さえ苦しんでさえいるのに拒絶は止むことは無い。


 私は彼等のように目を、口を閉じる。


 そこで景色は色褪せ、この世界から私が居なくなる。ボロボロと私という存在が抜け落ちていく。


 なのに、彼等は未だに闇の中へと囚われている。


 最後に見たのは、える君ではない彼の笑顔だった。




 ――――――




 「グゥッ! ッ!」



 薄暗い部屋の中、目に映るのは真新しい天井でもあり、いつも見ている天井が見える。先程のは、すぐに夢だと気付く。



 「ハァ……ハァ……」



 またあの悪夢だ。そのせいか息も荒い。


 まだ時間にしてみれば深夜。える君も、両親も寝ている時間帯に私は悪夢のせいで起きてしまったようだ。




 あの日から何度目だろう。


 かれこれ数十回、数百回、数え切れないくらいに見てる。……なのに、慣れない。私はあの日からずっと悪夢に囚われている。


 たまに見ない日もあるが、悪夢の方が圧倒的に多く見てしまう。


 今思えば、内容なんてものは許しを乞うもの、許しを願うもの、許しを……。そんなものばかりで、ハッキリとはもう思い出せない。


 夢なんてそんなものだ。


 そんな他愛のない内容なはずなのに、未だ慣れない。


 何時いつになったら、痛みに鈍感になれるのだろう。




 ふと目に力を入れる。


 ――【死を望まぬ庭園アンデット・ガーデン


 こうしてモヤモヤしている時は、いつも体を動かす。


 動かして、動かして、ひたすら動かして……何かが変わっただろうか。この気持ちや、この呪いに。


 いや、考えるのは止そう。



 私の青の焔を腕へ、掌へ、そして形成する。


 ――大鎌。


 刃先はゆらゆらと揺れ、歪ながらもあの日見た大鎌になる。身の丈には少し大きな大鎌。柄の部分は青黒く染まり、刃先のみが私の青。


 そしてやがて目の前の何かを振り払うように薙ぐ。


 踏み込み、薙ぐ。


 更に力を込めて、薙ぐ。


 体を使い、ひねり、踏み込み、薙ぐ。



 「ッ! ァッ!」



 怒声を叫びたくなる。


 だが、それは出来ない。私の向かいの部屋にはえる君が、その下には両親が、家族を心配させたくない。


 だからこそ、それだけは踏みとどまる。






 「フゥ……フゥ……」



 疲れたところで少しだけ冷静になろうと思考が移る。肩で息をしながらも目の力は緩めない。


 アンデット・ガーデンは、私の身の置き場でもある。


 だから、目の力は緩めない。



 そして私の呪い。


 これは自ら犯した“業”であり、受けなくてはいけない“罰”。だからこそ、この夢も、この能力も、この私でさえも、呪われている。


 私の呪いは、私の能力。


 その名の通り、その名の相応しい能力を持つ。



 見える景色は白黒反転とした物。


 見えるものは、燃える焔。


 赤、青、黒、紫、紺――。


 これらの焔の色には意味がある。


 赤は正常。青は異常。黒は死。紫は改正。


 この大鎌――紺は殺意。



 そして真骨頂である○○○は、まだどうなるかは分からない。分かったところで、何が出来るだろう。


 救われないし、救えない。




 ――――――




 私が呪われ始めた頃。


 あれは5年前――。


 そう5年前、彼に出会い、彼にこう言われた。



 「○○○は死を望む。だか、それをお前は生かす。

 なんて残酷で、残忍で、不愉快かつ愉快なんだ。

 君は良かれと思ってやったつもりかい?

 

 でもね、自分からしたら君は――」



 君は、に続く言葉を聞いた時、私は否定を叫んだ。叫んで、叫んで、何かが決壊して……。


 次には懺悔を、ひたすら懺悔をした。




 もう泣き、叫び、懺悔をし、顔はもうグチャグチャで、そんな顔で彼を見る。どんな感情を込めて見てるのかは私でも分からない。


 そんな醜い私を彼は無感情に見てる。


 そして平然と淡々と告げる。



 「泣いても、叫んでも変わらないよ。

 自分もそうだった……。

 化け物は所詮化け物でしかない。

 だって、君も化け物なのだろう」



 ――  ちゃん。




 ――――――




 今でも彼の言葉は耳に残り離れない。


 私の呪いは離れない。


 私は今でも夢を見る。



 そんな異常な私は、寝れない夜にまた体を動かす。





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