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死神は人の死を望まない  作者: ByBuyBy
死神は肯定
15/40

*15

 キンコンカンコーン♪



 「起立、礼、着席!」


 「うっし、じゃあHRホームルーム始めっか!」



  私の機械のような事務的号令と共に、える君や生徒たちは席から立ち上がり頭だけ下げたりと形だけでも礼して座り直す。

 この集団行動に意味はあるのかと思うかもしれないが、

 私は集団行動こそ意味があると思っている。

 まぁ、子供にそんなこと言おうが理解はしないだろうな。


 ちなみに、先生たちの計らいにより、私とえる君は席が隣同士。

 理由はえる君にもあり、私にもある。


 ラッキーと思いながら私はえる君に抱きつく。

 これでいつでも、える君成分が補充可能となる。

 フッ、家だけじゃ足らないからな。


 先生もたまには良いことをしてくれる。




 「この後1時限目から体育だから、全員速やかに着替えて体育館に集合する事だ、以上! 解散!」



 担任は無情にも朝から、しかも、1時限目というまだ寝起きの気ダルさの抜けきらない時間帯に体育だなんて……私の大 好 物です!


 勿論、他の子は気が進まないのか、ローテンション。それはえる君さえも含む。何でかなぁ、体動かすって素晴らしいのに。




 今は移動時間もとい休憩時間なのだが今だ教室ではガヤガヤと駄弁るクラスメート達。


 私達、女子組は基本は真面目なので時間を見て会話も一区切り、さて女子皆で着替え室に……、といったところで問題が発生してしまった。


 まさかの廊下で足止めを喰らうとは……。


 皆には先にいっててと伝え、私だけ廊下に残る。


 まぁ、男子らが絶賛着替え中な教室でないだけマシか……女々ちゃんが言ってた男子の花園なんて見たくもない。


 見たら、汚物は消毒だぁ! とか言うかもしれない。元ネタは知らないけど。




 それはさておき。


 こんな事が発生することは分かっていた。


 パターンAで行きましょう。



 「える君?」


 「イヤ」


 「いや、ね?」


 「…………」


 「…………」



 パターンA。中身はただ説得の一文字。


 しかも、どうやら交渉の余地が無さそうです。


 着替え室に行きたいのだが……行かせてくれないだろうか。いやはや、パターンAは失敗。パターンBは? とか聞かれても無いものは無い。


 とりあえず、目で離れるよう伝える。



 「む~……」



 しかし、える君は納得いかないとばかりに、頬を膨らませながら、私の制服の裾を掴んで離さない。


 正直、可愛くて眼福でもある私としては、どうしても引き剥がすことが出来ない、出来るわけがない。

 結構私にとってご褒美タイムも良いところである。

 ああ、える君に癒される私はもうえる君から離れられないよ。


 つまり、現実問題着替え室に行けない。


 さて、困った……どうしたものか。


 ここで脱ぐか?




 「おい、コラ。恵留える

 見宙ミソラが困ってるだろ離してやれ」



 やや困っていると、男子が助け船? を出してくれる。

 ……って何だ、どなたかと思えば、

 【星宮ほしみや そう】君、君ではないですか。


 何だかんだ言いながらも世話焼きなツンデレ蒼君ではないですか。チッ、もう少し遅れて出てこいよ。馬鹿。



 「何か失礼なことを考えてないか?」


 「イイエ、ゼンゼン」



 おっと、顔に出ていましたか。油断してました。

 馬鹿蒼。馬鹿蒼。馬鹿あ……って睨まないで!?

 何で分かるのかな。

 とりあえず笑って誤魔化す。


 じゃあ次こそは顔に出さずに人物紹介を。


 蒼君の見た目パラメーターは、身長170センチ程度、える君と同じ細身で黒髪の出来るイケメン。

 ……きっとリア充だ。うわぁ、リア充だ。爆発しろ。

 私の一番苦手なタイプめ、刺されて死んでしまえ。



 「そうは、ミソラんと俺を引き離すつもりか」



 おっと、まさかのここで俺々モードのえる君だ~低い声~ふぅ~う! 痺れるぜぇ~!

 声変わりはもう終わってるのは知ってるけど、

 普段はこの低音ボイスは聞けないから貴重な時間です。

 でも普段の可愛らしい子供っぽいボイスも好きだ。

 私は結局な話、える君なら何だってアリだ。



 でもね、える君なぜに私を腕に抱くの?


 あれあれ~? どうしてこうなったんだろう?


 とりあえずちょっと落ち着こう? 私も含めて。 



 身長差から自然発生してしまう上目使いで、える君を見るといつも以上のキラキラ笑顔で微笑んでくる。



 もう、我が生涯に一片の悔い無し……。



 「何故そうなる。見宙ミソラが困っている。ただそれだけの事だ。理解しろ」


 「蒼……俺は見宙ミソラと「それとこれとは別だ。今のお前の行動は目に余る。見宙が迷惑していることに気付け、馬鹿が」」



 イヤ、別にそこまで嫌って訳じゃ、むしろ役得?



 「えっ」と、彼は蒼の言葉に思いの外、動揺し、頭を抑え苦しむ。明らかにこの時点で異常な光景なのだが、黙って待つ。



 ――耐えて……自分の力で……。



 私は、える君に、望む。



 が、やがて頭を抑えていたのを止め彼の体に力が抜ける。

 全身から崩れ落ち、廊下で力なく倒れる。

 瞳からは魂は無く、虚ろな表情が伺える。


 どうやらまだ私の望みは、叶いそうに無いようだ。


 私はゆっくり彼の腕から離れ、異常な彼の容態を見て、すぐにアレを使うことにした。


 私の固有能力チートであり、呪われた力でもある。



 【死を望まぬ庭園アンデット・ガーデン】を。





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