*10(閑話)
閑話です。読み飛ばしても、差して問題はありません。
多少読者の思い描く人物像のキャラブレがあるなも知れません。
それでも良いと思うかたは、お読みください。
また、この話は序盤から分かる通り、皆のアイドル(一応、男の子なんだけど(苦笑い))える君視点です。
どうも、三歳児らしく出来ない三歳児こと恵留です。
一歳の頃から単語、単語は言えるようになり、三歳になって、流暢に喋りだした頃から親からも、まさかの中身が……と言われショックを隠せません。
でも、もう認めましょう。
僕は最近のアニメで見た。『見た目は子供。精神は大人』の某探偵少年っぽい台詞が当てはめられる三歳児です。
そんな喋ると残念な事になる僕と同じような子と幼稚園で仲良くなったりもした。しかもまさかの御近所さん。
最初は人見知りな性格で逃げてしまったが、会う度に文字通り拘束されたので、その内抵抗を諦めて話すようになったら、何だかんだで仲良くなった。
未だに拘束されることもあるが……癖みたいなものなのだろうか? よく分からない。最近では、僕からもやってる。
そして、8月に川で僕は今日。僕の家族と仲良しな彼女の家族と一緒に川でキャンプです。楽しみで楽しみで、行く前からもうはしゃぎ疲れてきました。
……とりあえず、車の中で寝よう。
彼女の手を引かれるまま、フラフラと彼女の家族と同じ車に乗り、後ろの席で寝てる僕に彼女は何かしている。
でも、とりあえずは気にしない。
彼女はフワフワとした印象とは相まって他の子よりも頭が良いから、そこまで変なことはされないだろう。………たぶん。
起きたときには、僕の手をギュッて握りしめた状態で、無防備にも口から少しよだれを垂らしながら、彼女は隣で寝ていた。
川がある場所まで、もうすぐらしいから、気持ち良さそうに寝てるのは悪いけど、とりあえず起こすことにした。
ううんと背伸びをし、欠伸を漏らす彼女。
そんな彼女こと見宙が僕は好き。いや、大好き。
そんな気持ちを抱いてるが彼女は気付いているだろうか? いや、気付いてないっぽい……大人になる頃には直接的な言葉でプロポーズしよう。
それまで待っててくれるかな……。
そんな彼女の作ったサンドイッチを食べてみた。
形は多少不格好ではあるが、味は問題ない。問題なのは僕の胃の状態だ。……せめて、ある程度食べてから言わないでほしかった。
とりあえず、努力と根性という僕には似合わないものを総動員して、完食しきって見せた。
大分無理をしたせいか、お腹はポンポンだ。ちょっと苦しい。いや、ちょっとというのも怪しい。
そんな僕を見ていた彼女は「だから、無理しないでって言ったのに」と笑いながら苦言を呈してくる。
一応、僕は好きな子のためならってヤツなんだけど……分からないかなぁ~。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そんな彼女と川で遊んでいた。
彼女はよく笑っている。でも、時々陰りが見える。一体何を考えているのか……僕には想像つかない。
そして、日が暮れかかってきて、僕の両親が少し遠くから手を降って「帰るから、戻っておいでぇ~」と口に手をあて大声を出している。
そこまで、遠い距離でもないし、静かな川がある山の中で果たして、その大声には意味があったのだろうか。
ちょっと恥ずかしい気持ちに両親から目を反らし、彼女を見ると、僕は驚愕した。
彼女は真っ青な……という表現が似合うくらい、顔が尋常ではなかった。異変……彼女は何を見たのだろう。
不安を和らげようと抱き締めていると、彼女の震えは徐々に止まり、少し落ち着いてきてから離れた。でも、顔はまだ優れない。
僕は僕の両親の居た方を見る。
彼女の両親とはイケメンタイプが変わっていて、どこにでもいそうな平凡な両親。
その姿に、今までと何ら変わりはなく、その先にも何か見えると言うことはなかった。……この時の彼女はきっとその何かが見えていたのかもしれない。推測に過ぎないが。
彼女は僕の両親に何か頼んでる。
そして、彼女はホッとした顔をやっと見せるようになった。僕としても喜ばしい。
だけど――。
帰りに両親だけ乗っていた車にトラックがぶつかってきた。
そして、両親の車はズタズタになり、道路の脇の方で横転した状態になっている。トラックは、更に何かとぶつかって止まっている。
突然の事で頭は混乱した。彼女の両親は急いで何か行動を起こしている。
僕に何か出来ることは? そんなのあるの? 何で動かないの? 色々な事が頭を過り、目の前の事でさえ分からなくなった。
そして、僕は何も出来ない内に両親は救急車により病院に搬送された。
両親が目の前で引かれて死にそうだってのに、僕は病院につくまで何だか信じられなくて混乱し続けていた。
もうこの頃には周りの声なんかは全く聞こえなくなってきた。
そして、病院の手術が終わり、両親は息を引き取った。
ベットに横たわる僕の両親は目を閉じており、触るとまだ暖かみを感じる。でも、体は固い。
これが――死。
この意味を理解する前に、自身の世界に閉じ籠った。でも、こんなのは逃避でしかなく、その後に理解はしてしまう。
僕は、本当に三歳児らしくできない。
いつから僕は……。
僕は僕だ。でも、君は誰だ?
君を僕は知らない。
ねぇ、目に映る君は誰?
「える君」
「…………」
暗く何もかもが見えなくなった空間に彼女の声は聞こえてくる。
彼女の幻聴だとしても、もう放っておいてよ……消えてしまいたいんだ… …。 もう生きていくには、辛すぎるよ。
僕の切実な望みは変わることは無い。だから、僕は僕の閉じ籠る世界を維持し続ける。
でも、次に目を覚ましたら、彼女にこう言おう。
心配かけてごめんね……と。