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91.お馬鹿団は返り討ちです

◇◇◇◇


只今しぃちゃんと森の中をお散歩中。

てくてく歩きながら、私の肩に前足を引っ掛けるようにして乗っているしぃちゃんと一緒に、お兄ちゃんに渡された雑誌を歩きながらチェック中です。



「なになに?『ベスト5:最北の大陸にある『魔王城』。魔王城とは思えないほどメルヘンチックな外観と、きちんと整備された庭、咲き乱れる花々に、魔王ってどんな人だっけ?と思いたくなるような光景です』……そういや、幼女がいつ来ても喜ぶようにしてるって、言ってたっけ?あのロリコン魔王」



雑誌に載っている魔王城を見れば、確かに可愛いお庭に綺麗な白いお城。

ぶっちゃけ夢の国のお城にそっくりです。

この魔王城、外から見る前に中から潰しちゃったよね……また行かないといけないのかなぁ?

もう直し終わってるかもしれないけど。



「わぅ?わうわう!」



ん?肩に乗ってるしぃちゃんが、身を乗り出してページの端っこを前足で叩いている。

その箇所をみれば、何やら手書きの文字。



「えーと、なになにー?『もう行ったのは知っておるから、ロリコンの城は飛ばしてよいぞ。byお兄ちゃん』……じゃあ、残り4つか」



お兄ちゃんに再開する前に行ってきたところだけど、なんでお兄ちゃんが魔王城に行ったのを知っているのかはスルーで。

いちいち気にしていたら身が持ちません。



「こんな場所に人!?」

「おい、誰だてめぇ!」

「んーと、次は……『ベスト4:ギルフォード帝国の帝都近くにある湖『ルクレィチャ湖』。透き通った水面と周囲の風景がベストマッチ。結界が張っており王族しか近づけない湖ですが、ぜひ見つからないようにこっそりピクニックすることをお勧めします。※魚釣りは禁止されています』」



えー……王族しか近づけないなら、行くのは無理じゃないの?

まぁ人間が張った結界なら、神様たちにとって問題ないってことなのかもしれないけど。

というか、この雑誌が色々ツッコミどころ満載なんですけど。

さすがに魚釣りはしないもん。

と思ったところで、目の前に人が立って通せんぼしている気配。

……あれ?



「この餓鬼、こんなところで何をしてやがる!?」



……うわーい。

雑誌読むのに集中してて気づかなかったけど、盗賊っぽい連中に囲まれてたや。

一つのことに集中しちゃうと周りが疎かになるのは悪い癖ってカインにもよく言われるから、直さなきゃだね。

またカインに怒られるのは嫌だし。

等々、考え込んでいたら目の前にいた盗賊っぽいおにーさんの一人が額に青筋を立てて指さしてきた。



「人の話聞いてんのか、このちんくしゃ娘!」

「はい、自殺志願者一名退場」

「わうぅ~♪」



条件反射で言ってきた人を手加減忘れて殴っちゃったけど、生きてるから問題なし。

ちんくしゃとか、失礼だよね?

『絶壁』とか『まな板』並みに失礼だよね?

思いっきり殴ったから木に激突しちゃったけど、しょうがないよね?

しぃちゃんも『ざまぁ~♪』って感じで嬉しそうだし。



「な、殴っただけで吹っ飛んだぞ!?」

「こいつ、もしかして盗賊狩りか!?」



一人殴り飛ばされたことに焦ったのか、残りの3人が後ずさる。

だけどね、言っていい?



「私、単純に歩き読みしていただけだし。雑誌読みながら盗賊団の中に入っていく盗賊狩りなんていないと思うよ?単純に私が歩いている先に、おにーさん達がいただけだから」



私にしてみれば、丁寧に教えてあげたほうだと思う。

ちょっとお馬鹿っぽいおにーさん達だったから、理解できないかと思ってさ。

だけど、一気に短剣を取り出してきたおにーさん達。



「くそ!この間襲った村の連中が依頼したんだ!」

「いや、きっとちょっと前の貴族の連中がよこしたんだ!」

「さっき拾った餓鬼の関係者か!?」



うん、とりあえずは人の話を聞こうか。

私も人のこと言えたもんじゃないと思うけど、せっかく丁寧に説明してあげたんだから、聞いてよ。

ついでに自分たちの悪事を次々とばらしたよね?



「うん……馬鹿だね」

「わうわう」


「「「ぐさっ!」」」



私としぃちゃんの憐れみを含んだ正直な感想は、お馬鹿団の心に深く突き刺さったのであった。

いやいや、ショック受けるほど、自分たちの馬鹿さ加減に気づいていないの?

え、むしろそれでよく今まで生きてこれたね。

大丈夫?

思わず憐れみしか覚えないほどのお馬鹿さん達だ。



「しまった!こいつ、盗賊狩りじゃないみたいだぞ!」

「いや、私は最初からそう言ってたよね?」

「だけど、俺達の悪事が知られたならしょうがねぇ。捕まえて売り飛ばしてやる!」

「……」



この人たち、さっき私がお仲間を殴り飛ばしたのを忘れたのかな?



「あ、馬鹿だからありえそう」

「わ~う」

「また馬鹿って言った!馬鹿って言った方が馬鹿だって、ばぁちゃんが言ってたぞ!」

「おにーさんは今三回言ったねー」

「あ!?俺って馬鹿!?」

「「うん、馬鹿」」



真ん中にいたおにーさんの発言に、両隣にいたおにーさん方が頷く。

あら、みなさん一致の意見だったのね。

まぁ馬鹿なのは確実だけど。



「お前らひどい!俺、お頭だぞ!?」



むしろなんでおにーさんをお頭に選んだんだ、他の人たちは。



「お頭は馬鹿なんだから、黙ってろ!とりあえず、お前には捕まってもらうぞ」

「お頭は、魔法が使えるんだ!大人しくしといた方が怪我しねぇぞ!」



手下たちから馬鹿発言されたお頭さんの襟首を掴んで後ろに引っ張りながら、残りのおにーさん達が脅しのように言ってくるんだけども。

……何で魔法使えるのをそんな自慢気に言ってるの?

みんな、使えるもんじゃないの?

脅すなら、上級が使えるんだぞって感じのが分かりやすいと思うんだけどなー。

まぁ、魔法を使ってくるなら先に潰しといたほうが無難かな。



「とりあえずは『スプラッシュ』」



お馬鹿さんたちが熱くなった所で馬鹿という事実は変えられないからね。

ちょっと頭を冷やすといいよ。



「「「んなっ!?」」」



私の魔力で集められた空気中の水分が、勢いよくお馬鹿団に降り注ぐ。

そしてその水圧に潰されたお馬鹿団。

その中で真ん中にいたお頭さんが、なぜか目をキラキラさせながら水圧に抗いながら顔を上げた。



「ウォーターボールじゃない水魔法だ!すっげー!!俺ウォーターボールしか使えない!」



……手加減してるけども、まだ余裕そうだねぇ。

馬鹿だからか。

まだ動きそうだし、土に埋めとこうかな。



「てなわけで、おっとしあな~」

「「「うげっ!!?」」」



私の得意技の『落とし穴』。

単純に土魔法で穴を作っただけのものだけど、結構落とすのは好きだから重宝してます。

ちなみに深さは2mくらいだから、時間はかかるだろうけど3人もいれば出れないこともない高さ。

そんな穴の手前でしゃがみこんで、お馬鹿団を見下ろす私。

わぁ、私の方が悪者っぽい。



「はい、反省しましたかー?」

「反省したから出してくれー!」

「穴深いー!」

「怖いー!」



……この人たち、さっきまでは単純に悪ぶってただけかってくらい涙目なんですけど。

実は馬鹿だから、そんなに実害とかないんじゃない?



「でも2mの穴に3人いて、もう一人はそこで気絶しているし……助けなくても大丈夫だね」


「「「鬼ー!」」」



何か叫んでるけど知りません。

お馬鹿な頭を使って、頑張って自力で出てくださいな。

愛良が離れた後のお馬鹿団一行は……


「どうやって出ればいいんだ?」

「お頭、大変だ!!ジャンプしても届かねぇ!」

「……あ、そうだ!壁の土を削って、底を上げていったらいいんだ!」

「「さすがお頭!」」



そうして、目の前にある壁を削って自分たちの足元に土を落としていくお馬鹿団。

目の前にある壁を削っていたがゆえに、底を上げた所で穴の淵に手が届かなくなるという悪循環を生み出していることには気づかず。

……お馬鹿団は、やっぱりお馬鹿だった。

仲間と協力して一人でも外に出そうということに気が付かないお馬鹿団。

……お馬鹿団がいつ穴の外に出れるのかは、愛良にすら分からない。

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