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87.召喚されてみました

◇◇◇◇


気絶している龍雅+α(お城のお偉いさん方)の皆さんをお城の中庭まで避難してきた私ですが……カイン、大丈夫かな?

ちょっと様子見てこようかなぁ?

まさかお兄ちゃんたちがこの世界にいると思ってなかったからテンパっちゃったけど、そろそろ私の頭も冷えたし。

そう考えたのと同時に聞こえてきた、カインの絶叫。



『愛良ぁああああ!!!見捨てないでくれぇええええ!!』



ありゃ……カインが本気で叫んでる。

しかも魔力を込めた全力だ。

あ、私の足元に魔法陣が出て光ってるってことは、使い魔として召喚されるっぽい。

……しょうがないなー。



「しぃちゃん。カインが呼んでるから、ちょっと先に戻るねー」

「がう?」

「しぃちゃんは、とりあえずこの人たちを屋根のある場所まで避難させてから戻っておいでね」

「がーう!」



元気にお返事をして、鼻づらで気絶中のお偉いさん方を転がしていくしぃちゃん。

とりあえず、気絶している人たちはしぃちゃんに任せて、と。

私は魔法陣の魔力に従って、召喚されるとしましょうか。



「呼ばれて飛び出て愛良ちゃん」



どんなノリで召喚されたらいいのか分からないから、適当にコス王に前教えてもらった台詞を言ってみました。

棒読みだけど。

そして目の前には大号泣中のカインさんが、ガタガタ震えていました。

私の台詞にツッコむ気力もなさそうです。



「愛良ぁああ!!頼むから、見捨てないでくれっ!!」

「はいはい。見捨てないから」

「ぜ、絶対だぞっ!!」



部屋に戻った途端、カインが大号泣しながら抱きついてきたよ。

しかも、かなり震えている。

ちなみに、お兄ちゃんは軽く舌打ちしているだけ。

部屋に転移してきた時に、お兄ちゃんの周りに黒っぽいのが見えたんだけど気のせいだったのかな?

まぁ、今は完全にクール面がはがれたカインを落ち着かせることにしましょうか。



「うん、お兄ちゃんが怖かったんだね。よしよし。泣かない泣かない」

「しょ……触手が……うねうねが……鬼畜太子が……奴を召喚……」



カインは予想以上に重症です。

重症過ぎて、お兄ちゃんが何をしようとしたのか意味不明。

うん、今回はお兄ちゃんが悪いから、5分経っても投げずに我慢しよう。

憐れすぎる。



「お兄ちゃん。カインがここまで壊れるのってあんまり見ないんだけど、何したの?」



もうね、あのアベータ・カーズさんと試合している時並の取り乱しっぷりですよ?

もしかすると、それ以上ひどいかもしれない。

本気で何しようとしたの、お兄ちゃん。

思わずジト目になっちゃう私の前で、大兄ちゃんは何てことはないという様子で肩をすくめた。



「新世界の住人にしてやろうとしただけだ」

「男色趣味な同級生と試合した時でも、ここまでひどくなかったよ?」



あ、けどお兄ちゃんの鬼畜っぷりがプラスされたら、すごいことになってそうだね。

もうカインが必死に抱きついている……というか、私にしがみ付いているもん。



「というよりも、貴様。我の目の前で愛良に抱きつくとは、先ほどの続きをしてほしいということか?」

「ひぃっ!?」



……お兄ちゃんの額に青筋立ってる。

カインがプルプル震えたまま、さらに強い力で抱きついてきたよ。

しょうがないなぁ……。



「お兄ちゃん、私気にしてないから放っておいていいよ」

「お前が気にしなくても、お兄ちゃんは気にするのだ」

「……お兄ちゃん、心狭い」

「ぬっ!?」



何で他のことは気まぐれなのに、私が関わると心狭くなるかなぁ……。

シスコン過ぎます。

私もお兄ちゃん達大好きだから、ブラコン疑惑があるけど。



「後始末が面倒になることはしないでよね。カインが壊れすぎちゃったら、大変になるのは私なんだから」

「うぐ……」

「お兄ちゃんが私のことを大事に思ってくれてるのは嬉しいけど、あんまりカインを苛めすぎると嫌いになるよ?カインを弄っていいのは私としぃちゃんとマスターだけなんだから」


「「ぐはっ!?」」



……ありゃ?

お兄ちゃんとカインが吐血した。

なにゆえ?

というか、カインさんや。

君は私に抱きついているということを忘れているのかね?

吐血したおかげで、私の胸元が血だらけじゃないか。

やだなー。

今日は白いロンTだったから目立つし。



「これって、私が怪我したみたいにみえるよね」



血がこれ以上広がらないようにカインの口をタオルで押さえながら、襟元をパタパタ。

うー……さすがにちょっとベタベタして気持ち悪いー……。



「わ~う~……?」



気持ち悪さに耐えている所で、開いたままになっていた扉から戻ってきたのは子犬バージョンに戻ったしぃちゃん。

尻尾をパタパタ振って走ってきたしぃちゃんですが、途中で止まって首を傾げている。

その視線は私の血だらけな胸元。



「わう?わぅ?くぅん?……うう?」


(怪我なの?怪我しちゃったの?どうしてなの?……お前らなの?)



あらー……しぃちゃんの心の声が聞こえる。

しぃちゃんのつぶらな赤い目が、ちょっとだけ半眼になってカインとお兄ちゃんをロックオン。

わー大変。



「しぃちゃん。今回はカインがちょっと可哀相過ぎるから、大目に見てあげてね」

「わぅ~……わう」



しぃちゃん、超不満そう。

それでもちゃんと頷いてくれるから、よい子なのです。



「愛良ぁ!」



うわ……カインが感激してさらに強く抱きついてきたし。

前言撤回したいなぁ……。

後から抱きついてきていると、背負い投げがしたくなるんだよなぁ……。

やったら、ダメかなぁ……?



「……愛良よ。あやつが我を睨んでおるのはスルーか?」

「お兄ちゃんはちょっと反省したらいいと思う。てなわけで、しぃちゃん。ちょっとお兄ちゃんにお仕置きしてきて」

「がうっ!」



しぃちゃんが大きくなって殺る気満々になりました。

しぃちゃん、ファイトー!

ちょっとだけ時間を遡った、とある日の愛良とコス王+αの会話。


愛良「召喚されて出てくるときは、何か言った方がいいの?」

コス「お嬢!そういう時は、『呼ばれて飛び出て愛良ちゃん!』って言うんだぞ!」

愛良「え、そうなの?」

コス「ついでに、このコスプ……衣装も着ないといけないんだ!」ピンクなアラビアン衣装

愛良「……コス王も、召喚されるときはその服を着るんだー……」ドン引き

コス「あれ、ちょっとお嬢?何でそんなにおにーさんから距離とってんの!?」

愛良「気のせいです。私はもとから距離を取ってお話をしていました」

コス「おにーさんの目が悪くなったのかな?」

愛良「そうです。コス王は中身中年おっさんだから、その影響が身体的にも出てきたんです」

コス「マジで!?ちょっと天界の眼科に行ってくる!」

愛良「どうぞどうぞ。行ってらっしゃい」

コス「衣装は渡しておくから、ちゃんと着るんだぞ!じゃ、行ってきます!」

愛良「……衣装、結局押し付けられた」

時神「お邪魔しまーす。遊びに来たよー。そんでついでに言っておくけど、召喚されるときにがっつり着替える時間なんてないから、そのままで大丈夫だよー」

愛良「あ、時くん。いらっしゃい。そんでもって、この衣装は別に着なくていいんだよね?」

時神「うん、問題なしー。あ、だけど決め台詞はちゃんと言ってねー」

愛良「……言わなきゃいけないもんなんだ……」

時神(お嬢ちゃん素直ー♪ちゃんと天界からお嬢ちゃんが言う時は見ておこー♪)



愛良ちゃんはア○ビちゃんを見たことがなかったため、コス王と時神に遊ばれているのに気付かず実行しましたとさ。

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