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86.長男のお仕置きタイム

とりあえず一言。


カイン……ファイト☆

◇◇◇◇


俺が鬱帝になっている間に、愛良が城に連れて行かれた(むしろ着いて行った?)と聞いて焦った。

王侯貴族が何を目的にしているのかは、分かっているからな。

どうせ、愛良も勇者に仕立てあげてギルド『純白の騎士』に取り込もうとしているに違いない。

そんなことをしようとするなら、愛良が何をするか分かったもんじゃないというのに。

その場のノリだけで、魔王城みたいに城を破壊する可能性だってあるんだ。

……想像しただけでも恐ろしい。

俺が発生させたキノコの後始末はコス王に押し付けて、急いで城に行かなければ。

……なのに、迎えに行こうと準備をしていたら城に逆召喚された。


「……は?」


謁見の間なのは確かだが、ヘタレ野郎や王たちが地面に倒れて気絶している?

また愛良が何かしたのか?

いや、それよりも愛良の隣にいるのは、王や家族に対してすら容赦ないことで有名な鬼畜太子じゃないのか?

闇帝であるこの人と顔見知りではあるが、非常に苦手なんだが。


「……愛良?」

「なぁに?」

「隣にいるのは、鬼畜太子か?」


あ、鬼畜太子の片眉が上がった。

そして俺が登場するまで浮かんでいた笑みが、完全に消え去り、眉間の皺が強調される。

思わず、一般的な通り名を口にしてしまった……。


「貴様……いい度胸だな」


やばい。

鬼畜太子の無表情さが恐怖を煽る。

俺……今日で死ぬかも。


「貴様、我らの可愛い愛良に手を出しただけでなく、余計な口までついているようだな?」


無表情のまま、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる鬼畜太子。

ちょっ、頼むから聞いてくれ!

愛良に手なんて出してない!

うっかり契約してしまっただけで!


「全く……貴様もめでたく不死となったのであれば、一度死んでみるべきか?」

「……」


ギロッと睨んでくる鬼畜太子。

あまりの眼光の鋭さに、無意識に後ずさってしまった……。

この人、本当に俺より弱い闇帝か?

威圧感が半端ないんだが!?

というか、何でおれが不死だと知っている!?


「あのね、カイン。この人、私のお兄ちゃんが転生した姿なの」

「はぁっ!?愛良の兄貴!?」

「うん、そう。中身は転生前のままの鬼畜っぷりだから、死なないように頑張って?」

「愛良の性格に多大な影響を与えた兄貴が何でこの世界にいるんだよ!?」


俺のもっともな質問に対して、愛良はニッコリと笑顔を浮かべて天井を指さした。

いや、違う。

愛良が言いたいのは愛良の父親がいる天のことだろう。


「私、神様の子どもー。もちろん、お兄ちゃんたちもねー」

「あ、納得」

「しかも、私よりも生まれたの先だから、すっごい強いよ?知ってることも多いし」

「それって、俺マジで死ぬんじゃないか?」

「……」


俺のもっともな疑問に、愛良は憎たらしくなるほど可愛く首を傾げてにっこり笑った。

やめろ。

表情だけで肯定しないでくれ。

そんな俺の願い空しく、愛良は抱き上げていたシリウスを抱え直した。


「しぃちゃーん、気絶している人たちを安全な所に移動させようかー」

「わうー」


愛良の言葉に、こくこくと頷くシリウス。

そんなシリウスはすぐさま巨大化すると、その大きな足で気絶している兵士や大臣、国王等を一か所にまとめ上げた。

やめろ。

俺も対して敬意は抱いていないにしても、一国の国王を足蹴にするな。

本当に文字通りの足蹴だから、それ。


「がうがう!」

「しぃちゃん、ありがとー。じゃ、カイン。頑張ってね!」


俺の方に向かって手を振り、シリウスや気絶組とまとめて転移して消えた愛良。

逃げるがのごとく。

愛良が逃げた!?

あの愛良が!

この人は、愛良が逃げるほど危険人物なのか!?


「ほほう?貴様は先ほどから好き勝手に考えておるなぁ」

「勝手に俺の心を読まないでくれ!!」


何で俺の思考は全部読まれてんだよ!?

同じことができる愛良でも、普段は勝手に読んだりしないんだからな!?

あんたにとって、俺のプライバシーはゼロか!?


「では、継続して読むからな」

「断固拒否する!」


断りを入れたらいいってもんじゃないだろ!?

なに飄々として言ってきているんだ!?

本気で頼むから止めてください!


「はっ。貴様ごときが我を拒否することなどできん。諦めるがいい」

「結局俺の意見はマル無視じゃないか!」


俺の切実な願いは、鼻で笑った鬼畜太子に一笑された。

おかしい。

俺は一般的な願いを思っただけだというのに!

一体この人は何をしたいんだ!?


「ふむ、何をか?今から貴様をボコろうかと考えておるぞ。可愛い妹に手を出した男には、制裁が必要であろう?」


何、当然なことを聞いてんの、お前。


そう言わんばかりに腕を組む鬼畜太子。

その目つきは、非常に冷やかでだ。


「て……手は出していない!!」


頼むから、助けてくれぇええ!!

俺の心からの叫びは、しかし目の前の鬼畜太子には通じるわけがなく。

鬼畜太子は手をパンパンと叩いて口を開いた。


「さて。お仕置きタイムといくか」

「いやだぁああ!!!」


何なんだ!?

鬼畜太子の影から、うねうねと動く黒い触手が出てきたぞ!?

きしょい!


「では、まずは触手プレイを楽しんでみるか?」

「ひっ!?」


無表情のまま言い切る鬼畜太子。

触手プレイって何だ!?

今から何をするつもりだ!?


「これぐらいで怯んでいてどうする?お前を無駄に殺したら愛良が悲しむ可能性が0.036%ほどあるゆえ、肉体的には傷をつけない方法を選んだというのに」

「に、肉体的には……?」




「最終的には、愛良に手を出さないようにお前の××××(自主規制)に○○○(自主規s…略)をブチ込んで、そっち方面にしか○○○(自sy…略)が勃たないようにしてやるつもりだ」




「ひっ!?」


今、絶対に表だって口にできないような言葉の数々が一気に出てきた!

やばい、死ぬより辛い。

そして鬼畜太子は、そっちの趣味だったのか!?


「阿呆なことをぬかすな。ブチ込むのは我ではなく、男色趣味な貴様の同級生だ」


男色趣味な、俺の同級生……。

思い起こすは、いい笑顔を浮かべながら迫りくる青ツナギな変態。


「………じょ、冗談……だよな……?」

「我は冗談は言わん」


鬼畜太子の目が本気だ。

触手がうねりながら近づいてくる……。


「か、か……『神の領域』!!」


愛良と契約したことにより発動できるようになった光属性の神級結界に、ありったけの魔力を込める。

それなのに。


「ふむ。神である我には意味がないな」


この鬼畜太子は、あっさりと結界を消し飛ばした。

……デコピンで。


「むちゃくちゃじゃないか!?」

「神とはそんなものだ」


納得できてしまう俺が悲しい!

いや、それよりも!

結界がなくなったことで、触手が俺に迫ってくる……。

近づきたくない俺に出来ることは、ただ一つ。



「愛良ぁああああ!!!見捨てないでくれぇええええ!!」



全力で愛良に助けを求めることだけだった……。

カインさん、恐怖のあまりプライド崩壊して錯乱中。

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