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85.一人目登場!

◇◇◇◇


龍雅まで項垂れちゃって、どうしたのかしらー?

もう本当のことをバンバン言いまくったおかげで心を折られたくない王様たちは妙にビクビクしてるし、まともに会話ができる人来ないかなー。

私の足元でウロウロしていたしぃちゃんも、退屈になってきたのかお座りして私を見上げているからね?


「わううー?」

「みーんな黙っちゃって暇になっちゃったねー?しぃちゃん、お散歩しながら帰る?」

「わう!」


暇でしょうがないからか、しぃちゃんが尻尾をブンブン振ってお返事してくれた。

お散歩大好きっ子ですからねー。

よし、もう帰っちゃいましょう!

飛びついてきたしぃちゃんを抱っこして、扉に向かおうと背を向けたのとほぼ同時に、謁見の間の扉が重たそうな音を立ててゆっくりと開いた。


「……楽しそうだな。我も混ぜてもらおうか」


そう言いながら入ってきたのは、金髪碧眼の20代前半のイケメンおにーさん。

無表情だけど眉間に皺が寄ってて、ちょっと怒っているのかと思う。

……この世界はイケメン率高いな。

髪の毛と目の色以外、お兄ちゃんにそっくりだし。

お父さんの趣味?

……子ども大好きお父さんなら、自分が管理している世界を自分の趣味にあったように創ってそうでありえるんですが。


「んーと……どちらさま?」

「……分からんか?」


うわ、無表情なのにすんごい切なそうな声。

金髪碧眼……そういや、王様とかあの我儘王女もそんな色だね。


「王子様?」

「確かにこの国の王太子の立場にいるな。だが、その前にも会っておるぞ」


んー?

すんごく強いのは分かるんだけど、強すぎてよく分からない。

もしかしてカインより強いんじゃないのかな?


「うーん……?」

「分からんのか……ふむ……」


王子さんは残念そうにしながら一つ頷くと、ほぼ一瞬で龍雅の後ろに回って首筋に手刀を当てた。

あっという間の出来事に、龍雅の意識はあっさりブラックアウト。

わぁお……動きが全然見えませんでした。

あれ、私って神族で強いんだよね?

絶対この人の方が強いよ!


「よし、これで構わんな。今代の闇帝、フレイル・フィレンチェだ」

「はい……いや、気絶させるの、この子だけでよかったの?」


「勝手に推測のみで動き回って異世界召喚をしたあげく、王女が気に入ったという理由だけで、この世界で生き残るための術を身に付けさせることなく学園に放り込んだ自分勝手な者達など、どうでもよい。責任放棄もいいところだ。そして巻き込んだ者に対する補償も何もなく、その実力をはかる前から勇者(仮)と同様にこの世界のことを押し付けるなど言語道断。為政者としてあるまじき阿呆共だ。むしろ貴様らはさっさとその座から降りてしまえ」


グシャバタン!


「わー……」


きゃーきゃー大変ですー。

私以上に辛辣な王太子さんのお言葉に、王様大臣さん兵士さん方が完全に心折られて倒れてしまいましたよー。

ついでに口から白い泡吹いて目をむいていますよー?

この無表情でちょびっと不機嫌そうな迫力満点なイケメンさんに言われたら、心折れますね。

ストレスで胃がやばいですよね。

もう本当に見た目やら話し方やらお兄ちゃんそっくり。

というか、お兄ちゃん以外にしか思えない。

いや、でもまさかなぁ……。


「ふむ……検討が付いたのなら言ってみるがいい」


王太子さんがついさっきこの謁見の場にいるほぼ全員の心を折って気絶させたとは思えないほど、普通に話しかけてきた。

周りを見回して、この場にいる十数名が全員気を失っていることを確認。

よし、全員意識旅立ってるし、遠慮なく。


「……大兄ちゃん」


「大っ正解だぞ!!可愛い妹よ!!」


「わうっ!?」

「ああ、やっぱり……」


さっきまでの無表情はどこに行ったんですかと、問いただしたくなるくらい満面の笑みになった王太子さん。

いや、大兄ちゃん。

そのまま嬉しそうに私の腰を掴んで、高い高いしてきました。

ついでにくるくる回ってます。

お兄ちゃん、目が回るからやめれ。

私の腕の中でしぃちゃんが驚いているし!


「お前が龍雅のヘタレ屑野郎に巻き込まれて異世界に飛ばされたのを見た時は驚いたぞ!」

「いやいや、私もお兄ちゃんが異世界で王太子やってると思わなくてびっくりですから」

「愛良がいないのなら地球にいても意味がないゆえ、天界に戻ってお前が使い魔召喚をするのを今か今かと待っておったのだ!お前の使い魔召喚の際に驚かしてやろうと思ってな!それなのに、お前は使い魔召喚をすっ飛ばしおって!」

「だって、しぃちゃんがいるから十分だったんだもん。というか、使い魔が何人もいると大変そうだったし」

「仕方がないゆえ、この世界の時間を巻き戻して我らは転生したのだ!少しでもお前が住みやすい世界にするためにな!」

「そんな理由で世界規模で時間巻き戻しちゃったの!?さすがお兄ちゃん!やることが無駄にデカい!!」

「ふはははは!!もっと褒めるがいい!!親父が小言を言っておったが、羽を毟ったら大人しくなったわ!!」

「わふー……」


くるくる回るのをやめて、ようやく降ろしてくれたお兄ちゃん。

私としぃちゃんは軽く目が回っているのに、そのまま頭をグリグリを撫でてきた。

……お兄ちゃん、私褒めたつもりない。

そしてお父さん、ドンマイ。

私もお父さんの羽千切っちゃったりしたけどね!


「……あれ?我ら、って言うなら、中兄ちゃんとちぃ兄ちゃんも一緒?」


お兄ちゃん達って三つ子で仲いいから、三人が離れるのとか想像できないんだけどなぁ。

でも、この国の王族に三つ子がいるなんて聞いてないし。


「中もちぃもこの世界に転生しておる。この国ではないがな」

「……一緒じゃなかったの?」

「ふむ。さて問題だ。我らがいる国で邪神を復活させようという動きをできる小物が存在するか?」

「いません」


お兄ちゃんの性格をよく知っているがゆえに、即答。

私だってお兄ちゃんたちを敵に回したくないんだから、そんな命知らずな行動をとれる小物なんて存在しないね。


「つまり、お兄ちゃんたちがいない国が、邪神復活を企んでいるってこと?」

「その通りだ。さすが我が妹!理解が早い!」


また満面の笑みを浮かべて頭をグリグリと撫でてくるお兄ちゃん。

身長伸びてほしいんだから、力任せに押さえつけないでください。

最近伸びがあんまりよくないけど、諦めてはいないんだからね!?


「ちなみに、他のお兄ちゃんたちがいる国を教えてくれたりする?」

「それではつまらんだろう。どうせ夏休みに入ったのだ。自分で探しに行ってくるがいい」


撫でるのをやめて頭をポンポンと軽く叩くと、お兄ちゃんはニッと笑みを浮かべた。

けちー。

ヒントくらいくれてもいいのにー。


「まぁいいや。どうせカインに色んなとこ連れて行ってもらおうと思っていたし、ちょうどいいからお兄ちゃんズ探しもするね!」


わーい!

夏休みの楽しみが増えた!

どこから行こうかなー??

オカマスターがカインと旅行に行くなら、いつでも好きなだけ休んでいいって言ってたし!

やっぱり美味しい食べ物巡りがしたいし、この世界の料理とかも見てみたいよね。

……などなど。

楽しい楽しい夏休みの計画を練っていた私の目の前で、お兄ちゃんは私の両肩に手をポンと置きました。


「そうかそうか。愛良よ、お兄ちゃんは一番大事なことを忘れていたのだ」


きゃー珍しい。

大兄ちゃんが満面の笑顔。

そしてお兄ちゃんが自分のことを『お兄ちゃん』と呼ぶときは、絶対ろくでもないことに違いない。


「なにー?」

「お兄ちゃんはお前と一緒に住んでいるという全帝と一度じっくり話をしなければならんと思っていたのだ。全帝はどこにいるのかお兄ちゃんに教えてくれるか?」


キラキラーと効果音が聞こえてくるんじゃないかというほど、イケメンオーラ全開のお兄ちゃんの笑顔が眩しい!

お兄ちゃんのイケメンオーラ全開の笑顔はお目めに優しくないです!

お兄ちゃんが何をしでかすか分からないけど、とりあえずこの笑顔を近くで見るのはヤダ!


生贄カイン召喚!」


私とカインは契約で繋がっているから、その繋がりを利用して生贄カインを逆召喚。


「……は?」


逆召喚したカインは、全帝用のマントを頭からかぶろうとしている最中だったみたいです。

私とお兄ちゃんが並んでいるのを見て、すっごく微妙な格好で固まってる。


「……愛良?」

「なぁに?」

「隣にいるのは、鬼畜太子か?」


あら、お兄ちゃんにピッタリな呼び名。

だけどね、カイン。

いくらピッタリでも、本人目の前にして言っていい言葉ではないよね?


「貴様……いい度胸だな」


さっきまでの笑顔が消え去って通常の無表情に戻ったお兄ちゃんの言葉に、カインの顔が青ざめる。

カインさんや……うっかり発言、なくそうね?

地球での愛良と大兄ちゃん


愛「大兄ちゃーん!あのねあのね、ペット飼いたいの!犬欲しいの!」

大「犬か?我は猫の方がいいぞ」

愛「猫も可愛いけど、もふもふわんちゃんを撫でまわしたいの!」

大「ふむ……それで?」

愛「お母さん説得するの、協力して!」

大「母さんには一度頼んだのか。断られたのか?」

愛「『可愛がるだけ可愛がって、躾その他もろもろはお母さんの負担がかかるからダメ。躾だけでなくご飯散歩トイレの始末が全部完璧に愛良に出来ると思ったら考えてあげる』って」

大「うむ、諦めろ」

愛「即答!?」

大「愛良の場合、可愛さに負けて躾が大雑把になるのが目に見えておるからな。どうせ誰かに噛み付いても、叱る前に可愛さに負けて抱きつく様が見えるぞ」

愛「そんなことないもんー!犬ー!飼ーいーたーいーのー!」

龍「愛良!それなら僕の家で飼うよ!僕の家で好きなだけお泊りしよ!愛良の大好きな犬に囲まれて生活できるよ!」

大「どっから湧いて出た屑虫が」

龍「ちょ、大兄さん!?いきなり顔面鷲掴みは反対!」

大「屑虫よ……なに当然の顔して愛良の部屋の窓から入ってきておるのだ。このまま2階から突き落としてくれる」

龍「ぎゃあああ!?それ死んじゃう!死んじゃうから!」

大「安心しろ。この高さで足から落ちれば、そう簡単に死ねはしまい。仮に死んでも、不法侵入をしようとして失敗したことにしておいてやる」

愛「……私、窓の鍵は閉めてたはずなのに……」

龍「もちろん、いつでも開けれるように細工済みさ☆」

大「この屑虫がぁああ!!」

龍「いぎゃぁああああ!?」

愛「……ペットは諦めるから新しい窓の鍵買ってって、お母さんにお願いしに行こ……」


……愛良と長男の会話にしようと思ったのに、なぜか屑虫が湧いて出る。

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