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84.事実認識は正確にしましょう

途中からヘタレ(龍雅)視点になるのでお忘れずにー。

◇◇◇◇


……何なんだろうね、この目の前で妙に団結している暑苦しいおじさまたちは。

変に酒場の隅っこにいると、怪しさ満点でしかないよ?

他のお客さんにご迷惑ですからねー?

ほら見て、今入ってきた人たちも怪しいおじさまたちに硬直していますよー?


「……ごほん!、アイーラ・シドーはどこだ!?」


あ、意外と早く硬直が溶けた。

そんでもって、今私の名前呼ばれた?

この世界の人たちって、なかなか上手に発音してくれないんから分からないんだよねー。

カインも練習して正確に発音してもらえるようになったんだし。

よし、無視して宿題の続きしておこ。


「おい、貴様たち!我ら国王陛下直属親衛隊隊長である私の言葉が聞こえないのか!?アイーラ・シドーを出せ!」


わぁお……親衛隊とかあるんだねー。

さすが異世界、お日様の光が反射するほど磨かれた白い鎧が眩しい。

宿題をしたい私からすると、お目目が痛くて超迷惑でっす。

これはさっさとお引き取り願った方がいいや。


「アイーラ・シドーはいないけど、アイラ・シドウなら私です。なんか用です?」


まぁ、国王直属って言うんだから、誰の差し金かは分かるんだけどね。

あのヘタレ馬鹿が私のことを国王に話したって言っていたし。

そのうち来るとは思ってたよ。

夏休みの一日目に来るとは思ってなかったけどね。


「お前がそうか。我らと一緒に城まで来るんだ」

「え、やだ」


あ、思わず拒否っちゃった。

上から目線でなおかつ命令口調で言われると、断りたくなるのは自然なことです。


「なっ!?我らは王命でこの場にいるのだぞ!?」

「だから?」

「ふ、不敬罪でお前を捕まえることも可能なんだぞ!?」

「あらやだー。そんぐらいで捕まえるとか、器がしれるわー」

「この……!!」


顔を真っ赤にしながらも、私の態度に次の言葉が出てこない様子の隊長さん。

そのまま怒った様子で腰に差していた剣の柄に手が伸びる。

お、やる気?

他のギルメンのおじ様方が、いっきに殺る気満々に殺気立っちゃいましたよ?

騎士団VSギルド『清龍』ですか。

うちんとこのオカマスターがいる時点で、高確率でこちらの勝利確定だけど。


「あ、愛良!?一応この人たち、偉い人だからそんなこと言っちゃダメだよ!?」


あら、隊長さんの剣を押しとどめながら金ぴかマントが間に入ってきちゃった。

ちっ……龍雅が来てるのは分かっていたけど、あっさり出てくるとは思わなかったわ。

何しろ、今は『白銀の勇者』の格好だからね。

まさかその顔が見えないフード被っている状態で、私の名前を呼んでくるとは思っていませんでした。

君、どこまでお馬鹿なの。


「どちらさまー?私、そんな恥ずかしい金ぴかマントを着る趣味を持つ友達なんていないんですがー?というか、見ててイタイから私の視界に入らないでくれる?」

「あ……愛良ぁ……分かってて言ってるよね……」


もちろん。

というか、君は本気で修行をしているのかね?

魔力波長が学生の時と全く同じなのですけど。

顔を隠しているなら、もうちょいと魔力コントロールの練習をして波長を変えたほうがいいと思うの。


「で?私にどうして欲しいの?」

「最初に言っただろうが!今すぐ城に来い!陛下がお前に用があるそうだ!」

「私は別に王様の面識ないのにー?普通のか弱い女の子に王様が何の用ですかー?」


「「「「普通のか弱い女の子は、こんなに堂々としていないから」」」」


あらやだ。

龍雅もマスターもギルド員も騎士の隊長さんたちも、みんな一斉に否定してくれちゃった。

みんなにそうやって否定されると傷ついちゃう。

傷つけられたら、それ相応に返さなきゃね☆


「おっとしあなー!」


床に一人ひとりの落とし穴作って落ちてもらいました。

けっこう深めに作らせてもらったので、みんな一斉に視界からいなくなってすっきり!


「次は……証拠隠滅で埋めとくだけにしとくか」

「いやいや、お嬢!素直に言うこと聞いて城に行った方が面白いって」


……んん?

いつのまにか、飛んできたコウモリが私の肩に止まっていた。


「コス王。帰ってたの?」

「……昨日の夜から帰ってきてましたよ?カインと同じタイミングで帰ってきてましたよ?」

「あ、そうなんだ。おかえりー。時くんとロリコンはどーしたのー?」

「時は帰って、ロリコンは泣きながら城を直してた。それよりお嬢!こいつらどーするの?」


コウモリの羽で私のホッペをペチペチ叩いてたくさんの穴を見るコス王。

どうするの、とな?


「埋める気満々だよ?」

「あ、愛良ぁ!!?いきなり酷いよ!!?」

「ちっ。コス王が無駄に止めるから、ヘタレが復活したじゃん」

「俺様のせいっ!?」

「もちろん」


無駄に時間とられたら、ショック受けてた人たちも復活するに決まってるじゃないですか。

復活する前に埋めようと思ってたのに。


「もう、愛良は……【飛翔】」


あら、ヘタレがため息をつきながら、魔法で体を浮かせて出てこようとした。

ゆっくり浮かぶ【浮遊】じゃなくて勢いよく体を飛ばす【飛翔】を使って。


「だ・が・し・か・し!」


私がそんな簡単に出すわけないのです!

穴の入り口部分に金タライを創造して設置。

そんなものが、まさか穴の真上にあると思っていなかった龍雅は……


「ぐげぇっ!?」


派手な音を立ててぶつかって穴の底にリターン。

……自分でやっておいてなんだけど、呆気ない。

龍雅が落ちた穴を覗き込んだけど、完璧に伸びているよね、あの子。


「無様だねー。そんなんで本当に勇者やってけるの?」


あまりにも無様過ぎて、思わずそのまま地球に送り返そうかと思っちゃったじゃん。

むしろ龍雅がいる意味が分からないから、送り返した方がいいんじゃないかな?


「まいっか。それより、さっさと他の人は穴から出てきなよー?別にこの子と同じ目に合わせてやろうなんて思ってないから」


落とし穴に落としてから結構立つのに、誰もいまだに出てこようとしない。

なんで皆さん出てこないのか不思議です。


「……アイラちゃん?本当に何もしないわね?」


穴の中からマスターが念入りに質問してくるし。

あ、もしかして龍雅にやらかしたことを警戒して出てこないの?


「しないしない。本当は登って来ようとしたら上から水かけてやろうかと思ったけど、話が進まなさそうだし止めました。5秒以内に出てこないと実行するけど」

「もう出たから、やめてね!?」


そんな必死な形相になって出てこなくてもいいと思うけどなぁ。

化粧ばっちりでムキムキマッチョのおっさんの必死顔って、正直怖い。


「マスター、ごめんなさい」


本当に反省してます。

二度とオカマスターの必死顔を見ないように、努力します!

だけど、5秒以内に出てこなかったのには実行!

出てきてないのは穴の底で伸びているへタレだけだし!

うん、泥水にして埋めとこう。


「……この勇者、マジで哀れだな」

「そのうち出てくるからほっといたらいいよ。じゃ、マスター。私、この人たちとお城に行って来るねー」

「さっきまで嫌がって色んなことしてたのに、あっさり行くわね!?」

「あれは単なる暇つぶしです」

「貴様、ふざけているのか!?」

「イエース!」


ノリノリでピースサインをしたら、マスターと使者さんが地面に手をついで項垂れた。

不思議だねー?

しょうがないから隊長さんの襟首をつかんで行きますか。


「コス王。今からこの人たちとお城に行って来るからー。カインが復活したら、帰るの遅くなるかもって言っといてねー」

「え、カインのやつ、また鬱帝発揮してんの?」

「うん。面倒だから投げて放置してきたの。家でキノコ発生させてると思うから、後片付けさせといてね」


(カイン……哀れな奴)


コス王が哀愁を漂わせているけど、もちろん放置で。


「さ、しぃちゃん。行こうか」

「わーう!」


助走をつけて、ぴょんと私の肩に飛び乗ってきたしぃちゃん。

そのまま私のホッペに顔を摺り寄せてきて、もう可愛すぎです。

可愛すぎてしぃちゃんを愛でるのに忙しいから、龍雅は泥水に浸したまま放置で別にいいよね!











◇◇◇◇


うぇ……泥が口の中に入った。

そして置いていかれた……。

愛良、いくらなんでもひどいよ……。

危うく泥水の中で溺れ死んじゃうとこだった。

金盥を落とすのもひどいけどさ。

……あれ?

この金盥って、愛良、どうやって出したんだろ?

……まさか。


「ツッコミのために、金盥をボックスに入れているんだね!」

「はい、んなわけないわよねー?というか、お邪魔よー。お間抜け白銀くん、さっさとうちのギルドから出て行ってくれないかしらー?床も元に戻したいし」

「あ、ごめんなさい……」


埋められていた穴のすぐ横で項垂れていたら、オカマさんに怒られちゃった。

とりあえず、愛良を追いかけないと!

城門まで転移!

愛良がいるのは、たぶん謁見の間だよね!


「失礼します!」


急いで謁見の間に入ると、どうしてだろう?

王様や大臣さんや兵士さんたちが崩れ落ちてて、部屋の中央で愛良だけがニコニコ笑顔で立っていた。


「……あれ?」

「あ、へタレ勇者くん。以外と早かったね」


へタレ勇者って何のことだろ?

いや、それよりも!


「愛良?どうしてみんな倒れているの?」

「え?」


僕の質問に、人差し指を顎に付けて可愛く首をかしげる愛良。

しばらく、「んー?」と考える仕草をしてから、にっこり笑った。



「挨拶しただけだよ?『異世界から何も知らない子どもを召喚という名の誘拐して魔王を倒せと恐喝する誘拐犯の皆さん、はじめまして』って」


グシャ!!



なんか、今何かが潰れたような音が聞こえたような……?

あれ、王様たちがさらに崩れちゃったよ?


「王様?どうしたんですか?」


愛良が言ったこと、別に事実なだけなのにどうして崩れちゃうんだろ?

え、この人たちって僕たちのこと誘拐したも同然なんだってこと、分かってるんだよね?


「い、いや……ストレートに目を背けたい事実を突き付けられて痛む良心から、目の前が真っ暗になっただけです……」


どうして王様が敬語を使っているんだろ?

まぁ、一応みんなフラフラしてるけど立ち上がったし、大丈夫だよね!


「それで、私に何の用なんですかー?」

「えっとですね?リョウガ君と同じように君もこの世界に誘拐……じゃなくて召喚されたわけですが、もしかして君も勇者だったりしないのかなぁ……なんて思ったりしたわけです、はい」


王様、腰ひっくー!!?

あっれー!?

どうしてここまで腰低いわけー!?


「私が勇者?はっ。笑わせないでくれるー?」


鼻で笑った!?

愛良、王様を鼻で笑っちゃった!?


「私、ここにいるヘタレに引きずられてこの世界に来たわけだし?ね、ヘタレ勇者くん?」

「ひぃっ!?」


やっぱり愛良はまだ根に持ってた!

だって、僕一人で行くなんてイヤだったんだもん!

それに、愛良と離れるなんて考えられない!


「巻き込まれただけなのに、勇者な訳ないでしょ?第一、この子でもそれなりに力持ってんだから、これ以上力あるやつ求めてどうするわけですかー?あまり欲張らない方がいいよ?」

「い、いや……しかし、魔王に対抗するには、力が必要なんだ!……いや、必要なんです」


ちょっと、何でここまで王様腰低いの!?

びっくりだよ!

ここまで腰低い王様と注意しない大臣さんと兵士さんたちにびっくりだよ!


「何で魔王討伐を掲げているんです?」

「何でって……最近、魔物の動きが活発で、魔王が関わっているに違いないと思って……各国でも、力あるものを魔王が住むという大陸に送り込んでいるんですが……」

「ないない。それはない。あの魔王に魔物を操る力はないし。魔王は関係なし。魔王討伐に力入れるだけ時間と労力とお金の無駄」


断言しちゃったよ!?

なんか頑張ってる人たちを無駄って言いきっちゃったよ!?


「何で愛良がそんなこと知ってるの!?」

「それを龍雅に教える義理が私にある?」

「え?……愛良冷たい!」

「はいはい。君は黙っててくれるかなー?」


この世界に来てから愛良が冷たいー!!

前はここまでこんなに冷たいことなかったのに!

『めんどくさいから近づくな』とか言われたけど!

『余計なことを言うな』とかもよく言われてたけど!

意味分からずに殴られたりとかもしてたけど!





……あれ、別に前と対して変わってない?

地球での愛良と龍雅の日常


龍「愛良ー!今日の放課後、一緒にゲーセン行こうよー!」

愛「いや。一人で行って」

龍「もう、照れちゃってー!愛良、友達いないから暇なの知ってるんだからね!」

愛「……誰のせいだと思ってのさ、この屑!!」超涙目

龍「げふっ!?愛良、急に蹴ってくるなんて酷いよ!あと、ついでにパンツ見えたからね!黒!!」

愛「それはスパッツ!そして大声で言うな馬鹿!!」

龍「いったっ!?なんですぐに殴ってくるのー!?」

愛「うっさい!残念なイケメンは塵となって消えちゃえ!!」

龍「そんなイケメンなんて褒めないでよー!恥ずかしい!」

愛「なんで君は私の言葉を正確に聞き取らないの!?めんどくさすぎるよ、君!」

龍「あ、愛良ー!一緒にプリクラ撮ろうよ!」

愛「今すぐ私が一番初めに言ったことを思い出せ」

龍「高校生になってからの愛良と初プリー!」

愛「聞け。本気で私の拒否を聞け」

龍「あ!高校生になったらやりたいことあったんだ!キスプリ!」

愛「君のハーレムメンバーに頼みなさい。列をなしてやってくれるから」

龍「愛良と初キス!やっぱり記念に残さないとね!キスプリだー!」

愛「……人の話を聞かないで強制連行してなおかつ実行しようとする奴なんて、大っ嫌いぃいい!!お兄ちゃぁあああん!!!」

兄「「「この屑がぁあああああ!!」」」

龍「げっ!?兄さん達!?何でいっつも瞬間移動でもしてんのかってくらい素早く到着すんの!?」

兄「「「黙れぇええ!!天誅ぅうううう!!!」」」

龍「ぎゃぁあああああ!!」

愛「よし、今のうちに帰ろーっと」



……嫌な日常である。

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