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77.愛良が無駄に優しいんですが

◇◇◇◇


またうっかり重大なことを漏らしてしまった……。

いや、そのうち愛良には話そうとは思っていたぞ?

思ってはいたんだが、こんな突然話してしまうとは思わなかった……。

まぁ、当の本人には軽く流されたんだがな。



「カインー、どうしたの?」


「別に……」


「ふーん?」



今は授業も終わって寮に戻ってきているんだが。



「今日のご飯は何にしようかなー?カインは何がいいー?」



帰ってくるなり籠っていた台所から、顔だけだして聞いてくる愛良。

俺の漏らした秘密のことなんて全く気にしている様子のない普段と変わらない愛良の態度に、安心していいのか微妙だ。

別に同情してもらいたいわけじゃないが……。



「いや、別になんでもいいが……さっきから台所にいたのに、まだ何も作っていなかったのか?」



帰ってきてから1時間くらいは籠っていたよな?

てっきり俺は夕飯の支度をしているのだとばかり思っていたが。



「えへへー。内緒だよー。ご飯は適当に作っておくねー」



にこーっと笑みを浮かべて再び台所に引っ込む愛良。

なんなんだ、いったい。

思わず同じようにリビングのクッションに座っていたシリウスと目が合うと、シリウスはプイっと顔を背けて伏せた。

……このクソ犬、そんなに俺と目が合うのも嫌か。

絶対にそのうち捨ててきてやるからな。



「はい、どーぞ」



ソファに座って本を読んでいると、いつの間にか時間が経っていたらしい。

台所から愛良がいつの間にか出てきていた。

……なんだ?

愛良が突然ケーキを俺の前に置いたぞ。

イチゴがたくさんのった、ショートケーキだ。



「愛良?」


「落ち込んでる時は甘い物が一番だよ」



……帰ってきてから台所に籠って作っていたのはこれか。



「……一応、愛良なりに気を使ってくれていたんだな」


「それはいらないってことでいいのかな?」


「ありがたくいただきます」



愛良が下げようとする前に、慌てて口に入れる。

あ、うまい。

愛良がプリン関係以外の菓子を作るのは初めてだな。



「はい、コーヒー」


「ん」



ケーキを頬張っていると、今度はコーヒーが置かれる。

しかも、俺用に砂糖なしでミルク多めのコーヒーが。

……同情はしていないだろうが、愛良が無意味に優しいと不気味だ。

コーヒーを俺の前に置いた愛良が、向かいの席に座ったまま無言でこちらをじっと見てくるし。



「……なんだ?」


「別にー?」



無表情かつ無言で見られることに耐えられなくなって口を開けば、特に理由はないと返す愛良。

それでもやはり凝視してくる。

……いったいなんなんだ?



「カインってさぁ……ダーク家のこと、どう思ってるの?」



じっと見ていた愛良が、ようやく口を開いたと思えば……急に何なんだ?



「どうと言われてもな……別に嫌いではないぞ?ルナは父や母のことを快く思っていないみたいだが、アレは俺を頭の固い祖父から守るためだったからな。恨んではいない」


「……カインのお父さんとお母さんは、別にカインのことが嫌いで監禁したんじゃなくて、おじいさんの手が届かないように牢屋に入れることで守ったってこと?」



俺の言葉を聞いて、首を傾げながら聞いてくる愛良。

……こいつは、カンだけで言い当てているのか?

ほとんど当たっているんだが。



「ああ、まぁそうなんだが……」



俺に魔力がないと知った時点で、祖父は俺を殺そうとした。

6大貴族であるダーク家に、魔力がない魔盲の存在は恥だとしてな。

だが、それより先に父が地下の牢屋に俺を入れることで、祖父の目から俺を隠したんだ。

母がルナたちの前で俺に体罰を与えていたのも、同じ理由だ。

ルナたちが部屋に戻された後は泣きながら傷を治してくれていたし、食事も毎日欠かさず母か父のどちらかが持ってきてくれていた。

7つになって、祖父に俺がまだ生きていることがばれてな。

俺の存在に我慢が出来なかった様子ですぐに殺されそうになったところを、両親が必死に頼んで捨てられることになったんだ。

捨てられることが決まった時も防御結界の魔導具を隠し持たせてくれたし、わざわざ全帝の親父に偽の依頼を出して森の奥深くに行くように仕向けていたからな。



「両親には感謝すれど、恨む理由がない」



それに捨てられていなければ俺は親父に拾われることもなかったし、全帝にもならなかった。

そうなれば、愛良を拾うことだってなかった。

むしろ、下手をするとあのヘタレ野郎に群がっている奴らと同類になっていたかもしれない。

それを考えると、今の方がずっといい。

まぁ、ルナや弟に気軽に会えなくなったのが残念だったがな。

それでも、愛良のおかげでルナとはまた話せるようになったんだ。

何も気にすることなんてない。



「ふ~ん。じゃあ、別にルナが言っていたみたいに、両親が悪い人ってわけじゃないんだね」


「ああ。……何で気にしたんだ?」


「ビッチ共の再教育ついでに、6大貴族と王族の性格が酷かったらプライドを木端微塵に砕いてやろうと思って」



なんの迷いもなく言い切った愛良。

……別に、俺の過去が気になったとかではないんだな。



「ダーク家は外してもよさそうだねー。おじいさんは歳だし、しゃしゃり出てこない限りは見逃しとくわ」



……説明しといてよかった。

危うく愛良の毒牙に両親が巻き込まれるところだった……。

はぁ……鬱だ……。


愛良「そういえば、コス王たちはまだ戻ってない?」

鬱帝「魔王の城で同じように引き籠っているんじゃないか?」

愛良「それは言えてるね。じゃあ、別に気にしなくていっか」

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