75.食事中は戦いです
私の顔面回し蹴りで吹っ飛んで行った変態。
それでも変態はまだ生きています。
思わず半眼になってキレているカインさんと顔を見合わせる。
「ねぇ、カインさんや」
「なんだ」
「あの変態さん、どうにかすべきだと思いませんかね?」
「思うな。ルナを泣かす奴は殺すべきだな」
「ですよねぇ?ということで、変態がルナに目をつけたから殺っちゃってきて下さいな。私たちはここでお茶しているからさ」
「……は?」
一緒に殺るんじゃないのか?と言わんばかりに、呆気にとられたカインさん。
残念でした。
めんどくさい相手は全部カインに丸投げしよう!
それが異世界で楽して生きるための見つけた私のモットーです。
「お茶……プリ、ン……は?」
お茶と聞きつけてデザートを欲しがるルナちゃま、かわゆす。
プリンは常に持っていますよー。
「あるある。お昼も近いし、早めのご飯にしようか」
時間的にもちょうどいいよねー。
カインとコス王が結構食べるし、今日は時くんもいるから重箱で持ってきているので、ルナ一人が増えるくらい問題なしです!
「なあ……俺は?」
「カインは変態始末してからねー。しぃちゃん、時くん、ついでにコス王ー。ご飯だよー」
ゴミ捨て場から100mくらい離れた所にレジャーシートを引いてー、朝用意した重箱をボックスから出して準備。
あ、お茶も出さなきゃ。
今日は洋風だから、紅茶にしよう!
「……お嬢、完璧遠足気分だよなぁ」
「きゅーう」
「わーう」
燃えかけた羽を気にしながらのコス王の言葉に、小動物な時くんとしぃちゃんが頷いている。
小さな頭をコクコク動かして可愛いなぁ……。
「イエス、めちゃくちゃ遠足気分です。むしろお外でご飯食べるの大好き。お外で食べるの嫌なら、今日のお昼はいらない?」
「いただきます!」
「きゅい!」
「わう!」
遠回しなお昼抜き宣言に、速攻でレジャーシートに座って手を合わせる小動物達。
最初から素直にそうやっていてくださいな。
背後でカインの怒号と変態魔王の悲鳴が聞こえているけどどうでもいいBGMにでもして、ピクニックを楽しみますか。
小動物たちを眺めているだけでも、十分楽しいけど。
「きゅい!」
「ああ!?時、それは俺様が狙っていたロールキャベツ!」
「きゅー」
コウモリ姿のまま浮遊で自分のお皿に移動させようと思ったロールキャベツを、空中でキャッチした時くん。
満足そうに尻尾を振っているその姿は、『早い者勝ちー』と言わんばかり。
盗られたロールキャベツに気をとられて嘆いているコス王。
そんなコス王のお皿に音を立てずに忍び寄るしぃちゃん。
そして……。
「わうっ!」
隙あり、という様子でコス王がお皿に置いていたローストビーフに齧り付いた。
「ぎゃあ!?俺様が取っておいたローストビーフー!お犬様にとられた!?」
「わーうー」
取り返されないように前足でローストビーフを押さえたまま、尻尾をぶんぶん振って食べるしぃちゃん。
気に入ってもらえたようで、何よりですな。
「お嬢!こいつらに俺様の分、盗られたんですけど!?ちょっとは叱って!」
「へ?」
なんですと?
私にこの可愛いしぃちゃんと時くんを叱れと?
うーん……。
「えーと……しぃちゃん、時くん。めっ!」
「きゅい?」
「わう?」
あれ?
どうしてそんなに不思議そうに首を傾げているの、しぃちゃん、時くん。
「お嬢ぉおお!!それ、本気で怒ってないでしょぉお!?叱るときはきちんと叱ってぇええ!」
号泣しながら空になったお皿に顔を突っ伏すコス王。
あ、ローストビーフのタレが顔面に着いちゃってるよー。
ついでに言っておくけど、ロールキャベツもローストビーフもまだまだ重箱に入っているからね?
自分が狙っていたのにしか目が行っていないのかねぇ?
お馬鹿さん。
しょうがないから、代わりに入れておいてあげよう。
顔をお皿に突っ伏したままだから、頭に乗っける形になりますが。
あ!
いっそのこと、綺麗にどれだけ乗せれるか試すのもいいかも!
「おっ嬢ぉおっ!?不吉なことを考えるんじゃありません!そしてくれるなら普通にちょーだい!」
ちっ……せっかく試そうと思ったのに。
コス王、今完璧に私の心の中読んだよね?
つまんない。
「お嬢!女の子が舌打ちするんじゃありません!」
「はいはいごめんなさーい」
「ハイは一回!」
「君は私のお母さんか。ほい、ロールキャベツ」
「ごほっ!?」
オカンみたいに細かいコス王は、お口にロールキャベツを突っ込んで黙らせます。
コス王、コスプレ好きな変態のくせして常識人って変だよ。
変態ならば、変人まで極めちゃいなさい。
めっ!




