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66.朝からドッキリでした

◇◇◇◇



突然だが、驚かないで聞いてほしい。

朝、目を覚ましたら俺の隣に愛良が寝ていた。

ついでに言うと、俺のベッドはシングルサイズだから、かなり近い。

どうりで今日はやけに温いと思ったわけだ。

……いや、そうじゃないよな。



「……は?」



(何でこいつが俺の部屋で寝ているんだ?ここは、間違いなく俺の部屋。寝る前、愛良も自分の部屋に入っていたよな?え、なんでだ?愛良が寝ぼけて俺の部屋に来たのか?こいつに限って、そんなことあるか?いや、間違いなくないよな。朝は俺より寝覚めいいし。じゃあ愛良は何でここにいて、しかも俺より起きるのが遅いんだ?普段、俺より起きるの早いんだぞ?というか、珍しいぐらいぐっすり寝ているな。夜になんかあったのか?それにしても、本当にこうやって大人しくしていれば、こいつは可愛いよな。髪はサラサラで触り心地いいし。絶壁が少し残念だけど、まぁ抱き心地が悪いわけでもないし……って何を考えている俺!!?落ち着け、落ち着け……とりあえず落ち着け俺)


※カイン君、16歳。ただ今、思春期真っ最中の健全な少年です。




……ふざけている場合じゃなかった。

とりあえずは落ち着いたから、昨日のことを整理するか。

昨日は確か、晩飯を食べた後にコス王が親睦会に紛れ込んでいた少年を伴って帰ってきた瞬間に愛良に土下座したんだよな。



王『お嬢!!調子に乗ってごめんなさい!!!謝るから俺の晩飯ください!!!』


少『……俺もー。お腹減ったからご飯くれー』


カ『……コス王はともかく、こいつ、何だ?』


王『こいつのことより、ご飯ー!お嬢!!あのヘタレ勇者から奪った写真返すから、許してください!!そして、ご飯くださいー!!』


愛『……まぁ、土下座に免じて許してやりますか。はい、ドックフード』


王&少『……あれ?ドックフード?』


愛『はい。地面は可哀相だから、段ボール用意したげるね』


王『……お嬢?』


少『うわー。まさかの展開ー。そして段ボールは優しさに含まれるのかなぁ……?』


カ『許してはいなかったんだな。まぁ、飯を用意してくれただけありがたいと思え。シリウスの飯だけど』


愛『しぃちゃんのご飯、今日はドラゴンのお肉だから、この子のほうが高級です』


し『わーう』


王『ちょ、お犬様が優越感に浸っていらっしゃるんですけど。お嬢?ごめんなさい、本当にごめんなさい。お願いですからカイン様と同じ飯を私めどもに与えてください!』


少『お願いしまーす』


愛『カインー。お皿洗うから運ぶの手伝ってー』


カ『ああ、分かった』


王『ま・さ・か・の・無視!?』


少『あははー。しょうがないから、俺の分も冥界神にあげるよ』


王『いりません!マジでいりません!!カイン、ヘルプ!』


カ『……キャットフードならあるぞ』


少『……んー?猫いないのに、何であるのー?』


愛『……またボックスに入れっぱなしにしていたわけ?』ニコニコ


カ『……すいません!おやすみなさい!!』


王&少『あ、逃げた』



……そういや、俺、途中で逃げたんだった。

いや、だってまた物を片づけずに放置していたことで愛良怒りかけてたし……。

あの後どうなったか知らないが、愛良がここで寝ている理由にはならないよな。

今は朝の4時過ぎ。

普段より30分ほど早めに目が覚めたのか。

ということは、愛良もそろそろ起きるよな。

……この状況で愛良が目を覚まして、俺は無事で済むのか?

…………無理だ。

愛良にぼこられる運命しか見えない。

とりあえず、愛良を起こさないようにベッドから出て避難しよう。

ゆっくりと、しんちょうに……ベッドを軋ませないように、浮遊で体を浮かして……。

……俺、朝からなんでこんなに無駄に頑張ってるんだ?

そう考えたのがいけなかったんだろうか。

最後に気が抜けて、ベッドが微かに軋んだ。



「んん……」



ああ……愛良がゆっくりと目をこすって起き上がった。

落ち着け、俺。

大丈夫だ。

ここは俺の部屋で、勝手にいるのは愛良だから俺に非はないはず。

ない……んだよな?

いったい何を言われるのかとビクビクしている俺の目の前で、愛良は呑気に腕を伸ばして伸びをすると、俺に視線を投げかけた。



「ふぁ~……おはよー……」


「あ、ああ……お、おはよう……」



普通に俺がいることに疑問を持つ様子もなく挨拶をしてきたので、とりあえず挨拶を返す。

寝ぼけているのか?

いつ突っ込まれるのか、恐ろしくて仕方がないんだが。



「あー……そうだ。カイン、朝練の前にちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど」



伸びをして少しすっきりした様子で話しかけてくる愛良。

寝ぼけている様子ゼロ。

やっぱりこいつが寝ぼけて俺のベッドに入ったとかないよな。



「は?いや、それは別にいいが……できれば、何でお前がここで寝ていたのか理由を教えてくれ」



こっちから切り出さないと、いつまでも話そうとしない気がする。

そう思ったのは、俺だけじゃないはずだ。



「へ?……ああ、カインの隣で寝てた理由?いや、夜中に変態が襲ってきたから返り討ちにしたはいいんだけど、眠かったし後片付けがめんどくさいのと気絶した変態の傍で寝るのが嫌だったからです」


「は?夜中に襲撃でもあったのか?」



俺、隣の部屋なのに全く気付かなかったんだが。

愛良に奇襲をかけるなんざ、どこの命知らずの行動だ。



「まぁ襲撃といえば襲撃になる?なんかね、夜中にいきなり窓割って入ってきたんだよ。『元可愛い幼女様万歳!今すぐ小さくなるか、可愛い幼女様を産んでくれ!!』って叫びながら鼻血ダラダラ流してさぁ」



それは確かに変態だな。

というか、今すぐ窓から放り投げだすべきじゃないか?



「まぁ寝起きで機嫌悪かったしぃちゃんのレーザービームが炸裂しまくったけどね」


「それ、変態はすでに死んでるよな?」


「残念。変態は人間じゃないみたいだから生きています。……ギリギリだけど」



つまり、死に掛けなんだな。

ほとんど死体と同じなんだな?

後片付けって、それの処理ってことだよな?



「つまり、シリウスに9割殺しされた変態の後始末が面倒だったから俺のベッドに入り込んできたということか?」


「そゆことー。眠たいのにわざわざ変態のために労働力使うのが面倒だから、朝になってからカインに手伝ってもらえばいいやと思ったの」



あっさりと頷いた愛良。

まぁ、変態の隣で寝たくないという理由は分かるが。

分かるんだが、頼むから男の部屋に無断で入ってくるな!

そして同じベッドに入ってくるんじゃない!

そこらへんの常識、お前はどこに落としてきたんだ!?



「……それで、シリウスは?」


「変態口にくわえながら寝てたよ?」



それって、本来の大きさに戻っているんだな?

デカいシリウスには散々な目にあわされているから近寄りたくないんだが、しょうがないよな。

朝練をする時間がなくなるし。

しょうがなく愛良の部屋に入ってみれば、部屋の大部分はシリウスの体で埋められていた。

相変わらずデカいな、おい。



「しぃちゃん、朝だよー。ちっちゃっくなってー」


「がうー……」



その巨体をポンポンと叩いて話しかける愛良と、眠そうだが愛良の言うとおり素直に子犬サイズに戻るシリウス。

視界を遮っていた巨体がなくなったことで、ようやく見えるようになった人影。



「カイン、あれが変態」



ぐったりしながらも鼻血を流した跡がばっちりある男。

……見覚えがあるな。



「……愛良、コス王を叩き起こして来い」


「はーい」



パジャマのままパタパタとコス王専用の部屋へと走る愛良を見送り、とりあえずは扉を閉める。

そして気絶したままの変態の傍に寄る。

とりあえず、俺の心の平穏を乱した奴には制裁が必要だよな?



「うーん……幼女様ばんざーい……嬢ちゃんの幼女写真ゲッぎゃあああああ!!?ちょ、なにゃああああ!!!?死ぬ!死ぬ死んじゃうから!!!ちょいと誰!!?いきなり蹴りつけてきたの本気で誰!!?俺の幼女様写真どこぉお!!?あ、あったぁああ!!」



男が握っていた、親睦会で見かけた子供頃の愛良の写真。

……この変態の意味不明な行動の原因だな。

没収したところでしつこそうだし、燃やしておくのが無難だな。

愛良のあの様子だと、絶対に後で煩いし。



「ひっ……も、燃やしちゃいやぁあああ!!!激レア幼女様写真が燃えるぅうう!!やめてくれぇえ!!」


「無理な相談だな。ついでにちょっと死んでくれないか?」


「あっつぅうう!?それ、人に頼む態度じゃねー!!そして俺は幼女様のお願いしか聞かな……うぎゃあ!?」



幼女幼女喧しい変態が、勢いよく壁に吹っ飛んだ。

言っておくが俺ではないぞ。

吹っ飛んできた扉が原因だからな。



「カイン、お待たせー」



もちろん扉を蹴破ったのは愛良。

不自然なほどニコニコ笑って背景は真っ黒だが。

……今日の朝練は諦めるべきかもな。

それと愛良。

部屋の扉、ちゃんと自分で直せよ。

カイン君、あさからドッキリ連続でしたー。

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