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64.イライラする

とりあえず、愛良が許してくれたから現実に目を向けるとしよう。



「これ、どうしようかなぁ……」



愛良がため息交じりに示したのは、Sクラスの得点。

奴らが開けまくっていたせいで、点数が6千を超えている。



「Sクラスの得点に貢献していたのは、Sクラスの奴でもなければ生徒でもない様子。というか、コス王と知り合いの時点で人間でもないよな」


「そうだろうけど、それは後。とりあえず、外部の奴のおかげでこのイベントの結果がめちゃくちゃ変わったということが一番の問題だよ。この際、生徒会の役員不足なんてどうでもいい。親睦会が終わるまでに、この状況をどうにかしないと……」


「このまま結果を伝えたところで、Sクラスの奴らも誰がこれだけの点数を稼いだのか疑問に思うだろうしな……それだけ稼いだすごい奴を探そうとする奴も必ず一人か二人はいるし」



どうしたものかな。

俺たちがこれだけ見つけたと言えば、この宝箱を含む魔導具を全て作ったのは俺たちだから、それでズルをしたと思われるのも今後の活動に支障がある。

いっそ生徒全員の記憶を塗り替えれば早い話だが、まだ精神的に未成熟な学生に対して、精神魔法は負担が大きすぎる。

頭が痛い問題だ……。



「コス王+αはマル一日あの人のお部屋から出れない設定。ついでに部屋から出れない間は全ての能力を無効。新世界に旅立っちゃえ」



キレた愛良もこの現状を作り出した元凶共にお仕置きを追加したようだ。



「愛良。ボケ共の始末は一度置いておけ。残りの時間でこの状況を打破することを考えろ」


「いや、考えはあるんだけどね……私としては、あまり面白い状況にはならないんだよねー……」


「は?」



この状況をどうにかする案は思いついているのなら、先に言え。

……愛良は、非常に嫌そうな顔はしているが。



「どうするんだ?」


「うーん……龍雅が集めたってことにしたら、みんな納得するとは思うんだよねー。イケメンで魔力も無駄に多くて、ヘタレで私たちに敵わないけど一応それなりに強い方だから」



……散々な評価だなオイ。

まぁ俺も同意見だが。

ついでにその評価にストーカー予備軍とかも付け足しておいた方がいいと思うぞ。



「なるほどな……で?奴にはどうやって思い込ますつもりだ?口裏を合わせるわけではないんだろ?」


「まぁ見てなって」



ニヤっと笑みを浮かべてどこかに転移した愛良。

まぁすぐに戻ってきたが。

戻ってきた愛良の片手にはボロボロになって気絶している奴の足が掴まれていた。

さっき俺とコス王で傷だらけの奴に塩水をかけてG地獄に放置してきたから、全身びしょ濡れの体中にGが這っているがな。

とりあえずは愛良。

そのGが這いつくばっている奴は捨てろ。

触るな。

そしてそのまま俺に近づいてくるんじゃないぞ。

そんな一定の距離を保って近づかない俺を気にすることなく、愛良は奴の傍に座り込んだ。



「とりあえずは龍雅の怪我を全部治してー。ついでにボロボロかつ塩水でびしょびしょの服の損傷も元に戻してー。よし、元通り!」


「……そうか?」



確かに怪我とか服とかは元に戻ってはいるが……。

体の所々にGが這い回っているに、そこは気にしないんだな。



「というか、治すならショッピリンを使えよ」



あの衝撃的な味と、一瞬の走馬灯を奴も見ればいいのに。



「え、やだ。ショッピリンを作るの、手間暇かかるんだから。この子に使うにはもったいないよ。体力まで回復させる気ないし」


「……」



キョトンという感じであっさりとそう言う愛良。

手間暇かけて作ったショッピリンを使ってくれるほど俺たちのことを気にかけていると喜ぶべきか、いっそ気にかけてもらっていない方がよかったと悲しむべきか……。

どっちのがいいんだ?

……まぁ、俺は半ば真剣に考えていても、当の愛良はすでに意識は奴に戻しているんだがな。

……別に空しくなんかないからな。



「よし、それではー……」



せっかくほぼ元に戻したヘタレ勇者の足を掴んで宝箱の山の元へと馬鹿力で引きずる愛良。

もちろん奴の顔を地面に擦れるようにして。

そして宝箱の山の前まで来ると、いまだに気絶している奴を投げ捨てた。

宝箱の角が奴の頭にぶつかるようにして。



「へぶっ!?……い、痛い。あれ……ここは……?」



ちっ……意識が戻ったのか。

いっそ永遠に寝ていればいいものを。



「……って、この宝箱の山、何!!?」



今気づいたのか。

お前、だいぶ呆けていたぞ。

これが戦闘だったら間違いなく死ぬな。

というか、人の食い物盗ろうとする奴はいっぺん死ね。



(……カイン、結構黒いこと考えてない?)


(気のせいだろ。黒いも何も、事実しか考えていないからな)


(……。ま、いいか。とりあえず、私が今からすることに突っ込まないでね?突っ込んで来たりしたら、あの3人と同じ運命を辿るから)


(絶対突っ込みません)



むしろ、口も開かないのでやめてください。



(ならよろしい)



絶対に話さないことを誓ったはいいが、愛良は何をするつもりなんだ?

俺が内心疑問に思っていると、愛良は奴に近づいた。

……胡散臭いほど満面な笑みで。



「龍雅、すごいね!一瞬でこんなに宝箱を集めるなんて、見直したよ!」


「え?愛良?僕、こんなに集めてなんか……」


「何言ってるの?今、私の目の前でやったよ?眠たそうな目だったから、覚えていないの?龍雅、大丈夫?」



本当に心配そうな表情で奴の顔を覗きこむ愛良。

ついでに奴の額に手を当てている。



「だ、大丈夫だよ?うん、愛良が言うなら、この宝箱を集めたのも僕なんだよね?愛良、心配かけてごめんね?」



それに対して、顔を赤くしながら嬉しそうに笑っているヘタレ。

……大丈夫なら、とっとと立てよ。



「龍雅が大丈夫ならいいの。龍雅のおかげで、Sクラスは確実に優勝だよ。ありがとうね」


「いいんだよ。愛良やみんなのためだし」



お前はそれほど貢献していないんだから、さも当然のように言うなよ。

というか、中身の写真が手元にないことに疑問を抱け。



「私たちは生徒会の仕事で忙しかったから、全然集めれなかったの。龍雅がこんなに集めてくれて助かったよ」



なぁ、愛良。

俺たちは最初から集める気なかったよな?



「生徒会の仕事、大変そうだね。僕、手伝おうか?」



手伝うな。

むしろ近づくな。



「大丈夫だよ。龍雅は勇者なんだから、みんなのためにもたくさん修行して強くなってね」


「愛良……うん!僕、頑張るよ!全帝と操者ぐらいになれるように頑張る!そしてこの世界を救ってみせるからね!」



俺たちぐらいになろうと思うなら、口だけじゃなく常に修行してろ。

……突っ込まないというのは、かなり苦労するな。

思わず口に出そうになるが、その度に愛良の足元にいるシリウスからの眼光がやばいから必死で黙るけど。

俺だって口を開かないようにしているんだから、そこまで睨まなくてもいいだろうが。

それにしても……。



「龍雅、立てる?もうすぐ親睦会が終わるから、広場に戻ろう」


「うん。……愛良と仲直りできてよかった。愛良が側にいてくれないなんて、寂しくて僕死んじゃうよ」



人間、そのくらいで死んでたまるか。

というか、いつまでも愛良にへばりつくな。

さっさと離れろ。



「龍雅……」



愛良もそんな切なそうな目をするなよ。

奴が勘違いするだろうが。



「大丈夫。人間そんな簡単に死なないから」



奴の意味の分からん言動にイライラしてきたのとほぼ同時に、愛良がさっきの切なそうな目はなんだったんだ!?というぐらいの笑みを浮かべた。



「私、片付けあるから先に戻ってね」


「え、愛良!?」


「強制転移」



問答無用で強制転移で飛ばされたヘタレ。

急に掌返した扱いだな。



「……あ、5分経ったのか」


「イエス。イケメンには5分しか優しくしてあげれません。演技でも無理」



こいつ、悪女の才能あるんじゃないか?

奴は完璧に騙されていたぞ?



「……とりあえず、奴に対してあまり演技で接するな。調子に乗ってくるぞ」



見ていてイラつくし。

俺の心の平穏のためにも、二度とやらないでもらいたいものだな。



「分かってるよ。だからやりたくなかったんだよねー。明日からまた龍雅がくっついてきそうだし。でもまぁ、これでとりあえず点数は誤魔化せるよね」



にっこり笑って済まそうとする愛良。

……それだけで済ましてほしくないんだが、言っても無駄だな。



「お前が問題ないならもういい。俺たちもそろそろ戻るぞ。罠に引っかかった生徒たちもそろそろ復活しているだろうし」


「うん。その前に、魔導具だけ回収しておくね」



愛良が軽く右手を上げるだけで、ここにある空箱の山にさらに追加ですべての宝箱が集まった。

それを全てボックスではなく別離空間に収納する。



「よし、終了。じゃあ戻ろ」


「ああ」



何か忘れている気がするが、別にいいか。

とっととこの親睦会を終わらせよう。

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