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63.プライドなんて、必要ありません

◇◇◇◇


暴走したコス王の転移魔法で強制的に連れてこられた広場。

そこは、空っぽになった宝箱が大量に山積みになっていた。

そしてその中央で、まだ開けていない宝箱の山を開けて行っている二人の男。



「なぜだ!?なぜ幼女様の写真がないんだ!?神聖な幼女様の写真を景品に入れないとはどういうことだ!?」


「……幼女の写真が欲しいなら、まず探し場所間違ってるしー。……俺、帰っていーい?」



幼女がどうたら叫んでいる黒髪赤い目の男。

そいつに付き合わされた様子の灰色の髪と黒い目をした少年。

間近に転移してきたというのに、こちらには一瞥もくれずに次々と宝箱を開けて行っている。

……愛良の予感、的中だ。

こいつらは何なんだ?

というか、こいつら制服を着ていないが生徒なのか?

まだ高等部に上がって1か月ほどだが、会長という立場もあって、全生徒の顔はだいたい把握しているんだが……こいつらは見たことがない。



「愛良、こいつら知っているか?」


「知らないなぁ……生徒じゃないのは確実だけど、どうしてあの二人がイベント用の腕輪を付けて、なおかつSクラスのポイントとして入っているのか疑問」



首を傾げながら不審者の顔を凝視する愛良。

確かに言われてみれば、奴らの腕には今回のイベント用に大量に作った腕輪が身に付けられている。

……大量に作り過ぎたから、数は把握していない。

余分めに作ってはいるが、俺たちの部屋に置いてあるものをどうやって手に入れた?

とにもかくにも、生徒じゃないのなら不審人物として捕まえるべきだよな。



「よし、捕まえるか」


「……がんばれ。私は変態とは関わりたくないから遠慮しとく」


「おい」



一定の距離を保って、シリウスを抱きかかえたまま離れる愛良。

何一人だけで避難してんだ、お前は。

俺だって変態と関わりたくはないんだぞ。

ただ、さっき無理やり転移してシメたコス王みたいに、放っておいたら余計にめんどくさそうになる元凶は早々に手を打っておく方が後々楽だからやるんだぞ。

じゃなきゃ、誰が変態に自分から関わりに行くか!

そんな俺の想いをよそに、愛良はシリウスを抱えている方とは逆の手で親指を立てた。



「カイン、ファイト」



全部俺に押し付ける気満々だな、おい。

……まぁいいけど。



「シリウス、グレイプニールを借りるぞ」



この変態達が何者かは知らないが、俺たちの部屋にあったものを手にしている時点で人外である可能性が高い。

それならば、絶対捕縛の能力を有する神器で拘束した方が無難だ。



「……わう」プイ



神器ではあるが、現在ではシリウスの首輪化しているグレイプニールに触れると、愛良に抱っこされて揺れていた尻尾が途端にピタッと止まった。

この危犬……そこまで俺に使わせるのが嫌なのか。

まぁ渋々という様子だが、拒否はしていないから使うけど。



「グレイプニール、あいつらを拘束……」


「あ、こいつらに腕輪渡したの俺様でっす!」



俺の言葉を遮るようにして声を上げたのは、さっきシメたのにもう回復したコス王。

……コス王がこいつらにイベント用の腕輪を渡した?

俺たちが作った腕輪を?



「……このボケを今すぐ縛りあげろ!」


「いぎゃっ!?俺様、拘束プレイの趣味はねぇぞ!」



グレイプニールでぐるぐる巻きになったコス王がほざいているが知らん。

ボケの頭を片手でつかんで、顔を覗き込む。



「俺にもそんな趣味ないから安心しろ。で?どういうことだ?」


「なーに人が必死に作った魔導具を勝手に渡しているのかなー?しかも明らかに変態っぽい人物にー」


「ちょ、お嬢ぉお!?ごめんなさいぎゃああああ!!!」



ほら見ろ。

勝手なことをするから愛良がキレたぞ。

とりあえず、このボケは愛良に任せたらいいな。



「おい、お前ら。何者だ?」



コス王を締め上げているぐらいになって、ようやくこちらに視線を向けてきた不審人物2名。

しかし、この二人は俺を無視して愛良に現在進行形で締め上げられているコス王を指さした。



「あ、冥界神だー。やっほー。拘束プレイで喜んでいるなんて、相変わらずの悪趣味だねー。気持ち悪ーい」


「てめぇこの腐れコスプレ野郎!!幼女様のレア写真なんてねぇじゃねぇか!!」


「いやぁあ!!お嬢に凹られたおかげで俺様のライフはすでにゼロよ!!これ以上苛めないで!!」



俺達をそっちのけで盛り上がる3人。

こいつら、いったい何なんだ?

コス王の知り合いの時点で人外決定だよな?



「……グレイプニール、コス王を含めたこの人たちを今すぐ捕縛。パール、設定能力でこの人たちのあらゆる能力を封印」


「「「え?」」」


「あ、愛良?」



にこにこと顔に笑みを張り付けたまま、次々と指示を出す愛良。

……お前、実は相当キレてるのか?



「さっきから人のこと無視してくれまくってありがとう。お礼に新しい世界への扉を開けてあげるね」



きらきらと輝かんばかりの笑顔を浮かべて、両手を胸の前で組んで首を傾げる愛良。

仕草は可愛いのだが、お前の背景が真っ黒に見えるのは俺の気のせいか?

新しい世界の扉って何なんだ。



「「……はい?」」


「お嬢!?何する気!?」


「……3人ともイケメンでよかった!心置きなく送れるよ」



どこにだ。

どこに送って何をするつもりだ。



「じゃ、まとめてアベータ・カーズさんの入院先へ強制転移」


「「「へ?」」」



縛り上げられた変態共が強制転移で消えて数秒後、どこからか奴らの『ア――――ッ!!!』という絶叫が聞こえた気がした。

……気のせいか?



「よし、これでスッキリ!」


「奴の名前は俺に多大な精神的ダメージを与えるため言わないでくれ」



本気で奴の青ツナギを思い出したじゃないか……。

俺、もう二度と奴に関わりたくないんだからな?



「……一緒に送ってほしかった?」



なんでそんな不思議そうに首を傾げながら、その結論に至ったんだ。

意味が分からないだろうが。



「やめてくださいお願いします」



愛良の目の前で土下座して必死に謝る。

プライド?

そんなもの、愛良と契約してしまったその日に捨てている。

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