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54.勇者の定義が知りたい

一言:勇者が気持ち悪いので閲覧注意

◇◇◇◇


自ら頭をモニターに打ち付けたっきり動かない愛良。

さすがの愛良でも昔の写真は精神的ダメージがでかかったか?

普通に可愛いとしか思わないが。



「愛良……ちょっと落ち着け」


「お嬢!大丈夫だ!俺様ナイスバディにしか興味ねぇから!幼女は範囲外だぜ!!」



俺がとりあえずモニターに頭を埋め込んだまま動かない愛良の頭を回収すると同時に、なぜか親指をたてながら歯を見せて笑うコス王。

こいつは何言ってやがる?

意味が分からん。



「よし、お前はもう一回シリウスと散歩に行って来い」


「がう!」



散歩する気満々な様子のシリウスが、首輪のグレイプニールをゆらゆらと揺らしながら吠える。

……愛良に余計なことを言った奴を制裁するときだけは、シリウスも俺に対して素直だよな。



「ごめんなさい。本気でごめんなさい。ちょっとした出来心だったんです。好きなのに好きじゃないをアピールして気を引こうとするツンデレ的なことをやってみたかっただけなんです。いや、普通にボン・キュ・ボンも好きだけど」


「訳がわからん」



本気でコス王が言っている意味が分からない。

何で俺はこいつを使い魔にしたんだ……。

……俺のうっかりミスだったな。

自業自得か……。



「うお、いきなり落ち込んでどうしたんだよカイン?さっきの所は突っ込みいれろよなー。ノリ悪い……。お嬢凹んでて突っ込んでくれないし、カインはそもそも乗ってくれな……い?」



反応しない愛良と自己嫌悪に陥っている俺たちに対して、ボヤいていたコス王の言葉が唐突に止まった。

……何を見て硬直しているんだ?

コス王が凝視しているのは、あのヘタレ野郎を映し出しているモニターの一つ。

ヘタレ野郎なんか見て面白いか?

疑問に思いながらコス王のようにモニターを見てみると、あの屑が手に入れた愛良の写真を手に持ちながら、ニマニマと笑みを浮かべていた。



『えっへっへー。愛良の写真が手に入って嬉しいなぁ。突然この世界に連れてこられたから、ほとんどの写真をあっちに置いたままで、カバンに入れていた分しかなくってショックだったんだよねー。この世界に来てから、愛良ったら全く写真撮らせてくれないし。頑張って愛良のアルバムをまた作らないと!』



そう意気込んで独り言を延々と口にする屑。

……お前、実は愛良のストーカーなのか?

勇者じゃないだろ。

こいつが勇者とか、歴戦の勇者という職業についた偉人たちに対しての冒涜だろ。

なんでこいつが勇者なんだ……。

しかも、あのにやけ面……非常に不愉快だ。

気色悪い。

これと幼馴染で、愛良はよく平然としていたな。

普通は縁を切ろうとか考えないのか?

……ああ、当の本人は別のことでショックを受けて、あの屑の様子なんか見てもいなければ内容を聞いてすらいないのか。

あいつの悪運を見ていると、こういった場面を愛良がたまたま見ていないから気づいていない可能性もあるか。

はぁ……屑を見ているだけで、精神的に疲れるな。

こんなのを凝視しているコス王は、変態だから平気なのか?

そう思いながらコス王を見れば、唇を戦慄かせながらゆっくりと口を開いた。



「あれは……あれは、お嬢の巫女コス!?お嬢もコスプレ好きだったんだな!?」


「いや、違うだろ」



そっちか。

お前が見ていたのはそっちなのか。



「その写真は俺様のだ―!」


「おい!?」



あの馬鹿……止める間もなく、空いたままになっていた空間の歪から外に出るなり、屑の所に転移して行きやがった。

あー……余計にめんどくさいことになるんだろうなぁ……。

モニターに視線を戻せば、屑の前に立ちはだかっているコス王の姿。



『その写真を俺様によこせ!!』


『ちょ、何君!?愛良の写真は僕のなんだから、絶対に渡さないんだから!』



愛良の写真をかけて睨み合っている屑と馬鹿。

……俺、もう知らん。

愛良を復活させることにするから、お前らはお前らで好きにやっててくれ……。



「愛良、写真ならコス王が回収に行ったぞ。そろそろ正気に戻れ」


「……ほんと?」


「ああ」



頬を軽く叩くと、涙目のままだが正気に戻った様子の愛良。

大暴走していたが、コス王は回収に行ったには違いないよな。

その手に入れた写真を、もしかしたら愛良に返さないかもしれないが。

それでも、あの屑が持っているよりかはマシだろ。

コス王の趣味に口出しするつもりはないし。



「とりあえず俺たちもそろそろ戻っていないと、親睦会に参加しないとサボっているのがバレる。一度戻るぞ」


「……分かった」



なんか微妙に愛良が涙目なのに目が据わってるんだが、これで大丈夫なのか?

衝撃が強すぎたのか、一人で立てない様子で俺の腕にしがみついているんだが……。



「パパ殺すパパ殺すパパ殺す……」


「……」



俺の腕にしがみつきながら、ひたすらそれだけを繰り返す愛良。

よし、お前は一度自分の馬鹿力を自覚してくれるか?

俺の腕が痛い。

頼むから馬鹿力を忘れないでくれ。

現在進行形で、俺の腕の骨がミシミシと音が鳴っているから。

まぁシリウスの恐怖の散歩コースに比べれば、腕の骨が粉砕されるのも我慢できるんだがな。

……できれば握りつぶしてほしくはないが。

握りつぶされたら握りつぶされたで回復魔法をかけたらいいよな。

とりあえず今は自分の腕に小さい雷撃を放って痛覚を麻痺させる。

……よし、完全にマヒして痛みがなくなったから問題ないな。



「さっさと戻るか」



子犬に戻って愛良の足元にすり寄っていたシリウスを回収して、さっさと転移した。

……場所とかは深く考えずに。



「……やってしまった」


「うっかりミスを直せって言った傍からこれなんだから……」



俺たちが今いる場所は、さっき散々モニターで見ていた森の中。

地面が大きくえぐられた穴の中。

足元には無数に蠢く黒い虫。

簡単に言うと、気絶した王女たちのいる穴の中というわけだ。

もちろん、あの中に足を付けることなんてごめんだから、浮遊の魔法で浮いてはいるが。



「……カイン」



隣で同じように浮いている愛良が怖い。

俺のうっかりミスを前にして、さっきまでの衝撃からきれいに立ち直ったらしい。

優しいとさえいえる呼びかけが怖くて仕方がない。



「もう君のうっかりミススキルはどうしようもないね」


「……すいません」


「うん、そのスキルを直そうという考え方が間違えていたんだね。けど、かなり腹立つから反省しようか。ちょっとここで立っててね。魔力無効化」


「……は?」



愛良が言い放ったと同時に、浮遊の魔法が解けてG地獄の中に落ちた俺。

高さはなかったから、足から着地はできたが……魔力無効化を魔法陣なしに発動するとか、普通は無理だろ!?

……あ、でも神族として目覚めた愛良なら普通なのか。



「とりあえずこの中にずっといるのは可哀相だから、無効化の効果は3分に設定しておいたから。それまでは頑張って乗り切ってね」


「マジか?この中を3分もか?」


「そう。反省するには短い時間&無傷で終れるってことにありがとうって言ってくれる?」


「いや、言えるわけねぇだろうが」



なんなんだよ、このG地獄に3分もいろって。

さっきから靴の上を奴らが通り過ぎるだけでも背中がゾクってするのに。

頼むからやめてくれ!

なのに、愛良はすでにこっちに興味を失せたような顔で別の方向を見ている。

やばい、こいつはマジでこの王女共と一緒に俺を放置する気だ……。



「おい愛良!!?」


「あ、3分の目安が分からないよね。よし、ここにカップめんと砂時計を置いておくね。3分経ったら食べていいからね?」


「あ、分かった……いや、そーじゃないだろっ!!!」



あまりにも自然にカップめんと砂時計を空間を切り取った空中に置くから普通に返したが、違うだろ!?

確かにあのいんすたんと食品というのは、まぁまぁ美味いから嫌いじゃないが!



「じゃ、3分間ガンバ!」



置いていかないでほしい俺の目の前で、あっさり転移して消えた愛良。



「……この冷血絶壁女!!!」



思わず叫んだ瞬間、大量の岩石が落ちてきたのは余談。

……なぜ自分が書くと、勇者は気持ち悪い変態ストーカーになってしまうのか?

最近、真剣に悩み中。

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