45.悪戯って、楽しいですよね
◇◇◇◇
「あー。今日も一日終わったぜ!疲れたー!」
「グレイは寝ていただけでしょう?」
「起きてたの……ごはんの時、だけ……」
「逆にここまでぐーすか寝れてすごいよねー」
「お前は夜行性か?」
ただいま授業が終わったホームルーム中。
あ、ちなみに昨日からずっと龍雅休みだよ。
さすがにあんだけボコったら、精神的に大ダメージだったみたいだね。
これで心を入れ替えてくれることを祈ってます。
「あー……なんか連絡事項あったんだけど……なんだったかなぁ……?ま、いっか」
とりあえず、ホームルームとか先生が伝えなきゃいけないこと忘れているし、聞いていなくても問題なしですね。
先生。職員会議に出たんなら、ちゃんとメモは取っておこうね?
そんなんだから、連絡事項がうやむやになっちゃうんだよ。
「おーい。シドウ、ルディス」
ホームルームにならないホームルームが終わって、帰宅準備をしていると、名前を呼んで手招きするソル先生。
嫌な予感がしてきましたな。
そしてそんな予感がする私たちに向けて、先生は持っていた書類をひらひら。
「帰る前にちょっとこの書類、生徒会室に持っていてってくれ」
「いや」
「めんどくさい」
即答。
なんか普通に教師がしないといけない仕事押し付けてくるんですもん、この先生。
学園では真面目っ子のカインですら最初は敬語だったのに、もう先生に向かってため口だからね。
「いやいや。まぁそう言うなって。俺を(学年主任から)助けるためだと思って(生贄として)逝ってこい」
「「……」」
最後の字、絶対なんか違いませんでした?
しかも間に、色々意味深なのが含まれてた気がするんですけども。
……絶対行きたくない。
「先生、自分の仕事を生徒に押し付けるのやめようよ」
「第一、毎回俺たちばかりに押し付けるのは不公平だ。他の暇そうな奴らにしろ」
「残念だな。他の奴らはすでに逃亡済みだ」
思わず文句を言ったのに、ニヤっとした笑みを浮かべる先生。
……はい?
ちょいとクラスメイトのみなさんよ?
いつの間に教室から出て行ってたわけ?
え、てかラピスたちまでいないし。
うわぁ……やらざるを得ない、みんなに売られた状況……ドナドナ思い出しちゃったじゃん。
「う~……ラピス、ルナぁ……ひどいや」
「グレイの奴……」
「な?諦めて行って来い。頼むわ」
……爽やかに笑うソル先生に、純粋に殺意が湧きました。
「しぃちゃん、ゴー!」
「わうう!」
「いってぇええええ!?」
とりあえずプリントもって教室出る前にしぃちゃんけしかける。
その間に、教室の出入り口にトラップ式の魔法陣をばれない様に設置。
カインはカインで廊下の壁の天井近くにある物をセット。
よし、準備完了。
「しぃちゃん、戻っておいでー」
「わう!」
「シドウ!?俺に謝罪はないのか!?」
「ないない、知らない。カイン、行こー」
「ああ」
「待てごらぁあ!!」
しぃちゃん抱っこしてカインと一緒に教室から出ると、般若の形相になった先生が勢いよく追いかけてきた。
だ・け・ど。
残念でした。
「は?……んなっ!?へぶっ!げっ!?どわっ!?」
よし!
じゃあ説明するよ!
先生が教室を出ようとした瞬間、足元の床が凍り付いてすってんころりん。
そのまま滑って廊下の壁に顔から激突、止めに廊下の天井近くにセットしておいた泥が入ったタライが壁に衝突した衝撃で先生に直撃。
結果、泥まみれで頭回している先生の出来上がりです。
「わーい!悪戯、大☆成☆功!!」
「魔法も使い方次第だな」
思わず喜んで手を打つ私と、感心して泥だらけな先生を見下ろすカイン。
トラップ式の魔法って今まで誰も考えなかったんだって。
こんなに面白い悪戯ができるのに、もったいないよねー。
「あー……楽しかったー」
笑った笑った。
笑い過ぎてお腹がピクピクする。
悪戯が大成功すると楽しいよね。
「今回は単なる初級魔法だったが、上級、最上級でやれば戦でも使えそうだな」
「そりゃ戦をする場所が決まっていたら、ある程度の準備はできるんじゃない?けど、今回は初級中の初級だったからすぐにできたけど、そのぐらい威力を求めるなら、かなり時間がかかると思うよ。てか、学校内でそんな物騒な話持ち出さないでよねー」
何平和な学園の話で物騒な話を持ち込んでるんですか。
誰かに聞かれたら変に思われるでしょうが。
「う……すまない」
本当にうっかりさんだよねー。
ま、いいや。
さっさと生徒会室にこのプリント持って行って、さっさと帰りたいし。
今日の晩御飯は何にしようかなー?
……ちなみに。
先生は、たまたま通りかかった学園長のおじいちゃんに大爆笑された後に写真撮られたらしい。
学園長のおじいちゃん、ナイス!!




