43.再教育のためにシメましょう
龍雅の無自覚傲慢にイラってきた風帝、水帝、雷帝。
あれは怒って当然だ。
「貴様!もう許さん!!風よ唸れ!!サイクロン!!」
「後悔するがいいわ!!水よ押しつぶせ!!スパニッシュウェイブ!!」
「……オイタが過ぎるぜ?雷よ集え、ライトニングブラスト」
ふむふむ、さすが帝たち。
詠唱短縮で最上級魔法を放ったね。
鋭い竜巻に押し潰さんとする水圧、襲い掛かる雷。
あの子はどう対処するのつもり?
そう思いながら見ていたんだけど……幼馴染パワーだからかな。
『あれ?こんなもの?』とでも言いたげな顔をしてるのが、マント越しにも分かったんだけど。
「えーと……サイクロン、タイダルウェイブ、ライトニングブラスト」
うわ、嫌味……。
詠唱短縮していた帝たちに対して、同じ魔法を詠唱破棄で相殺したし。
詠唱って結構大事なものだから、詠唱短縮、詠唱破棄、無詠唱するごとに威力は落ちていくもの。
詠唱短縮した魔法を詠唱破棄した魔法が相殺したってことは、それだけ龍雅の魔力が強いという証明。
だけど、それは単に魔力が多いからできたというだけのこと。
魔力コントロールも経験も、帝たちの方がずっと高い。
現に、魔力が相殺されたことに驚いている帝たちに対して、攻撃せずに待っているし。
相手が止まっている今がチャンスでしょうに、あの子は何しているわけ?
帝たちの今まで積み上げてきたプライドを平然と潰しておきながら、余裕を見せて待っているとか、もう侮辱の域だね。
まぁ、本人はどうせ攻撃してこない相手に攻撃するなんて卑怯なことはしたくないとか思っているんでしょうけども。
甘い上に無自覚傲慢とか嫌だな。
(ちょっと再教育してやろうかな?)
思わず念話で呟けば、隣で結界を一緒に維持していたカインが視線を投げてきた。
(……お前が行くのか?俺が行こうかと思ったんだが)
(カインには悪いけど、今回は私に行かせてくれる?ちょっとあの子の根性叩き直してくる)
勇者だからと言って、甘やかされ過ぎ。
努力しないと追いつけないぐらいの差を味わってもらおうかな。
魔武器であるパールの設定能力で、私の魔力を以前測った時の多さに設定。
つまり、魔法量では龍雅よりも少ない状態。
結界の維持はカインに任せて、結界の中に足を踏み入れる。
「あれ?あなたも参加するんですか?」
3人の帝の攻撃を余裕の表情で避けたり相殺していた龍雅が、一番に私に気が付いたみたい。
それに続いて風帝、水帝、雷帝も気が付いて攻撃の手を止めた。
「3人とも、下がれ。今から操者が白銀の相手をする」
「「「……」」」
カインの言葉に、大人しく下がった帝たち。
さぁ、フルボッコ大会と逝きましょうか……?
「……」
「ひっ……」
あら?なぜかしら?
私が一歩近づくごとに、あの馬鹿が小さく悲鳴をあげて一歩下がっていくのだけども。
「あ、あの……なんか、僕、すっごく嫌な予感がするんですけど……」
「いいからさっさと戦え」
すでに逃げ腰の龍雅に、無情なひと言を浴びせるカイン。
「くっ……ごめんなさい!!テンペスト!!」
ようやく逃げ道がないってことに気が付いたのか、諦めて攻撃を仕掛けてきましたか……。
風と水の混合最上級魔法、暴風雪ねぇ。
どうしよう、全く問題ないのだけど。
予想以上に龍雅が弱くてびっくりだ。
とりあえず、無詠唱で中級の風属性の結界を張って防いで。
「なっ……ウィングウェーブだけで、僕の最上級を防ぐなんて……」
うん、それは単純に君の練習不足だからね?
君の魔法、すごくびっくりするほど穴だらけだから。
最上級の攻撃魔法をを中級の結界で防げることに問題おおありだから。
とりあえず、次はこちらから行かせてもらいますか。
パールを短剣に変化、同時に増幅。
結果、ざっと千本くらいの短剣が龍雅を囲むように現れる。
それを全て初期魔法の浮遊で操って、と。
さて、これを一斉に向かわせたらどう防ぐ?
「な……」
絶句している暇なんか上げないよ?
ほれ、頑張れ。
「くっ……【盾】!!」
迫りくる短剣に、苦し紛れに盾を創造した龍雅。
1つだけの盾を。
「……あいつは馬鹿か?」
カイン、私の代弁ありがとう。
360度関係なしに刺さるように探検を展開しているのに、何であのお馬鹿さんは前だけに盾を創造したわけ?
「ぐぅ……」
防ぎきれなかった短剣が十数本背中に刺さっている。
この子……一度に一つしか創造できないのか。
魔力コントロール練習を続けていれば、創造できる数は増えるのに、練習不足も甚だしいわ。
最初から全部の魔法が使えたからって練習しなさすぎだ。
こんなのに負けたあの3人は可哀相だよ。
王族や周りにチヤホヤされた結果のこいつの今のプライド、叩き潰してやる。
んでもって魔力コントロールから全部一からやり直しさせる。
そのためにも、あの子には一回不死結界の中で死んでもらったほうがいいかもしれないね。
言葉での説得だけじゃ、この子、きっと聞く耳持たないもん。
龍雅の後ろに水属性の下級魔法アクアボールを、前に火属性の下級魔法ファイアボールを作る。
下級魔法といっても、練りこんだ魔力は最上級クラスだから喰らったらタダじゃすまない。
だけど、この子は魔力感知も出来ないみたいだね。
見た目だけで下級と侮っている。
お馬鹿さんだねー。
私がこの二つを選んだのは、別の意図があるのに。
はい、ここで問題です。
冷たーい水にあっつい火を急にぶつけるとどうなるでしょうか。
正解はー。
どかぁぁぁぁあああん!!!!!
正解は温度差によって水蒸気爆発が引き起こされる、でしたー。
正解の人にはもれなくプリンを贈呈しちゃいます☆




