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36.しょーもない理由でした

私としぃちゃんで憐れな死神くんの肩をポンポン叩いていたら、カインが周囲を見回して納得したように頷いた。



「ソル先生が連れて転移したんだろうな」



周囲を見回してみると、確かにソル先生の姿と男子生徒の姿がない。

……先生、私たちのことを囮にしたんですね。

まぁ残された所で何の問題もなさそうだけどさ。



「……そろそろ死神王が来るんじゃないのか?」



あー……この死神くんが出てきた魔法陣から黒い煙が出てきているねー。

とりあえず危ないし、気絶している先生たち+αはみんな強制転移。

よし、これでこのグランドには私たちしかいなくなったね。

カインが入ってこれないように結界&不可視遮音の魔法をかけたし。

これで何とかなるでしょ。



「それで、死神王というのは強いのか?」



死神王が出てきてどうなるか分かったもんじゃないから、探りを入れるカイン。

確かに事前情報があった方がいいね。



「我輩が100人いても勝てんぐらい強いぞ。……変わった趣味をお持ちだが」



ちょ……死神くん、そんな豆知識いらない。

絶対ややこしくなる豆知識ですよね、それ。

どうしよう。

死神王を見てみたくて興味津々だったけど、今は全力で逃げたい。

な・の・に!

魔法陣から出た黒い煙で、視界が遮られてきた。

そんな時に、聞こえてきた声。



「ラン☆ラン☆ルー☆!!」



黒い煙の中から出てきたのは、黄色い服と赤い髪、真っ白い髪をして真っ赤な唇で笑みを作っている道化。



「……いやいやなんで教祖様!!?」


「……あれの下で働いているのか?」


「……言わないでくれ」



私は思わずツッコミを入れ、カインは同情のまなざしを死神くんに投げ、死神くんはがっくりとうなだれた。

肝心の教祖様は、右見て左見て上見て下見て後ろを振り返って首を傾げた。



「アラー☆ドナルドのお友達は、3人と1匹だけー☆?」


「友達じゃないし」


「初見だぞ」


「部下です」


「わん」



教祖様の言葉にそれぞれ即答。

間髪入れずに答えてやりましたよ。

教祖様はしばらく無言で私たちを見比べると一言。



「つまんね」



ふてくされたように言うと、一瞬でドナルドの姿から普通の黒いローブを着た黒髪黒目のイケメンに変化した。

そっちの格好のほうがつまらんし。

何で男なのに黒髪伸ばしてんですか。

しかも超綺麗だし!

羨ましいとか思ってないですよ、こんちくしょー!



「つまんねぇ。つまんねーよ。なんで人間が2人だけなんだ?いつもならもうちょい人数いるだろうが。久々の禁忌召喚だったからテンション上がったし、めっちゃ気合い入れてコスプレしてきたのに、俺イタイ子じゃん」



不機嫌になった様子で舌打ちする死神王。

いやいやいやいや。



「コスプレが趣味って時点で、すでにイタイ子決定だよ」


「……いつもあんな格好で出てくるのか?」


「あの格好だけじゃないがな……」


「……」



カインは涙声になっている死神くんを、無言で慰めるように肩に手を置きました。

なんか、死神くんが可哀相になってきた。

本当にこの人が死神王なんですか?

死神たちは大丈夫?



「あのさー、死神王がなんでコスプレして出てきたの?」


「だってな、俺様が登場するまでの緊迫した中に、空気読まずに乱入した時の凍り付いた空気と冷ややかな目がたまらなく快感なんだ」



若干頬を染めてうっとりと呟く死神王。

つまり、コスプレ好きの変態ということですね。



「……死神くん、乙!」


「強く生きろよ」


「人間に慰められる日がこようとは……(泣)」



いや、本当に同情しますよ死神くん。

こんなのが上司とか最悪ですよね。

オカマがマスターな私たちも人のこと言えないかもだけど。



「あっ」



うっとりと現実逃避していた死神王は、突然何かを思い出したように周囲をきょろきょろと見回した。



「禁忌召喚した奴はどーした?お前らじゃないし」


「うちの担任が連れて逃げたよ?」



私とカインをおとりにして。

後で学園長のおじいちゃんにチクっておこう。

死神くんみたいに、減給されちゃえばいいんだ。



「マジで?何で禁忌召喚したとか聞いてる?」


「知らないし興味がないなー」


「禁忌召喚とかしなさそうな奴だったけどな」



そうなんだ?

私、あんまり顔見なかったから覚えてなかったや。



「聞いてどうするの?やっぱり殺りに行く?」


「いや、教祖様スタイルで大勢の前に出たいだけ」



……今、なんの恥ずかしげもなく宣言なさいましたな。

しかも胸張って。

ほらほら、死神くんがさっきから泣いていますよー?



「そんな理由ですか!?陛下、もう少し建て前を大事に……」


「どっこに行ったんだー?」



死神くんが死神王に涙ながらに懇々と諭すけど、当の本人は聞いている様子なし。

……死神くん、憐れなり。



「教祖様の格好にこだわるねー?コスプレなら何でもいいんじゃないの?」


「だって、高かったんだぜ?特に靴が」


「ああ、教祖様の靴、個性的なデザインでデカいからねー」


「そうそう。あの靴作ってもらうために出張費2回分必要だったんだぜ?俺様のコスプレ費用、もうちょい増やしたいぜ」


「へ~……」



……絶対、死神王の出張費=コスプレ費用だよね。

うん、死神くんたちのためにも黙っておこう。

この可哀相な死神くんが、さらに可哀相になっちゃうから、



「おい、死神王。さっきからお前の部下が泣きっぱなしだぞ」



なんか苦労人同士で分かりあっていたのか死神くんの愚痴に付き合っていたカインが、さすがに手に負えないって感じで訴えてきた。

おおう……ドクロの仮面の隙間から、止どめなく水滴が落ちてるよ……。

そんな様子でも、死神王は気にしないみたいだけどね。



「ん?あぁ、放っておいていいぞー。てか、禁忌召喚した奴をとっとと探しに行けや」


「あ、たぶん死神くんでもこの結界から出るの無理だよ?」



何しろ、死神クラスよりも強いカインさんが張ってるからね!

そう簡単には破られないと思います!



「……この結界を壊してくれんか?陛下が下界にいらっしゃる限り、我輩の給料がどんどん減っていくのだ」


「「……」」



なんつー減額制だ。

思わずカインも絶対に結界解こうかなって思ったはずだよ。

どんだけコスプレ費用が欲しいんだ。

死神くんが憐れすぎる……。

だけど、この結界を解くとややこしくなるのだ。

主に私たちが。



「ちょっと待っててねー。先生にモブが禁忌召喚した理由聞くからー」















◇◇◇◇

禁忌召喚なんてめんどくさいことをした生徒を、死神が他の生徒に気を取られている隙に学園長の所に放り込んできた。

俺が残してきた2人の生徒を思うと、どうしても焦ってしまう。

いくら、あいつらがかなり余裕そうに死神と話していたとしてもだ。

禁忌召喚した理由を聞き出した後、すぐにグランドに戻ってきた。

しかし、死神がいた場所には強力な結界が張ってあり、中に入ることも様子を見ることもできない。

あの二人は無事なのか……?



(ソルせんせー。聞こえるー?)



突然頭に響いた念話。

その声は、俺が今心配している生徒の片割れだ。



(!?シドウか!?今どこにいる!?無事なのか!?ルディスは!?)


(私もカインも無事ー。それより先生、禁忌召喚した子、なんで禁忌召喚したか聞いたー?)



……ずいぶんのんびりした口調だな、おい。

こんだけ余裕そうなら、こいつらは無事な様子だから安心できるが。



(ああ、聞いた。禁忌召喚したつもりはなかったらしい。なんでも、授業が始まる直前に地面に這いつくばってた女子のスカートの中を見た友人が鼻血を出して、それの介抱をした時に血が手に付いたらしい。んで、それに気づかずに自分の血を垂らしたら、死神出てきて唖然としたらしいな)



かつて見たことがない阿呆な禁忌召喚だ。

死神たちもこれを聞いたら呆れて帰ってくれるんじゃないかと思ってしまうぞ。



(……へ~ほ~。パンチラしたお馬鹿さんの巻き添え喰らったって意味ね~。うん、分かったー。死神くんたちにちゃんと説明しておくねー)



は?

死神くんたち?



(ちょっと待て!!お前らまだ死神たちの所にいるのか!!?)


(……)



だー!!

反応しねぇし!!

生徒からは念話できて俺には出来ないって、どーなってんだよ!!?

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