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34.トラウマを掘り返してみました

使い魔召喚はしないと宣言したところで、今は授業中なためこの場を離れるわけにもいかない。

ということで、しぃちゃんを抱っこしたまま使い魔召喚の様子を観察しているんですが。



「グレイの名のもとに我が友となりし者よ、来いやー!!」



いやいや、グレイよ。

最初は真面に言えていたのに、最後が来いやーってダメでしょ。

確かに先生もなんでもいいって言ってはいたけどさ、もうちょっと考えようよ。

ちゃんと召喚はされているけどさ。



「お主が我を呼んだのか?」



現れたのは火炎竜という、火属性の竜。

確か、使い魔としてのランクは上級だったはず。

……だけど、前に依頼で見かけたのより小さいし、まだ幼体かな?



「おう!俺の使い魔になってくれ!」



ノリ軽いなー、グレイは。

竜召喚した時って結構戦闘になることもあるって聞くけど、そんな心配なんて全くしてない様子で、ニカって笑ってるよ。

火炎竜はしばらくそんなグレイをじっと見た後、おもむろに3本しかない指で○を作った。



「オッケー。俺の名前はエンだからよろしくー」



えええええ……君もノリ軽いなぁ。

最初の威厳たっぷりな言い方どこにいったの。

あの子、確実にグレイの性格重視して出てきたよ。

似たもの同士だよ、絶対。

あの子もからかったら絶対に楽しいよ。



「……愛良。さっきから口に出しているぞ」


「カインが結界張ってくれているの知っているから遠慮なく言いました」


「わざとか……」



片手で眉間のシワを揉みながらため息をつくカイン。

あ、ついでに遮音の結界張ってるなら聞いときたいことあるんだった。



「私、カインが召喚するときに、呼ばれたりしない?」


「…………。大丈夫だと思う」



しばらく沈黙してから、そっと私から視線を外すカイン。

声が小さいですよー。

自信がないの丸分かりですよー?

私、かなり不安になってきたんですけどー。

カインの召喚の時に呼ばれたらどうしよう……。

人間だけど人外って思われそうだよねー……。

そうなったら、今は全帝時々鬱帝だけど、鬱帝時々引きこもりにしてやる。



「……たぶん大丈夫だから、やめてくれ」


「無事に終わったらねー」



血の気が引いていくカインさんに、遠慮なく笑いかけた。

無事に終わらなかったら、ただじゃおかないよ?

そんなやり取りをする私の肩を、後ろから誰かがポンっと掴んだ。



「……アイラ、カイン?私とルナの召喚、ちゃんと見ていました?」


「ふえ?」



なんということでしょーか。

まさかラピス様とルナの召喚しているのを見るのを忘れていました。

こわいこわいこわいこわい。

ラピス様が綺麗にニコニコと笑っていらっしゃるのに、とっても冷ややかな空気が伝わってきているんですけど!?



「や、ヤダナー。チャント見テイマシタヨ?」


「アイラ……動揺、しすぎ……。けど、二人には……見てて、欲しかった……な……グス」



ルナが涙目になってるし。

……罪悪感が半端ない。



「わ、悪かっ……ぐはっ!?」



うきゃー……謝ろうとしたカインを後ろから蹴り入れたラピス様、そのまま彼を踏みつけました。

微妙にヒールのある靴の踵で、ぐりぐりと。

そして手に水属性の魔力が集まって、何かを形成していっているんだけど。



「ご、ごめんね?二人とも本当にごめん!私が悪かったので、ルナさん、泣かないで。そしてラピス様、お願いですからその手にある魔力を霧散させてください、いやマジでお願いします。ついでにカインが再起不能になるので、踏むのをやめてあげてください」



マゾでも何でもないカインは、もうすでに泣きかけです。

というより、鬱帝降臨ですから!



「もういやだ帰りたいもういやだ帰りたいもういやだ帰りたいもういやだ帰りたいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」



ほら、もうひたすら謝ってるから、許してあげて。

そしてルナ。

泣き止んでくれるのはよかったんだけど、そこらへんの木の枝で動かないカインをツンツンするのはやめてあげて。

もう見ていてイタすぎるから。

さすがにラピスが怒っているから、しぃちゃんは大人しくしているけどもね。

復活させるのがめんどうになっちゃう。



「……アイラ?次はアイラもお仕置きしますからね?」



にっこり。

そんな効果音を付属させながら、水で形成されたムチを軽く振るラピス様。

いやはや、あの槍の魔武器よりもよっぽどお似合いなんですけど……。

あれでいったい何されるの私……。



「分かりましたか?アイラ?」


「わ、分かりました……」



考えない考えない考えない考えない。

きっと考えた瞬間、立ち直れなくなっちゃう。

気にしないようにしなきゃダメだ。



「ふぅ……では、紹介しておきますね。私の使い魔になってくれたサドツです」



ようやく許してくれたラピスは、後ろに立っていた全身が水色っぽい半透明な男の人を紹介してくれた。

てゆか、名前。

名前がSなんですけど。



「種族は水精霊だ。ラピスのドSっぷりに惚れた。よろしく」


「…………うん」



ドSっぷりに惚れた?

ドSっぷりに惚れたって言った?

この人、やっぱりラピスの同類だ!

いや、グレイの同類かもしれないけど!



「アイラ?何か?」


「何でもないです!!」



うん、私もうラピスに逆らえません。

もう彼女の言葉には常にYESとしか答えません。



「アイラ……」



固まってたら、ルナに袖をくいくい引っ張られた。

あう……ラピス様を見た後だから、癒しだわ……。



「あの、ね……僕の、使い魔……あそこ……」


「あそこ?……」



ルナが指さした方向に目を向けたら、そこにはどんより暗い表情でぶつぶつ言っているカイン。

そして彼の周りを黒い影みたいなのがウロウロと動いている。



「……ルナの使い魔、闇の精霊なんだね」


「名前、シャドウ……カイン……暗いから、居心地がいい……だって……」



ちょ……カインよ。

君の暗さは精霊認定らしいよ。

もうダメダメじゃん。

がんばれよ鬱帝、じゃなかった全帝。

もうどっちでもいいか。



「……それにしても、3人とも全員上級なんだねー。なんか緊張するなー」



いや、別にしぃちゃんがいる時点で軽く上級になんですけどね。

私召喚する気ゼロだし。



「おーい!アイラ、さっさとしなかったから、魔法陣、他の奴らにとられちゃったぞ!!」


「あ、グレイ。いないと思っていたら、魔法陣死守しようとしてくれていたわけ?別に後でもいいから全然いいんだけど」


「そこは素直に頑張ってくれてありがとうって言ってくれる!?」


「ありがとー」(棒読み)


「ぐず……もういいよ」



ちゃんとお礼を言ったのにいじけるなんて、訳の分からない子だね。

それより、そろそろカインを復活させなきゃ。



「カインー。私たち、最後になりそうだし、もう少し離れていようよー」



私たちって結構魔法陣の近くに立っていたから、カインの腕を引っ張って離れようとしたんだけども。



「もういやだ帰りたいもういやだ帰りたいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


「……」



この通り、全然自分で動く気ゼロなカインさん。

ぶつぶつひたすら繰り返してんのって気持ち悪い……。

いっそ引きずっていってやろうか……いや、これで力尽くで引きずって行ったら悪化するよねー。

よし。



「チャッチャラーン☆ボイスレコーダー☆(某猫型ロボットの妹ボイス)」


「なんですか、その声は。どっから出しているんですか」


「かわ、い……」



声真似は得意です。

小さい頃ってアニメ見ながらセリフを真似しまくってたし。

そしてお兄ちゃんたちもハイクオリティな声真似をするから、負けたくなくて無駄に練習しまくったんだよね。

小さい頃のイタイ思い出です。



「これはね、音とか声を録音できるすごーい魔導具なのー(某猫型ロボットの妹ボイス)」


「分かりました分かりました。分かりましたから元の声に戻しなさい」



ひぃい……ラピス様の手に再び鞭が……!!



「イエッサー!戻します!やってみたかっただけなんです!調子に乗ってごめんなさい!」


「可愛かった、のに……」



ルナ、残念そうな声を出して言いますけどね?

止めなかったら私が残念なことになるところだったからね?

そこ分かって?



「で?それをどうするんだ?」



グレイが不思議そうに首を傾げてボイスレコーダーを見ている。

よし。



「グレイ。カインの耳元でこのボタンを押してきてくれる?そうしたらカインは間違いなく復活するから」


「よっしゃー!!カイン、待ってろよー!!」



ボイスレコーダーを持ったグレイがカインのもとに走って耳元で再生ボタンをポチリ。



『俺と……や・ら・な・い・か?』


「うわぁあああ!!俺に近寄るなぁああ!!」



これぞ、ザ☆トラウマ起し。

恐怖で鬱帝になってても、それを上回るトラウマであっさりカインさん復活ー。



「死にさらせぇえええ!!」


「うぎゃあああ!!!」



あ、カインの無詠唱上級魔法をグレイが喰らっちゃった。

だけどカインは手加減しているし、グレイなら死なないって信じてる。

ホント、愛すべきギャグキャラだよね(笑)

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