32.魔武器作成しました
「はい、それじゃあ今から同じクラスの4~6人ぐらいでグループを作ってくださいねー」
学年主任の先生の言葉に、私とカインは自然とラピスとグレイとグループを作る。
4人からで問題ないなら、このままでいいよね。
……そ・こ・に。
「あいらー!7人で余っちゃうから、愛良のグループに僕を入れてー」
「誰がお前なんぞ入れるか。とっとと失せろ」
やってきましたヘタレが。
まぁ、即行でご飯を盗られそうになってから龍雅がすんごく嫌いになったカインが、額に青筋たてて言い切っちゃったんですがね。
私もこの子をグループに入れるのは嫌だから、カインさんに大賛成です。
そして龍雅の後ろからは、あの王女を筆頭にした取り巻きがぞろぞろとついてきている。
「リョウガさん!別にわたくしたちは7人でも構わないとのことですから、離れないでください!!」
「そうよ!ちゃんと先生たちをおどし……許可とったから!」
龍雅の腕に自分の腕をからみつかせるようにしながら抱きつく王女と、キーキー叫ぶ黄色頭のツンデレっぽい女子。
というか、そこのツンデレ娘。
今絶対脅したと言いかけたでしょ。
学年主任の先生、半泣きだよ。
半泣きだけども、恨めしそうに君たちの背中に向かって睨みつけている。
きっと、この子たちの相手ってストレス溜まるんだろうなぁ……。
とりあえずは、この子たちは無視。
龍雅も引きずられて離れていったし、ちょうどいいから視界からシャットアウトして周囲を見回す。
「あー……」
うん、こういうグループ分け作るとき、必ずいるよね。
一人になっちゃう子が。
しかもあの子、王女の我儘で席替えられた子じゃん。
なんか元の世界の私見ているみたい。
うん、嫌なの思い出したくないから誘っとこう。
「ね、一緒のグループにならない?」
「え……」
わぁお、美少女。
肩までの青みがかかった黒髪、赤い瞳はトロンとした垂れ目。
身長は私より頭一つ分は小さいかも。
超絶可愛いのに、なんでこの子一人ぼっち?
「僕、が……いっしょ……いい、の……?」
そしてまさかの僕っ子ね。
おいしい設定、ありがとうございます。
「いいのいいの。むしろ一緒にしたいな」
「……」
あり?
怖がらせないように笑いかけたら、なんか動かなくなっちゃった。
まぁいっか。
この子連れて、みんなの所に戻ることにしよ。
◇◇◇◇
僕に自分から話しかける人、初めてだ。
しゃべるの苦手だし感情を出すのも苦手だから、みんなから距離を置かれていたのは知っている。
「ね、一緒のグループにならない?」
なのに、この子はそんなの気にした様子もなく僕に声をかけてくれた。
僕が一緒でいいのかと聞くと、むしろ一緒にしたいと言ってくれた。
僕にそんなこと言ってくれた人、兄弟以外で初めてだ。
びっくりして動けなくなった僕の手を、あったかい手で引っ張って行ってくれた子。
転入生の……確か名前はアイラ、だったよね。
「愛良、どこに行っていたんだ……って、そいつは……」
アイラといつも一緒にいる人が僕を見てびっくりしている。
うん、やっぱりこの人、あの人だよね。
会えて嬉しい。
「ねーねー。この子も一緒にしていいでしょ?」
「私は構いませんよ。カインも別にいいでしょう?」
「まぁ、別にいいが」
「あれ?ねえ俺は?俺の存在に気づいている?グレイ君は君たちの隣にいるよー?」
「「「知らん」」」
なんか、今のでこの子たちの関係が分かった気がする。
うん、楽しそうな子達みたい。
この子たちに着いていけるかな……。
僕がちょっと不安に思っていたら、そんなの吹き飛ばしちゃうような笑顔で、アイラが手を叩いた。
「そうだ、名前!!名前聞いていなかった!!」
「え……」
名前って、僕の……だよね。
正直に言うの、やだな。
だけど、しょうがないよね。
「ルナ……ダーク……」
僕の家は6大貴族の一つ、ダーク家。
力ないものには、たとえ家族でも容赦なく消してしまう冷血非道な家として、みんなに知られている。
その噂は否定できないどころか事実だし、それを知っているからみんな僕と関わりたくないって思っているのも知っている。
この子は、どうなんだろう……。
「ルナね!私はアイラ!」
僕の家のことなんか、まったく知らないって感じでアイラは笑った。
そっか……この子、転入したばかりで知らないんだ。
だけど他の子達は、やっぱり嫌がるんじゃないかな……。
「カインだ」
「ラピスです」
僕が近づいても、全然嫌がる様子がない二人。
……あれ?
「あ、ルナちゃん。そこでいじけているのはG君だからね」
「ちょっと待ってアイラさん!!?なんなの、その人間の天敵って言ってもいい害虫みたいな呼び方は!?俺の名前はグレイね!グーレーイだからな!!?」
なんかG君がわめいているけど、それより僕はここにいるみんなに驚いていた。
ダーク家の名前を出しても、なんの顔色も変えることなく受け入れてくれたから。
……僕が一番、ダーク家の名前に怯えていたのかな。
最初から自分でみんなの所に行けていたら、みんな受け入れてくれていたのかもしれない。
急には無理だけど、アイラみたいに明るくなれるといいな。
◇◇◇◇
ルナも入れて5人グループを作ったところで、他の子達もだいたいのグループが完成したみたい。
学年主任の先生が手を叩いて注目を集めた。
「今から魔武器作成の説明をしますよー。では、生徒に仕事押し付けて一服していたソル先生から説明してもらいましょうか」
うん、学年主任の先生に見つかって絞られたんですね。
先生の目が虚ろになってて怖いですけど、自業自得。
自分のお仕事は、ちゃんと自分でしましょう。
じゃないと学年主任から真っ黒いオーラがばんばん出ていて怖いので。
「あー……魔武器は、魔鉱石という特別な石に自分の魔力を流し込むことで作るんだ。あと、魔鉱石の純度にもよるが、こればっかりは当たり外れがあるが、まぁ頑張っていいのを選んでくれ。出来上がった武器に名前を付けたら能力も分かる。魔武器が出来たら各担任に報告に来いよ」
「では、各クラスの魔鉱石を一山ずつ用意しているので、一人一つずつ持って行ってください」
そういったとたんに、魔鉱石の山に群がる生徒たち。
うん、残ったのでいいや。
あの中に入るのはめんどくさすぎる。
「私たちは別に後でいいよね」
「ええ、あの中に入るのは嫌です」
「僕、も……」
「別に急がないからな」
他のみんなも満場一致。
……だけど、一人足りない。
「おーい!魔鉱石5つ取ってきたぞー!!」
うん、グレイ君。
私たちの話を聞かずにあの群れの中に、行っていたのね。
「グレイ、ありがと~」
「わざわざ悪いな」
「お疲れ様です、グレイ」
「G君、あり……がと」
あ、まさかのルナにG君が定着していた(笑)
うん、でもいっか。
「いやいやどういたしまして~」
だって、当の本人が気にしていないんですもん。
さっき散々G発言に怒っていたのに、あまりにも自然に言われちゃったから絶対に気づいていないよ、この子。
本当に愛すべき阿呆な子……。
とりあえず、グレイがみんなに渡す前に一回全部預からせてもらう。
ふむふむ。
黒くて固い石。
これが魔鉱石なんだねー。
けど、所々に白っぽい不純物みたいなのがいっぱい入ってる感じがする。
グレイが選んだから仕方ない気がするけど。
よし、現物見たから100%純粋な魔鉱石は作ることが出来るはず。
100%純粋な魔鉱石を創造して、グレイが取ってきたのはボックスに隠しておいて、と。
「愛良?何をしているんだ?……て、お前なぁ」
隣から私の手元を覗き込んで、呆れた声を出すカイン。
ありゃりゃ……カインにバレちゃった。
よし、これは押し切るしかないね!
「はい、カイン。どーぞ?」
「ぐるぅう……」
「……ありがたくいただきます」
文句を言わせずに魔鉱石を持たせる私と、足元でいつでも噛めるようにスタンバってるしぃちゃん。
カインは何も言わずに魔鉱石を受け取りました。
よし、これでカインは問題なしだね。
残りもみんなに配ったし、さっそく魔武器を作りますか!
魔鉱石にー魔力をこーめーてー……。
いっぱい込めて……。
……いつまで込めないといけないんでしょうか?
軽く魔力500万分ぐらいは入れたと思うのだけど。
私の目の前では、カインが同じように魔力を込めながら怪訝そうに顔をしかめているし。
不純物0の純粋な魔鉱石だから?
あ、けどラピスたちはみんなもう作り終わっているか。
うーん……。
ま、いっか。
魔力を込めていたらそのうち終わるはず。
カインもそう思ったんだろうね。
込める量が一気に増えた。
魔鉱石が強い光を放った瞬間、手に残ったのは……
「真珠?」
まさかの武器じゃなかったってオチでした。




