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30.食べ物の恨みって怖いですよね

◇◇◇◇



「はぁ……」



結局なんだかんだ言いつつも、あのヘタレの面倒を見てしまう私は馬鹿だろうか?

いや、別に放置してもいいんだけども、今日は不死結界の中とはいえ、一回殺しちゃっているからねぇ……。

お詫びもかねて今日だけ少し優しくしてあげようと思うのだけども。



「……なんで本当にめんどくさいこと増やすかな、この子は」



目の前ではカインのうどんの器を奪おうとしている龍雅の姿。

龍雅の分のご飯は作ってないって言うなり、さっきからこんな感じです。



「僕だって愛良のごはん食べたい!!」


「知らん。これは俺のだ。とっとと離せ、このヘタレ屑が。言葉が通じていないのか阿呆」



カインがさっきからずっとキレているんですけど。

本人目の前にして罵りまくっている。

そしてその少し離れた所では、プリンを食べているしぃちゃんを興味深げに見ている王女。



「わーふー」


「……それ、おいしいんですの?」


「わーうー」


「……」



じーっとプリンを見つめる王女。

ほんと、龍雅がいるとまだ大人しい子だよね。



「愛良、僕にもごはん作って」


「うどんはないから、別のになるけど……」


「どうしてこの人の分のうどんはあって、僕の分がないの!?僕もうどんがいい!」


「お前、どこまで図々しいんだ?さっさと帰れ」



カインさん、好物のうどんを盗られそうになってるから、龍雅にとっても冷やか。

気持ちは分からないでもないがね。

そんなカインを、龍雅はキッと涙目で睨みつけた。



「君には聞いていない。というか、帰らないからね。愛良と二人きりになんかさせないし。もしも愛良に何かあったら、僕が愛良の兄さんたちに殺されるんだから!」



胸を張って宣言をする龍雅。

いやいやいやいや。



「「無理やり異世界召喚に巻き込んだお前が言うな」」



わぁお。

カインもやっぱり同じことを思ったんですね。



「愛良、ごはん!」



なのにこいつの頭の中はすでに飯のことでいっぱい。

今日くらいは優しくしてやろうと思ったけど……そろそろ、キレてもいいですか?



「王女」


「な、なんですの?」



突然話しかけたからか、プリンに気を取られていた王女がびくっと体をはねさせた。

そんな王女に、ボックスに入れていたプリンをいくつか渡す。



「はい、あげる。だからあの馬鹿をさっさとあいつの部屋に連れて帰って。ついでにコレあげるから」


「これは!?はい!おまかせください!!」



さっきギャーギャーわめいていたから結局渡さなかったヘタレの写真を一緒に渡すと、王女は目を輝かせて胸を張った。



「リョウガさん!お部屋に帰りますわよ!!」


「え、サフィは帰ったらいいよ?僕もこの部屋に住むから」



腕を引っ張る王女に、当然のように言い切る龍雅。

え、何好き勝手言ってんの、この子は……。



「何勝手に決めてやがるテメェ。とっとと失せろ」


「龍雅、さっさと帰って。君ね、明日テストがあるの分かってるわけ?この世界に来たばっかとはいえ、一応仮にも勇者として召喚されたなら、マシな頭をしていたほうがいいと思うけど?」


「あ、そうだった。愛良、一緒に勉強しようよって言いに来たんだった」


「「……」」



おかしいな。

さっきから会話が成り立たないのだけど。

……この子、こんなに会話が成立しない子だっけ?

ただでさえ眠たいのに頭痛がしてきた。



「……私はもう勉強したの。そして今日は疲れているから早く寝たいの」


「あ、やっぱり愛良疲れているの?さっきからテンション低いもんね。大丈夫?僕、愛良の隣の部屋使ってもいい?」


「よくない。出ていけ。今すぐ出ていけ。とにかく出ていけ」


「ほら、リョウガさん。お二人も戻るようおっしゃっているのですから、戻りますわよ?」



カインはそろそろ実力行使にでそう。

そして王女はかたくなに動かない龍雅に若干呆れているし。

というか、世の女子たちは、この子のどこがいいんだろう?

ああ、もう限界。



「……龍雅?今すぐ自分の部屋に帰るか、ア○パ○マンになって窓から放り出されるのとどっちがいい?」


「今すぐ帰ります!さぁサフィ!帰るよ!一秒でも早くこの部屋を出るよ!」


「あ、リョウガさん!待ってください~!!」



帰った帰った。

あー疲れた。

え?何をしたかって?

全開にした窓から龍雅を投げ捨てようとしただけですよ?



「……ようやく帰ったか」



窓から強風が入ってこないように結界を張っていたカインが、ようやく一息つけた様子でため息をついた。



「なんだろう。この世界に来てからあの子のウザい度が上がっている気がする」


「俺は殺意が湧いたぞ」



うん、それは知ってる。

特に、ごはんを盗られそうになっている時の殺気が一番やばかったから。

食べ物の恨みって怖いよね!



「とりあえず、あの子は二度とこの部屋にはいれない」


「当然だ。奴が二度とこの階に来れないように、ちょっと魔法陣に細工してくる」



カインはそういうなり、実行すべく玄関に向かった。

後片付けをしていると、この階全体にいくつもの結界が張られたのを感じた。

転移妨害を中心としたものだ。

うん、龍雅なら魔法陣が使えないなら転移で強引に来そうだったから、正解だと思う。

空間属性は持っていないらしいし、これでもうこの部屋は安心だと思いたい。



「これで奴も来れないはずだ。魔法陣にもこの階に来れないようにしたし、もしも来ようとしても他の階に飛ばすようにいじってきた。転移もできないように結界を張りまくった。これでも奴が現れるなら、最悪ここの空間を切り取ってやる」



うん、この国最強の人がここまでやるって、逆にすごいよね。

もう修復不能なまでに嫌われたよ。



「……奴のおかげで疲れた」


「同じく」



何が悲しくて明日テストなのに、こんなに疲れないといけないわけ?

お風呂に入って、さっさと寝よう。











ちなみに、実力テストの日に、とっても悲惨な顔をした龍雅を見かけました。

我が家に突撃かます前に、自分で勉強をしようという意欲をみせないからだから、自業自得だよ?

お馬鹿な結果でも、私は知りません。

龍雅が部屋に来れないようにしたことで、愛良とカインも部屋に入れなくなったんじゃないのかという質問があったので、説明です。


部屋に移動するために魔力を魔法陣に流すということは、指紋認証と同じことと考えて下さい。

カインは龍雅が魔法陣に魔力を流すと、龍雅の魔力に反応して自動的に別の階に飛ばされるように魔法陣を弄ったのです。

また空間を切り取っても愛良とカインは空間属性を持っているので、別空間でも問題なく移動できるということです。

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