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29.お掃除は小まめにしましょう

「「……」」



ワンフロアが丸ごと私たちの部屋になるとは聞いていたけど、実際に中を見ると予想以上に広くて言葉が出てこない。

二人どころか、あと5人以上は一緒に住んでも問題ない広さだよ。



「もったいない。本気でもったいない。この国はもったいないことが多すぎるよ。財政の無駄遣いもいいところじゃない。税を納めている国民がかわいそう」


「まぁ、ここが作られたのは、200年以上前のことだ。今さらどうこう言っても無駄だろ」


「リフォームしたらいいのに……」


「りふぉーむ?」



私の世界の言葉に、首を傾げるカイン。

だけどすぐに部屋に視線を戻すと、ため息交じりに口を開いた。



「愛良。とりあえず部屋を確認するぞ」


「はーい」



個室が10、かなり広いリビングに、キッチン、浴室にトイレなど……。

家具とかは置いていない。

基本的にこの寮を使うのは大貴族中心だから、家具とかは実家で揃えろってことなんだね。

ちなみに、カインの荷物はリビングに近い部屋に入っていた。

私はとりあえず、カインの隣の部屋にしよ。



「とりあえずは、家具が必要だね。特にベッドと机。後は調理器具も必須。リビングにテーブルとかソファも欲しいね」


「今から注文して持ってきてもらうか」



あっさりそう言うカインさん、結構金銭感覚がマヒしていると思う。

家具一式全部揃えようと思ったら、かなりの高額になりますよ?

普通に一般人の私たちがあっさり注文したりしたら、怪しさ満点です。



「別にわざわざ買う必要ないよ~。ほい、『絨毯』『ソファ』『テーブル』『椅子×4』『カーテン』。あ、しぃちゃん用の『クッション』」


「……創造か」


「せいかーい」



私が想像した通りの家具が、どんどん創造される。

地球に住んでる時もこの属性ほしかったと切実に思う。

これさえあれば、教科書とかボロボロにされてもすぐに出せたもんね!

お兄ちゃん達にこっそりお金借りなくても済んだはず!

……そういえば、お兄ちゃんたちの目の前で、あの世界からいなくなっちゃったんだっけ。

お兄ちゃんたち、心配しているだろうなぁ……。

……考えても仕方ないか。

とっととリビングとキッチンの家具を出してしまおうっと。



「でーきた」



リビングにはテレビとか欲しいけどさすがに番組もないし、そのうち魔導具で作ればいっか。

DVDとかを創造で出したらいいし。



「カイン、他に必要なのあるー?」



リビングが無駄に広いから、家具を置いても物寂しさがあるんだよねー。



「……今はこれぐらいでいいだろう。どうせこれから3年はここで暮らすんだし、徐々に増やしていけばいい」


「じゃあカインの部屋に行こ。ベッドと机、衣装棚は必要だよね?他に何が欲しい?」



家具を創造しながら聞くと、カインは考えるように部屋を見回す。



「そうだな……本棚を頼めるか」


「はーい」



本棚を創造したら、次は私の部屋だね!

ベッドに机、棚としぃちゃん用のお布団でしょー。

あとは、テディベアも欲しい。

等身大のも創造で出せるかなぁ。

地球にいる頃、おっきいの欲しかったんだよねぇ。

お父さんは買ってくれるって言ってたけど、お母さんに高すぎるから却下されて普通の小さいので我慢したんだよなー。



「きゃー出たー!可愛いー!もふもふー!」


「わう?わううー!」



思わず等身大テディベアに抱きついたら、しぃちゃんが『僕ももふもふなのー!』って嫉妬して抗議してきた。

いやいや、一番可愛いのはもちろんしぃちゃんだから、安心してね?

私の部屋はこんなもんでいいでしょ。



「愛良、だいぶ創造したが、魔力は大丈夫か?」



ちょっと心配そうな目で聞いてくるカイン。

うーん……魔力、ほとんど残ってない感じかなぁ。

結構眠たい。



「んー。ちょっと疲れたけど、まぁ大丈夫だよ」



とりあえずはお部屋も出来たし、明日の勉強をしなきゃ。

テスト勉強しないと、結果が悲惨になるのは目に見えているもん。

てことで。



「カイン、今までの教科書とかノートとか見せて」



お隣で荷物整理していたカインさん所に突撃!



「……実力テストだから、どれだけの範囲か分からないぞ?」


「うん、別にいいよ。カイン、どうせ初等部とか中等部の教科書そのまま持っているでしょ?」


「ああ。……ボックスのどこかに入れていたと思う」



ボックスに手を突っ込みガサゴソと漁るカイン。

……思うんだけど、カインはボックスの整理をした方がいいと思う。

絶対何でも入ることをいいことに、考えなしに何でもかんでも入れているんだよ。

だから時間がかかるんだよねー。



「カインー、まだー?」


「あー……」



ガサゴソボックスを漁りながら適当に返事をするカイン。

……時間かかりそうだわ。

しょうがないね。



「私、先に晩御飯の準備しておくから、探しておいてね?」


「おー……」



ダメだこりゃ。

そのうち絶対にボックスの整理をさせるんだから。











ごはんの下ごしらえも済んで、しぃちゃんをモフモフして遊びだしたぐらいで、ようやくカインが教科書を発見した。

……のだけども。



「……この惨状はいったい何?」



カインの部屋が服とか本とか植物とか訳の分からない物(恐らく魔物の一部)などなど、色々な物で埋め尽くされていた。

何でたった1時間足らずで何にもなかった部屋がゴミ溜めワールドに大変身?



「いや、昔の教科書が見つからなくて探していたらこうなった」



ゴミ溜めワールドでも全く気にした様子もないカインさん。

いや、結構カインが無頓着なのは知っていますよ?

1週間だけ住まわせてもらった家の部屋も、結構すごかったのも見ていますよ?

だからって、これはないでしょ。



「……カイン。私、今から自分の部屋で教科書全部読んでくるから、掃除をちゃんとしてよ?」


「ああ。またボックスに片づけておく」



また関係なしにポイポイとボックスに入れようとしたカイン。

それを見て、とりあえずは一回深呼吸。



「ふ~……それをやめて普通に整理整頓をしろって言ってんでしょうがっ!!!」


「がっ!!?」



思わず顔面殴っちゃった私は悪くないです。

カインが壁に吹っ飛んで行ったけど私は悪くないんです。

悪いのは無頓着過ぎるカインです。



「くっ……愛良、急に殴るな」


「じゃあ今からさらに殴るので、構えてください。今朝の龍雅みたいにア○パ○マンにしてやるので」



拳を掌に打ち付けながら笑うと、顔色が青色通り越して土色になったカイン。



「わ、悪かった……ちゃんと片づける」



明日のクラスの反応が面白そうだと思ったけど、こんだけビビってハイスピードで片づけ始めたから許してやるか。

よっぽど龍雅の二の舞にはなりたくなかったわけね。

そいじゃあ、彼は放置して私は勉強をしますか。









「ふ~ん……」



ふむふむ。

理数系は私の世界の方が進んでいるわけね。

これなら別に問題ないかな。

もともと私は理数系得意だし。

覚えたらいいのは歴史と社会、魔法、魔法陣、薬学、政治学ぐらいかなぁ。

ぶっちゃけ、教科書をぱらぱら~って見たらもう覚えちゃったから、問題ないね。

すばらしい記憶力があってよかった。

卑怯とかずるいという文句は受け付けません。

思ったよりも早く済んじゃったし、ごはんを作って早く寝よう!

もう眠たくって仕方ないし。



「カイン、掃除はちゃんとできた?」



リビングに行く途中でカインの部屋を覗くと、さっきよりかはだいぶマシになっているお部屋の姿。

……だけど、まだまだです。



「後30分ぐらいで晩御飯できるから、それまでに終わらせてねー」


「お~……」



返事もそこそこにさっさと動くカイン。

そんなにアンパ○マ○が嫌なのね。

……ま、いいや。

とりあえずは晩御飯晩御飯。

キッチンに行くのにリビングを通り過ぎると、専用クッションの上で丸くなって寝ているしぃちゃんの姿。

時々耳がピクピク動いている。

ほんと、見ていて癒されるなぁ……。

ほのぼのしながら今日のごはんを作り始めること数分。



ピンポーン……



嫌な予感しか感じないインターホンが鳴った。

うん、絶対に龍雅な気がしてしょーがない。

ついでに付属品(王女)もきっとついているに違いない。

ということで、聞こえないフリして放置。



ピンポーンピンポーンピンポーン……



「きゅーん……くわっ」



あ、しぃちゃんが欠伸しながら起きちゃった。

カインも部屋から出てきたし。



「出ないのか?」


「いや、出たくないの」



私が言い切ったところで、鳴り続けるインターホン。



ピンポ―ンピンポーピンポピンピンピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!



まさかのインターホンが連打された。

えー……。



「……うっさいぞ!!?誰ださっきから!!」



あ、延々となり続けるインターホンにカインがキレて玄関に走っていっちゃった。

寝起きのしぃちゃんまでついて行っちゃったし。

うん、まぁウザいのは分かるけど、それぐらい我慢して厄介ごとを招き入れないように無視してほしかったな。



「……はぁ」



もうやだ。

ため息しか出てこないよ。

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