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26.やり過ぎちゃいました

「おーし。人数もだいぶ減ったし、残ったのは3人だな。よし、じゃあお前らまとめて試合しろ試合」



あの龍雅の新しい取り巻き達、ほぼ全員が後半に試合をする予定だったみたい。

ラピスとグレイの魔法のおかげで一気に人数が削れたことにより、私を含めた残った3人でやることになった。

残っているのは男子2人。

金髪のお坊ちゃまヘアーの生意気そうな目をした子と、青髪のそこそこイケメンに部類してもいいかなって子。



「このフォーイ家嫡子の僕にかかれば、何人であろうと同じことだね。さっさとかかっておいでよ」



……なんだっけ?

確か、こういう偉そうにするお坊ちゃまが出てくる本があったなぁ。

あれのキャラ名、なんだっけ?



「はぁ……戦い、それはなんて悲しいことだろう。私のこの美しい顔に傷でもついてしまったら、この世界の財産が損なわれるのと同じことだというのに」



長めの青髪を背中で束ねた方は、自分の前髪を弄りながらしゃべってる。

……自己陶酔が過ぎませんか。



「……あ、思い出した。○フォイとナルシストって言うんだよね」


「おい平民!僕の名前はマルク・フォーイだ!略すな!」



え、いや略したつもりは全くないです。

だけど、この子の名前の響きを聞くなり、歴史上の人物の名前を思い出したよ。



「マルコ・ポーロのパクリ?○フォイでいいじゃん、○フォイで。いいかい?今日から君は親しみを込めて○フォイ君だ。分かったかい?○フォイ君。呼ばれたらきちんと返事をしたほうがいいよ、○フォイ君。聞こえているのかい?○フォイ君」


「マルク・フォーイだ!!」



うん、額に青筋が浮かんできたね。

どうしよう、楽しいかもしれない。

もうちょっとからかってもいいかな?



「まぁまぁ、マルク君。怒りというのは体に毒だよ。まぁ、私の姿を見れば、その怒りも治まるというもの。さぁ!ぞんぶんに私の姿を見たまえ!!」



もうちょっと遊ぼうかと思ったところで、長い前髪を払いながらナルシストさんがでしゃばってきた。

……うざいです。



「黙れ!!ウザイス・ナルシース!!」



動揺のことを思ったらしい○フォイ君が、ナルシストさんに向けて怒鳴った。

この人の名前、どうやらウザイス・ナルシースって言うみたいです。

親御さん、どういう意味を込めて名付けたんだろうか。

この世界に『うざい』って言葉はないの?



「ウザいナルシストか……その仕草で名乗っていたんだね。気づかなくてごめん」


「平民!お前の話は訳が分からん!!」



思わず彼の名前について理解を深めていたら、○フォイ君が今度は私に向かって怒鳴ってきた。

いやだって……別に君たちとまともに会話しようと思っていないですもん、私。

でも話聞いてない私たち相手に会話を成立させようと言う君の頑張りは評価できるよ。



「○フォイ君、乙!」


「……もう許さん!!!食らえ!!【フレイムランス】!!」


「ああ、いきなり攻撃とは美しくないよ、マルク君。みたまえ、僕の美しき水魔法【ウォーターウォール】」


「いや、単なる水結界に美しいも何もないじゃん。ナルシス君」



○フォイ君の放った炎の槍を避けながら、再び自己陶酔に浸っているナルシス君に思わず突っ込む。

彼の目は一体何を映しているんだろうか……。



「くそ!貴様、避けるとは生意気だ!!さらに【フレイムランス】!!」


「ふふ。君は分かっていないね。この結界をよく見てみたまえ!!」



私が避けたことに対して頭に血を上らせる○フォイ君と、それを無視して自分が張った結界の中で胸を張るナルシス君。



「いや、遠目にも結界が薔薇の形をしているのは分かるんだけどね?見た目を強引に変えただけに耐久力低いし、そろそろ○フォイ君の攻撃に耐えれないよ?」



無駄に攻撃を繰り返す○フォイ君自体は完全無視のナルシス君。

確かに水魔法だから青い薔薇に見えて綺麗に見えるんだけどね、その他がダメ過ぎるよ。

ちゃんと普通に壁みたいな結界でいいじゃん。



「問題ないよ。なぜなら、この私の美しい顔に誰であろうと傷つけることなんてヘブッ!!」


「あ、ごめん。つい……」



なんか鬱陶しいことベラベラ言っていたから、つい私の手が反射的に動いちゃった。

ナルシス君ご自慢のお顔は、黄色く染まっちゃってます。



「……なんなんだ、それは?」



○フォイ君は○フォイ君で、魔法を撃つのをやめて私がウザイ君に投げたものを見ている。

ナルシスト君の顔面についているのは、黄色いプルプルしたや~わらか~いもの。

愛良ちゃん特製プリンです!

材料は地球と変わらない物でよかったー。

材料さえあれば、日本と同じものが作れるからね!

ボックスの中に入れていたら時が止まるみたいで、いつまでも新鮮だから大量に作ってたの。

創造でも出せるけど、味気がないからあんまり好きじゃないしね。

よし、やっちゃったついでにプリンを広めとこう!



「プリンだよ、○フォイ君。おいしいんだよ、○フォイ君。そんなことも知らないのかい、○フォイ君。食べてみるかい、○フォイ君」


「マルク・フォーイだと何回言えば気が済むんだ!!?第一!そんな得体のしれないものなんか誰が食べるk「美味しい!!」……え?」



おっと?

顔面に投げつけたからキレるだろうと思っていたナルシス君の目が、なんかキラキラしていますが。

……あれ?



「なんておいしいんだ!!こんなにおいしいものは食べたことがない!!」


「あ、気に入った?じゃあ、あげるから降参してくれる?」


「するするします!!だからください!!そのプリンという美味しいものをください!!」



自分の美貌に酔いしれることよりも、まさかのプリンを優先するというナルシス君。

確かにこの世界のお菓子ってクッキーみたいな単純な焼き菓子だけみたいだから、仕方がないのかもしれないけど……それでいいのか、ナルシストよ。



「……ま、いっか」



最近、これが私の口癖になってきている気がする。

そんなことを思いながら、ナルシス君にはプリンをプレゼントして退場してもらったのだけど。

……どうしよう。

まだ魔法まともに使ってないのに一人減っちゃった。

そろそろちゃんと魔法使ってみようかなぁ…。

唖然と退出したナルシス君に視線をやっていた○フォイ君。

……うん、やめた。

とりあえず遊んで遊んで遊びまくろう。



「よし、じゃあ気を取り直して試合しようか。○フォイ君」


「マルク・フォーイだ!!この僕をさんざん馬鹿にして!!後悔させてやる!!!」


「それは完膚なきまでに叩きのめしてくださいという意味だね?マルク君」


「○フォイだ!!!……あ」



はい、引っかかってくれましたー。



「きゃー!自分で○フォイって認めちゃった!!おめでとう!!今日から君の名前は○フォイだ!!」


「ふざけるな!!」


「そこまで顔真っ赤にして喜ばなくていいのにー」


「僕のどこがどう喜んでいるように見えるんだ!!?お前の目は節穴か!!?【ファイアーボール】!」



ぶちギレた○フォイ君が火球を撃ってきた。

けど、動体視力も上がっている私には意味なし。

身体強化するまでもないね。

目の前まで迫った火球を横にずれてかわせば問題なし。



「やだなー。さっきのフレイムランスも避けていたのに、下級のファイアーボールを避けられないはずがないじゃん。○フォイ君ったら、お・バ・カ・さ・ん」


「こ、この……!!集え炎よ!!焼き尽……がっ!!?」



なんか悠長に詠唱始めたけど、待ってあげる理由もないから一気に近づいてお腹を蹴飛ばしてやった。

……蹴飛ばしてやろうとは思ったけど、意外に飛んで行っちゃった。



「ぐほっ、げほっ……」



ありゃ……苦しそうにお腹抑えて咳き込んでるや。

それなりに手加減したつもりなんだけどなぁ。

練習相手がカインとかオカマスターとか上級ギルドメンバーというタフな人たちだから、もうちょっと加減した方がよかったのかな?

咳き込んじゃった○フォイ君の傍にしゃがみこんで、とりあえずは謝罪。



「ごめんね?大丈夫?降参してくれると助かるんだけど」


「げほっ……誰が、降参なんかするかっ!!」


「っ!?」



顔面に迫った火球を右手で掴んだ。

あっぶなー。

初級も詠唱破棄だけだったから、無詠唱なんてできないのかと思って油断してたわ。



「もー。危ないなぁ。油断していた私が悪いけどさ」


「なっ……お前、僕の魔法を掴むなんて、いったいなんなんだっ!!?」



……なんか、すっごくびっくりした顔されたんですけど。

魔法って掴むことできないの?

分からないことがあったら質問しっつもん。



『……カインせんせー。これって普通の人はできないこと?』


『試合中に念話してくるとか余裕だな、お前』



念話とは、相手の頭に直接話しかける無属性の中級魔法です。

内緒話にはもってこいだよね!



『だって本当に余裕だもん。で、どうなの?』


『同じ属性を持っていて、なおかつ相手より魔力、コントロールが上回っていることが絶対条件だな。ちなみに、出来るのはせいぜい帝レベルだから、一般人には知られていない』


『あらら……そういうことは早く言ってよね』


『いや、まさか今ここでやると思わなかった。帝レベルでも度胸がなきゃ難しいから、やれる奴は少ない』



つまり帝たちは度胸がないヘタレが多いんですね。

何なのこの世界。

ヘタレ率多くない?



「貴様、この僕を相手によそ見とは余裕だな!!」



私がカインの方にまで顔を向けていたのが気に食わなかったみたい。

○フォイ君がギャーギャーわめきながらさらに初級魔法を撃ち込んできた。

それを全部掴むと、自分の魔力を上乗せして一つにまとめる。



「人が他の人と念話しているときに邪魔しないの。これ返すから」



初級魔法のファイアーボールが10発分+私の上級くらいの魔力を練りこんだから、ぶっちゃけ最上級くらいの威力はあるだろうけど、まぁ最悪カインか先生が割り込んでくるだろ。

てことで、遠慮なくぽいっと○フォイ君に向かって投げた。



「なっ!?ぎゃああ!!!」



ものすごい悲鳴と形相で背中を見せて逃げる○フォイ君。



「はい、死なないように頑張ってねー」



うーん……。

なんか、私ってすごく悪者っぽくない?

さてさて。

誰が○フォイ君を助けに来るかな?


……あらら?

誰も来ない……??





ドッカ――――ンッ!!!!!





「……えー……」



まさかの誰も助けに来ないってオチでした。

○フォイ君、死んじゃった?

いや、途中からカインがここの魔力相殺の結界に追加でなんか足していたのは気づいているけどさ。

不死結界とか追加したんだろうけどさ。

先生も一応教師なんだから止めに来ようよ。

仕事なんだからさ。



「せんせー?この場合ってどーするの?」


「あー、そーだなー……。まぁ、ルディスに途中から不死結界を追加させといたから問題ないだろ。とりあえずはルディス。結界を解いてくれ」


「はい」



カインが結界を解くと、茫然としてへたり込んでいる○フォイ君と、なぜか龍雅が倒れていた。

……なんでこの子がいるの?

思わず首を傾げた。

だってこの子、あっちでハーレム共と一緒に気絶していたよね?



「お前が殺る直前に割り込んでいた。こいつを守ろうとして結界を張っていたが、それほど強度のある結界ができずに巻き込まれた」


「……わぁお。カインさんが不死結界張ってなかったら、幼馴染兼この国の希望をぶっ殺しちゃうところだったのね、私」



真面目にカインには感謝だわ……。

よかった、幼馴染を社会的にならともかく、実際的に殺したくなんかないから。

ホッとしたー!!



「カイン、ありがとー!!感謝の印に今日の晩御飯はやっぱりカインの好きなごはんにするね!!」



思わずカインの腕に抱きついちゃったけど、安心したからしょうがないよね!?



「じゃあこの前のうどんがいい。あと、煮物」


「うん!分かった!!」



よし!

今日の晩御飯は腕によりをかけよう!

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