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191.お説教しようと思ったのに、逃げられました

視点はコス王です。

◇◇◇◇


時神の野郎……俺様が必死に追いかけているのに、直前で時間を戻しやがって!

おかげで久々に邪神の神殿の中を走り回ったじゃねぇか!

だけども、ようやく追いついたぞ、チビ共……。

お嬢たちにバレる前に、絶対に回収する!

……そう決めて、追いついたはずなんですが。


「イケメンが気安く触んないでよ、マジでキモイ」

「ぐぅ……」


目つきが鋭いお嬢が、片手でストーカー勇者の首根っこを掴んで地面に押さえつけていました。

……へ?


「我らが可愛い妹に手を出すなど、万死に値する」

「君、さっさと死ねばいいんじゃない?」

「つーか、てめぇウザイから殺す」


えーと……なぜに三つ子までいらっしゃるんでしょうか。

そしてなぜお嬢が押さえつけている勇者をそれぞれ踏んでいらっしゃるんでしょうか。

……あ、でも本物じゃないな。

本物はもっと存在感と力があるし。

あいつらのゴーレム作るとか、一体誰の趣味だよ。


「お、お兄様!リョウガさんから離れてください!」


偽物とは気づかずに長男ゴーレムの腕にすがりつく王女。

しかし、長男ゴーレムはあっさりと王女の手を振り払うと、眉間の皺を濃くさせて王女を見下ろした。


「お兄様?貴様は誰だ。我らの妹はたった一人だ。貴様なんぞ知らん」

「お、お兄様……」


うっわぁ……ゴーレムたち、作られたモデルの時までの記憶しかもってなさそうだな。

あの王女も、性格クズだけど哀れだなぁ。

偽物とは言え、兄に存在を否定されたんだから。


「く……そこまで私を馬鹿にするなんて!絶対に許しませんわ!」


憎しみに満ちた目で長男ゴーレムを睨みつける王女。

前言撤回。

やっぱりクズはクズのままだわ。


「あ、にぃに!」

「わう!」

「冥界神、もう追いついたのー?」


クズ王女の言動にドン引きしていた俺様の耳に届く、自由人なチビーズたちの声。

ゴーレムたちの視界に入らないように広間の隅で避難していたみたいだな。

俺様もゴーレムたちに見つからないようにコソコソと移動して。


「いったー!?冥界神、ひどいー!」


とりあえずは時神の頭にゲンコツを一発。

ひどくて結構!

お前はちょっと反省しろ!


「いってて……冥界神、身体能力強化までするとか鬼ー……」

「今回のチビーズの暴走は、お前の責任も多分にあるんだぞ」


俺様がお嬢とカインに怒られるのを回避するために頑張ることの、どこが鬼なんだ。

むしろまだ軽いだろ。

とにもかくにも。


「……チビーズ。ママに怒られてきて」


俺様的、愛の鞭。

だって、こんなに可愛いチビーズ達を怒ることなんて、俺には無理。

お説教はママにお願いします。


「にゃ!?」

「わうっ!?」

「にょっ!?」

「えっ!?」


頭を押さえている時神を除くチビーズ達、見事なまでに硬直。

その姿、何で怒られるのかが理解できない、とでも言いたげだ。

ああ……やっぱりお嬢たちが育てていると、どっかしらの一般常識が欠落してそうだよなぁ。

……現在進行形でストーカー勇者を占めている、ちょっと前のお嬢ゴーレムほどマシだけど。

あのお嬢ゴーレムはもしかして、この世界に来たばかりの頃のお嬢か?


「マジで君なんなの?滅茶苦茶弱いし、つまんないんだけど。もうちょっと私を楽しませてくれないわけ?」

「ぶべっ!?あ、愛良ぁあ!?」

「気安く妹の名前を呼ぶな」

「うっざいよ、君」

「潰してやろうか?ああん?」

「うぎゃっ!?」


お嬢ゴーレムが締め上げていたストーカー勇者の顔面に拳を埋め込み、吹っ飛んだところを三つ子のゴーレムが待ち受けているというリンチっぷり。

おおー……本物に比べて十分の一も力を引き継いでいないのに、素晴らしいリンチっぷりですな。


「……お嬢ちゃんと三つ子のゴーレム、容赦ないねー。ていうか、平然とあのストーカーを触れててすごーい」


頭の痛みから解放されたのか、ゴーレムを眺めていた時神が拍手をし出した。

やめれ。

それ以上音を立てるな。

ゴーレムたちに気づかれるだろうが。


「ねえねえ、あのゴーレムと今のお嬢ちゃん、性格違わないー?」


首を傾げながらゴーレムたちと、特にお嬢ゴーレムを眺める時神。

んー?

そういや時神たちは最近一緒にいるようになったもんなー。

それまでは、たまーに遊びにくる程度だったし。


「お嬢、最初の頃はあんな感じだったぞー?」


もう本当に理不尽の権化だったからなぁ……。

主な被害者はカイン、俺様、ストーカー勇者だったけど、

最近は逆にすんごく大人しくなったよなぁ。

三つ子たちの性格設定の効果って、でかい。

結局三男の設定も神王様が無効化したみたいだし。

今までの性格を形作っていたものがなくなったから、お嬢最近ちょっとお馬鹿なんだな!

超納得!


「んー?お嬢ちゃんの性格設定、全部消えちゃったのー?」

「あ?時神もお嬢の設定知っていたのか?」

「うんー。次男が教えてくれたよー?」


あっさり頷く時神。

本当に次男はお前に甘いよな。


「でも、三男の『何事も楽しめ』設定はそのままだったんじゃないのー?」

「まぁ、そうだったんだが……」


最初は親馬鹿神と長男次男の設定だけ無効化していたみたいなんだけど、改めてお嬢の性格を見直した神王様が結局取り消ししたらしいぞ。

何でも、どんな状況に置かれても楽しみを見つけようとするからこそ、あのストーカー勇者が傍にいても気にしていなかったと思われるって。

んで、何をされてもそこに楽しみを見つけたからこその、三つ子や親馬鹿神達が防げなかった結果だったんだろうとか、意味が分からないことを言っていたな。

親馬鹿神と三つ子がお嬢関係で何百回も時間を巻き戻していたのは知っていたけど、いったい何をやり直していたのかは知らない。

知らないんだが、それを聞いた三男は『何回もやり直していたのは、もとはと言えば俺のせいだったのかよぉおおお!?』って号泣していたぞ。

あまりの号泣っぷりに、慌てて長男次男ルシファーと一緒に呑みに連れて行ったし。

うん、もう意味不明な号泣で俺様とルシファーはドン引きだったけど、三つ子はえらく思いつめた表情だった。

三つ子たちだけでバー5件分の酒を全部呑みつくしていたし。

最終的には店側から『頼むから帰ってくれ』って泣きながら何回も言われたし。

別にちゃんと呑んだ分の金は払っていたにも関わらず!

……まぁ、衝撃を受け過ぎた三男が酒に飲まれて大暴れしたからだろうけど。

何気に三つ子の中で潜在能力が一番高いのは三男だから、長男次男や俺たち使い魔に止められるはずがなく。

……いいように八つ当たりをされましたよ、マジで。

三男がそれだけショックを受けていたってことなんだろうけどさ。

だからってな?

号泣しながら教育的指導用に作ったチョークの乱投げはやめろよな!?

長男次男でさえ避けられない威力でのチョーク投げは、凶器でしかない。

あの二人が、チョーク投げで一発KOだったんだぞ!?

最終的に引き取りに来てくれたミカエルの『それぐらいにしておかなければ、離婚です』の一言と、最高潮に回った酔いで失神したから助かったけど。

さらに翌日には二日酔いで頭を押さえながら『俺、何してたんだっけ?』と、全て綺麗さっぱり忘れていたけどな!

やられ損じゃねぇか、こんちくちょー!


「……あれー?」


俺様がちょっと前にことを思い出して黄昏ていると、ゴーレムたちの一方的なリンチを眺めていた時神が首を傾げた。

どうしたんだよ?

何でそんなに冷や汗を浮かべながら周囲を見回してんだ?

……まてよ?

時神が捜しているのは、主に下。

下に視線をやって探し回っている。

何を?

その答えは、狼狽しきった時神から発せられた。


「……チビーズぅううう!!?どこ行ったのぉおおおお!?」


そーか、探していたのはチビーズたちだったのかー。

そうだよなぁ、ゴーレムたちが勇者をリンチしている光景なんて、チビーズにとっちゃつまらないもんだよなー。

しかも、見つかればお嬢ちゃん達に怒られるのは必須。

そりゃ怖いよなー?

逃げたくなるよなー?

だ・か・ら・と・いっ・て!


「何勝手にいなくなってやがんだ、チビーズぅうううう!!?」

「俺置いて行かないでよぉおおお!?」


置いて行かれたことに嘆く時神。

ちっげーだろうが!?

そこは勝手に逃げやがったことを怒るところだろうが!?

じゃねぇとお嬢たちに怒られるだろ!?

しかもよく見たら屑王女もいねぇし!

あの王女、現在進行形でリンチ中の勇者を見捨てやがったな!


「あん?」

「まだ侵入者がいたようだな」

「へー?さっさと帰ればいいのに」


……あっはっは。

ゴーレムたちに気づかれないように静かにしていたのに、チビーズたちがいなくなったことに狼狽し過ぎて大声あげちまったじゃねぇか。

三つ子ゴーレムの視線が、ばっちり俺様らにロックオンされてんぞ。

しかも、俺たちの記憶はない様子。


「「「侵入者は消す」」」


それだけ言って近づいてくる三つ子ゴーレム。

……殺される。

そう思った瞬間。


ドゴォオンッ!!


三つ子ゴーレムのすぐ隣にあった壁が吹き飛んだ。

もちろん、ゴーレムたちを巻き込んで。


「ふふふ……コス王とクロちゃん、みーつけたー」

「「……」」


悲鳴を上げなかった俺様たち、偉い。

もういっそ、ゴーレムたちにやられた方が、絶対に楽だった!

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