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182.速度振りVS防御極振りですね

視点は愛良です

◇◇◇◇


食後の散歩を終えて、試合会場に向かう私とお義兄様。

準決勝の相手はやっぱりお義兄様でした。

前の豚皇子のままだったら楽勝っぽかったんだけど、お兄ちゃんズによる劇的ビフォーアフターを遂げちゃったお義兄様は別。

今度はどんな作戦でやろうかなぁ……。

さっきのシン君との試合の時も思ったんだけど、魔力節約を考慮して戦うのって難しい。

うーん……お昼食べたから魔力も4分の3くらいまでは回復したけど、決勝戦のことも考えれば半分は残しておきたいよね。

決勝であたるのは、カインか龍雅。

龍雅は魔力封印の対象外だから、魔力は無尽蔵。

カインは1回戦は魔力使わずに瞬殺、2回戦は私を召喚しただけで自分の魔力はほぼ使っていない。

……私、超不利じゃない?

魔力は温存しなきゃ……。

全力を出さずに勝つ方法は……。


「アイラ、悔いが残らないようにお互い全力で頑張りましょうね」


にっこり笑ってこっちを見るお義兄様。

背景は真っ黒。


「……はい」


お義兄様、私の心を読みましたか?

全力出さずに勝つ方法を探っていたので、一瞬ビクッってなりましたよ?

やっぱりお兄ちゃんズの劇的ビフォーアフターで性格も似てきちゃってるよね?

お義兄様に勝てるかも不安になってきました。


「出し惜しみはせずに全力でやります」

「はい、いい子ですね」


いい子にならざる負えない笑顔で脅してきたのは、お義兄様ですからねー?

本当にお兄ちゃんズに似てきたよ。

とくに中兄ちゃんに。

絶対中兄ちゃんが調教……じゃなかった、ダイエット頑張ったんだろうね。

中兄ちゃんは子供好きだから、リーンを苛めていたお義兄様の更生に全力でやっただろうし。

……お兄ちゃんズには逆らってはいけないことを、再認識しました。

そしてお義兄様もその中に入れておこう。

年長者(ママン、兄ズ)に逆らうと、もれなく(ドMなパパにだけ嬉しい)お仕置きが待っています。

お義兄様の言うとおり全力でやります。


『やってまいりました準決勝!!ユーモアあふれる戦闘で勝ち続ける学生の部の紅一点、アイラ・シドウ選手!そして、たった数時間で劇的にダイエットに成功したという噂のツヴァイス皇太子殿下!本当に当人なのかは不明!しかし世の女性からダイエット方法を探られているともっぱらの噂です!!』


お義兄様が本当に元豚皇子なのは間違いない。

私もお義父様も信じられなくて、パーティーの後に帝国皇族しか入れないルクレイチャ湖に転移で連れて行ったもん。

普通にルクレイチャ湖に入っていましたよ?


「みなさんがなかなか信じてくれないので困りましたね……。それに、痩せた秘訣を探ろうとする女性たちに四六時中観察されているのはちょっと……さすがに、トイレや入浴中は勘弁してもらいたいですね」


ややぐったりとした様子のお義兄様。

そういえば、お弁当食べている時も遠巻きに女の人たちがいたかも。

それより、トイレや入浴中にも観察って……。


「それは相手を訴えたほうがいいと思います」


目的がダイエットじゃなかったらストーカーだよ。

それでも十分ストーカーな気がするけど。

一般のストーカーの定義って、何だっけ?

今まで一緒だった龍雅がストーカーだって言われたから、一般のストーカーの定義が分かんないんだよね……。


『えーっと……何やら選手同士が話し込んでいるのですが……。シーモア皇太子殿下ー、試合を始めても構いませんかー?』

「ええ、どうぞ」


……ん?

シーモア皇太子殿下?

……そういやお義兄様の名前、ちゃんと聞いたことなかった。

あれ、お義父様の名前も覚えてない……?


「……」


……養女にしてもらったんだから、ちゃんと名前覚えよ。

後でこっそりカインにお義父様の名前も聞いておこ。


「……私に勝てたら父上の名前も教えるから、ちゃんと覚えておいてあげなさい。今後、父上の名前も必要になる時だってあるのだから」

「……はい」


呆れ気味のお義兄様には、あっさり私が名前を覚えていないことがばれました。

お義父様にはばれないようにしなきゃ!


「今の間で、絶対に父上にも分かったと思うけど。……まぁいいか」

『……試合、始めていい?』

「どうぞどうぞ」

『もう試合さっさと開始ぃいい!!』


あ、ついに司会が強制的に試合の合図をしちゃいましたか。

試合の合図に反応して構えたんだけども、目の前にいたはずのお義兄様の姿がない。


「……あれ?」


なんか……試合会場に、結構鋭い感じの風が吹いているんですけど。

そして何かの残像っぽいのが会場中にあるんですけど。

……大兄ちゃんは、何て言っていたかな……。

『我らが鍛えた脚力で、皇太子は試合をすぐに終わらせる』とか、言っていたっけ……。

つ・ま・り?

あの残像はお義兄様が走りまくってる名残なわけか!?

鋭い風は、お義兄様が走った跡なんかい!?

私の眼でも追いつけないって人間の限界超えちゃってるよ、お義兄様!


「アイラ、ちゃんと身体強化をしないと倒してしまいますよ?」

「ふえっ!?」


お義兄様の声が聞こえたと同時に、とっさに横に飛んで身体強化。

ちょ……。

お義兄様の声が前から聞こえたのに、後からサーベルが突き刺されたんですけど。

とっさに動かなかったら確実に首に刺さってたよね、あの位置だと。


「おや?避けましたか」

「避けるよ!避けないきゃヤバかったよ!」


何キョトンとした感じで首を傾げてるんですか。

不死結界があっても、痛いのは嫌なんだから!

あのスピードと身体強化だと、頑丈な神族の私の肉体も確実に突き刺さってたよ!

神族だから死にはしないだろうけど、絶対にヤバかったよ!

そんな意味を込めて叫ぶ私を無視して、お義兄様はニッコリ。


「アイラ、三つ子様からのご伝言です。『5分以内に勝利しないと、親父からの抱き付きの刑(10分)に処す』とのことですよ」

「…………」


お父さんからの抱き付きの刑?

2分でも意識が飛びそうになるぐらい、ぎゅーぎゅー抱きついてくるお父さんの?

抱きつきながら、延々と『僕の娘が一番可愛い』とかそんな感じのことを言ってるお父さんの?

ついでにホッペに、ぶちゅーってキスしてくるお父さんの?

それを10分も?

無理無理、耐え切れない。

というか、この年になってお父さんにホッペにキスされるのは嫌だよ。

お父さんだから抱き付きはまぁまぁ許容できないこともないけど、さすがにホッペにキスは無理だわ。


「……絶対に勝つ」


お義兄様、私の平穏のために犠牲になってもらいます!

お義兄様の動きは早すぎるから、目を集中的に魔力強化……したのだけども。


「……目を魔力強化しても追いつくので精一杯って、お義兄様人間止めてますよね?」

「失礼な。私は正真正銘人間ですよ」


いやいや。

だって私、身体能力はそのままなんだよ?

神族のままなんだよ?

それにプラス魔力強化までしたのに、なんで追いつくのが精一杯なの。

ただ走らせまくっただけって聞いていたのに。

お兄ちゃんズのダイエット調教、恐るべし……。


「アイラ、残り3分です、よっ!」

「うきゃっ!?」


あ、あっぶなー……。

お義兄様が早すぎて、サーベル避けるので精一杯なんですけど。

あと3分以内に勝つのとか無理。

というか、普通に負けそう。

お義兄様のこと、正直甘く見過ぎていた……。

この人、普通に強い。

サーベルを振るう腕力は普通なんだけど、脚力が異常だ。

パラメーターを全部足だけに極振りしちゃった状態だよ。

あの動きをどうにか止めないと、避け続けるのも難しい……。


「アイラ、私の武器はこのサーベルだけではありませんよ?【フラッシュ】」

「わっ!?」


サーベルを避けたと思ったら、近距離で光魔法のフラッシュ。

とっさに目を閉じたけど、眩しすぎて痛い……。

目に集中して魔力強化していたから、痛す過ぎて涙が止まらない……。

個人的には目を押さえて叫びたいけども、そんなことしている間にお義兄様にやられちゃう。


「っう!?」


そうこう考えているうちに、左わき腹から衝撃がきて吹っ飛んだ。

目が開かなくて分からないけど、確実に蹴られたんだろうね。

でもそれよりも。


「うぅ……目が痛いぃい……」


眩しすぎて、目が開いているのかも分からないです。


「……アイラ。今蹴り飛ばしたんですけど、そっちのダメージはなしですか?」

「体は超頑丈です!」


正直言うと、網膜のダメージの方がでかいです。

光って凶器だ……。


「攻撃してもノーダメージって……勝てる気がしなくなってきました……。残り2分ですよ」


呆れを多大に含んだため息をつくお義兄様。

目を押さえている間に残り2分とな……頑張らねば!

目はまだ開かないうえに、走り回っているお義兄様を捕まえることは不可能。

目が見えない分、音には敏感になっているから足音は聞こえる。

聞こえるけど早すぎて場所の特定にまでは至らない。

やっぱり勝つためには、お義兄様の足を止めないと不可能。

……よし、仕方がないよね。

魔武器以外にも、魔導具も使用可って言ってたし。

壊し過ぎるのも問題かと思ってある程度セーブしていたけど、後1分ちょっとでお義兄様に勝たなきゃいけないもん。

じゃないと、お父さんからの熱烈ハグの刑だ。

アレは回避したい。


「愛良ちゃん特製魔導具そのいちー!ピコピコハンマー(衝撃波付)ー!」


まずは、ボックスからピコピコハンマー(衝撃波付)を取り出して、魔力をいっぱい込めて地面に打ち付ける。

このピコピコハンマー(衝撃波付)は、魔力を込めたら込めた分だけ衝撃がいくように作ったので、試合会場余すことなくボコボコになっていく地面。

不安定な足場の完成ー!


「……はぁっ!?」


まだぼんやりとしか見えないけど、お義兄様は不安定な足場にスピードが落ちた感じで足音が不規則になってる。

よし!


「特製魔導具そのにー!マキビシー!」


時代劇で忍者が撒いていた撒菱っぽい魔導具です。

はい、小さい頃は本気で忍者という職種があると信じていましたよ。


「今度はなんですか!?」

「えーい」

「人の話を聞きなさい!って、いった!?」


さっきのピコピコハンマー(衝撃波付)の後だからか、お義兄様がめちゃくちゃビビってるのが分かる。

分かるんだけど、効果は後の楽しみだから無視してマキビシをばら撒いたら怒られちゃった……。

だって、説明していたら時間が過ぎちゃいそうなんだもん。

そして何気にさっそく踏みましたね、お義兄様。


「後で説明するねー」


一つだけ手元に残していたマキビシに魔力を込めると、ばら撒いていた他のがうっすらと光る。

そしてマキビシの尖がっている先端から光の線がいくつも出てきて、それぞれ他のマキビシと繋がっていき、最後には私が持っていたものと繋がる。

それを、思いっきり引っ張れば、光の網の中にお義兄様を閉じ込めれるのです!


「は、はあっ!?」

「捕獲完了ー!」


そして動けないお義兄様に、トドメのピコピコハンマー(衝撃波付)。

お義兄様はそのまま医務室送りとなりました。


5分以内に勝てたから、お兄ちゃんたちのお仕置きなし。

むしろ魔導具を効果的に使えたから褒められたよ。

だけど次の試合はカインと龍雅だから、さっさと貴賓席に戻れって強制転移で送られちゃったの。

何でも、龍雅が暴れないようにお兄ちゃんズが控室で閉じ込めていたんだって。

だから龍雅に絡まれなくて平和だったんだねー。

お兄ちゃんズには感謝感謝。


「ただいまー」

「あ!マーマ、おかーりー!」

「わうわーう!」


はぅ……可愛い……。

満面の笑みで走り寄ってくるとか可愛すぎる。

うちの子たちは天使!


「ただいまー。いい子にしてたー?」

「あい!にーたまはー?」

「医務室で休んでるよ」


怪我自体は不死結界から出てすぐに治っているけど、衝撃波の影響でまだ目を覚ましていないからねー。

まぁ、起きたら帰ってくると思います。


「アイラ、帰ったのか。よくやったな。カインの試合ももうじき始まるから、座って観るがいい」

「はーい」


お義父様が隣の席をポンポンと叩いたので、リーンとしぃちゃんを抱っこしたまま移動。

……ん?

他の使い魔2人の姿が見えません。


「クロちゃん」

「んー?なーにー?」

「コス王とルシファーは?」

「ルシファーはロリコン発揮中ー、冥界神はその暴走を止めに行ってるー」


一人だけ残っていたクロちゃんに質問すると、とっても明快な答えが返ってきました。

何やってんだ、ルシファーは。


「被害者は?」

「シンの使い魔幼女ー。お嬢ちゃんの試合終了までは我慢してたみたいー。けど次はカインと屑だし、『カインなら勝つに決まってる』って決め台詞言ってから『リディアたーん!』って雄叫びあげて消えちゃったー。キモいよねー?」


朗らかに笑いながら毒を吐くクロちゃん、中兄ちゃんによく似ていらっしゃることで。

まぁルシファーに関しては、一般人に被害が及ばないなら別に放置でいっか。

コス王が被害は最小限に抑えるだろうし。

何か『嫌なのじゃぁあああ!』って泣き叫んでるリディアちゃんの声と『ロリコン近づくんじゃねぇええ!』と怒声を上げているシン君の声が聞こえないこともないけど、きっと幻聴。

私はいい子にカインと龍雅の試合を観戦したいと思います!

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