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177.実は使い魔いたんです

視点は愛良→シン君です

◇◇◇◇


『それでは2回戦、開始ぃいいい!!!』

「グラビティ!!」


試合開始の合図と同時に魔法を放ったシン君。

私の体が一気に重くなって、思わず膝を地面に付けちゃいました。


「ちょ……ずるいにゃん!」


何でシン君は希少属性封印されていないんですか!

私とカインは自然と特殊しか使えないのに!


「ずるくない!お前たちはめちゃくちゃ強いのに、重力魔法使えなくなったら俺に勝ち目なんてねぇじゃん!!」


えー……そんなことに胸張らないでよ。

私が動けないことをいいことに、シン君は魔武器のハンカチを折っているし。

そういや、あのハンカチって謎な能力があったっけ?

確か、スーパー折り紙とか訳わかんないやつが。

反応できるように魔力で身体能力強化しておこう。

重力が重くても、もともとの身体能力もあれば、それで動けるようになるはず。

よし、ちょっと重いけど立てた。

シン君はびっくりして目を見開いているけどね。


「はぁっ!?今この場の重力20倍だぞ!?愛良の体重が50弱としても1000㎏に、がっ!!?」

「てめぇ、女の子相手に体重言うたぁ……どういうことだにゃん?」

「ぐ、ぐげぇ……」


あっはっは。

自分で語尾に『にゃん』って着くのがイラついてしょうがない。


『おおっとぉおお!!?ヒガシノ選手の言葉に、シドウ選手がキレたぁああ!!一瞬でヒガシノ選手に詰め寄ったと思ったら、首を掴んで地面に押さえつけたー!!?早い!早すぎて怖い!!女の子に対して禁句事項を言ってはならないという掟を作るべきだぁああ!!』


司会、煩い。

私、今からシン君お仕置きするのに忙しくなるんですから。


「にゃーお」


ねー?

足元にいるシン君ににっこり笑いかけたんだけども。


「ひっ!?」


地面に縫い付けられたまま、顔色を真っ青にするシン君。

いっぱいお仕置きしてあげるから、覚悟するんだよ?


「くっ……」


首を押さえられていたシン君、苦し紛れに手に持っていたものを私の目の前で勢いよく潰した。

同時に、何かの破裂音が響く。


「うにゃっ!?」


うぅ……猫化しているから、耳がこれ以上ないってほど今の音にやられた……。

いったい、何だったわけ?


「げほっ、ごほっ……マジで死ぬかと思った……」


あ、いつの間にかシン君が逃げて距離とってたし。

ちっ……最近増えたのを気にしている中で体重の話題を出すから、あのままサンドバックにしてやろうかと思ったのに。

とりあえず、ちょっと食後のプリンはミニミニプリンに変更しよう。


「今、絶対怖い事考えただろ!?めっちゃ不吉なオーラが出ていたぞ!?」

「その通りだにゃん」

「そこ、取り繕うとかしろよ!?」

「じゃあ……そんなことないにゃん」

「取り繕い方、超下手!?下手過ぎて嘘にしか見えない!」


今度は駄目だしときましたか。

とりあえずはアレだね。


「ツッコミ聞いていると疲れるにゃん」

「疲れているのは俺ね!?俺だからねー!?」


一生懸命距離を取ったまま自分を指さすシン君。

いやいや、ツッコまれているの私なのにー……。

というか、シン君。

君、またハンカチを折っているけど、何しているの?


「さっきの音、いったい何だったんだにゃん?」

「え、あれ?えーとな、コレで紙風船を折って、愛良の目の前で潰したんだ。コレ、折り紙みたいに折ったらそれがそのまま実物みたいに使えんだよなー」


ああ、だからさっきからせっせと折り紙みたいにしてんだね。

早折りでやっても、時間のコストがかかる魔武器だねー。

面白そうだから、完成するまで待ってあげるけど。


「ふむふむ、なるほどにゃん。便利なハンカチにゃん。そして敵に手の内晒すシン君は馬鹿にゃん」

何もせずに待つのも暇だから、シン君をからかうけどね!

「へ?……あぁあああ!?試合相手に風呂敷の能力を教える俺は馬鹿だぁああ!!」

「変な名前だにゃん」

「風呂敷の名前を付けたのはお前じゃん!?」


あ、そういえばそうだった。

それよか、そろそろ折れた?

ちょっとシン君時間かかり過ぎてるから、今度から戦いながらでも早く折れるように修行追加だね!


「よっしゃ、折れた!んでもって、巨大化!!」


出来上がった物を宙に放り投げて巨大化させるシン君。

そういや、大きさの大小も変えられるんだっけ?

……わぁお。

でっかいティラノサウルス(折り紙)ですねー。

横から見たらかっこいいかもしれない。

真正面から見ると細すぎて吹き出しそうにしかならないけど。


「行くぞ、愛良!襲えぇええええ!!」


シン君の合図と同時に、こっちにむけて走ってきたティラノサウルス(折り紙)。

この辺り一帯に重力魔法がかかっているのも手伝って、重たそうな音を立てながら近づいてくる。

……のだけど。

目の前まできたティラノサウルス(折り紙)の真横を走って避けると、その動きに着いてこれなくて見事に倒れ込んだ。


「うっそぉおおん!!?」

「いくら大きくて迫力あっても、細かい動きにはついてこれないにゃん」


そして折り紙のティラノサウルスってバランスが悪いから、本来なら立つので精一杯だよ?

シン君……頑張って折っていたけど、アレは使えないから。

残念でした。


「ちょっと期待していた分残念にゃん。シン君、もう終わらせるにゃん」


にっこり笑いながらパールを鉄ハリセンに変化させて掌に打ち付けると、面白いくらいシン君の顔色が真っ青に変わった。


「ひっ!?愛良十八番の鉄ハリセン……いやだぁあああ!!」

「逃がさないにゃーん」


尻尾をゆらゆら揺らしながら、猫化で上がった跳躍力で大ジャンプ。

鉄ハリセンを振りかぶって、シン君の顔面に当てる気満々です。

重力付加されているのもあって、コレに当たったらいくら世界で一番頑丈なシン君でも一発KO間違いなし。


「うぎゃぁああ!!?」


必死な形相でギリギリ避けたシン君。

行き場をなくした鉄ハリセンは、さっきまでシン君が立っていた所に当たりまして。


「……え、愛良?俺殺す気?」


見事なクレーターが出来ました。

大丈夫だよ、シン君。

この会場には不死結界も追加されているから、怪我しても死んでも問題なし。


「てなわけで、今度こそ当たってにゃん♪」


招き猫のマネしてお願いポーズをすると、シン君は見事に顔を真っ赤にして固まりました。

ん?

これはもしかして……。


「シン君は猫好きなんだにゃん!」

「そっちじゃねぇよ!!このニブチン娘!!」


……あれ?

違った?










◇◇◇◇


もう、マジで何なのこの可愛い生物は。

マジで人間?

いや、今は猫化してるけど、あの可愛さは異常だろ。

俺、ゴスロリっぽい服って苦手なのに愛良は似合いすぎて可愛いとしか言えない。

しかも!


「にゃー……?」


愛良が不思議そうに首を傾げるたびに、片耳がピクピク動いているんだけど。

尻尾もその動きに合わせてゆらゆら揺れているんだ。

さっきの招き猫ポーズも最高だったけど。

やべ、鼻血出そう……。

いやいや、今ここでまだ殴られてもいないのに鼻血が出たら、きっと俺は(社会的に)死ぬ。

猫なゴスロリ愛良を見ながら試合中に鼻血を出したりしたら、絶対に(社会的に)抹消されるに決まっている。

もちろん、肉体的にも殺されるかもしれないけど!

あの帝国貴賓席から漂う殺気の持ち主に!!

俺の今後の人生のためにも、鼻血は絶対に出さない……!!

頑張れ、俺の鼻!


「俺は……俺は、絶対に(鼻血になんか)負けない!!」

「みゃ?うん、頑張ればいいと思うにゃん」


俺の突然な宣言に、呆気にとられた様子の愛良は鉄ハリセンを持ったまま尻尾をゆらゆら揺らした。

黒い尻尾の先についている白いリボンを揺らしながら、頑張れと言わんばかりだ。

お前は俺を悶え殺す気か!?

もうさっきからお前の猫耳とか尻尾とか捕まえたくて仕方ねぇよ!!

あー……カインはいつもこんな悶えを抱えていんだろうなぁ……。

あいつが理性と戦ってるのを見ても、今度から笑ってらんねぇ。

笑ってらんねぇけど、せめてもの悪あがきで無理してでも笑ってやる。

なんだかんだ言いながら愛良の婚約者に納まったらしいし、そんくらい許されるよな!


「シン君、不審者な動きしているところ悪いけど、そろそろ攻撃再開してもいいにゃん?」


……あ。

そういえば、今って試合中だった。

愛良の招き猫ポーズで思考が全部飛んでいたし。

愛良が律儀に待っていてくれて助かった……。

いや、きっと俺が一人で百面相やら悶えていたのを面白半分で傍観していたってのが理由だろうけど。

幸い、さっき倒れたティラノサウルス(折り紙)が起き上がって後ろから静かに愛良に近づいてる。

愛良は気づいている様子はないし、このまま愛良を倒せるか?

このまま愛良の意識を俺に引き付けていれば、倒せるかもしれない。

……なーんて、甘い事考えている時期もありました。

あの愛良が、そんなに簡単に倒せるわけがないですよねー。


「とりあえず、コレは邪魔だから返すにゃん」

「……どうも」


俺の目の前には、地響きを立てて沈んだティラノサウルス(折り紙)が。

……やっべぇ。

今愛良が何をしたのか、全く見えなかった。

鉄ハリセンがぶれたような気がするから、もしかしてアレで後から来たティラノサウルス(折り紙)を殴った?

俺の目の前まで殴り飛ばした?

……あいつに重力魔法効いてる?

魔力で強化する前は愛良も手を床に付けてたってことは、効いているんだよな?

魔力で強化したくらいで、あんなに動けるもんなのか?

え、こいつって本当に人間?


「シン君、一人で百面相おもしろいにゃー。次は変顔やってほしいにゃん」

「……しないから」


俺が一人で自問自答しているのに、空気を読む気がない愛良。

語尾に『にゃん』をつけられてのお願いに、思わず頷こうかと思ったじゃないか。

……困った。

とりあえずはティラノサウルス(折り紙)をハンカチに戻す。

重力魔法で相手の動きを制限してから風呂敷を折る方向で時間のロスを軽減しようと思ったのに、当の愛良には通じねぇし。

これは、使い魔を呼ぶしかねぇか……。

カインに使い魔の契約はしておけって言われて魔法陣を用意してくれたから、いるにはいるんだが……下手に呼ぶと、ここにいる観客に被害が及ぶ可能性とかもありそうな奴なんだよな。


「ぶんぶん素振りだにゃ~ん。目指すはシン君の顔面にゃ~ん」

「………」


にこにこ笑ったまま、歌らしきものを口ずさみながら鉄ハリセンの素振りをする愛良。

素振りの音と風圧がすごい……。

うん、躊躇ってたら俺が死ぬな。

もう細かいことは気にしない。


「リディア、来い!!」


俺のすぐ足元から、黒い煙をまき散らしながら小さな影がゆっくり現れる。

何故か腕立て伏せをした状態で。


「な、何じゃ!?わしを気安く呼ぶでない、とぉおお!!?」


腕立て伏せの状態から地面に潰れたくるくる天パの黒髪幼女。

……重力魔法、かけたままなの忘れてた。

~シン君、使い魔を召喚する~


カイ「おい、シン。大会に出るなら、お前も使い魔を召喚できるようになっておけ。魔法陣は描いたから」

シン「おお!使い魔!やっべ、堕天使とか魔王とかが出てきたら、俺最強じゃね!?」

カイ「あ、堕天使兼元魔王ならもう俺の使い魔になってるから」

シン「のぉおお!!俺の楽しみがぁあああ!!」

カイ「いいから、さっさと召喚しておけよ。俺は依頼があるから、もう行くぞ。なんかヤバそうだったら、俺の親父が飛んでくるからな」転移

シン「うーっす。……よし、オカマスターの世話にはできるだけなりたくないから、さっさとしよう。俺にぴったりの召喚獣、来い!」

リディ「……うにゅ?」プリンを堪能中のまま、目をぱちくり

シン「……えー……まさかの幼女?え、こいつ強いの?」

リディ「……なんじゃ、お主。よもや、わしを生意気に召喚しおったのか?」剣呑な目つきで睨みつつ、邪力を放出

シン「うお……強いのは確実……えっと、俺と契約してくんないか?」恐る恐る

リディ「はぁ?わしと契約じゃと?調子に乗るでないわ!」

シン「プリン食べるか?」

リディ「食べるのじゃ!」即答

シン「俺、友達からプリンたくさんもらえるんだけど、契約してくれるか?」

リディ「するのじゃ!リディアなのじゃ!」プリンに目が釘付け

シン「よし、俺はシン。じゃあよろしくな。記念に、このプリンやるわ」

リディ「プリンなのじゃー!!」大喜び


……幼女はプリンを食べ終わるまで、シンと契約したことについては頭の外に追いやっていたという。

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