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174.魔闘大会開始です

視点は愛良→カインです

◇◇◇◇


ついにやってきました、世界魔闘大会!

一日目の今日は学生の部です!

お兄ちゃんズに魔力をあらかた封印されちゃったので心臓ドキドキもんですとも……。

設定能力はもちろん、属性も学園に報告しているやつ以外は全く使えません。

忘れている人のために言っておくと、私は火水雷光属性でカインは風土闇光属性だよ。

まぁ、身体能力は馬鹿力セーブの腕輪を外すの禁止なだけで、人外のままだから心配はしていないんだけどね!


「……思うんだが、身体能力こそ封印しておくべき項目じゃないのか?」


隣で開会式が始まるのを私の左に座って待っていたカインが、頭を押さえながら呟いた。

細かいとこ気にするねー。

いいじゃん、身体能力まで制限されたら私、君たちに勝ち目ないもん。

そんなカインの言葉に反応したのは、立ったまま私たちの後ろにいたお兄ちゃんズ。


「何を言う。身体能力まで封印してしまえば、愛良が怪我するかもしれないではないか」

「そうそう。可愛い妹が血を流す所なんて見たくないし」

「あ、もしも怪我しても試合中に手は出さないから安心しろよ?試合中はな」


うん、お兄ちゃんズはちょっと自重しようよ。

そしてちぃ兄ちゃん。

試合が終わった後に御礼参りする気満々だよね?

絶対に相手が可哀相なことになるの確実だから、やめてください。


「……はぁ」


自由なお兄ちゃんズの発言を聞いて、リーンを膝の上に載せて私の右隣に座っていた皇帝さ……お義父様がため息をついた。

もちろん、その反対側の隣にはニコニコ笑ってリーンにプリンを食べさせてあげているお義兄様もいる。

それにしてもお義父様……何でそんなに眉間に皺を寄せているんですか。

せっかくリーンを抱っこできたのに。

そんなお義父様の視線の先にいるのは、お兄ちゃんズ。


「……王子たち。いい加減、自分たちの席に戻れ。お前たちが戻らぬといつまでたっても開会式が始められん」


ここは大会会場であるコロシアムの北側観客席にある帝国皇族席。

他の国はそれぞれ東西南に席があるみたい。

だからお兄ちゃん達の席がなくて立ったままなんだねー。

私たちがここにいるのは、お義父様の養女になったからだし、カインは私の婚約者らしいからです。


「「「えー……」」」


……お兄ちゃんズ、超不満そう。

せめて開会式が終わるまでは我慢しようね?


「ほら、お兄ちゃん達。お兄ちゃん達の家族の所に戻ってあげて」


もうね、遠目でも『帰っておいでー』って訴えているのが分かるんです。

このコロシアムってかなり広いのに気づいちゃうくらい、オーラがすごいんです。


「別にここでも問題ないだろう」

「そうそう。むしろ各国の王族全部まとめて一か所に集めておこうよ」

「その方が護衛を分散させずに済むしな!」


……お兄ちゃんズ、どんだけここに居たいんですかい。

いい加減諦めて戻りなよ。

隣ではカインがリーンに小声で何かささやいているし。


「はぁ……おい、三つ子。開会式の間くらい、自分たちの席に戻れ。じゃないとリーンに嫌われるぞ」

「えっとー……おじたん、めっ?」

「わうー……」


カインの言葉に首を傾げながら怒ったふりをするリーン、可愛いだけです。

説得力皆無です。

しぃちゃんも『それじゃダメなのー……』って呆れてますから。


「お兄ちゃん達、とりあえず試合が始まらないから、いったん戻りなよ。開会式が終わった後なら別にこっちに来ても問題ないと思うし」

「「「すぐ戻る」」」


妥協したら、ようやくお兄ちゃんズが帰ったよ……。

まぁ、すぐに戻ってはくるんだろうけど。


『それでは、これより第27回世界魔闘大会を始める。余の子ども達も出場するが、身分に関係なく、各自全力を出し切るがいい。よい試合が観れることを期待しておるぞ』


お兄ちゃんズが自分たちの席に戻るなり、マイクを持って立ち上がったお義父様が各国王を代表して開会宣言。

お義父様、公の場所で話すときは一人称が『余』なんですね。

話し方もやっぱり違うし、皇族は公私で口調を変えるべきなんですかね?

んー……難しいなぁ。

けど、大勢の前で堂々としているお義父様はかっこいいです!

そう思っていると、私の膝の上に移動していたリーンが首を傾げながらお義父様を見上げていた。


「とと、えらそーねー?」

『………』


リーン……そこはカッコいいって言ってあげて。

堂々と演説していたお義父様の背中が、見る間にしょんぼりしちゃうから。

お義父様ー!

まだ民の前ですからねー!

頑張って残りの気力で乗り越えてー!


「……はぁ」

「お、お義父様?大丈夫です?」

「ああ……」


なんとか気力で演説を乗り切ったお義父様だけど、全然大丈夫そうに見えない。

椅子に座るなり顔を俯かせて片手を額に当てて……とっても落ち込んでいらっしゃいます。

これは、ちょっとばかりリーンを諭さないといけないですね。


「リーン」

「う?マーマ、なーに?」

「……」


はうぅ……。

ちょっと厳しめに名前を呼んだのに、無垢でキラキラした目で見上げられて言葉が出ない。

何でその目をお義父様にはしてあげないの……。

いや、でもやっぱりこの子の実父に対する態度とか、直さないとだめだよね。

ああ……だけど、このキラキラした目を見てると、何にも言えない……。

でもでも、やっぱり今後のことも考えると、ちゃんと叱らないといけない、よね……。


「……リーン」


何とも言えなくて黙っていたら、隣でカインが私の膝上からリーンを自分の膝上に移動させながら名前を呼んだ。


「あい……」


カインの声が固いから、怒られることが分かったのかリーンも大人しい。


「リーン、ととは偉そうなんじゃない。偉いんだ」

「あい……」

「それと、ととが許してくれるからといって、それに甘えて調子にのるんじゃない。ととを落ち込ませたんだ。謝りなさい」

「あい……」


落ち込みながらカインの膝から降りてトボトボとお義父様の前に行くリーン。


「とと……めんねー?」


おお、目の前で上目遣いの涙目で小首を傾げるとか超可愛いんですけど。


「う、うむ。気にしていないからいい」


いやいや、お義父様。

めちゃくちゃ気にして落ち込んでいたじゃないですか。

そりゃ可愛いリーンに謝ってもらえて嬉しいのは分かるけど。

無表情の強面が崩れていますよー。


「おい」

「わっ……」


お義父様とリーンの様子を観察していたら、隣のカインに頭を叩かれました。


「愛良。お前も叱るときはちゃんと叱れ」


……カインの目つきが怖い。

ここは逆らわないほうが吉。


「はい、ごめんなさい……」


可愛さに負けないように頑張ります。

……負ける確率高そうだけど。


「……子育て会議は終わったかい?トーナメント表が発表されたよ」


泣きべそかいたリーンを抱っこしていたお義兄様が、おっとり笑いながら教えてくれたのだけども。

うーん……やっぱりあのギャーギャー喚いていた豚皇子と同一人物と思えなくて、まだ違和感があるよ。

まぁ、それはさておき今はトーナメント表の確認だね。

大会が始まるまでにお兄ちゃんズといっぱい作った巨大画面に映し出されているトーナメント表をチェックチェック。

えーと、私の名前は……。


「愛良、お前……2試合目なんじゃないか?」


お、カインが私より先に発見したみたい。

……相手は知らない人だねぇ。


「まぁ、大丈夫かなぁ?それより、順番早いねー……」


まぁ学生部門は4大国から4人ずつ参加で16人しか参加しないし、こんなもんなんかなー。

カインの名前は……後の方だから、カインと当たるとしたら決勝ってことになるか。

あ……そだそだ。

絶対に当たりたくないヤンヒロは?

……おお、カインの方のブロックだ。

なんて幸運!

これも日ごろの行いがいいおかげだね!

よし、順調に行けば準決勝でカインに当たるから、カインには絶対に勝ってもらおう。

それなら私安泰!

わー、これなら安心して試合できるや。

よかったー!

……なーんて呑気に考えていたら。


「……アイラ。呑気にしていないで、早く控室に行きなさい。二番目の選手は控室にいないといけないと説明があったばかりだ」

「ふみゃ!?」


立ち上がったお義父様に制服の襟首掴まれて盛り上げられました。

お義父様大きいから、足が地面に届かなくてブラブラするんですけど。


「ちょ、お義父様ー!?降ーろーしーてー!!」

「全く……時間は厳守なんだぞ。カイン、お前には少し早いだろうが、アイラを選手の控室に連れて行ってくれ」

「分かりました」


お義父様の言葉に頷いて、やっぱり私の襟首を掴みあげるカイン。

なんでみんな人を猫みたいに扱うんですかー!

私は猫じゃないんですよー!











◇◇◇◇


「むぅー……」


選手の控室に連れてきても、ふくれっ面のままの愛良。

何がそんなに気に入らなかったんだ……。


「愛良。そんなに膨れてないで、試合に集中したらどうだ?次なんだぞ?」

「分かってるもん。別に猫みたいに扱われても気にしないもん」


いや、気にしてんだろ……。

まんま猫みたいな奴なんだから、別にそこまで気にしなくてもいいんじゃないか?

呆れながら愛良の頭を撫でるとふくれっ面のままだが、やっぱり俺の手に擦り寄ってくる。

無意識か?

無意識に猫なのか?

もうお前猫でいいだろ。


「……ん?」


愛良の頭を撫でていると、大勢の歓声と拍手が控室まで聞こえてきた。

どうやら試合が終わったみたいだな。


「ほら、愛良。試合が始まるから機嫌を直せ。な?」

「……はーい」


渋々頷いた愛良を連れて控室を出ると、会場まで繋がる廊下の向こうからシンが歩いてくるのが見えた。

……なんか、殴られまくったのかボロボロだな。


「シン君、ボロボロだねー」

「シン、負けたのか?」

「会って早々失礼だな!勝ったよ!」


痛みがあるらしい左腕を押さえながら怒鳴るようにして言うシン。


「あ、勝てたのか。ボロボロだから負けたのかと思ったぞ。まぁおめでとう」

「一応おめでとー」

「ぜんぜん心籠ってないおめでとうだな!だけどありがとう!」


なんだ、泣くほど傷が痛むのか?

確か魔力は回復できないが、傷を治すことは医務室でやってもらえるはずだ。


「さっさと医務室に行って傷を治してもらえよ」

「分かってるよ!だけどお前らも気をつけろよ!俺、無駄にある魔力にめちゃくちゃ頼りまくっていたって痛感したから!むしろ、少ない魔力であんだけの強さを身に着けたこの世界の人たちをマジで尊敬する!魔力ほとんど封印されても俺の肉体って頑丈なはずなのに、俺こんだけボコボコにされたから!俺って、すんげぇ弱い!もうちょい魔力に頼らない方法で修行しないとダメだ!!」


本気で反省した様子のシン。

俺も魔力に頼ることが多いから、気をつけないといけないな……。

愛良は、どちらかと言うと接近戦が得意だからあまり心配はしていないんだがな。

うん、むしろ相手が可哀想な目に合う予感しかしないから、問題ないな。

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