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167.天然イチャイチャとか失恋者の毒です

視点はカイン→愛良です

長男が消え、遮音の結界が解かれたことで会場の騒がしさが戻ってきた。

さて、適当にぶらつくか。


「じゃあ、お義父様。カインとブラブラしてくるねー」

「ああ。私はリーンを見ておくから、ゆっくりしてくるといい。カイン、アイラを頼んだぞ」

「はーい」

「分かりました」


快く笑って促す皇帝にリーン達の監督を頼んで、愛良の手を握ったまま会場内を歩く。

誰か知り合いはいないものか……。


「……ん?」


会場の隅っこで壁に手をついて反省ポーズをとっている後姿、シンか?


「シン君、何してんだろうね?」

「さあ……」


気になるし、声をかけておくか。

シンの方に向けて、足を進めた瞬間。

シンのボソボソとして延々とした呟きが聞こえた。

それと同時に嫌な予感がしたので隣の愛良の耳を塞いで、さらに遮音の結界を愛良の周囲にだけ張る。




「嘘だろ夢だろ幻聴だろ。だってだって確かに愛良が銀髪だったら俺の女神にそっくりかもだけどさ、どうやって髪の色をあんなにきれいに変えれるんだよ。だけど、さっきの豚の『あの時の銀髪の女』発言に、愛良否定してなかったし。いやでもやっぱり俺の優しい女神が、可愛いけど時々理不尽な愛良と同一人物?嘘だろ?あ、でもカインの使い魔が愛良のこと『お嬢』って呼んでるよな。てことは、やっぱり愛良が俺を助けてくれた女神?じゃあなにか?俺は恋敵の応援をずっとしていたってことになるのか?まじか?いやでもミス鈍感な愛良を、あんだけ一途に想ってるカインに勝てるか、俺。いや無理だ。あんだけ鈍感な愛良を相手にしていたら、想い続けるより心が折れる方が早い。だって、愛良は鈍いだけじゃなくて色々間が悪い時に居なくなるし。そして何より、もう無自覚なだけでカップル通り越して夫婦だろ。そんな仲に割り込むなんて俺には無理だ。つまり、俺の想いというのはその程度なんだ。ほぼ全校生徒に同情されながらも諦めずに愛良を想っているカインに到底敵うはずがない。カインはこの世界で初めてできた俺のダチ、愛良は同郷の友でギルドで世話になってる受付嬢。友情にヒビ入れるのはやめようぜ、俺。今まで通り俺はカインの応援、時々間の悪さを笑う。それでいいんだ……」




シン……なんか悪い。










◇◇◇◇


んー?

黒い礼服を着たシン君の姿が見えたから近づいたのに、カインに耳塞がれた?

しかも遮音の結界張ってる?

ついでに前からカインに耳塞がれてるから、視界はカインの胸板だけという。

んんー?

この結界、破っちゃダメ?


「駄目だ」


思っただけなのに、カインに釘刺されました。

むぅ……じゃあ遮音の結界の中で大人しくしてるから、耳放してくれたらいいのに。


「こら、バタバタ暴れるな。せっかく綺麗なのに、髪型が崩れるだろうが」


いたって真顔で顔を覗き込んでくるカイン。


「……/////」


……カインは恥ずかしいから綺麗って言っちゃダメなのー!

そんでもって、これくらいじゃ髪型崩れないもん!

カインのバカバカ!

目の前の胸板叩いてやるんだから!


「人が失恋の痛みに耐えてる目の前で何イチャつきやがってんだこの無自覚ども!!」

「へ?」


遮音の結界が消えた途端に半泣きのシン君に怒鳴られてびっくりした。

シン君、何事?


「シン……悪いな。ありがとう」


え、何かお礼言うことでもあったの?

それにしては、カインさんは何とも言えない微妙な表情をしていらっしゃいますけど?


「うへっ!?……いや、それはいいんだけど……だけど、いい加減離れやがれ!」


ほへ?

別に離れないといけないほどくっついてないと思うんだけど、近づいてきたシン君に一気にベリって感じに引き離された。


「シン……?」


カインさん、怖いです。

穏やかそうに見えるその笑顔が怖いです。

何を怒っているんですか。


「うっ……今日くらい、勘弁しろよ!俺だって耐えてんだぞ!?」


シン君はシン君で、すんごく複雑そうな顔です。


「……仕方ない、か。愛良、手」

「ん」

「言ってる傍から手握ってんじゃねぇえええ!!」


差し出されたカインの手を握ったら、シン君に握ってる手目がけてチョップされました。

痛くはないけど、びっくりするでしょ。

本当に忙しい子だねぇ。


「……シン?」

「ちょ、まっ……うぎゃぁああ!!?」


ああ、我慢していたカインがついにキレた。

シン君、大丈夫だよ。

ここはお偉いさんたちが集うパーティー会場だから、カインも手加減してシン君の頭を握りつぶそうとしているだけだから。

シン君頑丈だから、きっと問題ないよ。


「あ……いた……!」

「わっ?」


急に横から軽い衝撃が来た。


「アイ、ラ……!」


はい、癒しのルナちゃんです。

エメラルドグリーンのふわふわドレスを着たルナちゃん、マジ天使。

肩までの青みがかかった黒髪も白いリボンでまとめ上げられている。


「ルナ可愛い!」

「アイラも……綺麗……」


頬を赤らめて私を見上げるルナ。


「………」


なにこの可愛い生き物はっ!!?

リーンとしぃちゃんとはまた別の意味の可愛さです!!

お持ち帰りしてもいいですか!?


「アイラ……くる、しい……」

「あ、ごめん……」


あまりの可愛さに力いっぱい抱きしめてしまった。

力セーブの腕輪をしたままとはいえ、危うく抱き潰しちゃうところだった……。


「アイ、ラ……おにーちゃん、は……喧嘩、中?」


私に抱きついたまま不思議そうに首を傾げるルナの視線の先には、シン君の首に腕を回しているカインの姿。


「喧嘩中、ではないね。あれは単なる友達とじゃれあってるだけだよ」

「おにー、ちゃん……他に、友達……いたんだ」


ルナ、あっさり言っちゃうとか結構酷いと思う。

でも確かにグレイとルート君、それにシン君以外、カインに友達いないんだけど。

ギルドのみんなに可愛がられてはいるけど、友達とかいう関係ではないしね。

まぁ、私も人のこと言えないけど。

龍雅みたく、無駄に愛想なんて振りまいていられないし。

そろそろ周囲の人の視線も痛いので、カイン達には落ち着いてもらおう。


「おーい。カイン、シン君。じゃれあうのもそれくらいに……」

「愛良、見ーっけ!」


カイン達を止めようと声をかけたら、後ろからものすっごく聞き覚えのある声が響きました。

同時に両肩に誰かの手が置かれた。

振り返らなくても、誰か分かってしまうのが悲しい。


「愛良、すっごく綺麗だね!こっち向いてよ!」

「……」


誰か、ヘルプ。

~失恋確定したシン君の内心~


嘘だろ嘘だろ?

この世界にきてすぐの俺に優しく色々教えてくれた銀髪の女神(←多大に美化されています)が愛良と同一人物なんて嘘だろ?

俺、今まで一方通行なカインを見て爆笑しながらも応援しちゃってたぜ?

むしろ、さっさと告って付き合っちまえとか思っちゃってたぜ?

何恋敵応援しちゃってんだよ、俺!

もうあんだけ空回りしているカインを見ていたら、俺が横やり入れてやろうとか考えらんねーじゃん!!

うぅ……女神にもう一度お礼と告白したくて探し回っていたのに、俺の馬鹿!

いいんだ!

今までみたいにカインの空回り見て笑いながらも、応援してやるんだからな!

カインは、修行とか勉強とかいろいろ世話になってる一番のダチだし!

今更ライバルだからって敵に回せるか!

俺だっていつか愛良に負けない可愛い彼女作って自慢してやるんだからなぁああああ!!(泣)

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