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16.大事なことはメモをとりましょう

私とカインが空いている窓側の一番後ろの席に移動すると、当然のように後ろからついてくる龍雅。



「愛良、ねー愛良?一緒に座ろ……」


「カイン、あそこの席でいい?」


「……謝るから無視しないで……」


「ああ。別にいい。ちょうど二つ空いているしな」


「……だったら僕と愛良で座ろう……」


「そうだね。私とカインでちょうどいいね」


「…愛良~。お願いだから許してよ!」



「「黙れ、ウザい」」



「………」



……ん?最後のは私だけじゃなくてカインも一緒に言いましたね?

まぁこの子、かなりウザいし事実を言っただけなんですけど。


それより、この子……本当に私を巻き込んだこと、反省しているんですかね?

私結構ふざけてたりするけど、家族に会えない状況にされたことを怒ってないわけじゃないんだよ?

お母さんが作ってくれるご飯が恋しいし、お兄ちゃん達がお土産で買ってくれたプリンだっていっぱい食べたかったのに。

龍雅。お願いだから、反省しているなら少しは放っておいて。



「リョウガさん!そんな方たちは放っておいて、わたくしのお隣へどうぞ!空いていますわ!」



ほら、ちょうど真ん中のほうで金髪娘が叫んでいるし、あっち行って。


……あれ?というかさ、さっきまで金髪娘の隣に人いなかったっけ?

確か大人しそうな女の子が……あ、いた。

かわいそうに……金髪娘の隣に座っていたあの子、荷物持って廊下側の席に移動させられてる。

完全にあの金髪娘に移動させられたみたい。

これだからイケメンに群がるビッチは嫌いなんだよねぇ……。



「サフィの隣、空いてるの?他に空いているところ、なさそうだし……じゃあ、隣よろしくね」


「ええ、どうぞ!」



いやいや、龍雅くん。その女子と知り合いだったなら、その隣に誰か座っていたかとか見ておきなよ。

むしろ、現在進行形で部屋の隅に移動した大人しそうな女の子が、顔を俯かせたまま荷物を片づけていることに気づきなさい。

そんなんで勇者になって大丈夫なんですか。



「……あいつ、本気で気づいていないのか?」



カインが金髪娘の隣に移動した龍雅と、席を移動させられた女の子とを見比べながら眉間に皺を寄せている。

やっぱり普通は気づきますよねー。

そこを気づかないのが龍雅なんだけど。

私があの子の取り巻きに苛められている時も、全っ然気づかなかったからね。

殺意が湧くぐらい、周りのことをあんまり見ない子なんです。



「うん。だから群がる虫どもが助長するんだよねー」



龍雅が見ていないところで人の物を捨てたり落書きしたり、あの子がいるところでも背中を思いっきり押して階段から落ちそうになったり…。

あー、思い出したら腹立ってきた。

女子の嫉妬が一番嫌い。

あんな影でコソコソやる子ばっかりなんだったら、まだオープンな男の子に生まれた方が絶対マシだったよ。



「コラぁああ!!シドウッ!!!」



昔を思い出して、ちょっとだいぶテンション下がったところで戻ってきた担任のソル先生。

そういえば全然やる気がなさそうにタバコを吸ってたから、しぃちゃんに窓から突き落としてもらったんだっけ?

完全に忘れていました。

髪とか服とかに葉っぱが付いているけど、怪我はしていないみたいだし問題なしですね。

さすがは雷帝。


額に青筋浮かべて教卓を力任せに叩きながらソル先生は怒鳴った。



「てめぇいきなり何しやがんだ!?俺じゃなかったら怪我してたぞ!?」


「せんせー、ごめんね?でも、よかったね。窓辺から身を乗り出してタバコを吸ってたら、ちょっとの衝撃で落ちてしまうってことが分かって」



ああ、ダメだ。

テンションだだ下がりだから、からかいのキレが出ないです。



「ぐっ……だからってなぁ!!」


「先生」



一応謝らせたけど、まだ怒りが収まらない。

そんな様子の先生に、隣に座っていたカインがため息をつきながら席を立った。



「失礼ですが、先生はホームルーム中に校内では禁止の喫煙をされています。それも、堂々と生徒の前、しかも教室内で。これだけでも問題視されますが、愛良は自分たちの自己紹介を終えたことを知らせるために2度呼びかけています。しかし、先生は喫煙をしていて気づかずにいたため、愛良も最終手段に乗り出したわけです。他生徒のことも放っておいたことも含めると職務怠慢としても保護者会に報告をせねばなりませんが……先生が事を大きくしたいのならば、仕方がないですね。報告させていただきます」



……カインさん。

真面目な顔で、さらにはその丁寧な口調の脅しは怖いです。

先生の顔色が青ざめていますから。



「俺が悪かったです。すいませんでした。調子に乗りました。シドウのことについてはこれ以上何も言わないので、保護者会にだけは言わないでください」



怒りとかプライドとか全部まとめて捨て去ったソル先生は、生徒全員の目の前で土下座。



「そうですか。事が大きくならずに幸いです」



しれっとそんなことを言って席に座りなおすカインさん。

うん、カインの真面目な脅しは、私の脅し方とは別の意味で周りの人に怖い印象を与えると思う。

というか、先生が青ざめてまで嫌がる保護者会ってどんなのですか?

……まぁいいや。



「えーとだな、とりあえず、気を取り直してホームルームを再開するぞ。えー……」



髪をガシガシ掻きながら、教卓に置いてあったファイルをがさごそと漁る先生。

絶対内容忘れたな。

大事なお知らせはメモをとるようにした方がいいと思います。



「あー……たしか、高等部になったから、魔武器、使い魔召喚の連絡があったんだが……いつだった?」


『いや、聞かれても知らんし』


「そういや、学力試験もあったはずだが……』


『今すぐ思い出せこの怠慢教師!!』



このクラス、シンクロ率高いなー。

なんなんですか、この怠慢教師とクラスほぼ全員の突っ込みは。

面白いから大好きですけどね、こういうの。



「先生。学力テストは明日から3日間で、魔武器と使い魔召喚は学力テストが終わった翌日です」



カインがまたため息つきながら立ち上がった。

というか、テスト明日からなんだ。

ヤバいなぁ……異世界の学校って何を勉強するのかすら、まだ知らないのに。

テストって赤点とかあるのかな……。

そう思ったのは私だけではないらしく。



「うぎゃああああああ!!!!」


「なんでいきなり明日なんだよぉおおおお!!!」


「急過ぎるだろ、いくらなんでも!!!抜き打ちか!?抜き打ちテストなのか!!?」



一部クラスメイトが悲鳴を上げて嘆いている。

私もその嘆きに参加してもいいかな?

まず何を勉強しておけばいいのかも分かりません。



「抜き打ちではない。単なる実力テストだ。俺は以前のクラスで一週間程前に話を聞いているが……Sクラスは、今日初めて聞いたのか?」



怪訝そうに顔をしかめながら教室内を見渡すカイン。

はい、カインさんが怠惰教師にとどめをさしましたー。



「てめぇこのやろぉおおお!!!」


「なんでんな大事なことを言い忘れてんだよっ!!!」


「この怠惰教師がっ!!とりあえず死ねぇえええ!!!」


「誰か担任を変えてくれ!!!」


「これは先生のミス。つまり、僕の点数が悪いのも先生のミスなんです。だから僕は悪くない」



……どれだけテストに自信がないんですか、Sクラスは。

一応このクラスって、優秀な人たちの集まりなんでしょうが。


男子中心に一斉に先生に殴りかかってるけど。



『あばばばばばばっ!!!』



かなり弱められた雷の初級魔法を食らって動きを止めた。

一応仮にも雷帝で教師なんだから、生徒が敵うはずないでしょ。



「いや、悪かったな。まぁ、お前らはSクラスなんだから大丈夫だろ。とりあえず、ホームルームは終わりだ。次の授業は魔法戦闘学だから、第2訓練場に集合なー。遅刻はするなよ、めんどくさいから」



そういうなり転移して消えた先生。

ソル先生、絶対に逃げたな。

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