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164.可愛いと綺麗って違いますよね

視点は愛良→ちぃ兄ちゃん→愛良です

◇◇◇◇


「できました!お嬢様、完成しましたよ!」


鏡越しに達成感ありありのセラフィムさんの超いい笑顔が見える。

いやはや……大兄ちゃんと中兄ちゃんが振り袖の着付けをしてくれている時は部屋の隅っこでびくびくしていたのに、いなくなった途端にすんごい肩の力が抜けたみたいです。

とっても綺麗に髪のセットをしてくれました。


「わーすごい。ありがとうございます」


髪の毛は緩い感じでまとめ上げられていて、まとめ切れなかった髪の毛は左肩から流れるように垂れています。

右横についている私の握りこぶしくらいの白い生花が、シンプルだけど可愛い。

ちなみに振り袖は私の大好きな水色で、頭に着いているのと似たような花が、色とりどりにいっぱい描かれています。

この振り袖、本当は成人式用にお兄ちゃん達が作ってくれてたみたい。

ちなみにデザインはお父さんが描いて、お花はお母さんが育ててくれたんだって。

みんな、私の成人式を楽しみにしてくれていたんだねぇ……。

だけど成人前にこっちに来ちゃって、もう着る機会がなさそうだからってことで今日用意してくれたんだって。

成人式の日に地球に行けばいいんじゃないかって疑問に思ったんだけどね。

それを直接お兄ちゃん達に聞いたら、『振り袖は未婚の娘が着る物だぞ』って真顔で返されました。

振り袖は確かに未婚の女の人が着るものだけど、それがどう成人式と関係あるんだろ……?

そう考えていたら、ニコニコ笑顔満面のセラフィムさんと目があった。


「お嬢様の御髪は綺麗なので、やりがいがありました」


天使さんの中では一番偉いはずの天使さんは、髪のセットにやりがいを感じるそうです。

女子力高くてびっくりですよ。


「あ、どうも。セラフィムさんも手先器用なんですねー」


他は方向音痴とかドジとか残念な事が多いけど。

……というのは、言葉に出さずに我慢しました。

偉い、私。


「いえいえ……あ、お嬢様!髪飾りが他にもありますが、付けます?」


褒めたらさらに色々やってくれようと髪飾り入れをあさりだしました。

でもシンプルが好きだし、これでいいや。


「このままでも大丈夫ですよー」

「では、お化粧をしましょう!天界お勧めの化粧セットを持参しているので!」

「天界にお化粧売ってるの!?」


またまたやる気になったセラフィムさんだけど、別の事に驚きました。

天界って一体どんなとこなの!?


「いえいえ。美の女神様が、美を保つ為に全世界の化粧品に着目されているのです。つまり、美の女神様お勧めの品、ということですね」

「あ、そういうことねー」


美の女神様お勧めの化粧品……後で詳しく話を聞かせてもらいましょう。










◇◇◇◇


パーティー会場に入る前に、会場付近の部屋で愛良と待ち合わせ。

さすがにあれだけ帯を締め上げたから、カインの顔色は悪い。

まぁ、可愛い妹と無自覚にイチャイチャしてんのを見逃してんだから、これぐらい我慢しろって。

……正直に言おう。

ただ可愛い妹と無自覚にイチャつきやがるカインに制裁したかっただけです、はい。

俺はカインの味方のつもりだが、そこはやっぱり別だからな!

妹がイチャつくのを見るのは兄ちゃん達にとって複雑なんだよ!


「パーパ?ぽんぽん、いたい?」

「わう?」

「大丈夫、だ……」


心配そうに見上げていたリーンの頭をゆっくり撫でるカイン。

おお、子どもの前ではやせ我慢すんだな。

愛良が来たら締め上げている帯が少し緩まる設定にしているから、それまで耐えろ。

大にぃ中にぃと元使い魔ズを愛良の迎えにやってるし。

セラフィム?

あいつは方向音痴だから、案内させたら半月経っても愛良に会えねぇよ。

早く解放してくれって散々言われたから、愛良の準備だけ手伝ってもらったら天界に帰るだろ。

愛良の振袖姿、早く見てぇな。

親父デザインの反物で俺たち作ったんだよなぁ。

俺たち家族の力作だ。

母さんは残念ながら裁縫スキルがマイナスだから、直接参加してねぇけど。

なんで普通に針持ってチクチク縫っていたはずなのに、布が糸くずになるのかが理解できない。

もちろん、愛良が幼稚園や小学校で使う手さげカバンや給食袋とかは俺たちが作ったよ。

母さん唯一の残念スキルだ。

なのに、愛良の振袖を作るのに参加するって聞かねぇもんなぁ……。

髪飾り用の生花を育てることで納得はしてもらった。

愛良そっくりの顔で、すんげぇ頬を膨らませていたけどな。

なんで自分の残念スキルを自覚していないんだ……。

まぁ、愛良の振袖姿の写真を見せたら機嫌も直るだろ。

可愛いと可愛がる兄貴たちの声が近づいてきた。

愛良の振袖姿とカインの反応が楽しみだな!


「……」

「おお!予想以上に似合ってるじゃねぇか!愛良、可愛いぞ!」

「マーマ、かーいー!」

「わうう~!」


部屋に入ってきた愛良の姿を見るなり、絶句して固まったカインは放置。

俺はリーンとシリウスと一緒になって、綺麗に着飾られた振袖姿の愛良をぞんぶんに褒める。

うっすら化粧までして、普段の子どもっぽさがすっかり消え去っている。

セラフィム、ナイス!


「ありがとー。リーンとしぃちゃんも可愛い!」

「きゃー!」

「わーう!」


……動きさえしなかったら、子どもっぽさが隠れてていいと思う。

愛良……せっかく振袖を着て髪も結いあげて大人っぽく見えるのに、いつもと同じようにリーンとシリウスをまとめて抱きしめてたら着崩れるだろうが。

お兄ちゃん、微妙に残念だぞ。


「愛良、せっかくの振袖が着崩れてしまうであろう。リーンとシリウスを抱っこするのは、今日は我慢しろ」

「あー……」


呆れながら愛良からリーンとシリウスを取り上げる大にぃ。

残念そうな声を上げる愛良に、中にぃがニッコリ笑ってリーン達の頭を撫でた。


「リーンとシリウスは僕らで見とくから大丈夫だよ。リーン、シリウス。僕の特製プリン味のロリポップアメ食べるかい?」

「たべうー!!」

「わーう!!」

「俺もー!俺も次男のアメちゃん食べるのー!!」

「はいはい。クロノスの分もあるからね」

「わーい!」


さすが子ども好きの中にぃ。

一瞬でリーン達の意識を逸らした。

そして中にぃ夫婦んとこの子ども(仮)のクロノスが微妙に拗ねて参戦している。

お前は中にぃ達の実の子どもみたいに可愛がられているんだから、気にせずに従弟(仮)の面倒をみていてくれな。

んで、愛良とカインはというと……。


「……綺麗だ」

「はえっ!?」


茫然と口にしたカインの言葉に、愛良が素っ頓狂な声を出していた。

そして次の瞬間には、愛良の顔が真っ赤に。


……お?

愛良の顔が赤くなった?

カインの言葉に、愛良の顔が赤くなった!?

あの愛良が!?


(愛良以外の紫藤家と元使い魔ズ集合!!)


思わず部屋の隅に移動して念話で号令をかけてしまった……。

だって、見間違いなんかと思ったんだよ。


(ちょ、今の見たか!?俺の見間違い!?)


一瞬で集合した面々に向かって、念話のまま質問。

夢見てたとかいうオチじゃないよな!?


(いや、我も見た。不本意ながらカインの小僧の言葉で、愛良が間違いなく顔を赤くしたな)

(照れたにしてもねぇ……さっきから僕たちが褒めまくってたし。やっぱりカイン君が言ったから?)


めちゃくちゃ複雑そうな表情の大にぃと中にぃ。

兄貴たちも見たなら、夢じゃねぇな!

愛良……成長したな。

兄ちゃん、ちょいと泣きそう。


(わー。おめでとーって言ったらいーいー?)

(時神、ちょいと気が早ぇ。だけどあの二人がくっついたら、可愛い幼女様とショタが生まれる確率高けぇえ!うっは!楽しみだ!!)

(おー!!カインに春が来たぁあああ!!カインが自覚する前から見ていた俺様としては、もう泣きそう!!)


まさかのハゲと同意見だった。

感動の涙も引っ込んだじゃねぇか。


「ねーねー。お兄ちゃんたち、会場に行かないの?」

『おわっ!?』


いつの間にか俺達の真後ろで首をかしげている愛良。

その顔色は、いたって普通。

カインの方は、俺達がこっちに集合するので放り出されたリーンとシリウスの面倒を見ている。

あああああ!!

愛良の変化を気にしすぎて、リーン達の事を忘れてた!

親馬鹿の二人が、そんな状況でいつまでも甘甘雰囲気を残してる訳がねぇし!

俺としたことがぁ!

うあああ……愛良の成長に驚きすぎて、俺が邪魔をするなんて……。

今度から絶対に親馬鹿の前で子どもを放り出さねぇえ!

カイン、マジで悪い。

後で愛良の振り袖写真を額縁に入れてプレゼントするから、許してくれ……。










◇◇◇◇


いやー驚きました。


「……綺麗だ」

「はぇっ!?」


みんなが待っている部屋に行くなり、カインにこう言われたんでね。

カインが『綺麗だ』とか言うと思わなかったから驚いた。

なんか予想外だったから焦ったじゃないですか!

みんなに『可愛い』って褒めてもらえたけど、『綺麗』なんて言われてなかったから社交辞令でも少し嬉しいし。

だけど、それ以上にびっくりしすぎてドキドキしたよ……。

あー……顔が熱い。

もしかしなくても、今顔赤い?

うぅ……カインは無駄にイケメンだし、不意打ちの社交辞令には驚くよ。

イケメンの言葉にドキドキするなんて、なんか悔しい。

前は龍雅にいくら言われてもスルーできたのに。

……いや、今でも龍雅に言われたらスルーできる自信はあるかも。

とりあえず、カインのアレはお兄ちゃん達と同じ社交辞令社交辞令。

着物も本当にきれいだしね!

私じゃなくて着物が綺麗!

……言い聞かせ終了!


「マーマ、パーパ。おかお、まっかっかー?おねちゅ?」

「わう?」


リーンちゃぁああん!?

せっかく言い聞かせた所でぶり返さないで!

そして顔が赤いって声に出して言わないでっ!?

余計に意識しちゃうからねっ!?

ほら、カインも顔を赤くして……はい?

なんでカインも顔赤いの?

……あれ?


「カイン?」


顔を赤くしたまま口元を片手で隠しているカイン。


「あ、ああ……なんでもない」


そういうなり、少しだけ笑って私の頬を撫でた。

……なんか、カイン変?


「愛良、そろそろ行くぞ。あいつらを呼んで来い」


でもまぁ、いつも通り……かな?

お兄ちゃん達は何であんな隅っこで固まってるんだろ?


「あ、うん。リーン達見といてね」


もうパーティーは始まっちゃってるだろうし、急がないといけないのは事実。

お部屋の隅っこで固まっていたお兄ちゃん達を回収して、パーティー会場に行きたいと思います!

お兄ちゃんズから可愛いとは言われ慣れている愛良ちゃん、まさかの綺麗発言にびっくら仰天の回でしたー。

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