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163.パーティーに行きましょう!

視点は愛良→ちぃ兄ちゃん→カインです

◇◇◇◇


パーティー当日。


「はわー……おっきーねー!」

「わう!」


初めて真正面から見たお城に、リーンとしぃちゃんは大はしゃぎです。

さっきからキャッキャッと走り回ってる。

ちなみに、私たちの服は制服のままです。

学園長のおじいちゃんに話を聞いた後、買いに行こうとしたらお兄ちゃんズに捕まりましたので。


『愛良の着る服は、我らが用意しておる』

『もちろん、髪飾りとかも用意しているからね』

『カインとリーンのもついでに用意しとくから、当日はちょっと早めに城に来いよー』


……ということです。

だからお買いものは中止しようと思ったんだけど、カインが買いたいものがあるってことで結局お買い物には行ったんだけどね。

ちなみに、買ったのは水色のピアスです。

私とカインとリーンでお揃いなの。

パーティーって各国の人が来るから、当然リーンを狙っている豚一族もいるんですよねー。

もしもパーティー中にはぐれたら大変だから、防衛のための結界機能を組み込んだの。

あとは魔力がまだ封印中のリーンのために、ピアスに触るだけで私とカインに念話できるように作りました。

ピアス自体はかなり高価な魔石のものだったから3セットで一軒家買えるぐらいだったんだけど、そんだけ機能を付け足した魔導具にすると城一個購入できるだけの価値があるそうです。

そのうち金欠病のシン君に魔導具の作り方を教えてあげよう。

慣れたら簡単に……えと、お勉強をしっかりと頑張れば……いや、座学が苦手なシン君には荷が重いかな。

やっぱり無駄に夢を見せないようにしておこう。

出来なかった時が絶対に可哀想だもん。


「お、きたきた。おーい、愛良ー」

「あ、ちぃ兄ちゃん!」


お城の正門前で待っていてくれたらしいちぃ兄ちゃんが立っていました。

いつもはスーツっぽい服を着崩した感じのラフな格好だけど、今日はちゃんとした青色の正装を着て、同じ色のマントも付けている。

金髪も今日はちゃんと梳いているみたいで、前髪も後ろに流して綺麗にまとまってます。

そんな格好で正門にもたれるようにして腕を組んでるちぃ兄ちゃん。

うん、かっこいい!


「ちぃ兄ちゃん、王子様みたいでかっこいい!」

「うん、王子様ならぬ公子様だからなー?」


思わず拍手までしてしまった私の頭を、苦笑気味に撫でたちぃ兄ちゃん。


「あ、そうでした」


完璧に忘れてました。

お兄ちゃんたちってこの世界の王族に転生しているってこと、すぐに忘れちゃうや。


「さて、準備しに行くか」

「あーい!」


ニコニコと機嫌がよさそうなちぃ兄ちゃんが、足元に寄ってきたリーンを抱っこしながら促した。

楽しそうだなぁ、ちぃ兄ちゃん。

ちぃ兄ちゃんに連れられてお城の庭を突っ切ること数分。


「……なんで城って無駄にお庭が広いの」


お城になかなか近づいている気がしません。

思わずぼやくと、隣を歩いていたカインに軽く頭を小突かれた。


「お前、一回来たことあるだろ?夏休み入った直後くらいに」


そうだけど……長いんです。

本当に。


「まぁ、普通は馬車を城前まで着けるからなぁ。別に転移で行ってもいいんだが、ちょっと愛良を叱らないといけないことがあるし、寄り道中だ」

「……え?」


ニコニコ笑ってリーンを抱っこしたまま先を歩いていたちぃ兄ちゃんが、肩越しに振り返った。

あの笑いは、機嫌がいいからじゃなかったみたい。

……私、なんか怒られるようなことしたっけ?


「愛良……お前、何したんだ?」


カインも『三男が怒るんだったら、絶対に愛良に非がある』と言わんばかり。

それ自体は正論なんだけど、今回は本気で叱られる原因が分からないです。


「えっと……ちぃ兄ちゃん?」

「お、見えた見えた。リーン、あれなーんだ?」


ちぃ兄ちゃんが指さした先に、何かが見えた。

見覚えがあるものが。

同時に、何で叱られるのかが理解できましたとも。


「うにゅ?……あ、プリーン!おっきーねー!」


いつぞやの龍雅たちを埋めたドデカプリンが、お庭の一角に鎮座しておられました。

あれから数か月経ってるのに、何でまだあるの……?

……うわ、まさかの時魔法で時間を止めてるから腐らずにそのまんまなの?


「愛良、正座」

「はい……」


ニッコニコ笑ったまま指で地面を指さすちぃ兄ちゃん。

逆らってはいけない笑顔です……。


「さて、愛良。母さんの教えは?」

「……食材は、無駄にはしない……です……」

「ヤンヒロやらビッチ共が埋まっていたというアレは?もはや食えたもんじゃねぇよな?」


ちぃ兄ちゃんの台詞と一緒に、ドデカプリンが一瞬で燃え消えた。


「ひぅ……ごめんなさい……」


ち、ちぃ兄ちゃん……ニコニコ笑ったまま重たい魔力を垂れ流しにしないでください……。

その魔力、そのまんま重力何倍にもなって正座中の私にのしかかってますから……。

それから30分間、みっちりお説教されました……。

だから早く来いって言ってたのね……。

足、痺れた……。








◇◇◇◇


「あぅ……か、カイン……あんまり、動か、ないで……?」

「………。動かないと、進まないだろ」

「で、でもぉ……ひゃっ」

「…………」


やっべぇ……俺、爆笑してもいいか?

俺の後を歩いているカインと愛良の会話が、さっきからツボってしょうがねぇんだけど。

足が痺れて立てない愛良と、その愛良を姫抱っこして歩いているカイン。

愛良は少しの振動でも足が痺れて涙目になってる。

まぁ、たった30分でも俺の魔力で重力100倍ぐらいにはしていたからな。

いくら頑丈な肉体でも、それなりに負荷はかかるし。

それにしても言い方。

これ、何も知らない奴が聞いたら絶対に勘違いするぞ。

さっきから沈黙しているカインの理性が、いつまでもつか見所だなぁ。


「おじたん、マーマ、だいじょーぶ?」

「わうぅ……」


心配そうに抱き上げているリーンとシリウスが俺の肩越しに後を見ようとしたんだが、今はやめとけ。


「すぐ治るから大丈夫だぞ」


もう少しこの面白い状況を見ておきたいから、愛良の足のしびれはとれないように魔力込めたけどな。

全然仲が進まないカインに努力賞だ。

単純に俺が楽しみたいってのもデカい理由だけど。


「……」

「う~……あぅ……」

「………」


肩越しに振り返ってみたんだが、カインは不自然なほど無表情だった。

耳が微妙に赤くなってはいるが、それでも無心を極めていた。

おお……お前の理性、なかなか強いなぁ。

これが龍雅だったら何のためらいもなく襲い掛かっただろうが、さすがのカインはそんな単細胞なことはしなかったか。

うんうん、だからお前は気に入ってるんだよ。

だけど、愛良に手をだしていいのはキスまでだからな。

それ以降は結婚するまで許さねぇぞ。

そっち方面に手を出した瞬間、龍雅の野郎と同類とみなして潰すから。

兄ちゃんは、これ以上愛良のデキ婚なんて見たくねぇんだからな








◇◇◇◇


城の中に入ってすぐのホールで、長男と次男が揃って待ってた。

長男は黒色、次男は白色の三男と揃いの礼服を着て。

お前ら、『血とか関係なく俺たち三つ子!』って宣言してまわってんじゃないか、絶対。


「ふむ、ようやく来たか。……ほぉ?」

「いらっしゃい。……愛良、どうしたの?ちぃもさっき魔力を使ったみたいだけど、なにかあったのかい?」


俺たちの方を見るなり、長男は不機嫌そうに目を細めて次男は首を傾げた。

まぁ、そう言われてもしょうがないよな。

足が痺れて未だに立てない愛良を俺が抱き上げているし、三男はやけにすっきりした顔でリーンとシリウスを抱っこしたままだし。

というか、愛良は何でまだ痺れてんだ……?

俺、こっそり魔法で治そうと思ったのに、全然治らないんだが。


「ドデカプリンのことで、三男に正座で説教をされたんだ。で、痺れて歩けないらしい」


愛良はまだ痺れているし三男は笑っているだけで説明する気がなさそうだったから、俺が変わりに説明をすると長男次男は納得という様子で頷いた。


「ああ、アレか。せっかく愛良からの『土産』だったんだが、汚物が入っていたものは、さすがの我でも食すには躊躇われたのでな。汚物共は掘り起こし、残りは親父を釣る時のエサにでもしようと、時を止めてあったのだ」

「さすがに汚物が入ってたなら、エサにもできないよ。父さん、あの汚物のこと大嫌いだし」

「俺もあの汚物は生理的に受け付けねぇから、焼却処分してきたからなー」


三つ子が奴をどういうふうに認識しているのかよく分かった。

お前らも奴のことが嫌いなんだなぁ……。


「とりあえずは、時間も迫ってきておることだし行くか。愛良」


長男が愛良をあっさりと俺から取り上げた。

移動した際の振動で、また愛良が呻いてはいるんだが……それだけなのか、長男。

お前と次男は、俺が愛良を抱き上げているのに絶対にキレると思ったのに……調子狂うな。

そんな俺の心情など気づきもしない様子で、長男は愛良の足を軽く叩く。

痺れている足をわざわざ叩くとか、えげつないな……。


「はうっ!!?……あれ?」


一瞬悲鳴を上げた愛良が、次の瞬間には首を傾げて長男から降りた。

……さっき俺が治癒魔法かけても治らなかった痺れだったんだが。


「未熟者め。愛良の痺れは持続するようにちぃがこっそり魔法をかけておったのだ。それぐらい気づかんか」


いや、お前らレベルのコントロールはすぐには分からんから。


「ちぃも、もういいんじゃない?愛良も反省したんだし、お仕置きはこれぐらいで勘弁してあげな」

「おー。愛良、次やったら(ゴーレムも一発で撃沈レベルの)デコピン100発の刑な」

「はい!二度とやりません!!」


勢いよく手を挙げて宣言する愛良。

うん、俺も三男だけは絶対に怒らせないようにしよう。





「……」


ひとまず愛良と長男次男と分かれ、三男に連れてこられた部屋に入った瞬間、俺はまず沈黙した。


「うーっす!カイン、おっせーよ!」

「俺様の服、大量に持ってきたぜ!」

「あー、やっと来たー」


部屋の中には、昨日から姿をみなかった使い魔ズが揃っていた。

いないと思ったら何してんだ、お前らは。


「リーン、しぃちゃん。伯父ちゃんたちが、お洋服を作ってくれたんだー。だから、お着替えしよー」

「あい!」

「わーう!」


クロノスの言葉にすぐさま三男の腕から降りて飛びつくリーンとシリウス。

というより、三つ子が服を作ったのかよ。

愛良が三つ子は自分よりよっぽど家事が上手いと言っていたが、本当なのか。

チクチクと針を持って服を作る長男……。


「ダメだ、俺の想像力では無理だ……」

「あー……お前が何を想像しようとしたのか、よーく分かった。ちなみに、普通にチクチク縫って作ったぞ。可愛い甥っ子の服を創造で出すのは嫌だからな!」


いやいや、三男。

これ以上想像したくないから、そんなに胸を張らないでくれ。

……それよりも。


「カインにはこのコスプレか!?いやいや!やっぱり銀髪だし、シンと合わせてソルジャーか!?うっはー!俺様の腕がなる~!!」


コス王?今回は国主催の親睦パーティーであって、仮装パーティーではないから。

なんで部屋いっぱいに妙な服があるんだよ。

もしかして、これ全部お前のコスプレ衣装か?


「あー……だったら、シンにもお揃いで着さすか!親友とお揃いにしてやろうぜ!」


よし、待てルシファー。

せっかく学園側で礼服を用意してもらっているシンに、何を着せるつもりだ。

そしていつからシンは俺の親友になったんだ。

……確かに、仲は悪くはないが。


「「「カインったら、ツンデレ~」」」


コス王とルシファー、ついでに三男がニヤニヤしながら揃いやがった。


「お前ら、マジで黙れ」


胃が痛い。

このコスプレ服の山から真面そうな服を探すのに苦労しそうだ……はぁ。

三つ子が俺に真面な服を用意してくれるはずがなかったよな……。

礼服……自分で買いに行けばよかった。


「パーパ!みてー!」

「ん?」


わりと本気で後悔していると、着替え終わったらしいリーンが俺に向かって満面の笑みを浮かべて走ってくるのが視界に入った。

……と思ったら、慣れない服の裾を、変わった靴で踏んづけて前のめりになった。


「う?」

「わうーっ!?」


転ぶ前に、頭部に水色のリボンを付けたシリウスが大型犬サイズになってリーンを受け止めたから無事だけどな。


「シリウス、よくやった!」

「……わふ」


思わず褒めた俺に対して顔を背けるシリウスだが、尻尾が微妙に左右に揺れている。

……お前、最近本当に分かりやすくなったな。

前ほど憎たらしく思わないから別にいいが。

とりあえずは、シリウスの上に乗っかかるようにしてキョトンとしているリーンを抱き上げて頭を撫でた。


「リーン、大丈夫か?慣れない服だから、気を付けないとダメだろ」

「あい!しーたん、あーとねー!」

「わう~」


うん、お前らは本当に可愛い過ぎる。

荒んだ心が癒されるな。

それにしても、この服なんだ?

初めて見たぞ。


「リーンは着物か!しかも袴!羽織は狼の刺繍とか豪華!そしてお嬢が大好きな水色チョイス!三つ子ナイス!!」

「リーン!写真撮るからこっち!!可愛すぎだろ!!」

「おー!リーン、よく似合ってるぞ!七五三の時、親父が写真とビデオを撮りまくっていた気持ちが今なら分かる!」


上からコス王、ルシファー、三男。

3人が揃いも揃ってカメラを構えて写真を撮りまくっている。

いやまぁ、その気持ちは分からないでもないんだが。


「キモノって、リーンが着ている服のことか?」

「そうだよー。お嬢ちゃんの元いた世界での礼装なんだってー。俺、着付け頑張ったんだよー?力込めすぎて帯を破っちゃったり、着付け練習用の人形捻り潰しながら、力加減を覚えたんだー」

「……捻り潰す?」

「そーだよー?」

「……」


確かにクロノスも神族であるには違いないから、俺や愛良ほどでないにしても力は強いだろう。

リーンは魔力の封印も解いていないただの子どもだ。

……その着付け、せめて人間にやってもらった方が俺の心の平穏が保たれたんだが!?

リーンがミンチにならずでよかった!!

俺が思わずリーンを抱きしめると同時に、部屋の扉がゆっくりと開かれた。


「……なんだ、まだ着替えておらんのか。何を遊んでおるのだ」

「愛良の準備、そろそろできそうだから呼びにきたよ。そのお遊び用のコスプレ衣装は片付けて、カイン君用の服をさっさと出しな」


愛良の方に着いて行っていた長男次男だ。


「「イエッサー!!」」


次男の言葉に反応したコス王とルシファーが、一瞬で部屋中に散らかっていたコスプレ衣装を片付けた。

そして黒と灰色の色合いをした、リーンと似た服を取りだす。

……リーンより大きいってことは、アレは俺のか?


「俺の服って、ちゃんと用意していてくれたのか!?」


思わず、本音が口から出てしまった。

そんな俺に対して、お互い顔を見合わせて同じ笑みを浮かべた三つ子。


「「「……。今すぐ燃やすか?カインのなんて、愛良とリーンのに比べて作るのにかけた時間は100分の1だから躊躇いなく燃やせる」」」

「すいません、いります!」


危なかった……。

こいつら、絶対に本気だった。

せっかく作った服を燃やす気満々だった……ん?


「俺のも、手作りなのか?」

「「「当然」」」


三男はともかく、長男や次男も一緒に?

愛良から離そうとしていた二人も?

……不気味で仕方が無いんだが。


「そうですか……」


深く考えないほうがいい。

自分にそう言い聞かせて、大人しく着替える。

……とは言っても、着方が分からないから三つ子たちに手伝ってもらったがな。

やけに帯というベルトのような物を締め付けられて、胃の中身を吐くかと思った。

今の身体能力で吐きそうになるってことは、帯は強化されて相当な力を込められていたんだよな。

……さすがにおかしいよな?

そう思って三つ子に確認してみたんだが。


「なーに言ってんだよ?着物ってのはきっちり締めとかないと、襟元が緩んできたりするんだぜ?」

「公衆の面前で肌蹴たいのか」

「露出狂願望でもあるの?」


……ということを三つ子に言われたから、我慢した。

そんなに力を込めて締めないといけないなんて、着物というのは不思議な衣装だな……。

コス(あの帯の締め付け具合は妹溺愛シスコン達の悪あがきって教えた方がいいのか?)

ルシ(いやいや。黙っていた方が身の為だろ)

クロ(面白いし黙っとくー。着替え終わるまでリーン達と遊んどこー)

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