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159.実はちゃんと父親を尊敬しているんです

視点は愛良→カインです

◇◇◇◇


『さ~ようやくお待ちかねの時間になりました!生徒会主催、“親子で協力!敵親子を蹴散らして、親子の絆を深めよう!”の時間だー!!』


あいかわらずマイクを持った元会長で現副会長のルーザー先輩はハイテンション。

いやー、本当に先輩の実況スキルはあやかりたいものです。


『大勢の参加、ありがとうございます!司会、実況は私、男子副会長のルーザーと、解説は同じく女子副会長のアイラちゃんでお送りします!』

『みんな頑張れー』


適当にエールを送りながら、腕の中で爆睡中のリーンとしぃちゃんの頭をナデナデ。

ついでに私の肩で丸くなってるクロちゃんも眠たそうに欠伸をしてる。

遮音の結界は完璧だから、好きなだけ寝たらいいよー。

……ロリコンの子猫?

泣きまくってちょっとウザかったコス王と一緒に、人型でどっかに呑みに行きましたよ?

たぶん明日になったら帰ってくるでしょ。


『……ところでアイラちゃん?アイラちゃんが抱っこしている子どもは誰なのかな?生徒会長と同じ髪色をしているけど?』


さっきからチラチラと見ていて気にしてるのは分かってたけど、まさかのマイクで聞いてきますか。

まぁ大ぴらげに聞いてこようが、どっちにしろ答えないんですけどね。

帝国の皇子様です、なんて答えるわけにはいかないんだし。


『この子は……秘密です』


人差し指を口元で立てて、内緒アピール。

リーンちゃんに危険が及ぶようなことはしませんとも。


「秘密っ!?まさか……」

「うそ、カイン様に隠し子が……」

「母親は誰よ!?やっぱり副会長!?」

「そんな……カイン様に……副会長、呪ってやる……」


……あれ?

何でカインファンの子達に呪詛みたいな目つきで睨まれているんでしょうかー?

みなさん、怖いですよー?

せっかくカインが出るから応援に来てるのに、気合の入れる方向を間違えてませんかー?

ほらほら、みんなの応援の対象であるカインはあっちで頭を押さえていますからねー?

……隣にいるマスターは何でそんな満足げな笑顔を浮かべて、カインの背中をバシバシ叩いているんですかねぇ。

まぁ、別にいっか。


『この子のことは置いといて、さっさと始めますよー』


これが終わったらギルドに戻ってマスターのお仕事手伝わないといけないんだし、さっさと始めます。

決して女の子達の死線が怖かったわけじゃないって言い訳しとく!








◇◇◇◇


頭痛が止まない。

愛良は深く考えずに秘密だと言ったんだろうなぁ。

だがな?その前にルーザー先輩が俺と髪色同じと指摘した上での、愛良の「秘密」発言。

勘違いした奴らが増殖中だ。


「ふっふっふ……。カイン、このまま外堀を埋めるのよ!」


仕事を途中放棄して合流した親父はなぜか満足げな笑みを浮かべて、さっきから俺の背中を叩いているがな。

いや、それよりも。


「親父、口調」

「ぐっ!?」


またオカマ口調になっていた親父。

気分が高揚するたびにオカマに戻っているんだぞ。

そのたびに殴っているのに、こりないな。

……それにしても死線が痛すぎる。

そしてダーク家の当主と次期当主の視線も痛い。

父はこの間の会議で会ったが、弟は久しぶりに見た。

顔は父よりも母に似たんだな。

ルナによく似ている。

元気そうでなによりだ。

呆気にとられた様子で俺を凝視していて、間抜けにしか見えないんだがな。

まぁ弟が元気ならそれでいいか。

それよりも問題なのは、あそこで異様な雰囲気を発している奴らだ。


「我らが名誉会長との間に、子ども……だと!?」

「イケメン許すまじ!」

「アイラちゃんに生徒会長には手を出したら絶交するって言われたが、アレは許せん!!」

「だけどアイラちゃんと絶交は嫌だ……。撲滅会議にアイラちゃんが参加してくれなくなるのは嫌だ……」

『結論!すべてイケメンが悪い!!』


ああ……イケメン撲滅委員会の死線が痛い。

頼むから、鈍器で素振りをするな。

周りが危ないだろ。

奴らにやられるはずがないとは思っていても、視線が痛すぎる。

いや、でも今はイベントに集中しよう。

愛良がやる気になる=優勝しないといけないからな。


『さて!みんな呪うのもいいが、そろそろ始めるぞ!』


おい、ルーザー先輩。

呪うのはいいってどういうことだ。


『まずは人数が多いから、別会場で陣取り合戦だ!一気に人数を削るぞー!!てなわけで、アイラちゃん!よろしくお願いします!』

『はーい』


愛良の返事と同時に、強制転移される。

愛良……今回のイベントの参加者数は30組を超えるのに、それを一斉に強制転移させたら実力を隠せないぞ。

……まぁ、今さら隠さなくても別にかまわないような気がするがな。


「ここは……草原か?」


隣にいた親父が周りを見回しながらつぶやいた。

ここは王都の近くにある草原だ。

イベント中は無関係の人間が近づかないように、シンを含む他の生徒会のメンバーが見張りをしている。

俺は結界を張る役目だったんだが……シンに見張りをさせつつ、人避けと不老不死の結界を張らしているみたいだから、問題はないか。

本当にシンを鍛えておいてよかった。


『自分たちの足元に旗が立っているのを確認したか?各チーム、敵チームから旗を5本集めてくれ!5本集めた所で自動的に学園に戻るようになっているぞ!旗を盗られたチームも失格で戻ってくるようになってるから、旗も守らないといけないからなー!』

『不死結界張っているから、怪我しても問題なしです。ちなみに、使い魔はなしですよー。こっちでもそっちの様子は見えてるから、ズルしてもすぐにばれちゃうんでー』


愛良たちの説明に、それぞれ身構える敵チーム。

そのほとんどが警戒しているのは、俺たち。

まぁ親父がギルドマスターってのは結構有名だし、前の全帝ってのも知られているから当然の反応か。


「親父」

「任せとけ」


俺の言葉に、拳をもう片方の手のひらに打ち付けてニヤッと笑う親父。

親父もやる気になってるし、一瞬で終わらせてやる。


『あ、ルディス親子のとこだけ強すぎるから、自分たちが使う魔法は身体強化系しか使っちゃダメにしまーす。分かりましたかー?』

「「………はーい」」


……訂正。

3分以内に終わらせることにする。


『では始めぇええ!!』


ルーザー先輩の喧しい叫びと同時に、一斉に俺たちに向けて撃たれるさまざまな魔法。

本当に素晴らしいまでの集中狙いだな。

特に6大貴族のうち、参加している火と風、雷と水の所の当主たちは最上級だし。

とりあえずは、父親の行動に焦って俺に手を合わせて頭を下げまくってるルート・アクア。

お前とは、後でゆっくり話をする必要があるな。

特に、父親の再教育について、じっくりと。

……言っておくが、俺は呑気にそんなことを考えているが、目の前には最上級の魔法が迫ってきているからな?

6大貴族を見た瞬間に、半眼になった親父が前に出たから問題ないんだが。

親父、基本的に貴族がやるべき仕事も押し付けられまくって、6大貴族みたいな王侯貴族って嫌いだからな。


「ふっふっふ……まともに仕事せずに踏ん反りがえっている豚ごときの攻撃なんぞ、この拳だけで十分じゃおんどりゃぁああああああ!!!」

「いや、拳だけじゃ無理だろ」


妙に殺る気になっている親父に、思わず突っ込んだ……のだが。

迫っていた巨大な火球がドカン、と音を立てて親父の拳とぶつかり、そのまま火馬鹿の親に向けて打ち返した。

さらには雷やら風やら水やら、全部拳で打ち返してる。

なんでだ。

普通は無理だろ。

親父が3発目を打ち返した時点で、拳に属性強化をしているのに気付いたけど。

……拳だけじゃないよな?


『おおっとー!?なんとルディス父、最上級の火球を拳のみで受け止めたぁああああ!?これはどういうことでしょうか!?解説のアイラちゃん!』

『んーとー……?あ、分かった!拳に同じ属性の魔力を纏ってるんだね!次から次へと別々の属性魔法が飛んできても、対応できるだけの属性を持っているし、すぐに属性を切りかえれるだけの冷静さと魔力コントロールがある前全帝だからこそできることだね!マスターにもかっこいいとこがあってよかった!』


「……」


愛良、最後は言ってやるな。

親父のやる気が、一気に下がったから。

それでもきちんと打ち返してはいるんだが……。

愛良が知らないだけで、それなりに立派なんだからな?

今までのオカマ言動が全てを台無しにしてきただけで!


……さて。

俺は親父が打ち返している間に、旗を回収しに行くか。

ほとんどの親子が親父に魔法を打つのに集中しているし、守りとして旗に残っている方も親父の様子に呆気にとられてるからな。

愛良との契約効果で別に身体強化をせずに魔法を食らっても問題ないんだが、さすがに怪しまれる。

適当に身体強化をして、一気に盗るか。

ちゃっかり弟も俺たちに集中狙いしている奴らの旗を盗ってるし。

というより、弟のあのちゃっかりさは誰に似たんだろうか。

ダーク家の父すら呆気にとられている中で淡々と旗を回収する姿に、弟の将来が不安になったぞ。


「じゃあ親父。俺は旗を集めに行ってくる」

「1分以内だ。少しでもオーバーしたら、俺は……私に戻る!」


胸を張って宣言する親父。

私に戻る?

つまり、オカマに戻ると?

…………。


「回収してきた」

「はやっ!?」


俺が一瞬で旗を集めてきた瞬間、元の学園に戻ってきた。

いや、ちょっと本気の身体強化してしまった。

旗に残っている方の奴らを吹き飛ばすぐらいの勢いだったが、仕方がない。


「ちょ……早すぎだろ、お前!!」

「親父がオカマに戻るとかほざくのが悪い!」


親父がオカマに戻るのはリーンの教育に悪いし、なにより俺が嫌過ぎるからな!

うっかり力を隠すのも忘れたが、仕方がないんだ!


『おおっとぉ!?なんて速さ!開始してから3分足らずで戻ってきたルディス親子!さすがはギルド『清龍』のオカマスター!素晴らしい防御の仕方です!そして、さすが我ら学園最強の生徒会長!会長が動き始めて一瞬で勝負がついてしまった!!サバイバル時同様の素晴らしい爆走ぶりだ!!文句なしの1位です!!』


解説の席で、ルーザー先輩が立ち上がるほど興奮している。

その隣で、寝ているリーン達を膝に乗せて呆れたような笑みを浮かべている愛良。


『……よっぽどかっこいいお父さんを維持したかったんだねぇ。お疲れ様です』


誰だって、強くてギルドの中でも一番偉いのにオカマがすべてを台無しにしてきた親父を見ていたら、今の状態を維持したいと思うだろ。

……それのどこが悪いんだよ。

~昔のカイン(9歳)とオカマスター~


カイ「とーさん、おれ、討伐の依頼に行きたかった」森で薬草を採取しながら不貞腐れ中


オカ「だーめ。あんたにはまだ早いんだから。今日は私と一緒に採取を頑張んなさい」カインの頭を撫でながら苦笑


カイ「むぅ……ん?とーさん、あっちから悲鳴が聞こえる」


オカ「!?カイン、あんたは私から離れないのよ!?」カインを背負ってダッシュ


カイ「わかった」




女性「きゃぁあああ!!助けて!!」魔物から超必死に逃亡中


オカ「うおりゃぁああ!!大丈夫!!?」魔物を一発KO


女性「あ、ありがとうござ……ひぃっ!!?」ピンクのセクシードレスに濃いメイクのオカマスターに硬直


オカ「怪我はない?街まで送るわ」にっこり笑顔で手を差し出す


女性「……い、いやぁあああああああああああっ!!!!!」魔物に襲われていた時以上の速さで街までダッシュ


オカ「……あら?」きょとん


カイ(……普通に男の恰好してくれたら、きっと逃げられなかったのに。全部台無しだ……)ため息

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