156.お昼ご飯はどこで食べるか考えましょう
視点は愛良です
◇◇◇◇
「お兄ちゃん達、結局龍雅連れて行ったまま帰ってこなかったねー」
「……奴は永遠に帰ってこなくていいけどな」
私たちの当番が終わって、次のラピス達と交代したんだけど、誰も帰ってこなかったです。
ちぃ兄ちゃんも私たちの当番が終わるなり、さっさとどっかに行っちゃったし。
まぁ、たぶん龍雅の制裁に参加しに行っただけでしょうけど。
お兄ちゃんたちにはぜひとも頑張っていただきたいです。
お兄ちゃんたちが頑張ってくれている間に、私たちはお昼ご飯にしよう!
リーン達と合流したいけどコス王に念話してみたら、今は皇帝さんと一緒に仲良くできているみたい。
邪魔しちゃ悪いし、今日はカインと二人でご飯かなー。
「カイン、何食べたい?」
「そうだな……」
各クラスの出店マップを見ながら考えるカイン。
カインの手元にあるマップを覗き込んだんだけど、この世界の文化祭とかお祭りって、食べ物系ってあんまりないみたいなんだよね。
日本のお祭りみたいな焼きそば、いか焼きなんてないしね。
せいぜいシン君のクラスのたこ焼きとか、私たちのクラスの喫茶とか?
……いや、他にも売ってることには売ってるんだけど、ゴブリンの耳焼きとかトロールの目玉焼きとか、ちょっと食べるのに勇気がいるものばっかなんですよねー。
販売の許可を出したのは生徒会である私たちなんだけど。
だって、こっちの世界の出店ではポピュラーだって聞いたんだもん。
許可を出さないわけにはいかないよ……。
けどね?ゴブリンとかトロールとかを狩る側としては、アレを食べたいとは思えないんです。
うん、生理的に受け付けない。
ドラゴンとかを解体した後のお肉なら食べれるけど、まんま耳と目玉は無理です。
見たら泣く自信があるよ。
ていうか、試作品を見て泣きましたから。
だって、串に耳(×5)とか目玉(×2)がグサッって刺してあったんだもん……。
それを平然と試食する先生たちとか見てたら、もう倒れそうになりましたよ……。
見た目はアレだけど美味しいって言われても、無理なものは無理。
絶対に食べるものかと思いましたよ……。
「……食堂に行くか」
カインも耳焼きとか目玉焼きは苦手っぽくて、出店の中で食べたい物はなかったみたいです。
食堂は文化祭でも開放されているから、食堂で食べるので決定。
お弁当ばっかで学園の食堂は行ったことなかったし、ちょうどいいね!
ヤンヒロはお兄ちゃん達に連れて行かれたから、安心してウロウロできるし!
「じゃあ食堂に行こ!」
カインの手を引っ張って食堂にレッツゴー!……と思ったら。
「ちょっとお待ちなさい!」
王女達に呼び止められました。
ああ……テンション下がる……。
「……何か用?今からご飯に行くのに」
午前中、主にあんたたちのおかげで疲れ果てたから、そろそろお腹減ってんだからね。
「リョウガさんをどこに隠したんですの!?早くリョウガさんを返しなさい!」
王女、龍雅が物扱いになってるよー。
本当にあの子のどこがいいの?
「カイン君も今からご飯なんですか?私たちもなんですー!一緒にご飯食べましょー!」
「断る」
リノちゃん、君はさっきカインにあれだけ拒絶されたばっかのに通常運行ですね。
その図太すぎる神経、素晴らしいと思います。
カインに即刻拒否られたけど。
そしてさりげなく私の存在をスルーしましたね?
「……まぁ、あたしも行ってやらないこともないけど」
ツンデレちゃんは、さっきのカインの拒絶を気にしているんだね。
ちらちらカインの顔色を伺っている。
よかったー。
ツンデレちゃんまで鋼の神経していたらダルイもん。
「龍雅は鬼畜太子さん達に連れて行かれてたよー?どこに行ったのかは私も知らない」
お兄ちゃん達の魔力を辿るのとか、私には無理。
時間をかけたらカインは分かるみたいだけど、そこまでして龍雅の行き先を知りたいとも思わないし。
というか、この子はあの時に店内に居たのに気付かなかったとか、どんだけお茶を淹れるのに集中してたの?
「もういいか?」
律儀に聞いてあげるカインは優しいと思うよ。
私は無視してもう行く気満々だったもん。
食堂にはどんなメニューが置いてあるのかなー。
ついでだから、今晩のメニューの参考にしよう。
「あー!!あんなところにリョウガ君が!!」
「「えっ!?」」
「何っ!?」
突然リノちゃんが叫び、私と王女とカインは思わず立ち止まって振り返った。
どこ!?どこにヤンヒロが現れたの!?
「転移!」
「は?」
「……あれ?」
んーと……?
ヤンヒロ出現情報に驚いている間に、リノちゃんがカインに抱きついてそのままどっかに転移しちゃった?
リノちゃんって、不安定だけど転移使えたんだ。
カインいなくなっちゃったけど……お昼ご飯、どうしよ?
「り、リノの奴!!何抜け駆けしてんのよ!?」
顔を真っ赤にして怒るツンデレちゃん。
そのうち頭の血管が破けるんじゃないかな。
「……はあ。付き合ってられませんわ」
呆れたようにため息をついた王女は、そのまま踵を返した。
あれ、私も呆れられたの?
あの王女に?
うわ……立ち直れない。
「シドウ、大丈夫か?」
「うわー。副会長、リノがごめんなー」
王女に呆れられたっていう事実に結構ガチで凹んでいたら、緑髪くんと赤髪くんにかなり本気で心配されました。
「ああ、まぁ大丈夫です……」
あんまり大丈夫じゃないけど。
お腹減ったのもあって、立ち直るのに時間かかりそう。
「お腹、減ったなぁ……」
追いかけるのも面倒だし、カインならすぐに帰ってくるだろうしから離れるのもなぁ……。
早くカイン帰ってこないかなー……。
「シドウ、腹が減ったのか?ルディスは帰ってこないし、俺たちと飯に行くか?」
「あ、いいじゃん!副会長、食堂に行こうぜ!」
いい案を思いついたと言わんばかりに緑髪くんと赤髪くんが言ってきた。
え、何でそうなるんですか?
「絶対に嫌よ!何で私がこの女とご飯を一緒にしないといけないのよ!?」
「いや、別にお前は誘ってない」
「そーそー。シェラはサフィと食えば?」
私を誘ったことに対してツンデレちゃんが盛大に文句を言っていますが、それに対してすごく嫌そうな目で断言しちゃうお二人。
……あらら?
ついに緑髪くんと赤髪くん、このビッチーズと一緒にいるの嫌になった?
龍雅のことも、実は嫌いっぽいもんね。
もしかして、ルートくんみたいに私たち側に来ようとしてる?
「愛良、悪い。待たせた」
あ、カインが帰ってきたから、この子たちとご飯はなしだね。
「おかえりー。遅かったね」
「ああ、魔力コントロールが不十分なのに転移をするから、片足をどこか別の場所に転移されてな。仕方がないから片足を回収して治してから保健室に預けてきた。結局あいつは何がしたかったんだ?」
ずいぶん思い切った行動した割には、何にもできなかったんだねー。
リノちゃん、カインがいなかったら出血多量、もしくはショックで死んでたよ?
「お前たちも友達なら、顔でも出してやれ」
「じゃあねー」
急な展開についていけない子達は放置です。
早くご飯食べたーい。
~緑髪くんと赤髪くんの本音~
赤髪「あー……。ルートみたいに、副会長たちのグループに入りたかった……」がっくり
緑髪「ルディスがあんなに早く帰ってくるとは思わなかったな……」遠い目
赤髪「もうさ、直接仲間に入れてくれってお願いしたほうがよくないか?俺、ぶっちゃけリョウガとかサフィとか我儘すぎるあいつらの相手、もうやだし」
緑髪「俺だってそうだ。あいつらと関わっているとロクな目に合わない。だが俺の家はダーク家とはあまり仲が良くないから、ルナや元ダーク家長男のルディスと近づきすぎるわけにもいかないんだから、しょうがないだろ……」
赤髪「まぁ、だからせめて副会長だけでも仲良くなろうと思ったのに、あっさり会長が戻ってきちまったもんなぁ……」
緑髪「はぁ……もう退学してもいいから、奴らと離れたい……」
赤髪「同感……」
実は龍雅グループから離れたくてしょうがない緑髪くんと赤髪くんでしたー。