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154.文化祭2日目はさっそくストレスが溜まります

視点は愛良→カインです。

◇◇◇◇


文化祭2日目。

今日も良いお天気。だけど、あいにく私の心は大荒れです。


「わたくしにお茶を持ってこいと?……あなたの顔、覚えましたわよ」


注文をしたお客さんに向かって、無駄に見下ろしながら言う王女。

ふっふっふ……このやり取りを見たの、今日だけで何回目でしょうか。

そろそろ私、手を出してもいいよね?


「はいはいはーい。プリンパフェですね、お待たせしましたー!ごゆっくりどうぞ~。……王女様、ちょいとこっち来ようか?」


王女の態度に呆気にとられていたお客さんの前に注文していたプリンパフェを置いて、王女の頭を鷲掴みにしてお客さんから引き離します。


「痛いですわよ!無礼なっ!」


いやいや、痛いですんでありがたいと思ってくださいな。

本音で言うと、そのおめでたい頭を握りつぶしたいの我慢しているんだから。


「あなた、わたくしに手を出すなんて、覚悟はできているのかしらっ!?」

「そういう王女も真面目にやれって言われた先生たちの言葉を無視するなんて、いい度胸だね。接客業というものを大兄ちゃん……鬼畜太子さんから学んできたら?」


ほら、ごらんよ。

準備万端って感じでテーブルの一つを陣取っている大兄ちゃんが、無駄に笑顔でこっちに向かって手を振っているよ。

さっきからの王女の様子もばっちり見られていたんだからね?


「ひっ………も、申し訳ありません……」


大兄ちゃんの視線に気づくなり、青ざめて大人しくなる王女。

お兄ちゃんたちが揃っているって分かっていながら、なーんであんな強気な態度に出るかな?

馬鹿の考えることって分かんない。


「カイン君、カイン君!ちゃんとお客様からオーダーとれましたよ!偉いですか!?」

「ちょっと、リノ!先に私がカインと話をしていたのに、何で割り込んでくるのよ!?オーダーとったなら、さっさと持っていきなさいよ!」

「……煩い」


カインの方はカインの方で大変そうだねぇ。

リノちゃんとツンデレちゃんのどちらか一人が、必ず傍に着いているし。

ああやって二人が重なっちゃうと煩いんですけど。

その喧しいお二人、カインを挟んでお互い睨み合ってる。


「シェラさんこそカイン君に話しかけてばかりじゃなくて、働いたらどうですか?カイン君だって迷惑してますよ」

「リノが煩く話しかけてくるからでしょ!?」


うーん……どっちもどっちだと思うなぁ。

私的には、そろそろ間に挟まれているカインの不機嫌バロメーターが振り切っちゃいそうだから、さっさとカインから離れてお仕事をしてほしいのが本音です。

いつまでもあそこに固まられても迷惑だし、離しますか。


「リノちゃん、お客様にメニューを届けてきてくださいなー。ツン……シェラさんはあそこのテーブル片づけてもらますー?」


近寄ってそうお願いしたんですけども。


「えー。シドウさんが気づいたなら、シドウさんがやってくださいよー」


いやいや、オーダーとったのリノちゃんだからね?


「何で私が片づけなんてしないといけないのよ。あんたがやってきたら?」


おい、ツンデレ。あんたが仕事しないから言ってんでしょうが。


「「カイン(君)と関係ないなら出しゃばんないで(くださいよ)」」


同じことを言ってカインの腕に抱きつく二人。

……別に、関係なくないもん。

……私、キレそうです。

癒しが欲しい。

リーンとしぃちゃんは今どこの出店に行ってるんだろう。

使い魔ズに連絡して連れてきてもらおうかな。

あ、でもせっかく皇帝さんと一緒にいるんだから、邪魔したらダメだね。

我慢。我慢するんだ。


「関係ないのはお前たちの方だろうが。気安く触るな。さっさと仕事しろ。それが出来ないなら邪魔だから消え失せろ」


あ、先にカインがキレた。

すんごく冷めた目で二人を見ている。

そんな目で見られた二人は、目を見開いて硬直。

イケメンに無表情のまま冷めた目で睨まれると怖いから、無理ないだろうけどね。


「愛良、こいつらは放っておいていい」

「あ、うん」


カインがそう言うなら、別にいっか。

話すだけで不愉快になる子たちだし、放っておこ。

早くこのイライラする状況から出たいなぁ。







◇◇◇◇


あいつら、何なんだ?

愛良に『関係ないなら出しゃばるな』って言った瞬間、マジでキレたぞ。

一番関係ないのはお前らだろうが。


「カインー。お客商売だから、眉間の皺を伸ばしてねー」


……どうやら、俺はだいぶ顔をしかめていたらしい。

愛良が俺の眉間に指を当てて、グリグリと伸ばしてきた。


「分かったから。愛良も仕事に戻るぞ」

「はーい」


愛良もあいつらの我儘にイラついていたようだが、頭を撫でてやれば笑顔で頷いた。


「………お前らって、いつもそうやって無自覚にイチャついてんのか?」

「は?」


何やら呆れた声が聞こえたから入口を見れば、シンがちょうど中に入ってきたところだった。


「あ、シン君だ。いらっしゃい、来てくれたんだー。何にする?」

「プリンタルトとブラックコーヒーで」

「あれ、ブラック飲めたっけ?」

「これ以上胸やけしたくないから、ブラックでいいわ」


今も胸辺りを押さえているシン。

……いつ、俺が愛良とイチャついていたんだろうか?


「はい、プリンタルトとブラックコーヒー。ゆっくりせずに早く出てね」


シンを案内した席にメニューを置いて、にっこり笑って言う愛良。

……何か、今最後の言葉が間違ってなかったか?


「ちょ、愛良さーん?俺って客だよ?客なんですよ?客に向かって『さっさと帰れ』発言は駄目じゃね?普通は『ごゆっくりどうぞ』だろ?」


顔を引きつらせて突っ込むシン。

あ、やっぱり愛良が言ったのは『早く帰れ』ってことだったのか。

思わず俺も黙り込んでしまうと、愛良はシンに向けて輝かんばかりの笑顔を浮かべて親指をグッと立てた。


「シン君は友達想いだから、店内がお客でいっぱいで外は行列ができているってことを考慮して、すぐに出て行ってくれるって信じてる!」


……なるほど。

確かに昨日に引き続き行列ができていることを考えると、さっさと席を回したいのは理解できるな。

客に対しては口にはできないが、シンならいいか。


「……その方が確かに助かるな。シン、頼んだぞ」

「つまり、客の回りをよくしたいから食ったら即刻出ていけってことですね、分かりたくありませんでした!」


ヤケクソに声を上げてプリンタルトに食いつくシン。

だが、一口食べればすぐにその表情も緩まる。


「うめー。やっぱ愛良の作るもんは最高じゃん。カインはいいよなー。いつでも愛良の飯が食えて。俺なんか簡単なのしか作れないから、いっつも同じのばっかになるし」

「ご飯、シン君食べにくる?食費はもらうけど」


自分が作った物を褒められるのは嬉しい愛良が、首を傾げて提案したんだが……俺たちの部屋に、毎日来るのか?

シンが毎日俺たちと一緒に食事をする、なぁ……。

大食いのシンに、愛良がすごく手を取られそうなんだが。

いや、料理好きの愛良は特に気にせずに対応するだろうが……。


「え、マジで!?」


愛良の提案に、表情を明るくさせるシン。

だがしかし、すぐに俺の方を見るなりその顔色を青ざめさせた。


「……すいません、お気持ちだけで結構です。だからカイン。そんなに睨まないでくれよ……」


俺、睨んだつもりはなかったんだが……まあいいか。

~シン君の内心~


あっぶねぇ……。

普段の食生活のことを考えると愛良の提案に喜々として頷こうと思ったけどさ?

その提案をしてくれた愛良の後ろで、カインがものごっつい複雑そうな顔で愛良を見ているんだぜ?

そしてすぐに俺の方を黙ってじっと見てくるし……。

本人はきっと睨んでるつもりじゃなくて、どうせ普段の自分たちの食事風景に俺がプラスされたことを想像していたんだろうけどさ……。

ただでさえ顔が整っている奴にじっと見られるのは、居心地悪すぎだって。

もう本当にこいつらさっさと付き合ってくれないかな。

俺、安心してお前らの部屋に遊びに行くのもできないじゃん。

頼むから、俺の心の平穏のためにも、さっさとくっついてくれ!!泣

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