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152.過去は水に流せません。

視点は愛良→カインです

◇◇◇◇


お兄ちゃんたちが話し合いを始めてからかなりの時間が経った時、廊下の方から勢いよく何かが飛び込んできた。


「いたっ!!」

「見つけましたわよっ!?」


飛び込んできたのはイケメンとグラマーな美女さん。

とっても大きな声で入ってきたので、他のお客様に迷惑です。

リーンとしぃちゃんも、人型のコス王に抱っこされてお昼寝はじめたばかりなのに。

うちの子たちのお昼寝の邪魔する迷惑なお客様は追い出すんだからね。


「……ん?愛良、待て」


追い出そうとグレイプニールを掴んだら、なぜかカインに止められました。

何でカインはそんなに怪訝そうな顔してるの?


「陛下っ!ようやく追いつきました!てか、何してんですかっ!?」

「護衛である私たちを置いていくなんて、何を考えていらっしゃるんですかっ!?」


あ、あの二人は皇帝さんに置いてけぼりにされた護衛だったんだ。

だからあんなに怒ってるんだね。

というより、一応お忍びで着ている皇帝さんを思いっきり大声で『陛下』って呼ぶのってまずいんじゃないかなぁ。


「陛下っ、聞いているんですか!?」


背中を向けて座ったまま振り返らない皇帝さん。

たぶん聞いてない。

というか、聞こえてない。

だって、あそこはカインが空間隔ててるからね。


「すいません。他のお客様のご迷惑になるので、声を落としてもらえませんか?」

「え、すいません……」

「申し訳ありません……」


無表情なカインが注意を促している間に、皇帝さんを呼びに行こ。

本当に迷惑ですから。


「皇帝さん皇帝さん」


空間に穴を開けて顔を覗かせると、ようやく皇帝さんが振り返った。

ちなみにお兄ちゃんズは無駄に笑顔を振りまいていて、ルシファーは項垂れている魔族のおじさんの肩をバシバシ叩いて、クロちゃんは指さして笑っていました。

スルーしますけどね。


「どうした」

「皇帝さんの護衛みたいな人たちが、結界の外で騒いでいるんです。邪魔なので、とりあえず一声かけてあげてもらえませんか?ちなみに、思いっきり『陛下』って大声で叫んでいました」

「……」


あら、皇帝さんの眉がピクッって動いた。

そして醸し出される超不機嫌オーラ。


「……分かった。失礼するぞ」


お兄ちゃんたちに一声かけてから皇帝さんが結界の外に出た途端、店内にいた人たち全員の視線が向いた。

圧倒的な威圧感があるから、当然だね。

カリスマって言うのかな?

思わず皇帝さんの言うことには従わないとって思うもん。

護衛の二人も、皇帝さんが振り返るなり膝をついたし。


「貴様ら、ここをどこだと思っている」


力強い眼力で護衛の二人を見下ろす皇帝さん。

きゃーこわーい。

だけど護衛の二人も負けてない。


「陛下こそ、私たちを置いていくなんて何を考えているんですかっ!?」

「お一人でおられる時に、万が一のことがあればどうなさるおつもりですの!?」


ありゃまぁ……お二人、怒り心頭で皇帝さんのこと隠す気ゼロです。

そりゃ、護衛の人たちにとっては皇帝さん大事だもんね。

心配するのも当然だわ。


「遅いお前たちが悪い。それに剣は持って来ている」


リーンに早く会いたいって理由で置いてきた皇帝さんが置いて行ったんですよー。

まぁ皇帝さんかなり強そうだし、一人でも問題なさそうだけど。


「遅い!?一番の駿馬に乗って一人で人ゴミの中を爆走したのは誰ですか!?」

「一歩間違えれば大惨事ですわっ!」


金髪イケメンと紫髪のグラマーなお姉さんが青筋浮かべて怒鳴ってる。

……それにしても人ゴミの中を馬で爆走するって、皇帝さんって何気にやる事すごいねぇ。

どんだけリーンに会いたかったんですか。


「人を轢くはずがないだろうが」


何を言ってんだ、こいつら。

そんな様子の皇帝さん。

はい、自信満々な皇帝さんが大好きです。


「……もう、いいです。無事だったんで」

「陛下ですから、諦めますわ……」


あ、護衛が折れた。

きっと帝国では日常茶飯事なんだろうねぇ……お疲れ様です。

いつまでもお店の注目を集められても困るので、皇帝さんと護衛の二人はカインに新しい席に案内してもらいましょう。

『陛下と同じ席に着くなど出来ない!』って騒いでいたけど、皇帝さんの『いいから黙って席に着け』の一声で大人しく席に着いてもらいました。


「陛下、今までずっとこの学園の文化祭を見学されていたんですか?」

「今は休憩をされていたんですの?」

「そんなところだ。世話になっている者がここの関係者なのでな」


そう言って私とカインの方を見る皇帝さん。

いやいや、せめてこの学園の生徒会だって言って下さいよ。

クラスメイトに帝国の皇帝さんと繋がりがあるってばれちゃうじゃないですか。

別に問題はないのだけども!


「こんにちはー」

「どうも」

「「……は?」」


皇帝さんに紹介されたから、仕方なくカインと一緒に頭を下げたら何故か二人とも目を険しくして立ちあがった。

そしてすぐさま皇帝さんを守る様に前に出て身構え、殺気を放つ。

……私に向けて。


「……へ?」

「はぁ……やっぱりか……」


私、なんかしたっけ?

そしてカインさん。

あなたは見覚えがあるんですか?


「君は、魔王代「あの時のまな板娘!!」ぶべっ!?」


まな板娘と言われた瞬間、この人たちに出す様のプリンを投げてしまった。

あたったのはイケメンの方だけど。

うん、もう絶壁でもまな板でもないけど条件反射が身に付いちゃってるので私は悪くないです。

悪いのは急に失礼なことを言ったグラマーなおばさんです。

……で、結局この人たちはどちら様?









◇◇◇◇


「お前たち、こいつらと知り合いか?」

「ん~……?」


皇帝に話しかけられて首をかしげる愛良。

どうやら、完全にこの二人のことを忘れているようだな。

だいぶ前にルシファーの城に行った時に、魔王城に乗り込んできた自称勇者とその仲間たちだろ。

お前の方が散々からかっていたのに、何で綺麗さっぱり忘れてんだよ。

男の方が店の中で愛良のことを『魔王代理』と叫ぼうとして焦ったが、女の方が遮ってくれて助かった。


「愛良。ルシファーの家に行った時に、あつらの遊びの対象になっていた奴らだ」

「………ああ!あの時の自称勇者さんと失礼なグラマーおばさんだ!」


手をパンっと打つ愛良。

そんな愛良のセリフに額に青筋を立てる女。


「誰がおばさんよ!?まだ28よっ!!このまな板小娘!」


キレた女が、さらに愛良の禁句を口にする。

だが、以外にも愛良は反応することなく首を傾げた。

……最近は服の上からでも微妙にふくらみがあるのが分かるくらい成長したから、余裕ができたのか?


「カイン、私たちより12歳年上の人は、おばさんには入らない?」

「……俺に聞くな」


何無邪気に聞いてきてんだ、お前は。

女の年齢を話題にすることほど怖いものはない。

そのうち愛良だって言う様になると思うぞ、確実に。


「……結局、知り合いなのか?」


プリンを顔面にぶつけられて硬直している男と、愛良の『おばさん』発言にキレてる女。

そんな護衛二人を見て、改めて皇帝に聞かれたんだが、なんと言えばいいんだ?


「はーい!元魔王さんのお城の中で一回ボコってから怪我を治して、自国に送り返しただけでーす!」


ニコニコ笑って説明になっていない説明をする愛良。

そんなので皇帝が納得するはずがないだろうが。


「……そうか。こいつらが自発的に魔王を倒すとか言って旅立ったことがあったが……お前が、こいつらが言っていた魔王代理だったのか。なるほど。無様に城に強制転移させられたのも納得だ」


……納得された。

普通は魔王代理について突っ込むべきじゃないのか?

しかも自国の兵士が倒されたんだぞ?

むしろ怒られる、というか敵対されてもおかしくないんじゃないか?

……俺が変なのか?


「だから勝手なことをするなと言ったのだ。お前たちは確かに一般的には強いかも知れんが、だからといって魔王に喧嘩を売るなど無謀もいいところだと、散々言っただろうが。そもそも、魔物の活発化の原因を追及する前に魔王が原因と決めつけるなど浅はかもいいところだ」


呆れた様子で護衛二人に懇々と説教する皇帝。


「「すいません……」」


護衛二人は何も言えずに項垂れている。


「思慮深くて威厳たっぷりな皇帝さん、かっこいい……」

「………」


……愛良がうっとりした様子で皇帝の後姿を見つめているんだが。

頼むから、皇帝に惚れないでくれよ?

皇帝に惚れられたら、俺に勝ち目なんてないから。

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