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145.心の距離が縮まらない

カイン視点→愛良視点に変わります

◇◇◇◇


今日は文化祭一日目。

ようやくこの日を迎えることができたな。

本当に色々あった……頭痛しか感じないほど色々あった。


愛良がリーンに皇帝のことを思い出させようと必死に話しているのに、リーンはシリウスとクロノスと遊んで聞いていなかったり。

俺たちが必死に動き回っているのに、俺の使い魔共は呑気にゲーム部屋に引きこもって殺意が湧いたり。

様子を見に来る皇帝の案内は学園長や理事長が直々にやればすむものを、しゃしゃり出てくる6大貴族を諌めたり。

その6大貴族に半ギレの愛良が面白がった三つ子共と一緒になってトラップ仕込んで、奴らの屋敷に壊滅的なダメージを与えたり。

その謎の壊滅事件におかげで、全帝として原因を追究しろと依頼が来たり。

6大貴族と王族が勢ぞろいしているから、元生徒会長のルーザー先輩たちには仕事をするのを本気で嫌がられたり。

ダーク家の父が、俺に個人的に話したいことがあると言ってくるのを避けたり。

喫茶店で着る服は普通にエプロンをかければいいと考えていれば、使用人と同じ物を身に着るのは嫌だと騒いだ貴族たちのつまらないプライドで、俺たちが知らない間に衣装が作られていたり……。


疲れた。

本気で疲れた。

ちなみに愛良は、『何でメイド&執事カフェになってんの!?』と愕然としていた。

何でも、あの屑勇者がデザイン画を描いたらしい。

衣装に関しては、女子のほとんどは可愛いと絶賛して、男子も顔をニヤつかせている。

まぁ、確かにサイズ合わせで衣装を着た愛良は可愛かったけど。

本人は本気で顔を引きつらせていたが……。

それからが大変だった。

あの屑が、奴特製のメイド服を持って愛良を追い掛け回したんだよな。


屑『愛良~!愛良に似合うと思って作ってもらったんだよ!着てみて!!』

愛『サイズ合わせでもう着たし、何で文化祭でもないのに着ないといけないの!?もう君、死んで人生やり直した方がいいよ!!その方がみんなのため、世界のため、何より私のためっ!!』

屑『サイズ合わせの時、見せてくれなかったから言ってるのに……もう。愛良ったら恥ずかしがり屋さんなんだからー。あっ!嫌がってるように見せかけて、僕に着替えを手伝ってほしいってことだね!?何なら、今から僕の部屋に来る!?』

愛『……もうやだぁあああ!!私はツンデレじゃないもんっ!!本気で嫌なんだからっ!!カイン――っ!!おにいちゃぁああああんっ!!!』

俺『愛良、大丈夫だから。奴の部屋には行かせないから安心しろ』

三『『『龍雅ぁああああっ!!!愛良を泣かせるたぁどういうことだぁあああっ!!?』』』


うん、すごかった。

俺はすぐ傍にいたけど、三つ子は声も届かない職員室にいたはずなのに、愛良が泣き叫んだ瞬間に転移して来た。

三人が三人とも全く同じ表情で同じ言葉を叫びながら来たんだ。

あいつら、性格がバラバラで表情も違うから見分けとかつくんだが、今回のは全く見分けがつかないぐらい全く同じ怒りの形相だった。

愛良が俺に抱きついていたから何かされると身構えたが、俺たちのことは完全にスルーして奴を縛り上げていたな。

絶対に俺は奴らに殴られるとか思ったのに。

というか、三男だけじゃなくて長男と次男にまで『愛良の傍を離れるなよ?』って釘を刺された。

……つい最近まで、俺に愛良との契約を破棄しろって言って来たりしていたのに、何があったんだ?

まぁ、助かりはしたんだが……。

三男が手を打ってくれたのか?今度、礼を言った方がいいか?


「カインー?何黄昏てるの?」

「パーパ?」


俺が今まであったことを思い出していると、リーンを抱き上げている愛良が覗き込んできた。

二人とも不思議そうに首をかしげて俺を見ている。

……お前ら、本当に可愛い奴らだな。


「……何でもない。そろそろか?」

「そのはずだよ」


俺に向けて手を伸ばすリーンを受け取って時間を確認すると、愛良は笑って頷いた。

俺たちが今いるのは、学園の正門前。

皇帝を迎えるためだ。

本来なら理事長や学園長がやるべきことだが、皇帝の方から『学園生活のことも知りたいから、できれば生徒に案内してもらいたい』と連絡があったからだ。

そうなると、必然的に生徒会が案内することになるからな。

皇帝には俺たちが生徒会であることを教えていたし。

ついでに言うと、リーンも連れてきてほしいとこっそり連絡を受けている。


「マーマ。リーン、あっちいきたいー」

「わうわう」


ここからでも見える出店の方ばかりを気にしているリーンとシリウス。

まぁ、祭みたいな物をみたのは初めてだから仕方がないな。


「あともうちょっとで皇帝さんが来るから待っててねー」

「むぅ……あい」


少し膨れっ面のリーンの頬を指先でつつきながら愛良が言うと、不承不承頷くリーン。

……皇帝、早く来てくれ。

楽しみにしている文化祭を前にして行けないから、リーンの皇帝の評価がどんどん落ちていっている気がしてしょうがないんだ。

愛良がせっかく寝る前に毎日皇帝の話をして思い出させたのに、苦労が泡になる。









◇◇◇◇


「待たせたな」


立派な馬に乗った皇帝さんが学園についたのは、リーンのホッペが完全に膨らみきってからでした。

もうね、完全に拗ねてますから。

困ったなぁ……。

とりあえずは、にっこり笑って挨拶!


「ようこそ、リンズバーン学園へ!」

「わざわざ足を運んでいただいて……は?」


私に続いてカインが口を開いていると、皇帝さんの後を見るなり顔を引きつらせた。

ここにいるのは他国の皇帝さん。

なのに、後ろには誰もいません。

……どゆこと?

確か、自国から連れてきた護衛が2人いるって連絡来てたと思うけど……。

ついでに言うと、フィレンチェ王国からも護衛として兵士が何人かついてくるって聞いていたのですけども!

それ以外にも兵士たちが学園内を警備のために配置されていますが!!

なーんで皇帝さん、お一人なんですか!?


「……皇帝さん、護衛は?」

「遅かったから置いてきた」


馬から降りながら、しれーっと答える皇帝さん。

ちょっと待って?

今、さらーっと大問題になること言わなかった?

一応仮にも皇帝様が、異国の地で一人でいるのって大問題だよね?


「「……」」


カインと顔を見合わせて悩んでいると、その原因様はカインが抱っこしているリーンの頭に手を置きました。


「リーン、久しぶりだな。少し大きくなったか」


はい、絶対にリーンに早く会いたいから護衛を置いてきましたね?

どこまでリーン一直線の親馬鹿なの!?

当のリーンはというと……。


「……?……あっ!とーと!」


不思議そうに皇帝さんの顔を見上げた後、納得したような声を出しました。

ちょ、リーンちゃん?

今思い出したの!?

私が寝る前に毎回毎回お話しして、『分かった?』って聞いたら『あい!』ってお返事したの嘘だったの!?

ママ泣くよ!?


「とーと、おしょいの!」

「す、すまんな……」


しかも超不機嫌。

久しぶりに会った実父に言うセリフが『遅い』って……。

いや、私もお父さんに会ったら『近寄るな』とか言うから、リーンのこと怒れない……。

皇帝さん、ごめんなさい。

久しぶりに会ったのに、さっそくリーンに怒られて。

あれ、でもこの子って微妙に皇帝さんのこと怖がってなかったっけ?

さっきから遊びたいのに待たされちゃったから、怖がるどころじゃないんですか?


「悪いな。連れていけと皇太子とその伯父が煩かったから黙らせるのに時間がかかった」

「え、豚の皇子様と豚犬もこの国についてきているんですか?あのリーンのこと狙ってる豚一族が?」

「ああ。皇太子も魔闘大会に出るからな」


なるほど……帝国には、戦力になりそうな人はいないんですね。

私、瞬殺できる自信がありますよ?


「それなら仕方ないですね」

「リーンは俺たちが守るにしても、危なくないですか?」

「安心しろ。好き勝手出来ぬよう、簀巻きにして部屋からぶら下げて、不可視遮音の結界を張って放置してきた」

「「……なら問題なしですね」」


皇帝さんの自信たっぷりなお言葉に、思わずカインと超納得しちゃいました。

つまり自由に動けないのに、誰にも助けを求めることができない状態で放ってきたんですね。

豚一族は周りの人が見えているのに。

こういうイベントって何か問題が起こると思っていたけど、先に手を回していらっしゃったんですねぇ……。

そんだけ身動きがとれないと、皇帝さんが欲しがってる不祥事の証拠も何も取れないと思うけど、リーン優先で動いたわけか。

平然とやってのけちゃうとか、相変わらずのリーン一直線のドS親バカです。

本気で惚れちゃいますよ?

それにしても……。


「パーパ、マーマ!あっちいこー!」

「ちょ、リーン!先に一人で行くな!」

「しーたん、いっしょらもん!」

「わうわーう!」


リーンが皇帝さんをガン無視して出店の方に行こうと必死。

もうね、しぃちゃんと一緒になって出店の方に走って行ってますから。

人ゴミに小さなリーン達が紛れたら大変だから、カインも焦って追いかけるぐらい必死に走ってます。


「……皇帝さん、大丈夫です?」

「……ああ」


久しぶりに会った息子に、見ごとにほっとかれた皇帝さん。

静かに背中を向けて哀愁を漂わせてます。

色々理由をつけて会いに来たのに、当の本人は文化祭に夢中ですからねー。

なんというか……間が悪かったですね。

どんまいとしか言いようがない。


「えーと、あれです。一緒に楽しい事をして距離を縮めたらいいと思います!」

「……そうだな」


はい、全然そうだなって思ってなさそうな覇気のないお返事です。

でも正直、いつまでも正門前にいたってしょうがないので、さっさと進みたいと思います。

皇帝さんの護衛達が追いついてきたら面倒だし。

だって、その護衛達からリーンのことがばれる可能性だってあるわけだし。

そんな大々的な護衛を連れていない方が、生徒たちも気張らなくていいしね。


「それじゃあ皇帝さん!行きましょう!あ、私たち午後から店番なんで、その間はリーンのことお願いしますね」

「分かった」


午後からの案内?

学園長のおじいちゃんにお願する予定だったけどキャンセルで。

是非ともその間にリーンとの心の距離を埋めて下さい。

……使い魔ズは付けるけどね。

もともと午後から使い魔ズにリーンの子守をお願する予定だったから、今はリーンが楽しめそうなお店を物色に行ってるし。

何より子守りに不慣れっぽい皇帝さんだけだと心配だもん。

親馬鹿とでもなんとでも言うがいいよ。

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