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144.文化祭の出し物を決めましょう

視点が愛良→カイン→愛良になります

◇◇◇◇


「来月の文化祭でやるクラスの出し物、お前ら考えろよー」


がやがやと騒いでいる教室で、教卓の前に立っているちぃ兄ちゃん。

本来ならSクラスの担任はソル先生なんだけど、まぁやる気ゼロのソル先生だからね?

クラスの出し物の話も何にもしないから、いい加減堪忍袋がブチ切れたカインが学園長のおじいちゃんに抗議したんですよ。

担任を変えてくれって。

さすがにソル先生もそれには焦ったみたいで土下座してたけど……カインの迫力に、学園長のおじいちゃんもたじたじだったんですよね。

そしたら、たまたま話を聞いていたちぃ兄ちゃんが、副担任を名乗り出てくれたんです。

何でも『学生時代にソル先輩には多大な迷惑をかけまくったから、お詫びだな』だって。

ソル先生、『学生時代にトラップにハメられまくったことは水に流します!!ありがとうございますっ!!』って感激してました。

ちなみにホームルームをちぃ兄ちゃんが仕切るようになった今、ソル先生は教卓横の教員用の机に突っ伏して爆睡中。

……ちぃ兄ちゃんに任せてばっかじゃなくて仕事した方がいいと思うんですけどね、この怠慢教師。


「ほれ、何か案がある奴ー。手挙げろー」

『はいはいはいはい!!』


ちぃ兄ちゃんの言葉に、ニヤニヤ笑いながら手を上げる生徒多数。

……何かろくでもないこと考えてそう。


「お、そうそう。同じ週には世界魔闘大会があって各国のお偉いさんも来る可能性高いから、妙な提案出した奴はそれなりに覚悟しとけよー」

『…………』


お~……ちぃ兄ちゃんの言葉を聞くなり、生徒たちが一瞬で手を降ろして静かになりました。

そんな中、手をまっすぐと上に上げる人が一人。


「はい!龍雅さんを主役とした演劇がいいと思い「はい、黙れー」……」


ちぃ兄ちゃん、元気よく案を出していた王女の言葉を最後まで言わせてあげませんでした。

ふふふ……ビッチざまぁ!

……ヤンヒロ?あの子なら、本の山に囲まれながらブツブツ虚ろな目でつぶやいているよ?

中兄ちゃんが勉強見てるって言ってたから、きっとスパルタなんだろうねー……そのまま知恵熱出して死んじゃえばいいのに。


ちなみに、ちょっと前のサバイバルで好成績だったので、私とカインとシン君に龍雅は世界魔闘大会に出場が決まってます。

何でヤンヒロが決定なのかは不明としか言いようがないけど。

撃破数が重視されたんだろうなぁ……。

試合であたらないように祈ってます。


「はい、愛良ー。お前は妙なこと考えてっと現実になるから余計なフラグは立てるな」


はっ!?そうでした!ありがとう、ちぃ兄ちゃん!

神族って無駄に力がある分、自分が考えたことが現実になっちゃう可能性がすごく高いんだってお兄ちゃんたちに教えられたばっかでした!

だけど、ちぃ兄ちゃん!

ホームルーム中にナチュラルに心読まないでください!


「……俺様、もう手遅れな気がするぞ~」

「コス王、言ってやるな。俺も思っていることだから」


隣でコソコソ話すカインと、彼の肩の上に乗っかってるコウモリ。

はい、ソコ!うるさいですよ!


「つーか、あの勇者(疑)色々ヤバくないか?何であれが勇者?」

「わう?」


机の上でしぃちゃんにじゃれつかれながら寝そべってる黒猫ルシファーが、ちょっと近寄りがたい雰囲気を出しまくってる龍雅を爆笑する手前って感じで眺めている。

……うん、その点については私も最近疑問に思ってます。

昔は確かに勇者って言われても特に疑問に思わなかったけど、最近は特に変だもんね。

だけど、気にしない。


「龍雅が勇者であろうとなかろうと、邪神さんの前に放り出すのには変わりないし」

「……うん、邪神の野郎が泣きながら自分から封印の中に引きこもるような気がしてきたわ」

「俺様も同感ー。あ、だからヤンヒロが勇者なのかも?よかったな、カイン!ヤンヒロの使い道が出来たぞ!」

「「あ~……」」


ルシファーの言葉に頷いたコス王が、嬉々としてカインに報告。

なるほど、そういう使い道もあるね!

邪神さんをビビらせて自発的に封印の中に引きこもりになるように仕向けるとか、新しい勇者の概念だよ!

うん、それなら龍雅が勇者でピッタリだね!超納得!










◇◇◇◇


まさかの勇者の使い方に衝撃を受けていたら。


「おーい。そこの生徒会長とサブ。お前ら、もちろん俺の話は聞いていたよな?」


教卓に肘をついて頬杖ついていた三男が、呆れ気味な声で俺たちを見ていた。

やばい……話、聞いていなかった。


「……すいません、聞いていませんでした」

「めんどくさいから喫茶でいい?って話になったんだよ?」

「何で愛良は聞いているんだ」


お前、俺たちと話していたよな?

なんで話しながら別の話も聞くという芸当を披露してんだよ。


「そこはアレだよ」

「お嬢だから、の一言に限る!」

「わうわう!」


使い魔ズ、思わず納得できてしまうから黙れ。


「よし、とりあえずは喫茶するので納得したかー?何か意見ある奴は挙手しろよ?」

「はーい!ちぃせんせー、質問!」


最後の確認をする三男の言葉に、隣の愛良が元気よく手を挙げる。

何か質問することでもあるかと思って立ち上がった愛良を見上げると、当の本人は微妙な顔をしてクラス中を見渡していた。


「このクラスって貴族ばっかですけど……料理とかオーダーとるのとか料理運ぶのとかできそう?」

『………』


愛良の疑問に、クラス全体が静まり返った。

自分で料理など、まず作ったことがないであろう貴族たち。

客に注文を聞きに行くということも出来ないんじゃないか?

というより、料理運ぶのも『何様だ。自分で取りに行け』とか言いそうだよな。

……無理だろ、喫茶店。

静まり返った教室内で、全くその可能性を考えていなかったらしい三男が頭を押さえた。


「あー……まぁ、喫茶だから大丈夫だろ。貴族の女子はお茶の入れ方には煩いし」


確かに貴族の女子は自分で茶を入れることはできるだろうな。

あまり覚えていないが、ダーク家の母も自分で入れていたはずだ。


「料理は……愛良、悪いが作り置きを作っててくれるか?俺、副担任だから手伝うし。たぶん、このクラスは他の出し物でも無理だろうから、このまま喫茶店でやりたい」


珍しく歯切れの悪い三男。

しかし、当の愛良は気にすることなくニコニコ笑って頷いた。


「別にいいよー?料理とかデザートは今から少しずつ作ってボックスに入れといたら、当日までには結構な量が出来てるだろうし。当日の保存に最適な魔導具も新しくカインに作ってもらうね。その代わり、生徒会で忙しいから私とカインは当日までこっちの手伝いはあんまり出来ないからね?」


まぁ、確かに生徒会でやることはたくさんあるみたいだから、そっちの方が助かると言えば助かるか。

だがあの6大貴族たちや王女など、くだらないプライドの塊だろ?

どっちにしろあいつらに喫茶店の店員なんて出来るのか?

そう思って奴らの方を見れば……案の定、王女と雷娘と風男が納得していない様子で眉間に皺を寄せている。


「このわたくしが、なぜ下々の者が行うべき……」

「てめぇがグダグダ騒ぐなら、てめぇの兄貴である鬼畜太子の所に送ってやるよ」

「……さあ皆さん!頑張って立派な喫茶店にしようではありませんか!」


文句を言おうとした中で三男の低い声での脅しに、王女だけでなく雷娘と風男も顔を引きつらせながらコクコクと頷いている。

……なるほど。あいつらに言うことを聞かせるには長男をダシに使えばいいんだな。

忘れそうになるが、一応今はあの王女も長男の妹なんだしな。

……あの変わり身の早さからすると王女なりに苦労はしていたんだろうが、性格が正確過ぎて同情心もわかない。

とりあえず、一年Sクラスは喫茶で決定らしいが、大丈夫なのか?

まぁ……どうせ愛良と三男がいるクラスにしゃしゃり出てくるだろう長男次男を前にすれば、貴族といえどプライドを捨てて立派な店員をするか。


ちなみに、俺は愛良が有無を言わせずに給仕係に任命した。

……どうせ俺は料理が下手だよ。










◇◇◇◇


さっすがちぃ兄ちゃん。

ビッチ王女たちの扱いを分かってらっしゃいます。

私も後でビッチ王女たちには大兄ちゃんで脅しとこうかと思ったけど、この調子なら問題なしですね。

カインは給仕係に任命したし、とりあえずこれでクラスの出し物は一安心かなぁ。

生徒会の方が予想以上に忙しくてクラスの方にはあんまり来れそうになかったから、ちぃ兄ちゃんが副担任になってくれて助かりました。

何しろ、魔闘大会の影響で各国のお偉いさん方も来るみたいですから。

というか、偉い人の中で帝国の皇帝さんが来るのが決定してます。

リーンのパパだけど、隣国の皇帝だからね?

しかも、一般的には冷酷で知られてるみたいだし。

……リーン限定の親馬鹿で、豚犬に対してちょっとお茶目な皇帝さんの、どこが冷酷なんでしょうね?

今回来るのだって、『魔闘大会のついでに、他国の学園の様子を見たい』って表向きは言ってるみたいですけど、絶対にリーンに会いに来る口実ですからね?

ちなみに、リーンにお父さんに会えるよって言ったら……


「とーと?……だれー?」


……てな感じで、すっごく不思議そうな顔で首傾げていました。

ちょっと会ってないうちに、皇帝さんの存在は完全に記憶の彼方に行ってました。

それをタイミング悪く、カインが皇帝さんと電話していたから聞こえたみたいで……『絶対に行く!』って断言しちゃったんですよね。

電話をしていたカイン曰く、『……声が震えていた』とのこと。

男泣きしたんですね。

ごめんなさい、皇帝さん。毎日の生活が楽しくて、皇帝さんの話はあんまりしなかったです。

文化祭までにリーンが皇帝さんのことを思い出すように、頑張りますから。


とまぁ、そんな感じで皇帝さんが来るからってことで、あの話の長くて頭が寂しい理事長が張り切っているんです。

伝統ある学園に他国の皇帝が視察に来るからって。

だから無駄に生徒会が呼び出されまくってます。

まぁ、隣国の皇帝が来るってことで、お城のお偉いさん達もしゃしゃり出てるってのも関係しているんだけどね。

というか、ビッチ達6大貴族のパパんズ?

髪色そっくりで偉そうに踏ん反りがえってるメタボなおっさん達が、さらにお腹を突き出しながらわーわー言ってくるんだよねー。


曰く、『うちの子に皇帝の案内をさせろ』

曰く、『皇帝の目に平民なんぞ入れてどうする。平民たちは学園祭に出ずに寮で待機していろ』

曰く、『貴族よりも平民が目立つのは国としてよくないから、お前たちは引っ込んでろ』

……等々。


うん、あのメタボな体を文字通り絞ったらスマートになるのかなって思わず呟いちゃいましたよ?

カインには、ミンチになるだけだから止めろって真顔で返されたけど。

……カインに冗談は通じないです。


(……絶対に本気だった)byカイン


まぁ、そんなメタボ豚たちは私とカインで論破したけどね。



『冷酷で知られる皇帝様のご案内を自らの家名を背負ったご子息にさせるとは、さすがですね。失礼があれば、平民の身分でどのように責任を取ればよいのか不安でしたので、私どもも学園の名を背負って接することに戦々恐々としていたところです。ありがとうございます』


訳:冷酷と言われている皇帝の案内を自分とこの家名を背負わせた半人前のガキにやらせて失敗したら、てめぇんとこで責任とれよ?



『この広い学園は9割は一般生徒で占められていますが、身分の高い皇帝様が来られる中で過ごすのは酷ですから。皇帝様が来られるのに文化祭はできなくなってしまうかもしれませんが、俺達一般生徒は喜んで自宅待機しています』


訳:他国の皇帝が文化祭を見に来るのに文化祭できないだけの人数になってもいいなら、貴族で勝手にやってろよ。



という意味を含めて言ったら、メタボ豚たちは顔を真っ赤にしてプルプル震えながら口をパクパクさせて絶句しました。

はっ。ブヒブヒ言ってるだけの豚が、私たちに口で勝てると思わないでね?

もちろん、全員が駄目発言したわけじゃないけどね?

青みがかかった黒髪のダンディなおじ様とかは、メタボなおっさん達を諌めてたし。

諫めていただけで、止められたわけではないけど。

あのメタボなおっさん達は、私とカインの言葉で屈辱を受けたとかわーわー騒いで帰りましたからね。

事実を言っただけなのに、そんなのも分からないなんてお馬鹿さんだよねー。

ダンディなおじ様も呆れたようにして帰ったけど。

というか、あのおじ様は絶対にカインとルナのお父さんです。

ルナと同じ髪色だし、カインのことをすんごく気にしてたし。

なによりカインと顔立ちそっくりですから。

きっとカインが20年も経てば、あんなダンディなおじ様になるんだろうねー。

不老不死だから実際には見れないだろうけど。

うーん……残念だなぁ。皇帝さんもそうだったけど、私ってダンディなおじ様に弱いですから。

あれだよ、変態なお父さんと正反対な人って、すごく素敵に見えるんです。

ぶっちゃけ、皇帝さんとかすっごく好きです!


「愛良、リーンを迎えに行くぞ」


……あら?

考え事してたから、ホームルームが終わってるのに全然気づかなかったや。


「終わった事にも気づいていなかったのか?いったい何を考えていたんだ?」

「え?」


何を考えていたって?

んーと……?


「……皇帝さん大好きってこと?」

「……は?」


あらやだ。

カインさん、何でそんなに眉間に皺寄せてるんですか?

無駄にイケメンなんだから、そんなに皺寄ってたら怖いですよ?


「だって、皇帝さんみたいな人がお父さんだと素敵じゃない?」


というかカインだって皇帝さんのこと、結構好きでしょ?


「あ、そっちか……」


今度はなぜホッとしてるの?

カインは忙しい子だねぇ。

~ある日の電話 皇帝さん~


鬱帝『今日も幼等部で元気よく遊んでいたそうです。今は愛良とプリンを食べていますよ』

皇帝「そうか。そういえば、魔闘大会の前にお前たちの学院で文化祭をするのであったな。早めに仕事を終わらせたら、そちらにも顔を出そうと思う」

鬱帝『わかりました。……愛良、リーン。文化祭に皇帝も来てくれるかもしれんそうだ』

愛良『あ、そうなのー?よかったね、リーン。ととに会えるよ~』


リン『……とーと?だれー?』超不思議そうな声


皇帝「………」絶句

愛良『……へ?いや、リーンちゃん?お父さんだよ?』

リン『うー?パーパ、いるよー?』

皇帝「………」プルプル

鬱帝『いや、俺じゃなくてだな?』

皇帝「……カイン」超低い声

鬱帝『はい!?なんですか!?』

皇帝「……仕事は早めに終わらせるから、文化祭には絶対に行くからな」プルプル

鬱帝『……わ、分かりました。頑張ってください』電話終了

皇帝「ははは……死ぬ気で仕事を終わらせてやるさ……」涙目

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