表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/208

142.トラウマ退治も大事です

視点がカインと愛良でコロコロ変わりますー。

◇◇◇◇


『………』


さっきまでの放送に、俺を含めた六大貴族たちが沈黙した。

愛良は空に向かって手を合わせて、王女は顔色真っ青にして震えているが……この状況、どうすればいいんだ?


「ヤンヒロと一緒の所に、この子たちを送ってあげたらいいと思うの」


鉄ハリセンを手の中で鳴らしながら笑う愛良。

つまり、こいつらを地獄(三つ子の所)に送りたいんだな、お前は。


「トップのこの子たちを潰してさえしまえば、優勝には近付くわけだし。お兄ちゃん達がいる中で優勝しないと、きっと酷い事になるはずだもん」


その可能性を考えていなかった。

そうだよな……三つ子の前で優勝を逃すとか、自分から死刑台に上がるのと同じだよな。


「……潰すか」


あのヤンヒロが退場した今、撃破数を今までのように稼ぐ奴は居ないわけだしな。

俺達は撃破数を稼げるし、目障りなこいつらを潰せるわけだし、一石二鳥か。

よし、潰そう。


「あ、あなたたち!何勝手に言っていますの!?リョウガさんの仇は取らして頂きますわよ!」


一人、敵意を込めて俺たちを睨む王女。

あの王女、ヤンヒロをちゃんと見ていたのか?

どこに奴を慕い続けることができる要素があるんだ?


「えー。私はカイン君と戦うなんて出来ないです。サフィさん、やるなら一人でやって下さいね」


お前は自重しろ、この猪突猛進娘。

いっそ猪娘に改名しろ。


「り、リノ!その気持ちは分かるけど、少しは隠しなさい!」


雷娘、お前も隠すなら最初の台詞を口に出すな。


「なぁなぁ副会長!飯食わせてくれ!昨日から何も食べてないんだ!後で金はいくらでも払うからさ!!」


おい、火馬鹿。

お前は今の状況を理解しているのか。


「アホか!リョウガがいないのに、何敵に頼んでいるんだ!……リョウガも、副会長を説得できるかと思って大人しく着いてきたのに、一人で暴れまくって……役立たずが」


舌打ちしながら小声で罵っている風男、実は奴のことがめちゃくちゃ嫌いだろ。

その気持ちは分からないでもないが。


「結論。とりあえず潰せば問題なしだね」


奴らの言葉を聞いて、小首をかしげながら言う愛良。

それもそうだ。

奴らがごちゃごちゃほざいたところで、潰してしまえば何も関係ない!


「私カイン君と戦いたくないんで、シドウさんの相手しますねー」

「あたしも。この女、色々ムカつくし」

「わたくしもですわ!リョウガさんを惑わす悪女!ここで成敗してくれます!」


女子3人は自発的に愛良の餌食になることを宣言。

言っておくが、愛良にまとわりついているのは奴であって、愛良は全力で拒否しているからな?

見ただけでも分かったと思うんだが、あの王女の目は本物なのか?


「『イケメンに群がるビッチの特性』

其の一、自分とイケメンが世界の支柱。

其の二、邪魔者は徹底的に排除。

其の三、脳内は妄想大劇場。

其の四、視界のシャットアウト可能。

他にも色々あるけど、だいたい共通してこんな感じかな?」


人差し指を立てながら、ニコニコ笑って説明する愛良。


「「「あー……なるほど」」」


……おい、俺だけじゃなくて火馬鹿と風男も納得したぞ。

やっぱりお前ら、奴だけじゃなくてこいつらのことも嫌いだろ。


「それで、そっちの女子3人が私とバトりたいの?」


愛良が笑みを浮かべたまま首を傾げて聞けば、女子3人は一斉に頷いた。


「そうですわ!リョウガさんの仇!」


いや、あいつを殺ったの俺だ。

むしろお前の目の前で殺ったと思うんだが、お前の目は見えているのか?


「リョウガは正直どうでもいいけど、あんた、気にくわないからやっつけてやるわ!」


俺はお前の言い方が気にくわないぞ。


「シドウさんばっかりカイン君と一緒にいてずるいです!カイン君は女子みんなの物です!」


猪娘、マジで黙れ。

何で俺が平等に分けられる存在なんだ。

俺には愛良だけで十分なんだよ。


「これで私とカインが契約してて一緒に暮らしてるって知ったら、私殺されそうだねー」


背伸びして俺の耳元でひそひそと話す愛良。


「全部返り討ちにするから問題ない」


さて……殺るか。








◇◇◇◇


「カインー。この子たち、お話ししたいことがいっぱいあるみたいだから、ちょっとあっちで聞いてくるねー」

「は?」


私がカインから離れようとすると、カインは訳が分からないという顔で眉間にしわを寄せた。

だってね?この子たち、このままじゃキリがないと思うの。


「じゃあ、女子3人はこっちにおいでねー。カインはそっちの二人の相手よろしく」

「……はぁ。好きにしろ」


色々文句が言いたいとおっしゃる子達3名を連れて、カインたち男子組から声が聞こえないぐらいは離れる。

あれ以上この子たちの本性を見たあっちの男子たちがドン引きしてカインの所に来られてもヤダからねー。


「いっつもいっつもリョウガさんの心を一人占めして!!あなたのことなんて、リョウガさんの記憶から消したいですわ!!」


うんうん、好きにしたらいいよ?

龍雅は怖くて幼馴染を返上したいし、この王女様とは別に関わりたくないですもん。

むしろあの子から記憶を消してくれるなら、ぜひとも消してくださいな。


「あんた、いったいカインとはどんな関係なのよ!?当たり前みたいに隣にいて、何様なの!?」


うんうん、そーゆー君は何様なのかな、ツンデレちゃん。

カインの傍にいたいなら、隣にいる私を攻撃するんじゃなくて自分からアプローチをかけていくべきと思う私は間違えています?

絶対に君のほうが色々間違っているでしょ。


「ちなみにシドウさん!カイン君ってどんな子が好みなんですか!?」


他二人が殺伐とした空気を放ちながらも、無視して女子トークに入ろうとする猪娘ちゃん(カイン命名)。

今、この状況で聞いてくるんですか?


「「リノ!!ちょっと黙っていなさい!!」」

「えー?だって、シドウさんっていつもカイン君と一緒にいるんですよ?カイン君のことをいっぱい知っているんですよ?カイン君のことが知れるチャンスじゃないですか」


二人から怒られてもしれっと答えるとことか、別に嫌いじゃないよ?

嫌いじゃないけど、今この場の空気は読んでほしいと思いますがね。


「か、カインのことが……」

「どうでもよろし……「リョウガ君のことだって、幼馴染ならきっとたくさん知っていますよ!」……」


わー、すごーい。

見事に黙っちゃっいましたよ、おバカな王女とツンデレちゃん。


「それで、シドウさん!カイン君とリョウガ君のこと、色々教えてください!」

「「……」」ゴクリ


あらまぁ……3人してメモとペンを持って真剣にこっち見ているし。

……だけどね?


「聞くとは言ったけど、答えるなんて言ってないよね?」

「「「……はぁ!?」」」


ズバァンッ!×3


鉄ハリセンで脳天カチ割って退場させました。

うふふ……実は今までさんざん言われたこととか、イラつきが溜まっていたんだよねぇ。

そんな子たちの意味のないお話聞いてあげた私って、優しい方だと思うよ?

カインの所に戻ろー……としたんですが。


「ただーい……ま?」


……あら?

私がさっきいたのって、ここらへんだよね?

さっきまではカインの魔力を感じてたのに、今はいない……というか、すんごい高速で移動してる?

ん~?とにかく、カインが走ってるちょっと前に転移したらいっか。


「うわぁあああああああっ!!」

「………あらー?」


カインの所に転移をしてきたら、なぜか緑髪君と赤髪君の襟首を掴んだカインが必死な形相で何かから逃げていました。

……何事?

てか、君が襟首を掴んでる二人はそろそろ昇天しちゃうんじゃないですか?

完全に首が閉まっていると思いますけど。


「カインー?」


あんだけパニック起こしている中で聞こえるのか疑問だけど、名前読んでみました。

私の声に反応したのか、ピタっと立ち止まるカイン。

君、今慣性の法則を無視したように見えるんですけど。

慣性の法則が正しく働いている緑髪君と赤髪君は、そんな人間離れした芸当なんて出来るわけなく。

……可哀想に、カインがうっかり手を離してしまってからも勢いよく飛んでいって、顔面から木に激突しちゃいました。

しかもちぃ兄ちゃん特製のトラップがある場所だったみたいで、二人の魔力を吸い取って発動。

竜巻が発生して二人とも巻き上げられて退場していきましたよ。

うん……なんか、あの子たち本当に可哀想な子たちですね。


「あいらぁあああああ!!!」


この人は全く気にしてないみたいですがね。

顔色真っ青にして私に抱きついてきましたがね!


「はいはい。どうしたの?」


ここまでカインがパニックになるのって久しぶりに見るなー。

しょうがないから、背中をポンポン叩きながら聞いたのだけど。


「奴が……奴らが来る!!」


いやいや、奴らって誰ですか?

カインがここまで怯えるとか、大兄ちゃんでも出たの?

サバイバル中は絶対に手を出させないから安心していろって、ちぃ兄ちゃんが言ってたけど。


「本当に何があった……の……」


落ち着かせながらカインが来た方向を振り返った瞬間、理由が分かりました。


「ウホッ……追いついた」

「ふっ……その怯えっぷり……そそるな」

「さぁ、カイン・ルディス。俺たちと……」


『や・ら・な・い・か?』


「いやだぁあああああ!!!!」


阿部さんこと、アベータ・カーズさん率いる一年Sクラスの男子たち(全員青ツナギ着用)でした。

カーズさん以外、普通の男子だと思ってたんだけど……染められちゃいまいた?








◇◇◇◇


何でだ。

何で増えてんだ?

Sクラスの変態はカーズ一人じゃなかったのか!?

何であの青ツナギが6人もいるんだよっ!?


「あー……確か、過去にカーズさんの犠牲になったSクラスの登校拒否生徒達だわ」

「はあっ!?」


抱きしめてる愛良が、奴らを見てポツリと聞き間違いと思いたいようなことを呟いたんだが。

奴の犠牲者?

犠牲者が何で奴と行動してんだよっ!?

どうして奴に染まってんだよ!?


「ずっと登校拒否してたから、チーム決めの時に勝手にカーズさんに人数に入れられてたみたいだね。新学期になってからはお兄ちゃんズが先生になって登校拒否するのは難しかっただろうし、すでに彼と丸一日サバイバルしていたわけだし……」


おい、愛良が真面目な顔をして同情しているぞ。

俺が奴らに狙われていること、分かっているよな?


「誰から奴を掘る?」

「この道に目覚めさせてくれたカーズからだ」

「ふっ……同士よ、すぐにお前たちも参加させてやる」

「何にだよ!?死ねっ!!ダークインパクト!!」


詠唱破棄で奴らに向かって対象を闇に呑み込む上級魔法を撃った……のだが。


『いい刺激だ……』


何であいつらに魔法で攻撃しても対して効かないんだよ?

おかしいだろ、普通。

学生レベルなら一瞬で闇に呑み込まれるはずなのに、何興奮してんだよっ!?

あいつらもヤンヒロ並に復活が早いのか!?


「いやいや、そんな珍種がゴロゴロいてたまりますか。あの人たちはアレだよ。あの青ツナギ。アレが魔法攻撃を軽減してるんだよ。一体どうやってあそこまでダメージ軽減しているのか聞きたいぐらい」

「やめてくれ!」


何で愛良はそんなところで感心してんだよ!?

頼むから、今の状況を理解してくれ!


「いや、十分理解しているつもりだよ?つまり、彼らを倒すには接近して物理攻撃をするか、あの青ツナギを脱がして魔法で倒すか、でしょ?」


どっちも俺には無理だ……。

くそ、囮にしようと思った緑髪と火馬鹿もとっとと退場しやがるし、どうすればいいんだ!?









◇◇◇◇


うん、阿部さん久しぶりに見たなー。

やっぱりカインの一番のトラウマは大兄ちゃんよりもカーズさんだよね!


「俺はどうしたらいいんだ、どうしたらいいんだ……」


パニックになって後ろから抱きついてくるから、微妙に苦しいんですけど。

君、私と同じ馬鹿力を持ってるって自覚してる?

君の腕、ちょうど私の首の所にあるんだからね?

私じゃなかったら、君が抱きついている相手は首がちぎれてミンチ肉に大変身なんだからね?


「だから、あの人たちの青ツナギを脱がせたらいいじゃん。それか、物理攻撃」

「どちらにせよ近づかないといけないだろうが!奴らに近づいた瞬間、ヤられる!!」

「あー……」


それは否定しないけど。

むしろ、そうなりそうだけど。


「納得するな!」

「カイン、そんなこと言ってる暇があるなら逃げないと…………囲まれちゃったでしょ?」

「ぎゃああああああ!!!」


はい、テンパり過ぎてるカインさんを狙ったカーズさん率いる青ツナギチームが私たちを囲んでいました。

気づいていたけど、カインの反応を観察したかったので黙っていましたー。

何よりギュウギュウ抱きついてくるカインのおかげで動けなかったので、私は悪くないです。


「俺を夢中にさせるカイン・ルディスよ。我らとともに、新しい扉を開こうではないか!」

「誰が開くかぁああああ!!」


うーん……カインは離してくれないけど、青ツナギチームにとって私って完全にアウトオブ眼中ですよね?

もう私帰っていいかな?

今日はヤンヒロのおかげでいっぱい泣いて疲れたもん。

カインなら、ちょっと冷静になったらこの人たち倒す方法なんていくらでも思いつくはずだし、いいよね?


『さあ、いざ行かん!新しき世界へ!』

「黙れぇえええええ!!!」

「え……マジ?」


青ツナギチームが私に抱きついてるカインに跳びかかってきたんですけど。

え、ちょっと?

これって私にまで飛び火がかからない?

何より視界がツナギの青で染められてちょっとウザい……。

……しょうがないか。

さっきヤンヒロから助けてくれたし、お返ししないとね。


「ぎゃあああああああ!!」


迫ってくる青ツナギ達に、悲鳴を上げるカイン。


「カイン、耳元で煩い」

「ぐっ!?」


肘鉄を鳩尾に埋めこめば、鳩尾抑えてしゃがみこむカイン。

私もすぐに低姿勢になって、カインの襟首を引っ張って跳びかかってくる青ツナギチームの下をくぐって離れる。


『ぶべっ!?』


カインに跳びかかるつもりが、目標がいなくなったから無様にお互いがぶつかり合う青ツナギチーム。

ギリギリセーフだったねー。


「……痛いし苦しい」


……せっかく助けたのに、カインには文句を言われましたが。

しかも、超ジト目で。


「はいはい、ごめんね?とりあえず、先にカインを襲い掛かってくる原因を取り除くからね?ちょーっと我慢しといて?」

「……ん」


はい、素直でよろしい。

カインも大人しくなったし、とりあえずはパールを金属バットに形状変化。

青ツナギチームもお互いがぶつかり合って固まってるから、ちょうどいいよね!


「カイン・ルディスはどこにいった!?」

「副会長が連れて逃げたぞ!」

「はい、ちゅうもーく!」

『!?』


カインを探してキョロキョロしていた青ツナギチームは、唐突に響いた私の声に反応して止まった。

よしよし、こっちを見てくれましたね。


「カインが再起不能になっちゃうから、君たちはちょっとどっかに行ってくれる?じゃないと強制的に退場だよ?」

「カイン・ルディスを掘ってからなら、いつでも退場してやる」


うーん……案の定というか、カーズさんならそう言うんだろうなーとは思いました。

背後でカインがビキッって音立てて凍りついちゃったじゃないですか。


「じゃあ、カインを掘っちゃう前に私が退場させたげるね!」


金属バットをくるくる回しながら、にっこり笑って宣言。

金属バットに強化魔法を付けることも忘れてないし、これならまとめていけるよねー。

一応、私は忠告したしね?


「……やれるものなら、やってみろ!以前のように病院送りになどならな…「じゃ、遠慮なく!」ごふっ!!?」

『いぎゃぁあああああ!!』


青ツナギチームに向けて金属バットを思いっきり振っちゃいました。

馬鹿力セーブ腕輪はしたままだけど身体強化もしたから、全員勢いよく島全体にかけられてる結界まで飛んで行きました!

野球のルールはよく分からないけど、これってホームランになるよね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ