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13.禁句に触れたらダメです

◇◇◇◇


「……愛良。それぐらいにしておけ。授業に遅れるから」



龍雅にお仕置きをしていたら、ため息をついたカインに止められました。

確かに授業に遅れるのは困るから膝を埋めていた龍雅のお腹の上から立ち上がるとしますか。

もちろん、一発蹴りをお見舞いするのは忘れていませんが。



「いやいや、カイン・ルディス。お前が気にするところはそこなのか!?」



ピクリとも動かない龍雅の横に膝をついて声をあげる緑の短髪をした男の人。

……誰ですか、この人。

知らないけど、この流れでここにいるってことは担任とか?

まぁ、それは別にいいんです。

それよりも遅刻はダメ。



「最初から遅刻はやだね。じゃあ、学園長のおじいちゃん。もう行っていい?」


「う、うむ……。この人に着いていきなさい。担任のソル先生じゃ」



学園長のおじいちゃんは、そう言って男の人を紹介したんだけれども、当の本人はなぜかがっくり肩を落としていた。

その不安がいっぱい込められた視線を向けられているのは、私とカイン。



「……じいさん。こいつらが俺のクラスに入るのか?冗談ではなく?」


「……頑張ってくれ」


「……お前ら、頼むから俺のクラスで面倒事を起こすなよ」



顔を引きつらせながら学園長のおじいちゃんに確認をとるソル先生もだけど、頑張れとしか言わないおじいちゃんも、結構酷いと思うの。

そんなに面倒事は起こさないからね、たぶん。

ちなみにこのソル先生って、普通の先生じゃないよね。

やる気なさそうなめんどくさがりに見えるけど、魔力はおじいちゃん並に多いし、それを魔力コントロールで隠していても雷属性が強いのが分かる。

きっと雷帝だ、この人。

まあ、学園長のおじいちゃんと違って私たちのことは知らないみたいなんで、どうでもいいんですけどね。



「じゃ、教室に行こ。ほら、カイン。案内案内」


「分かった分かった」


「いや、俺が何のために来たと思ってんだよ?」



カインの背中を押して学園長室を出ようとしたら、あっさりソル先生に首根っこを掴まれた。

何のため?



「……そこのヘタレを運ぶため?」


「誰が運ぶか」



即答するソル先生の言葉で、龍雅の放置が決定しました。

さっそく放置したまま出ようとすると、次に慌てたのは学園長のおじいちゃん。



「いや、さすがにこの小僧をここに置いておかれるのはわしが困るわい。アイラや、お主がやったんじゃから、お主が連れて行ってくれるかのぅ?」


「えー。か弱い女の子にこいつ運ばせるのー?」



「「「か弱い女の子はここまでボコボコにしない(じゃろ)」」」



三人が綺麗に揃って否定してくれました。

うん、自分で言ってても説得力ないと思ったんですけど、ちょっと腹立ちますね。

思わず頬が膨れてしまうじゃないですか。



「分かったよ、連れて行けばいいんでしょ」


「え……それで運ぶつもりか?」


「教室前まで運べばいいんでしょ?」



顔を引きつらせて足元を見るカインの視線の先には、うつ伏せのままピクリとも動かずに倒れている龍雅。

その左足首を、私が掴んでいる状態。

か弱い女の子が大きな体の男の子を抱えるのは無理なので、引き摺る事にしただけです。

馬鹿力があるから別に問題なく抱えられるんだけど、例え幼馴染でもイケメン男子を抱えるなんて嫌だから仕方が無いんです。

このまま早く階段を登りたいなんて考えていません。



「……好きにしろ」



カインも諦めたから、さっさと教室に行きたいと思います!

階段とかクラスの反応とか楽しみだね!












見た目はとても西洋風な建物で、中も日本とは別次元という感じの校舎。

王族や貴族も通うからかは知らないけど、廊下にまで絨毯が敷かれている。

いくら中靴に履き替えるとはいっても毎日交換している様子もない絨毯を見ていると、絶対に衛生的に良くないと思うんですけど、どうなんですか。

こういうのに、ノミとかダニとか繁殖するんだろうに……いや、深く考えるのは止めよう。

これ以上考えると、校舎を歩けなくなってしまう。

そんなくだらない事を考えている間に、教室に着いたみたいだしね。

教室の前に着くと、ソル先生はここで待っているように言って一人で先に中に入った。

……龍雅?

階段を登ってる途中から復活してるよ?

顔はア○パ○マ○のままだけど。



『おいてめぇら。とっとと席着け。成績0にすんぞ』



とてもめんどくさそうに職権乱用しているソル先生の声に、騒がしかった教室内が一瞬静かになった。





『あー、今日からこのクラスに編入生が来る…『男ですか女ですか!?』男2人女1…『私のイケメンセンサーが反応している!!』あー、そいつはよかっ…『美少女ですか、巨乳ですか!!?』てめぇで判断し…『いい男の匂い…や・ら・な・い・か?』『リア充の場合は……ぐふふふふ』……とりあえず、落ち着け。お前たち』



「「……」」



教室の中から聞こえる会話に、黙り込むカインと龍雅。

Sクラスって、貴族ばかりのエリートクラスって説明ではなかったでしょうか。

何、このドア越しに聞こえてくるお馬鹿発言連発具合は。

面白そうだからいいんだけどさ。



『よし、じゃあ編入生。入ってこい』



あ、ついに出番ですね。



「じゃ、龍雅。先に行ってね?」


「僕から?別にいいけど」



首を傾げながら龍雅がゆっくり教室内に入った。



『………』



龍雅が入った途端、教室内が静まり返る。

なにせ顔が腫れ上がって、元のイケメンを維持していないアンパ○マ○ですからね。



『……おかしい、わたしのイケメンセンサーが反応しているのに』


『なぜだ、やつは同志に見えるのに……抹殺したくて仕方がない』



あら、鋭い人たちもいたもんだ。

奇妙なほど静まり返っている教室に、龍雅に続いて中に入るカインと私。



『きたぁああああああああああああ!!!』



はい、教室内ほぼ全員からの大絶叫。



「きゃあああ!!Aクラスのカイン君がいる!!!」


「イケメンセンサーはカイン君に反応していたのね!!!!」


「なんかホッペに歯型あるけどワイルドだわ!!!」


「美少女来た!!!ツルペタでも美少女なら問題なし!!!!」


「ていうか、あのワンちゃんかぁい――――――!!お持ち帰りぃ――!!!」


「リア充には死をぉおおおおおおおおおお!!!」


「それはともかく、俺とや・ら・な・い・か?」



やっぱりこのクラスの人たちは変としか言いようがないし、色々な意味で危険人物が多い。

だけどとりあえずは。


ツルペタって言った奴、今すぐに出てこい。龍雅の二の舞にしてやるから。



「愛良、黒い。笑顔がかなり黒い」



物騒な事を考えていたら、頬を引きつらせているカインに釘をさされた。



「……うん、最初は気を付ける」



最初が肝心ですしね。

気を付けます、最初だけは。

愛良は華奢ゆえに絶壁。

朝日を拝みたくば、そこに触れてはならない。

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