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136.紫藤家のピラミットの真実

ちょっと今回はころころ視点が変わります。

分かりにくかったらすみません!

クロちゃん、コス王、カイン、愛良の順番に変わります!

◇◇◇◇

えー……お嬢ちゃん、さっきと言ってること違うしー。


「わーい!もっかいしゅるー!!」

「わうわーう!」


ほらー、リーンとしぃちゃん大喜びじゃん。

大型犬サイズになったしぃちゃんの上に乗ったリーンと、そのリーンを乗せたまま大喜びで急斜面滑り台を上っていくしぃちゃん。

重力とか、しぃちゃんには関係ないみたいだねー。

どんどん登っちゃってるよー。

あーあー……カインに怒られても、俺知らないよー?


「だ、大丈夫!要は、邪力がこの神殿内にあふれてるから問題なんだよね!?だったら、その邪力を邪神さんがいる封印扉まで押しやったら問題なしだよ!邪力が漏れないように結界も張りまくったら、きっと大丈夫!」


うん、世界神の娘がそこまでするなら絶対に大丈夫だろうよー?

せっかく復活が間近まで迫ってたのに、封印が頑丈にさせられて邪神もかわいそー。

むしろいい気味?

どっちにしろ、ざまぁ!


「うん、大丈夫だと思うよー……って、さっそく行動に移してたんだねー……」


すでに強力な結界を張って、神殿奥に邪力を押しやってましたー。

まさかの行動の素早さにびっくりだよー。


「もち!リーンとしぃちゃんが滑り落ちてくる前に完了させるよ!」


お嬢ちゃん、思いついたらすぐ行動タイプ?

単に親馬鹿なだけー?


「カインが親馬鹿なのは知ってたけど、お嬢ちゃんも大概だよねー?」

「もういいよ。親馬鹿って自覚してるからいいもん。だって、お父さんの娘だもん!!」


いやいや、お嬢ちゃん。

変態神の娘って、何でも仕方ないで済まされる免罪符じゃないよ?

……って言っても、無駄なんだろうなー。


「よし!これで邪力が出てくることもないし、誰にも邪魔されない安心安全遊び場の完成だね!」

「場所が場所なだけに、カイン怒るんじゃないー?」


何かお嬢ちゃんの行動に順応しちゃってるから一般常識から外れてきてはいるけど、まだそれなりに備わってるはずだもんねー。

本人は一般常識から外れてきてるって自覚はないだろうけど。


「……」


俺の最もな意見に、黙っちゃうお嬢ちゃん。

どーするのかなーと思って眺めていると、上のほうから甲高い声が響いてきた。


「キャ――――!しゅ――べ――るー!!!」

「わ~う~♪」


あ、リーン達が滑りながら戻ってきた。

リーン達の楽しそうな声に反応したお嬢ちゃんも、ようやく硬直から解けたみたいだねー。


「……うん、カインに教えるのはやめとこ。カインが依頼に行ってる時に、こっそり連れてきたらいいよ」


一人でうんうん頷いているお嬢ちゃん。

……だ け ど。

お嬢ちゃん、残念だったねー。


「……愛良?誰に何を黙っているつもりなのか、じっくり聞かせてもらおうか」

「……」


後ろから無駄に笑顔のカインに肩を掴まれたお嬢ちゃんは、完璧に固まってる。

リーン達と一緒に、カインも滑り落ちてきてたんだよねー。


「愛良?ちょっとこっちに来い」

「……はい」


うん、やっぱり君たちの間で隠し事はしないほうがいいと思うよー?

お嬢ちゃんはカインにお説教されてるし、俺はもう一回滑りに行ってるリーン達の所に行っとこー……と思ったら。


「時神、大変だ」

「俺様泣きそう!」


人型バージョンのロリコンと冥界神に首根っこ掴まれた。

むぅ……人型じゃあ、自分たちの方が背が高いからって、すぐに俺をぶら下げるのやめてよねー。

お嬢ちゃんよりは0.6㎝高いから気にしないけど!(目算)


「何の用ー?」

「時神、落ち着いて聞けよ?」


俺、お前らよりすんごく落ち着いてる自信あるよー?

一体何なのさー?


「大変なんだ!三つ子が揃って高等部の教師になっちまいやがったんだよー!やべーよ!俺様またトラップ尽くしで三男に弄られるよ!」

「そうなんだよ!また長男のお仕置きがはじまるぅううう!!無理難題が復活するぅううう!!合法幼女様もいない今の学園に救いはないのにぃいいい!!カインの妹を幼女様と呼んだら殺されるぅうう!!」


揃って号泣する冥界神とロリコン。

というより……。


「え、知らなかったのー?」


元使い魔なのに教えてもらってなかったのが不思議だよー?

思わず首をかしげると、二人は口をわなわなと動いてる。


「「何でお前は知ってたんだよ!?」」

「何でって、三つ子がこの間教えてくれたよー?そんでもって、リーンの使い魔になるって言ったら『僕の分も頑張ってね』って、次男が頭撫でてくれたー」


次男、優しいから好きー!








◇◇◇◇

そうだった……。

時神は三つ子のお気に入りで可愛がられてるのを忘れていたぜ……。

こいつに同意を求めること自体が間違えだった……。


「お前らも気に入られてるじゃん。弄り対象としてー。ぷっ」

「「うおーい!!?」」


今、最後笑ったよな!?

俺様たちだって、好きで弄られてるんじゃないし!

ただ、あいつらにとって弄られやすいだけだ!

お嬢にもよく弄られてるけど!!


「結局は弄られる運命ってことだね!いいじゃん、弄られまくって神力魔力体力、全部三つ子の使い魔になる前より軽く20倍は強くなったでしょー?」


確かに、神王様ですらびっくりするぐらいの実力アップだったなー。

親馬鹿神は『さすが僕の息子たち!凄いよね!ご褒美のチューしたげる!』とか大喜びして感動してたよなぁ。

長男の触手に速攻締め上げられて、次男に毒舌で心を折られて、その姿に三男が写真を撮りながら爆笑していたが。


「おかげで冥界神は死神王も兼任できるだけの実力がついたし、ロリコンは天使の中でも好き勝手しても文句言わせないだの実力が手に入ったわけだし?俺もただの時の属性神から全世界の時の属性神を束ねる時神になれたしー。いいこと尽くしじゃん!」


仕事増えたけどな。

神王様って、基本使えるものは何でも使えがモットーだから、強くなれば強くなるほど仕事と役職を兼任させる人だけどな!

それが嫌でルシファーは堕天しやがったし!

まぁ、カインの使い魔になってからは、部下が優秀だから押し付け……任せているけどな!


「ねー、話終わりー?俺、リーンとしぃちゃんと一緒とこに行ってもいーい?」


あいっかわらず空気読まないな、お前は!

別にいいよ!

お前に同意を求めた俺様が馬鹿だったんだ!


「じゃあ行ってくるねー!リーン、しぃちゃん!俺も一緒に滑り台で遊ぶ……あ――っ!?」


なんだ?

リーンの所に歩き出した時神が急に叫んだぞ。


「何?どうしたんだよ?……のぉおお!?」


ルシファーが、お犬様とキャッキャッ笑いながら遊んでいるリーンを見て同じく叫んだ。

え、何があったんだよ?

普通にお犬様と遊んでいるリーンがいるだけじゃん?

……ん?


「……いぎゃぁあああ!!リーンの服が破けてるぅうううう!?」


むしろ摩擦で溶けてる!?

しかも服が溶けているのにも関わらず滑りまくったのか、お尻と背中が真っ赤になってるぞ!?

この短時間でどんだけ滑りまくったんだ、お前は!


「うにゅー?クロたん、にぃに、おじたんー?あたま、らいじょぶー?」


急に俺様たちが叫んだからか、リーンが不思議そうに首を傾げた。

というか、俺様たちが叫んだ原因はお前だからね?

何で俺様たちの頭がおかしくなったと思ったの!?


「そりゃ、変態思考だからでしょ」

「それ以外になにかあるのか?」

「わうわう」


ちょいと親(+α)!

注意するどころか同意するってどういうことなの!?

ちゃんと注意しろよ!


「俺、変態違うしー!」


そして時神!

お前は普通に返すな!


「嬢ちゃん、カインの説教終わったのか?」


お前もか!?

お前もツッコミを入れないのか、ルシファー!?


「お説教終わった。今はリーンだよ」

「帰ったら続きはするからな?」

「まだあるんだ……」


げっそりとした様子でため息をつくお嬢。

……誰か、俺様のツッコミに反応してください、マジで。

何で心読める人たちが勢ぞろいしてんのに、誰も反応してくんないんだよ。

拗ねるぞ!


「にぃにー?いーこいーこ」


項垂れていたら、リーンが近寄ってきて頭撫で撫でしてくれた。

もうマジ天使!

お前がいい子だからな!

そんな天使なリーンの背中を見て苦笑を浮かべるお嬢とカイン。


「お洋服、完全にダメになってるねー。リーン、お尻と背中は痛くない?」

「完全に擦りむいているから、痛いだろ。大丈夫か?」

「う?」


擦りむいているはずなのに、リーンはお嬢とカインの言葉にきょとんと首を傾げている。

え、気づいてなかったりする?


「リーン、痛くないのー?」

「あい!クロたんもいっしょあしょぼー!」

「……ここで遊ぶとママみたいにパパに怒られるから、やめとこーねー?」


あれか?

転んでもすぐに痛みを感じないっやつ?

……どっちにしろ、今日の風呂は泣くだろなぁ。

お嬢達、擦り傷は治す様子ないしなぁ……。

うん、可哀そうだけど頑張れ。


「とりあえずは、服の損傷だけ直して寮に戻るとするか。ルシファー。お前は中からあの急斜面を破壊してから寮に戻ってきてくれ。二度と使えないように徹底的に。コス王は、外から二度とあの扉を使えないようにしてくれ」


あ、やっぱりここは遊び場にするの禁止なんだ……。

当然っちゃ当然なんだけどな。


「了解でっす!リーンが入らないように、コンクリで固めて結界も張りまくってやるからな!!」

「えー。俺が外から潰したい!だって、外には幼女様がたくさんいるんだぞ!!マジモンの幼女様だぞ!?俺に行かせてくれぇええええ!!」


カインの指示に、発狂するルシファー。

いやいや……お前がロリコンだから中からなんじゃね?


「お前は中以外許さんから、とっととやれ。俺達は一度幼等部に寄ってから帰るから」

「先生たちも心配してるだろうしねー。リーン、ちゃんと先生に『ごめんなさい』って言うんだよ?」

「あーい!」


よっし!

ロリコン以外は全員幼等部の入り口に転移だな!


「いやだぁあああ!!幼女様に会わせてくれぇえええええ!!」


……幼女に会わせないように生活していたお嬢達の努力が無駄になるから無理!

ファイト!










◇◇◇◇


「はぁ……ようやく帰って来れた」


寮の部屋の前で、愛良が溜め息をつきながらそう漏らした。

まぁ、同感なんだが。

何せ幼等部に戻れば、園長やら担任やらが真っ青な顔して平謝りしてきたからな。

しまいには担任が責任をとって辞めるとか言いだす始末だし。

それを宥めるのに、だいぶ時間を取られたぞ。

俺を幼等部に行くように連絡してきた学園長にも説明をしに行かないといけなかったし。

結局ここに戻ってきたのは、昼頃だ。


「おなかぺこぺこー!」

「きゅー!きゅきゅーい!(俺もー!ごはん食べたいー!)」

「わうわーう!」

「お嬢!俺様、天津飯がいい!」


リーンと小動物達が一斉に主張する。

小動物たちの中身さえ知らなければ、ほのぼのとした光景だよな。

知りさえしなければ。


「ん。天津飯ね。ただいまー」


誰もいないのに、愛良は毎回律儀に挨拶をする。

まぁ、リーンの教育にはいいことだよな。

そう思いながら部屋に入ろうとした瞬間。


「うむ、帰ったか。では昼飯だな」

「お帰り。ずいぶん遅かったね」

「俺、天津飯より寿司がいいわー。愛良、今日の昼飯は手巻き寿司な」


なぜか、揃って見たくない三つ子が、我が物顔でリビングでくつろいでいた。


『……』


俺は一度、何も見なかったふりをして扉を閉め直して肩に乗っていたコウモリに視線を移す。


「……今、何か見えたか?」

「……夢だと思いたい光景が目に入った気がする。けど気のせいだと信じてる!」


がくがく震えながら引きつった笑みを浮かべるコウモリ。

よし、気のせいだな!

そう希望を持つ俺たちの横で、愛良が冷めた目をしながら通り過ぎた。


「んなわけないじゃん。今日のお昼はお寿司に変更だね」

「きゅい!きゅいー!(次男がいたー!早く中に入ろー!)」

「おじたーん!」

「わうー!」


頼むから、あっさり俺の願望を否定しないでくれ!

というか、あいつらは何故俺達の部屋にいるんだ!?

慌てて愛良たちを追い掛けて中に入ってみれば、すっかり馴染んでいる奴らの姿が……。


「ほほう。お前がリーンだな。うむ、可愛らしさ満点!我が甥として合格だ!」


長男、何でお前はいちいち上から目線なんだよ!

お前が合格出さなくてもリーンは俺達の子どもだからな!


「はいはい。報われない片想いの相手を引きとめるのに、これ以上ない存在だもんねぇ?」


いちいちこっちの勘に触る言い方だな、次男!

別に報われないって決まってるわけじゃない!……はずだからな!


「あー……まぁ、あれだ。頑張れ」


三男、そんなマジの同情しないでくれ!

何なんだ、その『望み薄いぞ』って言いたげな目は!


「カイン……こいつらの言う事にいちいち反応してたら、身が持たないぞ」


コス王、言われなくても分かっている。

分かってはいるんだが、突っ込まずにはいられないんだ……。


「パーパ?らいじょーぶー?」

「リーン……」


思わずがっくりと項垂れる俺に対して、リーンが手を伸ばして頭をなでてくる。

……お前が今この場での唯一の癒しだ。

いやもう本当にかわいいな、お前は!


「きゃー!パーパ、ぎゅー!」

「お兄ちゃんたち、どうやって入ったの?」


俺がリーンを抱きしめていることなど、全く気にする様子がない愛良が、気に入っているらしい水色のエプロンを着ながら三つ子に尋ねた。


「「「お兄ちゃんたちに不可能なことは、ほとんどない!」」」

「それもそっかー」


いやいや、そんな納得したくないんだが。

つまり、いつでも不法侵入されるってことだろ?

絶対に嫌だ。


「何を言っておる。我らもここに住むのに、不法侵入になるわけがないであろう」

「空いてる部屋を適当に使わせてもらうからね。大丈夫。部屋数が足らないなら、何人か廊下で生活したらいいだけの話だから」

「……は?」


……今、長男と次男が何か言ったか?

空耳だよな?

幻聴だよな!?


「「残念。空耳でも幻聴でもない」」


いちいちハモるな!!

こいつらは俺が心穏やかに過ごせる時間を潰す気なのか!?









◇◇◇◇

「大兄ちゃんも中兄ちゃんも……何タチの悪い冗談言ってカイン苛めてるのー?」


カインが鬱帝になったら、無意味に抱きついてきて行動が制限されるし面倒なんだからねー?


「む?愛良よ、何を言っておる。我らが冗談など言うはずがないではないか」


うん、知ってる。

知ってるんだけど、お兄ちゃんたちもこの部屋に住むのは勘弁。

絶対にリーンの教育によくないワードが飛び出す確率高いもん。

カインの鬱帝降臨も多くなりそうだし。

それに、私より料理が上手なお兄ちゃんたちに食べてもらってダメだしされるのってイヤです。


「大にぃ中にぃ。何言ってんだよ?俺らは教師専用の特別寮に住むんだろうが」


呆れながら念押しするちぃ兄ちゃん。

やっぱり教師と生徒が一緒に生活するのってないよね?


「ちぃよ。これだけ近くに愛良がおるのに、なぜ一緒に住むのは駄目なのだ」

「別に毎日カイン君や使い魔たちを弄ろうなんて考えていないよ?それに、可愛い甥っ子の姿は毎日みたいじゃないか」

「「何より、家事がめんどくさい」」


はい、お兄ちゃんたち。

それが一番の理由ですよね?

家事が出来ないわけでもない、むしろ私より遥かに上手なのに何言ってんですか。


「王族なら使用人を雇え。他の大貴族どもは無駄に使用人を連れてきているんだから」


何としても一緒に住みたくないカインが、超必死です。

だけど、大兄ちゃんと中兄ちゃんは言うこと聞く気はゼロ。

こういう時にお母さんがいてくれたらなぁ……。

お兄ちゃんたちが何か言う前に、ニコニコ笑ったまま鎖で締め上げる上に、お家の外にポイってしてバケツ一杯のお水をぶっかけるのに。

あー……なんかお兄ちゃんたちのおかげで、お母さん思い出しちゃったじゃん。

久しぶりにお母さんに会いたいなぁ。

お母さんの作ったご飯も恋しいし、お母さんがお父さん達を締め上げる素晴らしい技術を参考のためにもう一回見たいよ……等々。

私が現実逃避をし始めたのと同時くらいに。


ブッチィ……


お隣から何かがキレる、鈍い音がした。


「……大、中。てめぇらいい加減にしろや」


あ、ちぃ兄ちゃんがキレた。

ちぃ兄ちゃんがキレた時の見分け方は、『にぃ』を付けなくなるんだよ。

大事だから覚えておこうね!


「「……」」


さすがにちぃ兄ちゃんがキレると、上二人は即黙った。

だけど、キレたちぃ兄ちゃんにはそんなこと関係ないよね。


「てめぇら、さっきから俺が駄目だって言ってんのが理解してんのか?あ?してねぇのか?どっちなんだよ?」

「り、理解しておるぞ!」

「だ、だけどやっぱり家族は一緒に住むべきじゃない!?」


あの大兄ちゃんと中兄ちゃんがビビってる。

ちぃ兄ちゃんがキレるの、久しぶりに見たなぁ。

前は私が結構酷い苛めにあってんのを知っていながら放置していた学校関係者にキレたのが最後だったから……5年ぶりくらい?

あの時もキレてるちぃ兄ちゃん見て、上二人とお父さんはビクビクしていたもんなぁ。

平然としていたのはお母さんだけだっけ?

やっぱり我が家のピラミッドの二番目は、ちぃ兄ちゃんだよね。

もちろん、トップに君臨しているのはお母さんだよ!


「愛良。てめぇも今は真面目に聞けや」

「……はい」


怖い……。

一睨みで私のテンション急降下です。

そしていつの間にか、リーンは中兄ちゃんの膝の上でくつろいでいたクロちゃん共々、遊び空間に放り込まれてました。

キレてても、小さい子には見られたくないんだね。

まぁ、後々怖がられても嫌だろうし、しょうがないか。

ちぃ兄ちゃんの雰囲気に怖がってるしぃちゃんも、一緒に送っといてあげよ。


「てめぇらは公私の区別もつけられねぇのか?他の生徒は家族と離れて暮らしている中、愛良だけ特別扱いにするわけにいかねぇだろうが。あんだけ大々的に王族である俺らの妹宣言したんだぞ?そんだけでも目立つのに、さらにややこしい事をしようとすんなや。公私をつけないまま接して、最終的に不利な状況に追い込まれた時に被害を被るのは愛良だぞ?」

「「はい……」」


おお、すごい。

大兄ちゃんと中兄ちゃんが正座して項垂れてる。


「第一、家事すんのがめんどくさいで押しかけるって、何考えてやがんだ?いくら愛良が家事をするのが趣味でも一気に大の大人3人分増えたら負担は倍増だろうが。猫かわいがりするのもいいが、そこらへんのことも考えてやれ。考えれないなら、せめて邪魔しないようにとっとと天界に帰れや」


ちぃ兄ちゃん、この世界に転生している身で天界に帰れって、つまりさっさとこの世界での人生終えて死ねってことですよね?


「「大人しく教師用の寮で暮らします……」」

「最初からそうしとけや」


お兄ちゃんたちは、ちぃ兄ちゃんの言った意味を正確に理解したみたい。

その日はお寿司を食べた後、お兄ちゃんたちは大人しく帰っていきました。

ちなみに、お寿司を作ってるときもやけにお兄ちゃんたちがお手伝いしてくれたの。

このまま大人しくしてくれているといいなぁ。




……余談だけど、その日以降、カインとコス王がやけにお皿洗いとか洗濯物とかお風呂掃除とか、料理以外の家事を手伝ってくれるようになりました。

ちぃ兄ちゃん様様です!

~おまけ~


三つ子が大人しく帰った後で、愛良がリーンとシリウスを連れて風呂にいったのだが。


『やぁああああっ!!』


すぐにリーンの大号泣の泣き声が聞こえてきた。

ああ……背中の擦り傷が痛いんだろうなぁ。

やっぱり魔法で治してやっていたほうがよかったか?

いやでも、治療魔法は何度も使い続けると効果が薄まってしまうし……。

だが、あれだけリーンが痛がっているなら、やっぱりちょっとは治してやるべきだったか?


「ねえねえ、カインー。リーン泣いてるよー?治してあげようよー」


リーンの泣き声を聞くなりそわそわと落ち着かなくなったクロノスが風呂場の方を何度も見ながら俺に訴えてくる。

いや、だがなぁ……。


「おいこら時神。お前はなんでもかんでもすぐに治せばいいって思ってんだろ?お嬢とカインだって、ちゃんと理由があって治さないんだからお前も我慢しろ」

「でもー……リーン泣いてるしー……」


コス王に諭されながらも重要視するのはリーンが泣いているという事実のクロノス。

そんなクロノスに向けて、さっき帰ってきたばかりのルシファーが呆れながらその首根っこをつかみ上げた。


「怪我をすることで学ぶことだってあるんだぞ。痛みを避けるため今度から気を付けようという気になるだろ、お前だって」

「うー……そーだけどー……」

「逆に、痛みを知らないまま大人になることは人間にとって怖いことだぞ。お前もそこんとこ学習して大人しくしておけ」

「むー……はーい……」


ルシファーに諭されて、ようやく納得した様子の時神なんだが。

……一つ言っていいだろうか。

変態ロリコンルシファーが、すごく真面なことを言っていて不気味だ。

誰だ、お前って言いたくなったぞ。


「カインカイン。その気持ちはすげー分かるけど、ルシファーって基本的に子育てうまいからな?」

「ロリコンだからか?」

「いや、ロリコンになったのは副産物というか……あいつ、大昔に捨てられていた人間の赤ん坊を拾って育てていたことがあるんだよ。で、その成長していく愛義娘様子を見守っていくうちに、ロリコン化していったわけだな」

「……その養女はまともに育ったのか?」

「真面真面。むしろ聖女様って祭り上げられていたぞ」

「……堕天使に育てられた人間の娘が聖女……」


衝撃の事実に思わず遠い目になってしまうぞ。

変態のロリコンが子育てのプロとかおかしすぎるだろ。


「パーパー!!」

「リーン?」


知りたくなかった事実に呆然としていると、リーンがぬれた体のままリビングにまで走ってきた。

もちろん、服も着ていない状態だ。

……これは、背中に触られるのが嫌で逃げてきたな。

俺がなんとなく察するのと同時に、風呂場のドアがバンっと乱暴に開いた。

そしてそこから出てくる、濡れた髪を頭の上でまとめて、体をバスタオルで巻いているだけの愛良。


「リーン!まだ体を拭いてないし、パジャマを着ないとダメでしょうが!?」

「…………」

「やー!いたいもんー!!」

「ダメです!風邪ひいちゃうでしょ!?」

「……………」


俺の後ろに隠れるリーンと、そんなリーンに詰め寄る愛良。

必然的にほぼ裸同然の愛良が目の前に来てしまう現状に、動けない俺。


「あー……お嬢?お嬢こそ風邪ひいちゃうから、服着てきな?」

「ほれほれ。リーンは俺たちで面倒見とくから、嬢ちゃんはとりあえず脱衣場に戻んなさい」

「リーン、俺と一緒に部屋に行こー?」


硬直して動けない俺の代わりに、コス王とルシファーが呆れ交じりに愛良の背中を脱衣場まで押していき、リーンはクロノスが抱き上げてリーンの遊び部屋まで運んで行ってくれた。

もう少し見たかった……じゃなくて、助かった!

本気で助かった!

なんであいつはああも無防備なんだよ……。

何なんだ、あいつ。

俺を試しているのか?

いや、愛良に限ってはありえないことは熟知しているが!

くそ……さっきまでの愛良が目に焼き付いて離れない……。


「ぐるぅ……」ぶるぶる!

「なっ!?」


俺がリビングに座り込んで頭を抱えているところに、シリウスが半眼になって体をふるわせやがった。

毛がびっしょり濡れている状態で。

……おかげで、俺まで濡れたじゃないか。

頭まで濡れたから雑念も一緒に吹っ飛んで行ったがな!

はぁ……とりあえずは、俺も風呂に入るか……。

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