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132.転生者君が追いつきました

視点が愛良から転生者君に変わりますー。

◇◇◇◇


ただ今ギルドの受付でバイトなう。

今日はカインも依頼を受けていないみたいですぐ傍の椅子に座って本を読んでるし、コウモリと子猫姿の使い魔ズはテーブルの上に乗っかってゴロゴロくつろいでます。

リーンはしぃちゃんと一緒に酒場内を元気に走り回っているし。

ギルドのおじさま達も子どもの前だからか知らないけど、朝からお酒を飲むのは控えるようになったから、いい効果です。

むしろ、お昼はちゃんと依頼に行く人が増えたの!

……まぁ、だからこそおじさま達が帰ってくるまで暇なんだけど。


「お買いものに行って来ようかなー」


今残っている人たちもご飯食べたり談笑したりしてて依頼を受けそうな感じもしないし、夕飯の買い出しに行っとこうかな。

お野菜がそろそろなくなりそうだし。

『ただいま外出中。すぐに帰ってくるから待っててくださいねー』と紙に書いて、受付のカウンターに張ったら準備OK!


「出かけるのか?」

「夕飯の買い物ー。一緒に行く?」

「ああ。お前らはどうするんだ?」


本をパタンと閉じたカインがゴロゴロしている使い魔ーズに声をかけると、2匹は揃って首を横に振った。


「俺様パース。夜中からずっとお犬様に追いかけられてたから疲れたー」

「同じくー。あのワンコ、いつ寝てるんだってくら元気過ぎだろー」


ゴロゴロしてるんじゃなくて、ぐったりしてたんだね。

まぁ、しぃちゃんと遊んでくれてありがとう。

最近リーンがいるから、早朝特訓にしぃちゃんを連れて行ってあげれてないから、体力有り余ってんだろうなぁ。

クロちゃんが子守りをマスターしたら、しぃちゃんとの早朝特訓も再開してあげなきゃだね!


「マーマ、パーパ。おでかけー?」


私たちが出かける準備をしていたから、リーンとしぃちゃんも戻ってきた。

ちょうどいいや。


「お買い物にねー。リーンも行くから、帽子被ってジジちゃんに行ってきますしておいでー。しぃちゃんもお散歩だよー」

「あい!」

「わう!」


元気に返事をするリーンとしぃちゃん。

そのままマスター室の方に走って突撃してます。


「ジジたん!いってくりゅねー!」

「わうわうわーう!」

「ぐはっ……い、いってらっしゃい」


……オカマスター、また鼻血出しましたね。

初めてリーンに『ジジたん』って呼ばれた時は、感激して鼻血流しながら踊りだしたからね。

カインにすぐさま沈められてたけど。

まぁ男の格好してくれているだけいいとしとこう。

しぃちゃんを片手で抱っこして、もう片方はリーンと手を繋ぐ。

リーンがもう片方の手でカインと手を繋いだことを確認したら、出発です!


「マーマ、どこいくー?」

「ん?八百屋さん」


魚介類は1年分あるし、お肉もドラゴンとか狩った時のがまだまだ余っているからねー。

足りないのはお野菜ぐらいです。


「パーパ、やおやしゃんは、おやちゅある?」

「八百屋におやつはないな。野菜を売ってる店だ」


リーン無邪気な質問に苦笑を浮かべて教えるカイン。


「やしゃい……」


野菜という言葉を聞いて、リーンの足が止まった。


「……やっ!リーン、やしゃい、きりゃい!!」


ぷんぷんと怒りながら首を振るリーンちゃん。

はいはい、言うと思いましたとも。

だけどね?


「リーン」


野菜を残すと煩いパパ(カイン)がいるんだから、諦めてください。

ほらほら。

今も立ち止まったリーンの身長に合わせるように片膝をついたカインさんに、じっと見つめられちゃってますよー?


「……あい。たべりゅの」

「はい、偉いねー」


カインの睨みに完敗したリーンちゃんが、しょぼんと肩を落としながら諦めました。

じゃ、遠慮なく八百屋さんに行きますか!







◇◇◇◇


ここがフィレンチェ王国の王都か……。

この国のどこかに、邪神の神殿があるんだよな?

そして、女神もこの国のどこかにいるはず!

転生したばかりで何も分からなかった俺に、色々教えてくれた女神!

神々しいまでの銀髪、天使な女の子を抱く母性に満ち溢れた可愛い女神!(※脳内で美化されています)

無一文だった俺にお金まで恵んでくれた優しい笑顔!(※脳内で美化s……略)

絶対に見つけてやるからな!

銀髪はこの世界でも珍しいみたいだから、きっと見つかる!


「ガンバレ俺!!」


「……ちょっと、あの人急に叫んだわよ」

「顔はカッコいいのに、行動が残念だわ」


……またやってしまった。

もう大通りなんですよねー……。

とりあえずは女神にもらったお金も全部食費に消えて残り少ないし、どっかのギルドにでも入るか!

俺強いはずだから、いきなり高ランクになっちゃったり!?

そしたらきっと、モテモテだよな!

脱、モテない人生!

燃えてきたぜ!

よし!一番大きなギルドに入って、俺の凄さを分からせてやる!


「一番のギルド?そりゃ、国営のギルド『純白の騎士』が一番だろうけど、あそこは推薦がなかったら入れないよ。民営最大規模の『清龍』の方がいいんじゃないかい?この大通りをまっすぐ行けばあるよ」

「ありがと、おばちゃん!」


教えてくれた八百屋のおばちゃんに手を振って、言われた通り大通りをまっすぐ進む。

……ん?

あっちから歩いてくる銀髪発見!

あ、けど男か。

黒髪の可愛い彼女と銀髪の幼児を連れてるし。

若い親子連れかよ。

くそ、イケメンが!

リア充滅べ!

内心で呪詛を吐いていると、黒髪の女子の方が俺のほうに顔を向けてニヤっと笑った。

え、何か今の笑顔どっかで見たことあるんだけど……。

けど、この世界に来てから俺以外の黒髪なんて見たことなかったけどなぁ。

……とか考えているうちに、通り過ぎた。

なんか、男の方も俺のことチラチラ見てたし、なんだったんだ?

気になるけど、今は先に金だな!

待ってろよ、ギルド!

俺が最強の座に上り詰めてやるからな!



……なんて考えていた時期もありました、はい。

ギルドの『清龍』に入ったとたんに、厳ついおっちゃん達に睨まれたよ。

こえーよ!

中に入っただけで睨んでくるとか、チビるよ!?

何なの、このギルド!?


「……ん?このギルドに何か用か?」


奥から赤い髪を後に束ねた筋肉ムキムキマッチョなおっさんが出てきた。

え……他のおっさん達より怖い顔ですけど!?


「えと……このギルドに入りたいなぁとか思ったりして……」

「このギルドに?他にもあるのに、何故このギルドを選んだ?」


え、そこって聞かれるとこなの!?

そんな睨む様な目で見ないでくれよ!

俺、怖くて泣いちゃいそうだから!


「八百屋のおばちゃんに、実際のトップのギルドはここだからって進められて……」


特に理由がなかったし、正直に言うしかないよな?

怖いけど!


「そうなの!?世間からそう言われてるなんて嬉しいわ~!やっぱり国営になんか負けてないわよね!うふふ~!」

「……」


……俺、疲れてるのかな。

今、この目の前の厳ついおっさんがオネェみたいになった気がしたんたけど、気のせいだよな。

だって、バリバリ男の格好したおっさんだもんな。

現在進行形で両手を頬に当てて体をクネクネさせてるような気がするけど、疲れて幻覚を見てるんだよな。


「すいません、疲れているみたいなんで、ちょっと頭冷やしてから出直します」

「あらそう?まあ、今は受付の子がちょっと出掛けてるから、ちょうどいいわ。そこらに座って休んでなさい。うちの受付嬢も、すぐに帰ってくると思うから」


女のような言葉づかいで話す変なおっさん。

……まだ幻聴が聞こえるらしい。

頼むから、普通の口調で話してくれないかな……。


「……はい」


空いている席を進められて、別のおっさんが水の入ったコップを持ってきてくれた。

出来ればこのギルドから出たかったんですけど、断れない雰囲気。

俺、このギルドに入るの辞めたいのになー……なんて思いながらも厳ついおっさんに進められたテーブルに行くと、何故かコウモリと黒い子猫がぐったりと伸びていた。


「俺様って、もう歳かな?半日逃げ回っただけで、体がぐったりだ……」

「俺、しばらく動かない。あのワンコ、強すぎた……」


ぐったりとテーブルの上で伸びたまま会話をする小動物2匹。

え、この世界のコウモリと猫ってしゃべるの?


「あんた達、寝るなら家で寝なさいよ。ここは今からこの子が使うから」


おっさんも何も疑問に思ってないみたいだし、当然なのか?

俺の常識が全く通じないし、異世界って怖い。


「「うっぷ……」」


だけど、このおっさんに話しかけられた途端に吐きそうになる気持ちは分かるぞ!

俺もそろそろリバースしそうだ!


「うえ……」

「ちょっと、あんた達。その仕草は何よ?」


俺と2匹の戻しそうな仕草に、顔を引きつらせるおっさん。

いやいや、絶対にこれが自然な動作だって。

早く受付嬢、戻ってこないかなー……。


「全く、失礼しちゃうわ!私だって本当は女の格好をした……」

「……その口調はなんだ?」

「………」


本気で怒っている様子ではない、ふざけた様子のおっさんの言葉を遮るように、低い声が響いた。

おっさんの肩に、いつの間にか人の手が置かれている。

すげーな。

こんな厳ついおっさんが、顔色青ざめてるぞ。

……ん?おっさんの後ろにいるのって、さっき道ですれ違った銀髪イケメン野郎じゃん。


「親父、言ったよな?それを直さないと、俺たちは出ていくぞって」

「すまん!気を付ける!」

「そうしてくれ。お前らはリーンの相手をいつもの場所でしていてくれ。クロ一人だとまだ不安だ」

「「うーす!」」


ため息をついてテーブルの上にいた二匹を回収して席を離れるイケメン。

え、親父ってことは親子だよな?

どうやってこのおっさんからイケメンが産まれてきたんだよ?

全く似てないぞ?


「マスター。その子、新しく入る子ならさっさと連れてきてよ」


受付の方から、こっちを見ないで手元を動かしている女の子。

さっきの黒髪の子が受付なのかよ!?


「ああ、分かった」


そしてこのオカマ疑惑なおっさんがギルマスなの!?

このギルド大丈夫か!?


「大丈夫、問題ない」


……今、あの受付の子に心読まれた気がする。

きっと気のせいだと思っとこう。


「ほら、そこの子。登録するならさっさと来る」

「あ、はい!」


俺の登録の準備をしてくれていたらしい受付嬢。

若干、というか……かなり不機嫌っぽい気がする。


「ったく……何でたくさんあるギルドの中でうちを選んだんだか。もう嫌ってほど新規登録の手続きしたのに……」


何か、ぼそっと呟かれたんですけど。

え、俺のせいですか!?

呟いても俺、最高の肉体持ってるから聞こえるからな!?


「どうでもいいからさっさと来い」


んでもって、この銀髪イケメンもひでぇ!!

ちょっと立ち止まったくらいで、首根っこ掴みあげなくてもいいじゃん!

自分の方がちょいとばかり背が高いからって!


「ほら、そこに座ってコレ書いて」


イケメンに強制的に連れてこられた受付の前に座らされて、問答無用で紙と鉛筆持たされた。

何かこの二人怖い!

絶対に逆らっちゃいけない奴らだ!


「さっさと書いちゃって。他にもすることあるから」

「ええ!?すいません!すぐ書きます!」


えーと……


名前:シン・ヒガシノ

年齢:16

職種:なし

住所:なし

魔力:めちゃくちゃ多い

属性:知らねぇけど、火と闇は使える


注意事項

・すべて自己責任。己の力量にあったものを選ぶのが、生き残るための秘訣。

・自分のプライドを守りたくば、受付嬢には手を出すべからず。

・『カインを暖かく見守ろう会』に強制参加。邪魔をしようものなら……。

・子どもには優しく!マスターの孫に手を出したら死ぬと思え!



……何か注意事項が色々おかしくないかっ!?

~ある日のギルド~


オカ「愛良ちゃん!ギルドの新規登録の注意書きに追加事項があるの!確認してちょうだい!」

愛良「その前に口調が女のひとになってますよー。気を付けましょうねー」

オカ「う……カインが依頼に行ってて助かった……」

愛良「はいはい。それで、これが追加事項ですか?」注意書きを見て首傾げ

オカ「そうなの!じゃなかった……ごほん。そうだ。やっぱり注意事項が一つというのは問題だと思ってな!」

愛良「えーと、まぁ2番目のは否定できないからいいし、4番目はリーンの安全優先するなら当然なんですけど、この『カインを暖かく見守ろう会』に強制参加って何ですか?」

オカ「カインの成長を見守るための会だ!」胸を張って決め台詞

愛良「はあ……?まぁ、別にいいんじゃないですかー?」どうでもよさげ

オカ「よし!じゃあ今後はこれでよろしくね☆」投げキッス

愛良「………最後にオカマスターが出てくるとか、油断した」口元を手で押さえながら


……その日、精神的な何かが大幅に削られたらしい受付嬢は一日カウンターに突っ伏していたらしい。

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