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122.愛良ちゃんの秘密

視点がカイン→愛良になります

ニヤニヤ笑いながらステータスブックを一度閉じる三男は、そのまま開いている手で愛良の頭に手を置くと顔を覗き込んだ。


「さて、愛良。とりあえず、お前は先に戻ってろ」

「へ?何で?」

「兄ちゃんは、カインに用があんだよ」


意地の悪い笑みを浮かべたまま、愛良を裂きに戻らせようとする……。

え、俺は三男に用なんてないから愛良と戻りたい。

というか、愛良の兄貴に一人残らされるなんて、ロクなことがないに違いない!


「まぁそう言うなって。ほれ、愛良ー。さっさと戻らないと、9つの春の思い出を語るぞ」

「今すぐ行きます!カイン、検討を祈る!」


三男の脅しに、あっさり俺を置いて逃げるように走って消えた愛良。

9つの春にいったい何があったんだ……?

俺がそんなことを考えていると、三男が俺の首に腕を回して顔を近づけてきた。


「よし、カイン。お前に愛良のステータスを見せといてやるよ」


小声で言われた内容に、思わず目を見開く。

え……それって、本人いなくていいのか?

興味ないことはないが。むしろ気になるが!


「あん?愛良がいたらブチ切れるから先に戻したんだろ?」

「つまり、愛良にとって、ロクでもない内容なんだな?」

「そうともいう。んじゃ、行くぞー。紫藤愛良」


三男のその言葉と同時に本を開けば、出てきたのは愛良のステータス。

神族であるがゆえか、先ほど開いたルナよりも書かれている内容が多い。


「カイン、お嬢の体重とかスリーサイズとか見たら殺されるぞ!」

「分かってる」


それに見なくてもだいたい分かるからな。

俺、鬱ってる時よく抱きつくし、愛良も俺に抱きついて来たりするし。


「……むっつりスケベ」

「うわー……大にぃや中にぃに知られたら殺されるぞー?」


コス王には生ぬるい目で見られ、三男は複雑そうな顔で笑みを浮かべている。

……何故だ?

思わず首を傾げるが、三男はサラッと流すことにしたらしい。


「ま、とりあえずは追加設定んとこ見てみろ」


●追加設定

・やっぱり絶壁は外せないよね☆

・イケメンに5分以上優しくしてやる必要は断じてない!投げてしまうがいい!

・鈍感でいてね。相手の想いになんて気付く必要は全くないよ。むしろ恋愛なんてしなくてよろしい。

・とりあえずは、何でも楽しくしちまえや~♪


「「…………」」


4つとも、後から付け加えた感満載の手書きだな。

しかも油性マジックペンで。

それぞれ字は違うが……誰が何を書き加えたのか、内容でよく分かるぞ。


「これ、誰が何を付け加えたか分かるかー?」


三男がニヤニヤ笑いながら背中を叩いてきた。

……絶対に楽しんでいるよな、こいつ。


「……上から、クソ神、鬼畜太子、腹黒、お前」

「お、よく分かったなー!」


いや、分かりやすすぎだから、いちいち頭を撫でないでくれ。

その顔で普通に接せられると恐怖なんだよ。


「それ以外考えられねーよなぁ……。なぁ、三男。お前ら、いつ付け加えてたんだよ?」

「愛良が生まれた瞬間」


コス王の質問に対して、真顔で即答した三男。

……俺の、自分でも分かりやすいという態度にも、全く気付かなかった理由が分かったぞ。

生まれたばっかの赤ん坊に何やってんだよ、この変態ども。


「だから、ぶっちゃけお前がいくら愛良のこと好きでも、たぶん愛良とくっつくことはないぞっていう、三つ子の良心からの忠告だ!だから、愛良のことは諦めてさっさと次の恋でも見つけて…………お前、何してんの?」

「消してる」


油性ペンだったから、修正ペンでな。

特に鬼畜と腹黒の奴を徹底的に。

一応、自分の顔の造りがいいのは自覚してんだよ。

愛良に5分経ったら投げられる理由が分かった俺の気持ちが分かるか、長男。

あと次男。妹が生まれていくら嬉しくても、産まれてすぐに恋愛禁止なんかするなよな。

……ついでにクソ神のも消しておいたが、まぁ今から成長するかは知らん。

三男のは残しておいたぞ。俺にそれほど実害はないし。


「……普通、油性ペンで書いてたら、消すこと諦めないか?」

「……カイン。どんだけお嬢と両想いになりたいんだよ」

「黙れ」


三男とコス王に呆れた視線を投げつけられるが、気にしてられるか。

……よし、消えた!


「うわ、マジで消しやがった……」

「お前、お嬢のためなら三つ子と張り合えるだけのいい性格してるよ……」

「いや、無理だろ」


言っておくが、自分から長男や次男と張り合いたいとは思わないからな。

娘命のクソ神ならともかく。

実力的には三つ子より上のはずなのに、奴は性格ですべてを台無しにしているからな。

遠慮なくやれる。


「まぁ、頑張って消したとこ悪いが、どっちにしろ修正ペンで上から隠しただけだから効果はないぞ?」

「あ……」


三男に指摘されて、ようやく気付いた。

……そうだよな。文字自体は、隠れただけで消えたわけじゃないし。

さて、どうするか……。


「……おい、コス王」

「へ?」

「確かクソ神に上司っていたよな?」

「神王様のことか?まぁ、上司っちゃー上司だけど……」


物言いたげに三男に視線を移すコス王と、その視線を受けて頷く三男。


「親父も頭があがんねーけど、それがどうした?」

「これを神王に直接預けてこい。『自分の娘を好き勝手に弄っていたので、元に戻してください。ついでにお仕置きしてください』とでも言い添えて。それぐらいしたら、あのクソ神も大人しくなるだろ」

「うわー……」

「親父、死んだなー。よし、面白いから俺が届けておいてやる!ついでにお仕置きされる親父を見て笑ってくるか!」


俺の提案にドン引きするコス王だが、なぜか三男はすごく嬉しそうに笑いながら引き受けてくれた。

しかも、お仕置きされる父親の姿を笑うためだけに。


「……お前は上二人ほど、愛良を溺愛してるわけじゃないんだな」

「あん?たった一人の妹なんだぞ。可愛いに決まってんだろ。ただ、上二人が強烈なシスコンで俺が普通に見えるだけだ」

「「なるほど」」

「お前に関しては、大にぃたちに邪魔ばっかされてんのも可哀相だし、俺もそれなりに協力はしてやるって。その方が面白そうだ。じゃ、愛良によろしくな!」


楽しみができて仕方がないという様子で転移して消えた三男。

……あいつの思考は、面白いか面白くないかで出来ているのか?


「カイン、あいつはあーゆー奴だ。もう考えるだけ疲れるぞ」


コウモリに戻ったコス王が、ぐったりと俺の肩に止まった。

……確かに、疲れるな。

とりあえず、神王が愛良の追加設定を消してくれるように祈るだけだな。







◇◇◇◇


「マーマ、リーン、いっしょ!」


ちぃ兄ちゃんとこにカインたちを置いて戻ってくるなり、リーンがしがみついて離れません。

イベントに出てたから、構ってあげられなかったのが嫌だったみたいです。


「ごめんねー。もう終わったから一緒にいようね。しぃちゃんとルナも子守りお疲れ」

「あい!」

「わう!」

「リーン、ちゃん……いい子……」


そりゃ、うちの子ですから!!

……あれ、なんか私も最近親馬鹿になってきてる?


「それより、愛良。カインに景品を譲ってもらえないか聞いてもらえませんか?一応、私たちも依頼で参加したので」


胸の前で手を合わせてお願いしてくるラピス。

え、なにこの子。

そのポーズ、胸の谷間が強調され過ぎですけど。


「……羨ましい」

「うん……」


思わずお胸様をガン見してしまいました。

そしてルナちゃんも同じ悩みを抱えていたようです。

そう、絶壁から脱却できないという悩みを!


「「同士よ……!」」


思わずルナと固く握手をしました。

……まあ、直後にラピス様からの殺気で凍り付きましたが。


「……人の話を聞いていました?」

「イエス!もちろん聞いていましたよ!?」

「……」コクコク


お胸様に目が行きすぎた結果、ラピス様降臨という恐怖!

目線だけでセクハラしてました!ごめんなさい!次からはばれない様に気を付けます!


「くぅん……」

「しーたん、いーこねー」


ラピス様の殺気でビビったしぃちゃんが、すんごく怯えています。

そのしぃちゃんを、殺気とかよく分かっていないリーンがよしよし撫でて慰めてる。

もう可愛いからこの癒したち、まとめて抱っこしとこ。


「景品がほしいんだっけ?その依頼って、どうやって渡すとか書いてた?」

「確か……依頼書の裏に書いてある魔法陣の上に置けば完了だったはずですけど。依頼書はギルドにあります」

「ん……見たこと、ない……魔法、陣……」


そりゃ、天界行きの魔法陣なんて人間がそうそう見えるはずはないよね。

うん、問題ない!


「私、受付だから後の手続きはやっときます!」


きっとお父さんはミカエルさんに黙ってるんだろうし、チクってから依頼完了の印押してもらえるように、ミカエルさんにメールしておこーっと。

お仕事の早いミカエルさんなら、すぐにお父さんを絞めながらやってくれるでしょう。


「あー、パーパ!」


ん?抱っこしていたリーンがぴょんって飛び降りて、こっちに戻ってきたカインの所に走って行っちゃった。

ちぃ兄ちゃんとお話し終わったみたいだね。

駆け寄ってきたリーンを抱っこしてる。……あれ、手ぶら?


「カイン、あの本は?」

「あー……三男が(神王の所に)返しに行ったぞ」

「……そう?」


何か、今含みがあったような気がするけど、気のせい?

どっちにしろミカエルさんには後でメールしておこ。


「……で。グレイとルートは生きているのか?」


リーンを抱っこしたまま、ステージ上で全く動かないグレイとルート君に視線を移すカイン。

あえて描写するなら、真っ白になって頭からサラサラ砂になっていってる感じ。


「生きてるんじゃない?」

「生きていますね。身体的には」

「精神的、に……ご臨終……」


ルナ、うまい!

可愛いのも付け加えて座布団5枚上げる!

ていうか、抱きしめさせて!


「アイ、ラ……くすぐったい……」


だって、やっぱりルナは可愛いんだもん。

腐ルナから解放されてよかった!


「あー!マーマ!リーンも!」

「わうわう!!」


おいでおいで!

リーンもしぃちゃんもまとめて抱きしめたいです!


「……アイラ、実はそっち系の趣味なんじゃないですか?」

「違うはず……と信じてる……」

「カイン、ファイト!きっと未来は明るい!……と言い聞かせておけ」


なんか小声で三人が話していたけど、可愛い子たちを抱きしめるのに忙しい私は全く聞いていません。

可愛いは正義!

とりあえず、その日は夕方まで海でいっぱい遊びました!

友達と海で遊ぶの、楽しかったです!

★愛良ちゃんが産まれた日


駄神「産まれたー!!見てみて!念願の女の子だよぉおお!!」号泣


長男「妹か!?妹なのだなっ!?我に抱かせろ!!」狂乱


次男「大、ストーップ。今の大だと捻り潰しそうだから、僕が先。……うわ、ちっさくて可愛いなぁ」歓喜


三男「中にぃ、次俺!……うお、軽っ!サルみてぇだけど、なんか愛着わくなぁ!」感激


長男「中、ちぃ!なんで我は抱いてはならんのだ!抱っこくらい、できるのだ!」


次男「はいはい、落としたら大の恥ずかしい思い出を天界中に言いふらすからね」


三男「うっわ、それ楽しそう。中にぃ、俺手伝うわ」


長男「なんで我が妹を落とす前提なのだ!寄越せ!……うおぉおお!!もうどこにも嫁になんか出さんのだー!彼氏作ることすら許さんぞー!!あと、絶対に『お兄ちゃん』と呼ぶのだぞ!」デレデレ


三男「……中にぃ。大にぃがキモい」ドン引き


次男「大は残念な長男だけど単純だから大丈夫だよ。……大?そのままデレデレ状態だと、妹が大きくなったころには嫌われるよ?」


長男「なぬっ!?嫌なのだ!我、妹には『かっこいいお兄ちゃん』と思われるように頑張るのだ!」


次男「ね?」


三男「さすが中にぃ。大にぃの扱い方ぴか一」


次男「ありがとう。……ところで父さん?さっきから大人しいけど何やってんの?」


駄神「え?娘が産まれて嬉しくって嬉しくって!祝福を授けようかと思ったんだ!」キラキラ


三男「……いやいや、絶壁の呪いなんて可哀相じゃん」


長男「いいのだ!もしも母さんみたいに胸も成長してしまえば、男に目をつけられてしまうではないか!我ら以外の野郎なんざ、投げ飛ばしてしまえばいいのだ!」書き書き


次男「まぁ、せっかく生まれた妹がすぐに誰かのものになるなんてイヤだなぁ。1000年くらいは恋愛しなくてもいいんじゃない?1000年経ったらちゃんと解除するからさ」追加を書き書き


三男「うえー……大にぃはともかく、中にぃまで書いちゃう?……せめて、楽しい人生が送れるように俺も書いとこう」ガチで願いながら書き書き



……娘(妹)が産まれたことが嬉しすぎて、三男以外の頭のネジがぶっ飛んでしまっている状態での出来事であったのだった。

……真面に考えてくれたのが、三男しかいないという悲しい事実(笑)


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