116.二人三脚は圧勝します
新年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
最初はコス王視点、その後は愛良視点です
◇◇◇◇
『さぁー!!ついにやってきたぜ、この夏が!!このイベントが!!暑い夏に負けない熱いLOVEを会場のみんなに見せつけてやれ!!』
会場に集まった見渡す限りのカップルたち。
いかにもラブラブという感じで腕を組んだりイチャついている。
まぁ、どのカップルも俺様たちからは一定の距離を保たれているけどな。
別に俺様たちだって好きで組んでるわけじゃないんだぞ。
いや、お嬢とラピスの嬢ちゃんは分からないけど。
なぜなら、仲良さげに腕組んで耳元で話しかけているぐらい、百合アピールしているから。
あれってガチ?
「……愛良の奴、ラピスにくっつき過ぎじゃないか?」
ほら見ろ。
独占欲強いカインがぶーたれてるぞ。
だけど、別に女子同士なら気にしなくてもいい気がするけどな。
まぁ、カップルとして参加しているからかもしれないが。
『では、ルールを説明するぞ!何でもあり!お前たちが別れても関係なし!色々含めて自己責任!以上だ!!』
いや、実に簡単なルールだな。
分かりやすくていいけど。
というより、この司会者テンション高いなぁ……。
司会者をする奴は、テンションが高くないといけない理由でもあるのか?
『それでは、一つ目の競技!それは砂浜でラブラブ二人三脚だ!!足場の悪い砂浜で、相手を気遣いながらも一番にゴールを目指してくれ!今年は百合族薔薇族も参加しているから楽しめそうだよな!!あ、ぶっちゃけ男同士のは視界に入れたくないから、とっとと失格になってくれ』
((((好きで男同士で組んでんじゃねぇよ!!))))
以上、薔薇族と称された俺たち4人の心の叫びでした。
『では全員位置に着いたなー!?ゴールは500m先にある!そこまで無事にたどり着け!順位が早いほど、得点も多いぞ!では、……よーい、スタート!!』
俺様たちの心の叫びは、誰にも届かないのであった…。
◇◇◇◇
司会の合図で、一斉に走り出したリア充達(+薔薇組)。
それを見送りながら、私とラピスはまだスタートラインに立っていた。
「アイラ、行かないんですか?」
「ん?行くけどね……リーンが果てしなく心配」
「あー……さっきから、腐ルナが片手にカメラを構えてカインと使い魔さんのペアに並走して走っていますね」
「本当にね……リーンのこと、見といてくれるって言っていたはずなんだけど」
不安的中というか、腐ルナはやっぱり大暴走中でした。
リーンは大型犬サイズになったしぃちゃんの背中に乗って、腐ルナを追いかけている状態。
このままあの子たちを放置するのは、かなり不安です。
『おおっと!!?アイラ・ラピスペアはいまだにスタートラインに立ったまま!その視線の先には……はあっ!?か、観客らしきスクール水着の少女が、カイン・コスペアに並走しながら写真を撮りまくっています!!なんという珍しい光景!おおっと!!少女を追いかけている子どもを乗せた犬が他の観客を轢いていった!!観客は無事なのか!?』
はい、もうイベントどころではないです。
腐ルナ、大暴走し過ぎ。
まぁ選手のカップルたちは、砂浜に足をとられて気づいていないみたいだし、いいか。
カインとコス王はばっちし気づいているから早く終わらせようと必死だし。
ダントツ一位だよね。
ぶっちゃけ、もうあの二人に任せてたら優勝できるんじゃない?
グレイにルート君?
あの子たちなら、しょっぱなから足出すタイミングを間違って派手に顔面から転んだよ?
カイン達に任せて、私たちはリタイアしようかな。
できれば2位の景品が欲しかったけど、リーンの子守りが必要だもん。
『ん!?もしやアイラ・ラピスペアは棄権を考えているのか!?言っておくぞ!棄権なんてできません!そして最下位のペアには、公衆の面前でディープキスをしてもらうぞ!!』
「おにーちゃん!!受けの人!!最下位になって!!!」
「「無理っ!!!!!」」
結構前の方を走っているはずの腐ルナとカイン・コス王の悲鳴に近い声がはっきり聞こえました。
というより、私たちも途中退場の選択肢がなくなった。
「アイラ、今すぐ行きますよ」
「もち。ラピス、力抜いて私に抱きついといて」
「はい」
右側にいるラピスの細い腰に右手を回して、ラピスは両腕を私の首と肩に回す。
足だけ身体強化して出発!
『なんと!?アイラ・ラピスペア、というよりもアイラ選手がものすごい速さで砂浜を爆走しております!!あ、砂浜に足を取られていた他ペアを次々と轢いていっているぞ!!きっとさっきの轢き逃げ犬の飼い主に違いない!!飼い主とペットって似るから!!とりあえずはリア充、ざまぁ!!!』
ちょっと必死になるあまり他選手にぶつかったりしたのは分かったけど、まさかの跳ね飛ばしていました。
足しか身体能力を上げていないのに、この状況……。
そしてまさかの轢いているだけでしぃちゃんとの繋がりを気づかれたし。
「この司会、できる!」
「アイラ、ふざけてないで早く行ってください。この体制、なかなかしんどいです」
「ふぉへんなひゃい……」
ちょっとふざけていると、むにゅっとホッペを抓ってくるラピス様。
まぁ、足首括られた体制で無理やり抱きついてくるのはしんどいよね。
しょうがないから、もうちょっとスピードを上げますか。
「な……アイラ!?」
よし!
一位のカイン達に追いついた!
「お嬢、ずりぃよ!!身体強化って反則だろ!!」
「あら。ルールは何でもありですよ?」
「そーそー。むしろ、何で普通に二人三脚してんの?」
「「あっ!」」
二人してうっかりミス?
どこまでうっかりしているんですかいな。
主従って本当に似るんだねぇ。
「二人も、どっちか抱えて身体強化すれば?」
「そんなことしたら腐ルナの餌食になる!!」
「うん、知ってる」
「お嬢、気づいている!?さっきから肩組んで走ってるだけで写真撮られまくってたんだから!」
「だから知ってるってば」
顔色を青ざめながら必死に走っている二人。
そしてゴール前ではカメラを構えて待ち受けている腐ルナの姿。
そんな様子に、私の腕の中にいるラピス様がにこりと微笑まれました。
「今、現在進行形でも撮られていますけどね。いっそサービスしてあげたらどうです?」
「「いやだぁあああ!!」」
ああ、ラピスの言葉が止めになって力が抜けて崩れ落ちた。
ラッキー!
『おおっと!?まさかの大逆転!!最下位にいたアイラ・ラピスペアが一位だ!二位は這いつくばりながらゴールに入ったカイン・コスペア!!ラピス選手に心を折られさえしなければ、一位になれていただろう!!ちなみにイベント外だが、スク水少女が文句なしの一位!ゴール前でひたすらカイン・コスペアの写真を撮りまくっていたぞ!』
おーい、司会者さーん。
あなたがトドメさしてるからねー?
2位でゴールしたはずなのに、そうとは思えないくらいカインとコス王が砂の上に手をついて嘆いちゃってるからー。
ま、このお二人は気にせずに放っておきましょう。
他のペアがゴールするまでに、私にはやっておかないといけないことがあるのでね。
「ルナ。ちょっとおいで」
腐女子スイッチが入った腐ルナにお仕置きです。
「はい……」
さすがに怒られることは自覚しているのか、すぐさま自発的に正座をしたルナ。
「ルナ。ルナがこの組み合わせでやるって言った時、ちゃんとリーンのことを見ておいてくれるって言ったよね?」
「……はい」
「じゃあ競技が始まった瞬間、この子を放っておいて大暴走したのはどういうことかな?」
「そこに萌えがあったから!!お兄ちゃんと受けの人が仲良く肩を組んで走るという光景!!これを萌えずに何に萌える!?」
腐ルナ……真面目にお説教をしようとしている時に出てくるな。
癒しのルナちゃんのはずなのに、イラっとするから。
「……今はお説教中だから、腐女子スイッチは切っておきなさい」
「はい……」
「「いや、スイッチ切れるのかよ!?」」
「アイラがお説教中ですよ?外野は黙っていなさい」
「「はい……」
ツッコんできたカインとコス王は、ラピス様に一瞬で黙らされていました。
ラピス様、グッジョブ!
「ルナ?写真を撮るなとは言わない。だけど、次からリーンを放っておいたりしたら、そのカメラを没収して木端微塵に破壊するからね?」
「分か……た……」
カメラを大事そうに持って項垂れるルナ。
この項垂れよう、いつまで持つか不安が残るけど……。
とりあえずはアレだね。
イベントが終わったら、リーンの使い魔召喚をしよう。
子守りをできそうな使い魔を。
夏休みが終わった後のことも考えると、それが一番いいよね。
鬱帝「妹が怖いと思う日がくるなんて……」
コス「カインの妹は腐ってやがった……遅すぎたんだ……」
鬱帝「ルナは腐ってない」
コス「いやいや、俺様の目を見てもう一回言ってみ?」
鬱帝「……腐っていない……はずなんだ……ぐす」orz
コス「あー……うん、そーだなー。腐ってないよなー」(棒読み)
鬱帝「きっと、これは悪夢に違いないんだ……今日が終われば、きっとルナは元に戻るはずなんだ……そうだ、今日を乗り切れば……」ブツブツ
コス「……自己暗示を必死にかける姿が切ねぇ……」憐れみの目
※腐ルナは本当に一時的なものです……たぶん。