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11.学園に転入しました

◇◇◇◇

広大な敷地、その中に建ついくつもの建物。

あの建物全てが校舎みたい。

フィレンチェ王国、王立リンズバーン学園。

それが、私が今日から通う学園の名前。



「……すごく大っきい……です」


「まぁ、王立だからな。すぐに慣れる」



学園の門の前まではカインの転移魔法で連れてきてもらったんだけど、目の前に広がった敷地は、小さな町ならすっぽり入ってしまうと思うの。

高等部からは全寮制で週末ぐらいしか王都に出ないから、学生が普段使うためのお店とか喫茶店も入っているみたい。

この敷地内だけで、学園都市と言えるかもしれない。



「道、覚えれないと思う…」


「後で校内地図を渡すから覚えろ。移動教室も多いからな。さっさと学園長のところに挨拶に行くぞ」



先に歩きだしたカインの後ろを歩いていると、周りの生徒たちからの視線が痛いぐらい感じた。

私服を着ているのは私だけだし、頭にしぃちゃんが乗っかって目立つから、仕方ないんだろうけど。

ついでに言っておくと、この学園の服はブレザーみたい。

紺のブレザーを着ている子が圧倒的に多いんだけど、所々白いブレザーを着ている子もいる。

特級クラスとかの特別な生徒のためかな。

そういう区別ってどうなのかと思うけど。

ちなみに、カインは紺のブレザーです。

ついでに眼鏡かけて、肩までの銀髪は後ろで一つにまとめています。

目立たないように実力と正体は隠して学校に通っているんだってことらしいですけど、イケメンは何でもかんでも似合っちゃうってことを分かっていない。

さっきから女子生徒たちの視線が熱くて仕方ないです。

私に実害がなければどうでもいいんだけど、龍雅のおかげでイケメンの隣にいるだけで実害があるってことは嫌ってほど理解している。

私が諦めるか、相手が私に喧嘩を売れないぐらい叩き潰すしかない。

めんどくさいし目立つのも嫌だから、今まで通りその辺りは諦めていたらいいや。



ひたすら注目されながら歩くこと10分。

ようやく学園長室の前にたどり着きましたよ。



「失礼します。転入生を連れてきました」


「………はぁ、疲れた」



中には行って思わず溜め息が出た。

だって、ようやくたくさんの視線から逃れられて息がつけたし。

中にいたおじいちゃんには、呆気にとられた表情で長いお髭を撫でていますけどね。



「……初めて会った子に溜息を着かれたのは初めてだのぅ」


「すいません、こいつの思考は少し常人には理解できない領域にあるようなので、諦めて下さ、いっ!?」


「ぐるぅ……」



私に対して失礼なことを言ったカインに対して、しぃちゃんが自発的に制裁しました。

もっと噛んじゃってもいいからねー。

頑張れ、しぃちゃん!



「これこれ。ひとまず落ち着かんか」



学園長の椅子に座っていたおじいちゃんに止められたので、ひとまずしぃちゃんは抱っこです。

また後でやろうね、しぃちゃん。



「さて、アイラ・シドウ君。お主は全帝と契約してしまったんだったかのぅ?」


「……ん?」



普通にさらっとした感じで聞かれたんですけども、なんでこのおじいちゃんはカインが全帝って知っているの?

……ああ、このおじいちゃんも帝の一人か。

んー……地属性の魔力が強い。



「このおじいちゃん、地帝で合ってる?」


「ああ」


「魔力感知が本当に高いのぅ。いかにも。儂が地帝でこの学園の学園長じゃ。気軽に『おじいちゃん』とでも呼んでくれたらいいからのぅ」



好々爺という様子で笑うおじいちゃん。

こうゆうおじいちゃん好き。

遠慮なくおじいちゃんって呼ばせてもらいます。



「それにしても、魔力が1199万9999とは、1200万の全帝と契約するためかと勘違いしそうになるわい」


「おじいちゃん、それ勘違い。単なるカインのうっかりミス」


「……もうこれ以上広めないでくれ」



私はおじいちゃんの勘違いを正しただけなのに、カインがまた鬱りました。

鬱帝降臨です。

龍雅程で無いにしても、カインもヘタレ属性を持ってると思います。



「広めるなと言っても、帝の間ではもう知れ渡っておるぞ?なにせお主のとこのマスターが全帝と操者の関係を事細かく説明してくれたからのぅ。ほっほっほ」


「あのクソ親父……」



つまり、帝の人たち全員に全帝はうっかりものって認識されたんですね。

ナイス、マスター。

見た目アレだけど、やること最高です。



「それにしても、全帝を補佐することになった『万物の操者』が、まだこんなに若い子だとは思わなんだわい」


「まだ16歳になったばっかの初々しい女の子です」


「どこがだ。お前ほど図太い女を見たことがない」



はい、鬱帝くんが突っ込んできました。



「しぃちゃん」


「がうっ!!」


「ちょ、痛っ!!



抱っこしていた状態から私の頭に移動したしぃちゃんは、すぐ隣に立っていたカインの柔らかい所を噛みつく。

カインは私よりも頭一個分くらい背が高い。

その位置だと、頬が一番噛みやすかったみたいで、素晴らしい力で噛みついています。

こんだけの力で噛みついてたら、確実に歯型がしばらく消えないと思います。



「はい、しぃちゃん。もう戻っておいでー」


「わんっ!」



声をかけるとすぐにカインを離して私の胸に戻るしぃちゃん、可愛いです。

そして、カインの頬には歯型が綺麗に付いています。

しぃちゃんには後でご褒美にプリンを作ってあげましょう。



「くっ……そのクソ犬、絶対いつか消してやる……」



噛まれた頬を押さえながら、ぼそりと呟くカインさん。

だけどね、この世界に来てから常人離れした身体能力を持っている私と犬属性のしぃちゃんの耳には完璧に届いているわけで。



「くぅん?」(あぁん?)


「い、いや、何でもない」


「わふ」(よし)



……しぃちゃんとカインで会話が成立してた。

一応仮にも全帝が小っちゃいワンコに負けてるという図式、問題あり?

面白いから写真撮っとこう。

ちなみに、この世界に写真があるはずはないのですが。

カインに魔導具の作り方をこの一週間で教わっていたから、その構造を元に私が造ったものです。

地球で便利だった家電製品とかを知っているから、それを基に構造を考えたら、結構簡単に作れました。

依頼に行かなくても生活費が軽く稼げているぐらいの値段で売れているから、懐もかなり暖かい。

魔導具作りを教えてくれたカインには感謝。

……感謝できるところがそれぐらいしかないけど。



「さて……そろそろ勇者の小僧も来るはずだから、手短に済ませるぞ。ほれ」



そう言っておじいちゃんが渡してきたのは制服。

……白色の。



「……あれ、白?」


「学園長、愛良は俺と同じAクラスにするはずでは?この制服はSクラス用でしょう?」



カインが渋面を作りながらおじいちゃんに詰め寄ったのだけど、当の本人は困ったように髭を指先で遊びながらため息をついた。



「そうするはずだったんだがのぅ、勇者の小僧がお主のことも国王に話したらしいんじゃ。それで国王がえらく興味を持ってな。国王が興味を持った対象を、普通の対応にするわけにもいかん。……まぁ、大人の事情じゃな」



人のことを強制的に巻き込んでくれたり、この世界にいるかも分からない私のことを偉い人に話したり……。

本当に余計なことばっかりするねぇ。

もう顔見た瞬間何するか分かんなくなってきたよ……?

絶対に殴る。

そう心の中で決めた私の目の前では、カインがいまだに納得していない様子で白い制服を突き返している。



「課外授業などでは遠出することもあります。いくら俺たちの魔力が強いといっても、離れると愛良が弱るかもしれない不安が残ります」


「もちろん分かっておるわい。それゆえ、カインや。お主もSクラスに移動じゃ」



そう言うなり、男子用の白いブレザーを机の上に置くおじいちゃん。



「……は?」


「ほれ、勇者の小僧がそろそろ来るぞ。はやく着替えんか。アイラや、お主は隣の部屋を使ってかまわんからのぅ」



固まっているカインにブレザーを投げつけ、私を隣の部屋に放り込むおじいちゃん。

私の手元には白いブレザー。

……なんか、本気で龍雅に殺意が湧いてきたかも。

目立ったら色々と嫌なことが増えるのに。

もういい。

目立ってもいい。

とりあえず龍雅はシバキまわす。

こっそり殺るつもりだったけど、もう公衆の面前だろうが関係なくぶちのめす。

そんでもって1週間は完璧無視ってやる。

もう決定。

完全に開き直って制服に着替えると、さっきまで来ていた服を無属性のボックスに片づけて、ついでに創造でメリケンサックを造る。

隣の部屋から感じる魔力が増えたし、絶対に龍雅が来たはず。


龍雅……覚悟しときなよ?

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