112.海といえば、水着でしょ!
視点がコロコロ変わります。
コス王→愛良→カイン
◇◇◇◇
やってまいりましたよ、お楽しみの海!
俺様とカインが燃えている海のイベントが!!
水着に着替えに言ってるお嬢たち、早く帰ってこないかなー。
さっきから女の視線が痛くてしょうがねーんだよなぁ。
ちなみに、カインは銀髪を後ろで括って、灰色の海パンに黒に近い青色のパーカーを羽織ってるぞ。
んでもって、俺様は人型モードで同じように黒髪を後ろでまとめて黒色の海パンをはいてる。
パーカー?
俺様の鍛えられた肉体美の前に、そんなものは必要ない!
見ろ!
俺様たちを凝視している女の視線を!
うっとりと見とれているんだ!
やっぱり俺様とカインはかっこいいんだよ!!
お嬢に理不尽な目に合わされてばっかで、最近自信がなくなってたんだ!!
よかった!
俺様たち、かっこいい!!
女たちよ!
むしろもっと見ろ!!
「……コス王。恥ずかしいから、いちいちポーズを決めるなら俺から半径15m離れてやれ」
はい、ちょっと調子に乗ってポーズを決めて女たちの歓声を浴びていたら、カインから真夏だというのに絶対零度の視線をなげられました。
俺様、鳥肌たったよ!?
チビっちゃうとこだったよ!?
「分かったか?」
「はい……もうしません」
忘れそうになるけど、お嬢との契約が完全になったカインも馬鹿力を手に入れたからお嬢並に強いんだよ。
これまで以上にこいつをからかう時は慎重にやらないといけないな!!
ちなみに、からかうのを止めるという選択肢は俺様には存在しない!!
お嬢への恋心を自覚したカインをそのまま見守るなんて、もったいなくてできるか!
「お待たせー」
「パーパ!」
「わ~う~」
お?お嬢たちが戻ってきたな!
さてさて、お嬢たちの格好はどんなんだ!?
まずはお犬様。
普段はグレイプニールを巻いているだけの首輪に、水色の水玉リボンがついている。
大人しくしていたら、普通に可愛い子犬だ。
本性はお嬢とリーンにデレ甘なフェンリルだけど。
そんでもって次はリーン。
いつもはツインテールにしている髪を同じ位置で三つ編みを編み込んだお団子。
ついでに水着はお犬様と同じ水色の水玉模様の海パン。
子ども用の青い浮き輪はすでに装着済みだ。
上は女の子、下は男の子というちぐはぐ感が絶妙にマッチしているぜ。
すれ違う奴らが一度は絶対に振り返って男の子なのか女の子か確認してるけど。
そんでもって我らがお嬢!
長い黒髪は顔の横で緩く一つにまとめてる!
そしてやっぱりリーン達と同じ水色ドット柄のビキニだ!
普段はスカートとハイソックスで隠れている真っ白ですらりとした美脚が惜しげもなくさらされているぞ!
細い腰も隠すことなくオープンだ!
そんでもって、やっぱり気になるのは胸!!
お嬢の触れてはならないポイント!!
ちなみに、おにーさんはこれを見て涙が浮かんだ。
なぜなら!!
胸元部分はフリルがたっぷりついているのだ!
たっぷりのフリルで、ボリュームがあるように見えるのだ!!
絶壁をマシにしようという、お嬢の涙ぐましい努力を感じたぞ!!
……なーんてことを考えていたら、目の前までニコニコ笑顔を浮かべたままお嬢がやってきて、俺様の顔面を鷲掴みにしました。
そして響く、ひっくい声。
「……コス王。砂浜で犬神家してみる?」
「ぎゃぁあああ!!お嬢!ごめんなさい!!俺様何も考えていません!!だから顔面鷲掴みはやめて!!」
犬神家も嫌だけど、顔面潰れたトマトも嫌だぁあ!!
マジでお嬢の力だったら、俺様の顔面簡単に握りつぶせちゃうから!!
いぎゃぁああああ!!!!
チーン……
◇◇◇◇
ふー……よし、顔面握りつぶす手前でコス王のお仕置きは終了!
今はリーンとしぃちゃんが楽しそうに伸びちゃったコス王を砂の中に埋めていってる。
もちろん顔面も砂の中ですけどねー。
嬉々としてお山作りに励んでいるから、好きにさせますよ。
頭から砂浜に突き刺す犬神家じゃない分、感謝してほしいね。
「さて!失礼なコス王も潰したし、遊びに行きますか!」
「あい!」
「わう!」
「ちょっと待て」
……ん?海に入って遊ぶ気満々だったのに、カインがなぜか止めに入る。
早く海に入って遊びたいのになー。
「カイン、どーしたの?」
「パーパ、あしょぼー?」
思わず手を繋いでいたリーンと一緒に首を傾げる。
何で君、目線を彷徨わせながらパーカー脱いでんの?
「わうー」ギロ
ほらほら見て。
せっかく遊べるところをカインが止めるから、しぃちゃんが半ギレですよー?
「遊びたいのは分かったから。とりあえず、愛良はこれを着てろ」
なぜかこちらを見ないカインが私の肩にかけたのは、さっきまでカインが来ていたパーカー。
……うん?
「え、今から海に入るのに何で着るの?」
「海の中でも着ておけ。日焼けするぞ」
「日焼け対策はちゃんと紫外線ブロックの結界張ってるから問題なしですよ?」
「……なんでもいいから、着ておけ。別に濡れてもいいから」
「えー。泳ぎにくいからヤダー」
絶対こんなの着てたら泳ぎにくいと思います。
それで私が溺れたらどうしてくれるんですか。
小さい頃からお兄ちゃん達に『災害時でも焦らず慌てずに冷静に対処できるように!』っていわれながら服着たまま海に放り投げられて、追いかけてきた龍雅から全力で逃げるために着衣水泳はマスターしているけどもさ。
「マーマ、パーパ……あちゅい……」
「わふー……」
パーカーを着る着ないのやり取りをしていたら、足元にいたリーンとしぃちゃんがぐったりとした様子でしゃがみ込んでいた。
あらら。
そりゃずっと砂浜にいたら熱くなっちゃうよね。
カインは折れる様子がないし、しょうがないから私が折れるか……。
渋々パーカーを装着。
ちょっとダボダボだけど、まぁ別に大丈夫か。
「ごめんねー、二人とも。今から海に行こうねー」
「あーい!」
「わーう!」
何故かまた固まったカインは知らない。
もう訳が分からないこと言い出す人は放っとくが一番。
◇◇◇◇
……予想外だった。
いや、愛良の水着姿は普通に可愛かったけど。
それを他の客があそこまでガン見するとは思わなかった。
見ず知らずの他人に見せるのは気に食わない。
だから俺のパーカーを渋々だが着てもらったんだが、それはそれで問題があった。
いや、着せたのが俺のパーカーだということに問題があった。
……大きさが、違うんだ。
愛良はルナ程でないにしても小柄な方だから、俺のパーカーだとぶかぶかなんだ。
改めて俺と愛良の体格差を意識して、なんというか……恥ずかしいんだよな……。
「うんうん、男の浪漫!分かるぜ!」
……気づけば、全身砂まみれのコス王が俺の肩をたたいていた。
いつのまに埋められていた砂山から脱出したんだ、お前は。
「いきなり復活して、さらりと人の心を読むな」
「いやいや。俺様、読んでません。カインのむっつりを知っているだけです」
にやぁ……と笑みを浮かべるコス王。
……こいつ、殺すか。
「ちょいとカインさん!?そんな殺気まき散らしちゃダメ!!だけど、彼シャツならぬ彼パーカーで萌えている時点で、お前がむっつりなのは決定だ!!」
「萌えていない」
「いやいや、正直になれよ。お前、ただでさえ独占欲が何気に強いんだから」
「それは否定しない」
あの幼馴染のヘタレ野郎とか、特に気に入らないし。
今度あの屑がいれば、蹴りの一つでも入れておこう。
「……そこは自覚してんのな。なら!もうむっつりスケベも自覚してしまえ!!」
「誰がするか!!地中に戻りたいようだな、お前は!」
「うげふっ!!?」
人を変態の仲間入りにしたがっているコス王は、顔面を掴んだまま砂の中に埋めておいた。
砂上にでている体がピクピクと痙攣しているが、コス王なら死なないだろ。
さて、愛良たちの所に行くか。
●地球での愛良ちゃん(海)
長男「愛良よ、人間パニックになると体が硬直して思う様にいかない時もある。例えば、足を滑らせて海に落ちた時は、泳ぎに慣れている者といえど着衣している服の重みや驚きから、溺れてしまうこととてある」
愛良「ふむふむ」
長男「まずはそんな状況下になっても冷静に対応でき、かつ、着衣状況のままでも問題なく泳げるように訓練をしようかと思う」愛良を抱っこ
愛良「……へ?」きょとん
長男「というわけで、お兄ちゃんはここで見守っているから、頑張ってくるがいい。安心しろ。仮におぼれたとしても、中とちぃがいつでも救出できるようにスタンバっているゆえな」海に向かって、愛良ちゃんをポイッ
愛良「へ?……にょわぁああああっ!!?」海の中にドボン
龍雅「うわあぁあああ!!?ちょっと大兄さん!!?何で僕の愛良を海に突き落とすの!!?愛良、待っててね!僕が今すぐ助けてあげるから!!」自らドボン
長男「どっから湧いて出たんだ、あの屑虫は……」
愛良「うぅ……急に海に投げられるとか大兄ちゃんひどい……。えっと、靴とかは脱いじゃだめで、慌てず、冷静に、力を抜いて……」背浮き状態でぷかぷか
龍雅「愛良ぁあああ!?助けにきたよ!?今すぐ人工呼吸をしてあげるからねっ!!?」すでに着衣水泳マスター済み
愛良「にゃぁああああっ!!?絶対やだぁああああ!!」超必死に岸に向かって泳ぐ
龍雅「え、愛良!?なんで逃げるの!!?って、いったっ!?何で野球ボールが飛んでくるのさ!?」次男&三男からの援護射撃を避けて足止め
愛良「ぜっっっっったい、自力で戻るんだからぁああああ!!」半泣きで着衣水泳マスター
愛良が色々器用なのは、屑虫の影響だとかなんだとか……(戦慄)